黄泉返りの国家転覆   作:倉庫

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 約三か月ぶり、あと今回から大分書き方とか雰囲気とか変わってるかもしれない。
 多分この世界線だと青のすみかが流れる背景で羂索と伽藍が仲良くガネーシャ呪霊狩ってアオハルしてる。
 (久しぶりすぎて書き方忘れちゃってるからめっちゃ短い、ごめん)


21話.玉折②ー間章ー

 あの、護衛任務から一年後の夏。

 災害の影響もあったのか、蛆のように呪霊が湧いた夏。

 まだ殺傷力を孕んだ日差しを浴びながら、夜蛾は歩く。

 校舎を出てすぐ右に見える、木下で眠る彼女に話しかけた。

 

「伽藍、少しいいか」

 

 呪術高専、東京校の庭に生える木の下。

 草と土で構成された自然のベッド、その空間を贅沢に貸し切った2人の人間。

 夜蛾の声に彼女、伽藍は変わらず陰の中で寝転びながら、灰色の前髪をかき上げて返す。

 

「夜蛾か、何の用だ?」

「今日、任務の予定は」

「あったらこんな風に時間を使い潰したりはせん」

 

 "術師殺し"そして天元の"同化"の失敗。

 だがその代償として、最強の術師であった五条悟は、よりその存在を高位のものへと至らせた。

 より脅威を増す五条の力に比例して、彼は1人であらゆる村、街へと駆り出されて力を振るうようになった。

 そのしわ寄せが来たせいだろう。その結果、五条以外の術師…特に伽藍は暇であった。

 

「なら良かった、ある一年の術師についてやって欲しいんだが」

「あ?」

 

 五条には届かぬ、しかし間違いなく絶対的強者である彼女。

 伽藍の存在は、1級や2級呪霊の討伐には決して収まらない程のものである。

 それ故に、伽藍は夜蛾の言葉に顔を顰めた。

 

「つまりそれは…私にそいつの面倒を見ろということか?」

「そうだ」

「それはまた突然だな」

 

 伽藍は自身に投げかけられたその言葉に、まるで予想外だと首を捻る。

 ため息を吐いて、その後自身の腹の上で寝転ぶ少女、己の娘の青髪を弄りながら、ふむと考え込む。

 その仕草は一年前と変わっておらず、彼女の瞳には退屈の光が帯びられていた。

 

「理由は」

「悟たちは別の任務だ。それに、前からお前には会わせておきたかったのもある、いい刺激になるだろう」

「だが何故私なんだ?私が行ったところで、どうせすぐに片がつく…見るだけではロクな経験は積めんぞ」

「………」

 

 術師の成長とは、文字通り命の危機を経験してこそだ。

 伽藍はそう考える。肉を、骨を裂かれて、折られても濁らない意志の強さ、それに付随する呪術の成長。

 それを失ってもなお、夜蛾は伽藍に話を持ち掛けた。

 

「…本来は、ただの2級呪霊の討伐任務だった。だが、任務先の村の歴史を調べてみた結果…」

「あーもういい、とりあえず嫌な予感がした…ということでいいか?」

「…あぁ」

「そうか」

 

 切り離された村、歴史と呪霊。

 おぼろげながらも話の輪郭を理解し、伽藍はしかし深く考えずに切り捨てた。

 

「あー…そうだ確か七海と…灰原といったか?まぁいい、丁度暇を持て余していたところだったしな。それに…"試運転"の予定もあった」

「…そうか、なら頼む」

「あぁ」

 

 伽藍はそう返し、重心が崩れないように、自分の上で眠る娘、霞の身体を片手で持ち上げて、支えながら起き上がる。

 まだ昼寝中なのもあったのか、伽藍に抱かれたまま、歩く際の振動でも彼女は起きなかった。

 適当な車を見つけようと視線を向けたその時、一瞬だけ校舎の方に視線を向けてから「あぁ…」と言葉を零して歩き出した。

 

「丁度いい、あいつがいるのか」

 

 伽藍は、今ちょうど教室から出てきた男に向かう。

 

 

 

 

 

「うげっ…」

「なんだその面は」

「ちょ…マジで勘弁してくれって!」

「断る」

 

 伽藍が話しかけた途端、すぐにその顔をしかめて、早歩きで去ろうとした男。

 しかし一歩踏み出した途端、首を潰す勢いで腕を伸ばし、そして華奢ながらも恐ろしい指の力で捕らえられる。

 ジタバタと抵抗する男に対して、伽藍は変わらず拘束を続けた。

 ミチ…と鈍い音が鳴る。

 

「タンマタンマ!逃げない!マジで逃げないって!」

「それでいい。すぐに終わらせてやるから、安心して私の言うことを聞け」

「あ~…」

 

 伽藍の剛力に、男…日下部(くさかべ)篤也(あつや)は尻すぼみになっていく悲鳴を漏らす。

 彼は伽藍の言葉を聞き、動きを止めて「はぁ…」とため息を吐いた。

 強情な彼女相手に、自分では太刀打ちできないと悟ったのだろう。

 

「…拒否権は?」

「返事はOK。もしくはハイか分かりました、後は了解だけだ」

「拒否権は??」

「返事」

「OKハイ分かりました了解です」

 

