黄泉返りの国家転覆   作:倉庫

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 戦闘シーンしか書けない男。それが私。


5話.溜まる

「呪物は基本的に致死性の毒だ。そもそも呪霊の持つ負の感情の力は結構強めだし、人間には胃もたれするレベルの重さだからね」

「…で?」

「取り込み方は自由でいいよ。そのまま丸呑みするもよし、細かく刻んで流し込むもよし。まぁ一番いいのは丸呑みだけど」

「それをやって一体何の意味があるんだ」

「もう薄々気づいてるんじゃない?」

 

 そう言って、伽藍の目の前に置かれた古い木箱。

 恐らく封印を施している影響だろう、感じる呪力はほんの僅か。だがそれでも間違いなく人に害を与えるであろう、濃密な負の香り。

 それを見て、羂索は続ける。

 

「"宿儺の器"。それのプロトタイプ…試作機が君、つまり今の君の身体には、ある程度の毒耐性がある」

「つまりなんだ、生前の私なら、飲み込んだ瞬間に良くて呪いを受ける、最悪即死の二択だったのが…今の私の身体ならば」

「そう、毒の耐性はかなり高めにして()()()()()ね」

「…………」

 

 まぁ、つまりは()()()()()()なのだろう。

 目の前で微笑みを絶やさない羂索を見て、伽藍は1つの答えを導きだした。

 ――この男は恐らく、宿儺を再びこの世に君臨させようとしている。

 そしてそれを成すためには、呪いの王の呪力と彼そのものへの耐性、つまりは毒に耐えうる素材が必要となる。

 そして…完成したのがあの赤子。

 

 腹違いの、自身の弟にあたるモノ。

 

「わかった、よこせ」

「はいどーぞ」

 

 木箱を手に取り、乱暴に箱を開く。

 そうして何重にも巻かれた、封印の布を剥がしてから。

 

 ――ゴクリ。

 

 一思いに、飲み込んだ。

 

「………まっずいな」

「うわ、実行するの早すぎない?」

「時間をかける意味がないだろう」

 

 喉を通った瞬間に、呪物が溶けて消えていく。

 そんな気味の悪い感覚が、しばらく伽藍の喉に残り続けて、そして。

 

 ――ドクン

 

 彼女の意識は薄れていった。

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

「………生得領域」

 

 目が覚めれば、彼女が1000年近く見続けてきた、あの血に濡れた景色だった。

 なぜまたここに来たのか、今の自分はどうなっているのか?疑問は沸いて止まらない。

 

(あの羂索のことだ…失敗、それも私相手にそれは考えにくい…つまりこれは仕様。奴の想像の範疇…)

 

 羂索は、自身に呪物を取り込めと言った、そして肝心の伽藍は、彼が言うに宿儺の器の試作機。

 器…つまり完成品のあの赤子は、将来的には宿儺の指を吸収し、恐らくは宿儺の完全復活をなすはずなのだ。

 しかし、あの好奇心の塊の羂索が本当に、心から宿儺の復活を望んでいるかどうかはまだわからないが…彼女にとって、肝心なのはそこじゃない。

 

(毒への耐性があるなら…ただ呪物を取り込んで終わり。でいいはず………それなのになぜ生得領域に………)

 

 ――べちゃり。

 

「…あ?」

 

 ぴちゃり、と。

 そんな音が、真っ赤に染まる空からして。

 

『ォ…がァ…ざ…………』

 

 上から、呪霊が文字通り降ってきた。

 

「…はぁ」

 

 …なるほど、これは確かに試作機らしい。

 その"仕様"を全て理解し、その随分と融通が利かない、困った性能に苦笑いを零す。

 

「なるほどな…これは確かに"宿儺の器"には向かんなぁ」

『さン…ざ…ぁ』

「この身体で呪物を取り込み、糧とするには取り込んだ呪物と生得領域で闘りあわないといけない…か……くくく、本当に宿儺の器失格だよ、私は」

 

 今回のような雑魚ならばいいが、これがもし宿儺本人だった場合は今頃、彼女は生得領域とはいえ絶命不可避だっただろう。

 宿儺の指以外全てを取り込み、糧とする伽藍と、宿儺の指を取り込み呪いの世界を廻すあの赤子。

 ――嗚呼、面白いことになりそうだ。

 

