サイバーだけどパンクでなし―211×―ルームランナーズ   作:どくいも

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2章 サイバー・プラント以上ラボ以下
社長さん社長さん、おすすめの物件を相場に2倍で買ってきたねん!


さて、一連の騒動から早数か月。

万国通への憎しみも薄れ、コノミもすっかり十三地区に馴染んだ今日この頃。

私も件のローママフィア攻略報酬をいくつかもらい受けることとなった。

まぁ基本的にこちらは騒動の鎮圧、つまりはコノミの身の安全確保と襲撃頻度が低下すればよかった。

だからこそ今回の交渉では報酬の内容そのものよりも、素早く終わらせることに重点をおいたわけだ。

それこそ、素早く交渉が終わるのならば、多少こちらが損をしてもその報酬を受理することにしたし、いらない報酬をもらうことにもした。

その結果がこれだ。

 

〈ビービー、人間発見人間発見!体細胞率45%以上を確認!

 可及的速やかに保護、保全、隔離を開始します〉

 

〈契約状態…不明!危険危険危険!処分処分処分処分処分!!!〉

 

〈警告します警告します。ここは私有地で、契約地で、所有者はぜんざい不明であり、新しい契約更新には、担当者からの報告が、射殺許可所がされており、契約により処分隔離保護破棄処刑処刑処刑処刑〉

 

「うるせ〜!!死ねぇぇ!!!」

 

今回持ち出したオーブントースター型陸戦ドローン集団が、無数の対機械弾を放つ。

装甲が貫かれ、内部で放電する特別徹甲弾や無数のチャフにより、隊列が崩れ、また無力化される巨大な自動機械たち。

突然大量の巨大な自動機械に襲われかけた時はどうかと思ったが、これなら問題なさそうである。

 

〈ビービー!アンドロイド発見アンドロイド発見!危険危険!

 危険因子の排除を優先します優先します優先します〉

 

「ぴ、ぴえ、ぴええぇぇぇぇぇ。

 たすけて、ソーちゃん!」

 

〈ピピッ!〉

 

なお、今回の視察には、なぜかコノミもついてきており、この襲撃に巻き込まれている。

が、おそらくは問題ないだろう。

彼女はポンコツではあるが高性能アンドロイドボディ。

大型とはいえ野良の自動機械の銃弾1発や2発でやられるほど()()な体をしていない。

しかも今回は、こちらで新しく作ってあげたAI搭載の護身用ドローンまで所有しているのだ。

これで問題が出るのなら、それこそ相手が以前相手にしたあのクソ暴走サイボーグが2人くらい同時に襲われたときぐらいであろう。

 

「それにあれだ、そんなにつらかったら逃げていいぞ?

 別に強制はしていないし」

 

「そ、それはい、いやです!

 それに逃げるなら一緒に逃げましょうよぉ、ご主人様ぁ!」

 

こちらの外套の裾を掴みながら、泣き言をいうコノミ。

相変わらず、根性があるのか臆病なのかよくわからない娘である。

でもまぁ、冷静に考えればここで下手に一人で逃げだされた方が危険なため、これはこれで優れた防衛本能が働いているのかもしれない。

 

〈指導始動指導始動!あななななたたちに、おおおおうぎをささ、授けます!

 中国100億年の歴史の重みビームライフルパンチ、変わ河躱せてみられるものかよぉ!奥義をくらぇれぇ!〉

 

「あ、真打登場した。

 面白そうだから、ちょっと行動観察するか。

 ドローン隊、攻撃ストップ」

 

「えええぇぇぇぇぇぇ、何で……。

 あぁ!機械の兵隊さん達がぁ!ビームライフルの餌食にぃ!」

 

かくして、混乱し焦るコノミを尻目に、暴れる自動機械と自作改造した元家電改造戦闘用ドローンが吹き飛ばされる映像をカメラに収めるのでした。

よし、この迫力なら、次回の動画再生数はコノミの食べてみた動画を上回れそうだな!