 日下部は口笛を吹きながら、目の前で「そうだそれでいい」と言わんばかりの伽藍に白い目を向ける。

 そしてふと、彼女の背後にあるもう1つの気配に気づき、覗き込むようにして身体を傾けた。

 

「おっ」

「あっ」

 

 びくりと肩を震わせてから、少女は顔を上げる。

 

「…」

「…」

 

 じーー…

 

「……」

「……」

 

 互いに視線が交差する。

 

「………」

「………」

 

 じーーー…

 

「初めまし」

「初めまして!」

「お、おお…」

 

 ぱあっと花が咲いたような笑顔に押され、日下部はつい仰け反りながら声を漏らした。

 サラサラとした少女の頭部に手を置きながら、伽藍は話す。

 

「日下部、お前シン陰の門下生だったろう」

「…え、マジ?」

「こいつも入れろ、ついでに私がいない間も、お前が見ていろ」

「…えぇ~……」

 

 めちゃくちゃである。

 門外不出の縛りによって得られる恩恵、秘匿された技術をよこせと言う。

 あまりにも傲慢で、そして変わらぬ唯我独尊っぷり。

 やはり彼女は実力は劣るとはいえ、五条と同じ存在なのだと理解した。

 

「見ておけ、しばらくすれば帰ってくる」

「はっえ、ちょ…」

 

 日下部の言葉を完全に無視し、伽藍はそのまま歩き出した。

 申し訳なさも、頼みを聞いたことの感謝も何もない、傲慢の背中。

 そして同時に見えた、細長い黒の包と呪いの気配を、日下部は見た。

 

 

 

 


 

 

 

 

「初めまして!僕は…」

「灰原、彼女はもう知ってます。あとその挨拶もこれで3回目です」

「初めまして!」

「……」

 

 ――なぜこうなった。

 両隣に座る彼らから目を逸らして、呪術高専一年生、七海建人はそう内心で呟いた。

 左で騒ぐクラスメイト、灰原雄は普段から元気に溢れた男だったが、今回は"彼女"が相手だ。

 七海が信頼はしているが尊敬はしていない、実力以外は話にならないと、そう五条に対して思っている。

 彼と似てはいるが、どちらかと言えば静かな方に当たる、彼女の傲慢で堂々とした性格なら、少しは静かになると思っていたのだが…

 

「伽藍さん!好きな食べ物はなんですか!」

「食えるものならなんでも」

「食べられないものってなんですか!」

「木と石」

「なるほど!」

「……」

 

 何だこの会話。

 面白味もない、意味もない退屈な会話な癖に、妙に音量だけ大きいのが余計に腹が立つ。

 彼女も彼女で、一回目律義に無視をせずに返事を返し続けているのも原因だろう。

 こういうタイプは、反応を貰うと更に騒ぐせいで余計うるさくなるというのに。

 

『次は~〇〇駅~○○駅~』

「行こうか」

「……はい」

 

 一足先に電車を降り、先頭を歩く伽藍を追う。

 歩くペースを落とさず、器用に取り出した小銭で運賃を払う後ろ姿を眺めて、七海は思う。

 

(……この人本当に平安人ですか…?)

 

 コソコソと、駅の周りの人間たちの声が騒がしくなる。

 街中だから…というのもあるだろうが、七海はそれだけが理由ではないことを理解していた。

 

「話だけでもぉ~」

「悪いな、先約がある」

 

 どこかの事務所からスカウトされているのだろう、特徴的なネクタイをした20代の男からの名刺と言葉を完全に無視していた。

 しかし彼も諦めきれないのだろう、早歩きで並走しながら必死にプレゼンを続けていた。

 

「普段はこうも騒がれんのだがな」

「髪色もあるでしょうが…制服じゃないのもあるでしょうね」

 

 速度を落とし、七海の隣に立った伽藍。

 しかし彼女が話しかけた途端、周りに立つ男たちの気配が鋭くなったのを、七海は感じた。

 

「その服どうしたんですか」

「どうせ大した相手じゃない、だったらいっそ気分転換にとな」

「……歌姫先輩ですか」

 

 七海が唯一、知人の中で手放しに尊敬できる先輩の名前を出したのは、今の伽藍の格好が、普段の彼女らしくないものだと思ったからだ。

 普段のあの、片肌脱ぎの着物や高専の制服とは違う、現代らしいファッションなのが一番の理由だろう。

 灰色の髪に負けない純白のシャツもだが、一番違和感を感じたのは下。

 ミニスカートである。

 

「しかし現代の服も悪くない…まぁ着慣れた服が一番だが、たまには悪くないかもな」

「…そうですか」

「似合ってますよ!」

 

 お気楽なものだ。

 いくら彼女にとって格下もいいところとはいえ、七海たちにとっては2級でさえそれなりの脅威だというのに。

 こうして呑気にファッションを楽しむ彼女を見ていると、やはり妙な気持ちになってしまう。

 

「できるだけ手出しはしない、安心して身を削れ」

「…お言葉に甘えて」

「頑張ります!」

 

 ため息を吐いて、七海は再び早歩きを始めた彼女を追う。

 "なんてことのない2級呪霊の討伐"に向けて、彼女たちは歩き出す。

 

 思えばここから、彼らの青い春は壊れたのかもしれない。




 明日は頑張って書きます。
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