「さてじゃあ…」

『おガさ…お"かあサン…』

「死ね」

 

 ――ずちゅり。

 

 瞬間。伽藍の右手から伸びる刀身。

 呪具擬き、武振熊が呪霊の身体を貫き、彼女の体内領域が術式対象を拡張する。

 そして、術式反転と爆発。

 手ごたえなど微塵も感じない。ただしかし、たった今消費した呪力を余裕で賄えるほどの、今死んだ呪霊が持っていたであろう呪力が、彼女の身体に蓄積された。

 

「本当に不本意だが…いい肉体を作ってくれたな羂索」

 

 そこだけは感謝しなくてはならないだろう。

 本当に、本当に不本意だけど。そう付け足して、彼女の意識は暗転する。

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

「あ、おかえり」

「…どれくらい経った」

「本当に一瞬、10秒もかかってないよ」

「そうか」

 

 目が覚める。

 どうやら今回は成功、特に不具合もなく、羂索の望んだ結果を、自分はきちんと見せられたらしい。

 

「これからは積極的に呪物を回収していくスタイルかな?いいね、地道なレベリングほど単純で楽しいものはない」

「呪物など、そう簡単に見つかるものじゃないだろうに」

 

 相変わらずの、知的好奇心の塊と言うべき存在。

 果てのないその作業、それすらにも楽しみを見出し、笑えるのは流石と言うべきか。

 

「じゃあさてと…そろそろお暇させてもらおうかな」

「なんだもう帰るのか?」

「そろそろ、あの人も悠仁の相手に疲れてる頃だし」

「…うげぇ」

 

 つい口から、心底嫌だという声が漏れてしまった。

 誰を食い物にしようが、使い捨てにしようが、伽藍からすれば知ったことではないが…本当に()()()だけはやめて欲しい。そう思う。

 なまじ見た目は端麗な女性そのものなのに、中身が羂索というだけで一種の拒絶反応が起きるのだ。

 本当にやめて欲しい。そう再び吐き捨てて。

 

「ひっどい顔だなぁ」

「…誰のせいだと?…お前と話すと疲れるな」

「でもまぁ、一人くらい知ってる人間と話ができて良かったんじゃない?」

「…あぁ、それだけは、その通りかもしれない」

 

 1000年前から今日この日まで。伽藍の知る人間は数人だけ。そのうち何人が死んだだろう。

 戦場で、いつの間にか、知らないうちに1人。また1人と死んでいく。

 そんな生前の数十年を。死にかけてもいないのに、走馬灯のように再生していく。

 そうして結局最後は、この胡散臭いこの顔が残るのだ。

 

「…………まぁ、お前の言う通りだ。久しぶりに会えてよかったよ」

「…へぇ?嬉しいこと言ってくれるね、珍しい」

「チッ、若いと口が軽くなってしまうな…フン、さっさと行け」

「うん、じゃあね」

 

 …嗚呼本当に、若いのも考え物だ。

 目の前で心なしか、嬉しそうに笑う羂索を見て、本当にそう思う。

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 ある昼下がりの日。

 

「我々窓が最後に呪霊を確認したのが2時間前。そして帳を下ろして20分後に呪霊の反応が消えました」

「中の人間のは」

「両方です。恐らく生存者であろう人の呪力と呪霊の呪力が消えました、勿論中に呪術師はいませんつまり」

「なるほど呪詛師か」

「あとは頼みます…伽藍()()()()

「あぁ」

 

 あれから数週間が経ち、伽藍は上層部の決定により一級の座に就いた。

 なにせ反転術式、更には領域展開も使える平安出身の術師だ。この評価も当然だろう。

 肝心の本人は、まだ満足していないようだが。

 窓の男と会話を終えたあと、伽藍は帳に入って、目的の場所へ向かう。

 場所は高専から少し離れた山の一部、だがこの奥には若者の間で人気な廃病院がある。

 山奥、廃病院。好奇心旺盛な若者からすれば肝試しとしてピッタリな物件だ。

 

「さて…」

 

 足を進めてしばらくすると、廃病院の扉が見えた。

 コンクリートにヒビこそ入ってはいるが、それ以外の景観はまだ今でも通用するくらいには綺麗で。

 遠目から見てもわかるほどには、呪いに侵され腐食していた。

 