 

 

◇◆◇◆

 

 

「さっきの動画を低編集で上げてみたら、めちゃくちゃ炎上した件について」

 

「むしろ、なんで炎上しないと思ったんですか???」

 

おかしい、自作の家電改造陸専用戦闘ドローンの性能を知るためにも割とわかりやすいいい資料のはずなんだが。

低編集とはいえ、相手の自動機械の性能やこちらのドローンの破損理由についてもきっちり、説明できたいい動画だと思ったんだが。

というか、なんだよ「ドローン君かわいそう」「創造主がこれとか、投稿主は人の心がないのか?」ってコメントは。

こいつらは元はただの壊れたスクラップだから、スクラップがスクラップに戻っただけだろ。

このドローンに搭載されたAIの自我も、最低限の使い捨て。

文字通りの戦闘用使い捨てドローンを使い捨てて、何の問題があろうか?いや、ない。

 

「でも、文句を言われたくないのなら、わざわざなんで作ったドローンさん達に、かわいい動作をするモーションや顔文字の表情付き液晶なんてものを付けたんですか。

 さらに言えば、やられる瞬間に悲鳴や断末魔を上げる特別機能まで」

 

「でも、そっちの方が可愛いだろ?

 人間相手なら、油断も誘えるし」

 

「かわいく作ったのに、壊すんですね。

 わざわざ今回は、自動攻撃機能を止めてまでして」

 

「耐久試験も兼ねてるからね。

 それに、せっかく悲鳴ややられモーションを作ったから、見せてあげるべきだろ。

 投稿的に考えて」

 

「……ご主人様が、ちょっと変人でも、私はちゃんとご主人様を正しい道に引き戻してあげます!!

 むしろ、これが私がご主人様のもとへ来た理由だった!?」

 

なんか、生意気なことを言っているコノミの額にデコピンを一つ入れる。

チャンネルに沸いた荒しをチャンネルから締め出しつつ、改めて建物の内部を確認する。

 

建物の内部は基本驚くほどボロボロである。

が、それはあくまで表面上の話であり、戦闘用自動機械やドローンが暴れまくったのに建物としての基盤はみじんも問題ない。

外壁や柱、さらには床下にはおそらく特殊合金が仕込んであるようだ。

立地は現在は十三地区の一部だが、元万国通の一部。

周囲には無数の危険地帯があり、アクセスは最悪。

更には周囲の地下道からは、定期的に殺人殺アンドロイド誘拐自動機械が無数に湧いてくるそうだ。

 

「……どう考えても地雷物件だよな、ここ」

 

「これが事故物件、というやつですね!」

 

多分、今なお事件が起き続けているからもっと悪い。

この建物こそが、今回のコノミ誘拐騒動で自分がチャレンジャーギルドから押し付けられ…いや、渡された物件であった。

 

「う~~ん、で、どうしようかこの建物」

 

「いや、どうしようも何も、こんな危険な建物は、さっさと売り払ったらいいのではないんでしょうか?」

 

「こんな危険な場所、欲しがる人が他にいると思う?」

 

「……いないでしょうねぇ」

 

「さらに言えば、立地の関係上、この土地を十三地区外部へと転売することは禁止されているという条件付きで」

 

「もっと条件厳しくなってますね」

 

「そのうえで、この建物を買い取ったらある程度の管理責任……つまりはこの無数に湧いてくる殺人自動機械の被害を何とか食い止めなきゃいけないのに?」

 

「……ご主人様、もしかして十三地区のギルドから嫌われたりしてませんか?

