ダンジョンにおじさんがいるのは間違っている!? 作:リーグロード
他の作品も鋭意製作中だよ。おじさん噓つかない。
平日の昼間、サラリーマンや学生ならば会社や学校に缶詰になっているであろう時間帯に、とあるアパートの一室で2人の男が暇を持て余しダラダラとテレビを眺めていると、番組が変わり『世界の名所に密着!』という内容の映像が流れる。
「こうしてコンクリートだらけの景色を見ていると元の世界に戻って来たな〜って思うけど、こうやってテレビなんかで自然豊かな場所やレンガで出来た建物を見てると異世界のグランバハマルと余り変わらないように見えるな」
「あ〜、確かにね。異世界って大抵中世ヨーロッパが主流だし、土地開発とかされてないから自然も沢山残ってるからね」
コーヒーを啜りながらたわいもない雑談を楽しんでいると、テレビの画面が自然から建築物の映像へと切り替わる。
『こちらイタリアにあるピサの斜塔です。凄いですね〜、こちらの建築物は…………』
現場にいるリポーターがピサの斜塔の説明を話している最中、ふとたかふみはこういった建物が異世界にもあったのか気になって隣りで同じようにコーヒーを啜るおじさんに聞いてみる。
「そういえば、おじさん。異世界にもこういった珍しい建物とか塔って無かったの?」
「ん〜、あったぞ。でも、こんなピサの斜塔みたいな特徴的な塔は俺が知ってる限りじゃ、グランバハマルとは違う異世界の塔だけだったな……」
「へぇ〜、……って、ええぇぇ!!?」
おじさんにとっては何気ない一言であったが、たかふみにとっては聞き逃さない情報であった。
「ちょ、ちょっと、おじさん!? 別の異世界? 何その話は、俺そんな話一切聞いて無いんだけど!!」
「おっ、そういえばたかふみにはあっちの世界の事はまだ話して無かったか? ……ん〜、聞きたい?」
「うんうん!! あっ、コーヒーのおかわりいる?」
「おお、ちょうど無くなりかけてたんだ。もう一杯貰おうか」
空になったカップを台所へと急いで持って行き、並々とコーヒーを注いでテーブルへと戻る。
異世界の話を聞く前はコーヒーを淹れるというのが日課になりつつ、目の前にコーヒーが置かれると同時におじさんがいつもの呪文を唱える。
「イキュラス エルラン」
たかふみが空中に映し出された画面にワクワクしながら映像の再生を待っていると、そこに映し出されたのはいつもとは違う異世界の風景などではなく……、
「グルアアア!!!」
「キュアアア!!!」
「ぬおおおお!!!」
怪獣とドラゴンとおじさんによる三つ巴の争いの場面だった。
「いや、急になんでぇ!!?」
あまりにも急展開過ぎる内容に映像を一時停止してツッコミを入れるたかふみ。
「ってか、何この怪獣とドラゴン!? なんでおじさんこんなのと戦ってるの?」
「それはだな、俺が別の異世界に行ったのはこの戦いがきっかけなんだ。あの緑のゴジラみたいな怪獣が『暴風魔獣ベルドラム』で、あの蒼白いドラゴンが『氷河魔龍ベリオラス』だ。どっちも2つ名持ちだからトンデモないくらい強かったんだぞ!」
「いや、名前が聞きたかった訳じゃないんだけど……」
「まあ、たかふみも俺から直接聞くより見た方が早いし、そっちの方が好きだろ?」
「まあね、でも何で急に戦闘してるのかだけ教えてもらっていい?」
「ああ、あれは確かえ〜っと、ああここだ!」
画面の映像を少しだけ戻して、ある一部分を拡大して見せてきたのは何の変哲もないただの崖だった。
「えっと、おじさん? この崖がどうかしたの?」
「実はな、ここをバックにした風景がセガでよく使われる背景とそっくりでな。ついゲームの必殺技の練習をしてたら運悪くベルドラムの住処に命中してしまってな~。それで怒らせて戦っている最中にベルドラムのライバル関係だったベリオラスも乱入してきてもう大変だったんだぞ!」
「え~~……」
おじさんの軽い口調と映像内のショッキングな内容のギャップにたかふみは絶句する。
いや、確かにゲームや漫画と似たような場所を見つけたら俺もつい必殺技の練習をしたりするよ。
でも、異世界に来てまですること? しかも何かヤバイモンスターを怒らせてるし、三つ巴状態とはいえ光線吐いたり、ブリザード巻き起こしたり結構どころかメッチャ不味い状態だよ!!