「さてどこに…」

 

 扉に向かって一歩、足を踏み込んだ瞬間。

 

 ――目の前の扉に槍が刺さった。

 

「…奇襲をするならもう少し殺意を抑えろ」

「チッ、なんで今の避けられるんだよ…」

「馬鹿正直に頭を狙うからだ、胴体なら危なかったかもな」

 

 伽藍はその攻撃を、頭を横に傾けることで回避。

 だがそれがいかに現実離れした玄人の技術かは一目見ればわかるだろう。

 

 呪詛師の男は警戒心を限界まで引き上げ、呪力を練り上げる。

 

「悪いけど、俺も仕事だからな」

「それは奇遇だな、私もだ」

 

 伽藍が見るのは男の足元。

 大量に血を流し、倒れた女性の身体。おそらくもう死んでいるだろう。

 なら遠慮はいらない。

 

「えー、呪術規定…なんとか条に基づき…えー、なんだ。お前を殺す」

 

 その言葉が終わったときには、数mほど離れていたはずの伽藍が既に男の目の前にいて。拳を振りかぶっていた。

 男は瞬時に防御の構えをとる。

 

「ッ!」

 

 ガンッ。と骨まで響くような重さの一撃が男に襲い掛かる。

 そのまま男は吹っ飛んで、木にめり込むほどに叩きつけられた。

 

「かはっ…」

「まだだぞ」

 

 身体が痺れて動きが鈍る男に、伽藍は容赦なく追撃を打ち込む。

 高く飛び上がり、重力を味方につけて蹴りを放つ。男は必死になって転がってそれを避けた。

 

「ちっ!」

「焦るな、まだ行くぞ」

 

 ――舐められてる。

 

 どう見ても本気とは思えない、それに術式も使わずに殴り合いだけ。

 ふざけるな、せめて本気を出せ。男の中で不甲斐なさとイラつきが、高まりあふれ出す。

 だがそれでも――

 

(強い…!)

 

 ガードに成功しても気休めにしかならない。

 呪力の総量もそうだが出力も高い、男は術式を持っていないが、その代わりに呪力操作などの基礎能力はそれなりに高いと自負していた。

 だが女の前では全てが劣化版になりうる。そう認識するほどの基礎能力の差。

 そして。

 

(それにこいつ…!)

 

 息をつく暇すら与えられない体術の連撃と、この呪力だ。

 

(なんだこいつの攻撃…!防いでも防いでなくても関係ない!威力の大小以前に…"()()"!)

 

 まるで、熱した鉄塊を直に押し付けられてるかのように錯覚するほどの熱、それが呪力によるガードすらも貫通した。

 

「ぎぃ…!」

 

 じわりじわりと肌が焦げて動きが更に鈍っていく。

 呪力によるガードで威力は殺せても、この熱エネルギーだけはどうやっても防げない。

 

 ――呪力特性。

 

 通常呪力は水のような不定形のエネルギーだが、稀に、本当に低い確率で"属性"が付くことがある。

 それはヤスリのように、触れた相手の肌を抉るような殺傷能力を持つ呪力だったり、水すら分解し、相手を痙攣させる雷そのものだったり。

 そして伽藍の呪力特性が持つ属性は――炎。

 本物の炎と同じく、肌を焼き、空気を奪い、見た者全ての生存本能を刺激する原初の恐怖。

 

「がはっ!」

 

 伽藍の蹴りが男の鳩尾に深く突き刺さる。

 そして間髪入れずにまた拳を振るい、そのまま上から叩きつける。

 男の身体が地面へと叩きつけられ、そしてバウンドして浮かんだところをまた蹴り飛ばす。

 

「ぅえぇ…」

 

 胃の中身が逆流して口から零れる。

 呪力も、もうまともに練れはしない。

 

 幕引きの時間だ。

 

「…この技を使うのは久しぶりだな」

 

 ――()()()()

 

 伽藍の左腕から、2本の骨が皮膚を破り突き出した。

 それを右手で握り。痛みなどまるで感じないように淡々と引き抜き構えて見せる。

 

「おいおいマジかよ…」

 

 見てるだけでも鳥肌が立つ作業だ。

 失った左腕はすぐに肉と骨が再構築され反転術式によって元に戻る。

 そして。

 