 もしいやなら、ちゃんと断った方がいいと思いますよ?」

 

コノミが割と真剣にこちらを心配してくれるのが、少しこそばゆい。

まぁ、コノミの言いたい事もわかるがこの報酬は半分こちらが意図してもらったものだなのだ。

要するにほかの人に渡すには危険すぎるし、物件としてまず過ぎるが、それでも立地的に十三地区の外部の人には渡せない。

ここはそういう大事な場所であるのだ。

だからこそ、この土地を任されるということは、それだけでチャレンジャーギルドや十三地区からの貢献度が上がるのだ。

最悪この土地と建物さえきっちり管理できれば、もしチャレンジャーをやめる羽目になっても将来安泰定住確定。

そういった物件だ。

すくなくとも、目の前にいるコノミよりは、厄度が低いといえば、この土地の安全さが分かる…いや、やっぱりどっちもどっちだわ。

 

「でも、代わりに報酬や補助金自体はチャレンジャーギルドから、そこそこもらってるから。

 大丈夫大丈夫」

 

「む~、本当ですか?」

 

「すくなくとも、俺のチャンネル利益に補助金を追加すれば、それだけで出費がほとんどかからず、貢献度が稼げる程度の問題だからな」

 

「えぇ!ご主人様のチャンネルの利益だけで?

 それは、格安ですね!」

 

ラインを超えた発言をするコノミに思わずガチ目のチョップを食らわす。

が、残念ながらこいつは仮にも高性能アンドロイドなため、そんなもんで傷付くわけもなし。

むしろ、かまってもらってうれしそうのか、いい笑顔をこちらに向けてくる始末だ。

 

「でも、多少は出費がかかるなら……。

 そうだ!ここの整備費用は私のチャンネル利益からとってください!

 そもそも今回の騒動は私の身の上が問題なので、それが少しでも償えれば……」

 

「え、やだ」

 

「やだ!?!?」

 

自分の発言にコノミはしょんぼりしつつも恨めしい表情で、こちらをにらみつけてくる。

が、こちらも、主人としてのプライドや、先輩配信者として、コノミに金の無心をするわけにいかないのである。

 

「もし、そこまで金に困るほどの出費なら、おとなしくギルドやチアから金を借りることにするわ。

 どちらにも貸しはたっぷり作ってるからな。悪評やら貢献度が下がるかもしれんが、いざというときはそっちに頼む」

 

「ご主人様~、そんなに私って頼りないですか?

 私の事がそんなに嫌いですか?」

 

「いや、別に嫌いじゃない。

 でも、精神年齢赤ちゃんに金を借りるのは一大人としてねぇ…」

 

「ひどいですよ、ご主人様!

 こう見えてもコノミは立派なレディです!

 なんなら、手を出してくれてもいいんですよ?」

 

「っは」

 

「鼻で笑われた!?」

 

こちらの反応に、肩をゆすって抗議してくるコノミ。

やめてくれコノミ、君は人間ではなくアンドロイドなのだ。

その攻撃は、君にとってはじゃれつきなのだろうが、こちらからは割と大ダメージを食らってるぞ。

普通のアンドロイドなら、即修理工場行という名のアンドロイド病院行き案件だぞ

 

「それにこの建物に関しては、ただ管理するだけではなく、ちゃんと経営を黒字に持っていく予定はあるからな」

 

「へぇ!それってどんな作戦ですか?」

 

「そう!ここの建物には定期的に危険な自動機械が出てくるが分かってるからな!

 ならば、逆にそれを利用して、定期的に自作の自動機械と野良自動機械の壊しあいを定期配信する!

 それで、あっという間に人気コンテンツ間違いなしだな!」

 

「……ご主人様、それで作るドローンや自動機械はどんなので?」

 

「え?大体今回みたいなドローンや自動機械とかかな」

 

「つまりは、かわいい表情差分や悲鳴機能や、ビジュアル、その辺にもこだわりを入れたのでですか」

 

「当り前だろ」

 

「とりあえず、炎上するからやめてください」

 

「!!」

 

かくして、コノミの強い否定にあい、その上チャンネルの方でもアンケートを使って提案してみたものの結果は反対がほとんどであった。

結果としてこの建物を自動機械同士の死のバトルフィールドにする計画は頓挫してしまったのでした。

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