「おっ、見ろたかふみ! ここマジでヤバかったんだぞ!!」
「うわっ、本当だ……」
映像の中のおじさんはいつの間にか三つ巴の状況から怪獣とドラゴンが手を組んでの1対2の構図へと変わっていた。
「多分、俺が精霊の力を借りて戦っている事を本能的に察したんだろうな。精霊とは、事象や概念の集合意思のようなもの。自然界で生きるあいつらにとっては俺が恐ろしい存在に見えたんだろう」
「なるほどね~……って! そんな吞気に話してる場合? これって普通に大ピンチじゃん!!?」
現に映像の中のおじさんは2体の連携攻撃に確実に追い詰められている。
片方の攻撃に対応している間にもう片方がおじさんを攻撃してくるために捌き切れずに何発か被弾している場面がある。
「ねぇねぇ、おじさん。こっからどうなるの!? あるんだよね? こういう絶望的な展開からの大逆転方法が!!」
「いや~、それはネタバレになっちゃうからな。ほら、続きを再生するぞ……」
再生された映像の中でおじさんが2体を相手に立ち回ってはいるが、如何せん決め手に欠ける状態での挟み撃ちはいくらおじさんでもキツイようで、ついに2体に挟み込まれる形でブレスによる攻撃を受けてしまった。
「ぬぅ……ぐうぅぅ……」
ブレスが直撃する一瞬先になんとか防御魔法で防ぐことは出来たが、断続的に吐き出され続けるブレスの圧で防御魔法陣ごと押しつぶされ掛けていた。
もはやこれまでかと一瞬諦めかけたその時だった。
「グルアッ!!?」
突如として怪獣の口目掛けて閃光の一撃が飛んできた。
おかげでベルドラムからのブレスが止み、空いた片方の手で攻撃魔法を展開しベリオラスに反撃をかます。
「ルガルドスゴレッドバストール」
大量の雷がベリオラスを襲い、その魔法の威力に耐えかねてベリオラスはブレスを飛ばすのを止めて距離を取った。
っと、ここで再びたかふみが待ったをかける。
「今の何おじさん!?」
「ん、アレか……。ちょっと視点を変更して。ほら、ここ見えるか……?」
「えっと……、あっ! エルフさんだ」
遠くの方で前に温泉に行った際に手に入れたレールガンのような古代魔道具を構えたエルフさんがいた。
再び映像を再生させ、画面の中のおじさんが閃光の見えた方向に視線を向ける。
「……エルフか、ふっ……」
おじさんがその存在に気づくとほんの少し笑ってベルドラムに背を向けてベリオラスに追撃を仕掛けにいった。
当然、そんな隙をベルドラムが逃す訳もなく、再びブレスで攻撃を仕掛けようとしたところ、またもやエルフからの超長距離攻撃によって阻まれる。
「ったく、後ろにまだあの魔炎龍クラスの化け物がいるってのに無防備に背中なんか晒しちゃって。まったく……、本当に私がいないとダメなんだから……」
そう困ったようなヘラッとはにかんだ笑顔を浮かべながらエルフさんはベルドラムの動きを封じ込め続ける。
日頃はなんだかんだとエルフさんのツンデレ行動に勘違いして辛辣な態度を取るおじさんであるが、こと戦闘時となると全面的に信頼して背中を任せる姿にファンタジー的王道が好きなたかふみはウムウム……、イイヨ……、っと首を縦に振って静かに興奮していた。
「さて、ここからが俺が別の世界へ飛ばされるきっかけとなった場面だな」
「おお! ついに別の異世界への移動方法が明らかに……!」
1対1ではおじさんが終止ベリオラスを圧倒しており、そこへエルフさんの攻撃を無視しながら攻め込んできたベルドラムとその後を追いかけてきたエルフさんが合流した。
「いったいこの状況はどういうことかしら、オーク顔?」
「すまんが、その説明は一旦後回しだ。今はこの状況を打破することに専念しよう……」
空中で隣に並び立つエルフさんの質問を後回しにして、目の前で全身全霊のエネルギーを蓄えている2体に集中する。
「ちょっ……!? あんなの真っ正面から相手する気なの? バカじゃないの……!!」
「確かにそうかもな……。でも、試してみたいことがあるんだ。だからここは危険だ。お前はさっさと逃げろ!」
「……ふざけてんの、オーク顔? この私が逃げるですって、見くびらないでもらおうかしら。この程度の危機ぐらい乗り越えられなくてどうするっていうのよ!!」
「……そうか、そうだったな。なら、一緒に倒すぞ!」
おじさんとエルフさんも互いの最強の一撃で勝負に賭ける。
そして、2体のブレスとおじさんの精霊魔法とエルフさんの古代魔道具の一撃が衝突する。
それは辺りを閃光のように眩く照らし、ここいら一帯に凄まじい衝撃波が轟いた。
そんな強大なエネルギーのぶつかり合いの真っ只中にいたおじさんとエルフさんが無事で済むはずもなく、ぶつかり合うエネルギーの余波が2人を襲って傷つけていた。
「「こ……のぉ……!!!」」
だが、2人はそんな傷に恐れをなすどころか更に負けてたまるものかと底力を見せて威力を上げてみせた。
ドドドドドドドドドッッッッ!!!!