 ――ポタリ。

 

 骨の剣、その柄から更に枝分かれして生える尖った骨。

 伽藍がそれを握り、手に穴が開くと同時に血液が垂れて剣を濡らす。

 彼女の呪力が血液を包み込み、その1つ1つの血球が、鋼に勝る硬度へと変貌する。

 そして何より。

 

 ――ジュワリ。

 

 地面に落ちた瞬間に血液が蒸発、更に地面も抉られ、その"熱"が周りの空間を支配した。

 呪力特性による血液の高温化、術式による血液の配給と反転術式による回復。

 それら全てが噛み合い、一つの兵器を作り出し。

 

 ――伽藍はそれを、思い切り振りかぶった。

 

「"アカガネ"」

 

 そして数百、数千まで熱された血の弾丸が、男の身体を蜂の巣にした。

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 ぐちゃりと、形を崩して倒れた呪詛師の死体。

 全身に数十の穴が開いたせいだろう、人の形を保てたのはほんの数秒だけだった。

 それを見て、伽藍はフンと、直ぐに興味を失ってから呟く。

 

「終わったか」

 

 アカガネ。それは伽藍がかつてあの時代、生前の若かりし頃からよく使っていた技の一つだ。

 骨を手に突き刺して、垂れた血液を呪力で強化して硬化、更に呪力特性による加熱であらゆるものを焼き尽くす、燃える弾幕と化すその技。

 歳を取ったせいで、呪力強化による近接戦が苦しくなってきた頃にようやく、1つの技として真に覚醒したのはいい思い出だ。

 しかし、これが意外と使いやすい。

 

「帰るか」

 

 足元で血を流す呪詛師と、その被害者の肉を避けて、目的だった病院に背を向けて歩き出す。

 他に誰かの()()()感じないし、伏兵の心配もないだろう。そう判断して。

 ――そう決めつけて、ふと、伽藍は傍の木々に目を移してそこに。

 

 そこに、人がいた。

 

「は?」

「あ?」

 

 ――いつからいた?

 いやそもそも呪力を感じなかった。でも確かに気配はする。

 ――死体か?だが間違いなく生きてるし、現に今も、彼女のことを凝視している。

 ――呪力のない人間?天与呪縛…?

 

 暫くの沈黙。

 

「呪力が完全にない…天与呪縛の一種か?」

「正解、よくわかったな」

「冷静に見ればわかるさ、それにしても珍しいな」

 

 己の肉体ではなく、呪力そのものを犠牲に得る、圧倒的な身体能力。

 生半可な術師の呪力強化など鼻で笑うほどの、凄まじい出力を、その立ち姿からひしひしと感じる。

 男は喋る。

 

「アンタだろ、最近呪術界で話題の、平安出身の呪術師ってのは」

「うん?あぁそうだが」

「へぇ?」

 

 口元に傷を残す、謎の男。

 先ほどから何かを探るような目を隠そうとせず、伽藍の足から、頭の頂点までをじっくりと観察して。

 

「噂じゃ、あの両面宿儺と顔見知りって聞いてるぜ」

「何回か会ったな、殺されそうになるたびに逃げたが」

「逃げたのかよ、てか逃げ切ったのかよ」

「命あってこその人生だろう?」

「一理ある」

 

 敵意もなし。殺意もなければ害意もなし。

 この男の目的は知らない、が。もう少し付き合ってもいいだろう、そう判断した。

 

「…んじゃ、呪術全盛のベテランから見れば俺はどうだ?」

「?なにが」

「呪力もなければ術式もない、そんな()は嫌いか?」

「…別に」

 

 男の言葉に、伽藍は何をと、くだらないと切り捨てる。

 何やら面白い答えを期待していたようだが、彼女からすれば正直――

 

 どうでもいい。

 

「どうでもいい、心底どうでもいい。呪力だの術式だの天与呪縛だの、所詮は人間を構築する一つの要素にすぎん、なぜそんな些細なことに気を向けなけらばならん」

「クッ…ハハハ!呪術全盛、平安時代の人間が呪術に"どうでもいい"か!」

「なんだ、お前は術式が欲しかったのか?」

「…さァな」

 

 彼女の問いに、少し含みを持たせた言い方で、男はそう返した。

 

「というか、お前は何でこんなところにいたんだ」

「用事だよ用事、そこで倒れてるやつに」

「やつ?」

 

 そう言って、目線を後ろに移して。

 

()()()()?」

「…………」

「?どうした」

「…あー、まァな」

「そうか」

 

 少し言葉の濁った男と、それを疑問に思いながらも、直ぐに答えを返す伽藍。

 

「さっさと殺って帰ろうと思ったんだが…」

「私に先を越されたと」

「そんな感じだ」

「死体はいるか?」

「お、いいのか?」

「勝手にしろ、私はそんな肉塊になんの情もない」

「んじゃありがたく」

 

 男はオェ。と胃の中から何かを吐き出した。

 一瞬それを手のひらに置いたと思ったら、それが一気に巨大化し、男の身体にまとわりついた。

 そして。

 

「食え」

「は?」

 

 男が呪霊に命令した。だが伽藍が驚いたのは、命令の内容ではなくその対象。

 まるで赤子のような見た目をした呪霊は、地面に降り立った後、()()()()()飲み込んだ。

 

「……………」

 

 ――そっちだったか…

 

「んじゃあな」

「おー」

 

 再び小さくなった呪霊を飲み込んだ後、男は凄まじい速度で帳を潜り抜けていった。

 しかし珍しいものを見れた。そう思いながら、もう見えなくなった、男の背中を幻視する。

 ――天与呪縛。それも呪力から脱却したとても珍しいものを。

 

「羂索が見たら喜びそうだ」

 

 さて、私も今度こそ帰るとしよう。

 そう言って、呪詛師だったものを背に、車へと戻っていった。

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

「なんてことがあってな」

「それ術師殺しですよ!?」

「知ってるのか」

「裏じゃめちゃくちゃ有名ですが!?というか襲われなかったんですね…」

「得がないからだろう」

 

 車に戻り、"窓"に先ほどあったことを説明すると、そう返された。

 どうやら彼女の出会った男は、裏ではそれなりの有名人らしい。

 ――禪院甚爾。術師殺しの異名を持つ、凄腕の殺し屋。

 何が目的で、何故彼女と会話をしたのか…それはわからないが。

 

「さて帰るか、案内は頼んだぞ」

「あ、その前にちょっといいですか」

「ん?」

「あ、ここをこう持ってください」

「?これは…」

 

 ぴぽぱぽ…と、携帯電話から発せられる電子音に、伽藍が何だと首をかしげて、覗き込む。

 "窓"の男は、そのまま手慣れた様子で、ある人物に電話をかけて、その携帯電話を渡した。

 

「こうか?」

「そうそう、その後耳にこう…持ってきて…」

「するとどうなるんだ」

『もしもし?』

「うおっ」

 

 突然耳に流れ込む声。

 その慣れない姿に、ついクスっときたのを隠して、男は後ろに下がる。

 

「歌姫…か?」

『久しぶり伽藍、どう?もう任務終わった?』

「あぁ、これから暇だが…」

『ならちょうどよかった、女子会しない?』

「じょしかい」

 

 またもや、彼女からすれば聞きなれない単語だ。

 しかし、彼女の本質をそれなりに知っている、男からすれば、それは吹きだすものだ。

 

『女だけで集まって、話し合いをしながら何かを食べたりするの』

「ほう…」

『せっかく現代に来たんだから、たくさん楽しいこと経験しないと駄目じゃない?でしょ?』

「なるほど一理ある。…そうだな、その女子会とやらに参加させてもらおうか」

『ヨシキタ!あ、ついでに私の友達も連れて行くわ』

「あ、あぁ…」

『じゃまた!』

 

 ブチ。その音を最後に、彼女の身体が硬直し、完全に停止する。

 そして恐る恐る、男は話しかける。

 

「…………」

「ど、どうしました…?」

「知り合いの知り合いとの会合ほど気まずいものはない…とな」

「あ、平安出身でもそこは変わらないんですね」

「おいどういうことだ」

「だって普段あんな非常識ですし」

「おい」

 

 失礼なやつめ。そう彼女は言った。




 伽藍
呪力特性・炎
刀に呪力を纏わせるだけで扇さんの上位互換だよやったね!

 伏黒甚爾
たまたま仕事場所が被って出会った。
タダ働きはゴメンなので即脱退。
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