互角だったエネルギーの鍔迫り合いは2人の負けん気によるパワーアップでおじさん達の勝ちとなった。
ベルドラムとベリオラスは強大なエネルギーに吞み込まれて断末魔の咆哮を上げることすら出来ずに跡形もなく消滅していった。
「「はぁ、はぁ、はぁ……」」
お互いに全力の一撃必殺で体力の大半を失って肩で息を切らしていた。
だが、その顔はどちらも疲労感はあるがそれ以上にやり切ったという清々しい爽快感が浮かんでいた。
そこで一時映像はストップされる。
「す、す、凄いよおじさん!!!」
「そうか~? まあ、今の戦いは俺の異世界生活の中でも特に印象に残った戦いだったからな……」
うんうん♪ と満足げに頷きながら、甥っ子の純粋な感激の言葉におじさんは機嫌を良くする。
「それじゃ、続きを再生するぞ!」
先の攻防で力を使い果たした2人はヘロヘロ状態のままゆっくりと地面に降りてゆき、着地と同時に力が抜けて尻餅をついて倒れる。
「ったく、本当にあんたと一緒にいると退屈しないっていうか……。いっつも私が苦労してる気がするんですけど!」
「だから逃げてもいいって言っただろう」
「うっさいわね! ってか、そろそろ説明しなさいよ。なんでこんな状況になったのかと、あんたが言ってた試してみたいことって?」
「……そうだな。まずはあの状況になった説明を……っ!?」
「っ! オーク顔、これって!?」
上空を見上げると、先程まで自分達がぶつけ合っていたエネルギーの余波が集中して渦を巻いていた。
その力に吸い寄せられるように暗雲が立ち込めていき、その中心に巨大なエネルギーの衝突で実は発生していた時空の歪みがブラックホールのように周囲のものを無差別に吸い込んでいく。
「これだ! あそこに飛び込めばひょっとすれば日本に戻れるかもしれん!!」
「はぁ!? じゃあ、あんたはこれを発生させる為にあんな無茶をしたって訳!!」
「そういうことだ。俺はあそこに飛び込んでイチかバチか日本に戻れるか試してみる。これまでなんだかんだあったがお前にはずいぶんとぉ──―!!?」
「ふ、ふざけんじゃないわよバカオーク! あんたには貸しとか色々あんだから、勝手に元の世界に帰ろうとしてんじゃないわよ!!」
「わっ! バカ止めろ、痛い痛い!!」
最後の別れの言葉を告げようとしたおじさんがエルフさんにボコボコに殴られて元の世界に帰ろうとするのを阻止されようとしている。
その場面を見ながら横でおじさんが愚痴る。
「な〜、酷いだろコレ! あの時のエルフの拳マジで痛くってさ、服めくって見たらアザになってたんだよ。確かにエルフには色々貸しとか作ったりはしてたけど、言ってくれれば俺の手持ちのモンとかある程度は渡したのにさ……」
違う、違うよおじさん。ってか、ツンデレさんももっと素直にならないと本当におじさんは自分に対しては言葉の表面上しか捉えないから逆効果だよ……。
おじさんとツンデレエルフさんのすれ違いに心の中でツッコミを入れるたかふみはズーンという効果音が出そうなほどに頭を抱える。
その間にも映像は再生され続けており、少し目を離していた隙におじさんとツンデレさんが上空の渦に吸い寄せられて飲み込まれそうになっていた。
「っく! いいか、今から俺が魔法を使ってお前をこの吸い寄せる力の届かない範囲まで吹き飛ばす! だから──―!!」
「冗談じゃないわ! いいじゃない。私もあんたの故郷のニホンバハマルに興味があったし、この機会に行ってやろうじゃない!」
「──―ッ!? いいのか、下手をしなくてももう二度とこの世界に戻ってこれなくなるかもしれないんだぞ?」
「そんときは、こんな事態に巻き込んだあんたが責任取ってくれんでしょ?」
「……っふ、言っておくが、俺が日本で出来ることなんてたかが知れてるから、あまり期待するんじゃないぞ……」
「っ! 言質はちゃんと取ったからね♪」
全くの未知の世界に飛ばされるにも関わらず、エルフさんの顔は凄く嬉しそうに笑っていた。
そうしておじさんとツンデレエルフさんは時空の歪みの中へと吸い寄せられて消えていったのだった。
「っと、まあここまでが俺がグランバハマルから別の異世界へ行った経緯だな……」
「っえ、ここで終わり!? この先は? 別の異世界の話はどうしたの!?」
「何言ってんだたかふみ、ほら時計見てみろ、もうすぐ藤宮さんとの約束の時間だぞ?」
「っえ? あっ、本当だ……」
「続きは帰って藤宮さんを交えて見ような……」
「うん!」
そうしてボクとおじさんは藤宮との約束の為に別の異世界の話は一時中断し、外へ出かけるので続きは次話でお送りします。
とりあえず、おじさんが異世界へ転移するまでの経緯は書き切れたからヨシ!
ちゃんと次話も今年中には書くから心配しないで…多分