サイバーだけどパンクでなし―211×―ルームランナーズ   作:どくいも

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地獄の様な仕事環境

 

「3、2、1、ファイア!」

 

重めの銃声と共に、銃弾が発射される。

標的である強化ガラスに穴を開け、その先にあるマネキンに命中。

そのマネキンの頭にも穴を開け、さらにその先にある部屋の壁に命中。

そこで弾は止まったが、止まると共に強い光と音、さらには周囲に無数の電気の帯が走った。

 

「あー…すまないッス。

 思ったより、この弾の貫通力が高すぎたみたいッスね」

 

保護ゴーグルを外しつつ、その弾を放ったアンドロイドが声を上げる。

穴の空いた壁からは、今なお煙とわずかなイオン臭が漂っている。

 

「……まさか、本当にこれほどの威力が出るとはねぇ」

 

「だから言っただろ?単発撃ちだと貫通力が上がるって」

 

試射結果に翡翠は驚いているが、こちらとしては予想通りである。

何故ならこのサブマシンガンとその弾は、対装甲自動機械向けの装備なのだ。

強化防弾ガラス程度で弾が止められても困るのだ。

 

「でも、こんな軽くて扱いやすすぎるのに、この威力はやばくないっスか?

 正直、私はそこまでパワーのないアンドロイドっスが、それでも手ブレ無しでこの威力はやばいっスネェ!」

 

その銃を持ったアンドロイドが興奮気味にこちらに話しかけてくる。

こちらも自分の作ったものが褒められ、なかなかに気分が良い。

 

「一応、その銃は誰でも使えるをコンセプトに作ったからな。

 それこそ戦闘用アンドロイドだけではなく、一般アンドロイドも。

 もちろんサイボーグも問題なく使え、なんならほぼ無改造の一般人の子供でも問題なく発砲できるのが目標だからな」

 

そうだ。この銃は威力や命中精度はもとより、その最大の利点はその扱いやすさだ。

最適化された設計に、軽くも丈夫な構造。

その上、整備性まで上げているのだ。

それこそ、もし今までにまともに銃を握ったことがない人でも、これ一つで立派に自動機械相手に戦える。

そんな武器を目指したのだ。

 

「いやいや、流石にリロードの仕方もわからない人間の子供がこのサブマシンガンを持てちゃいけないと思うっス。

 銃を撃つのは私達戦闘アンドロイドの仕事っすから」

 

最も、自分の銃のコンセプトに、このアンドロイドが苦笑しつつそう反論されてしまった。

まあ、確かに戦闘のために生み出されたと言っても過言でもない彼女にとって、誰でも戦えるやら、人間の子供も戦えるなんてのはあまり賛同しにくい武器コンセプトかもしれない。

でもまあ、そう言うのを抜きにしても、このサブマシンガンはなかなかいいものに仕上がったと言う自負があった。

 

「でも、見た目だけなら君らだって子供じゃん。

 見た目は美しく、かわいく、性格も愛嬌があり話していて楽しい。

 なのに銃を持てばそれを使いこなす、高速思考で戦場を支配する、戦いのエリート。

見た目の良さと強さを併せ持つ、さすが高性能戦闘用アンドロイドって感じだな」

 

「えへへへへ♪

 も、もしかして、私、口説かれてるっすか?」

 

「どうだろうな?

 それよりも、結局この銃の改良点とか直して欲しい点はあるか?

 個人的には、この部分にグリップをつけた方が使いやすくなると思ってるんだが」

 

このアンドロイドはかなり銃に詳しいそうなので、より詳しいことを尋ねてみる。

具体的に言えば、現場の意見やアンドロイドとしての銃の感想を聞きたいし。

 

「ちょっ、ちょっと顔が近、近…」

 

「ん?嫌だったか?」

 

 「い、いや!も、問題はないっす!

 で、でもこれは……、いけないッス、私は宝石の庭所属なのに、それなのに……。

 あ!で、でも、よく考えればココは恋愛自体は自由だったような?

 つ、つまりこの気持ちもわんちゃん合法で……!」

 

「……ごほん!!」

 

「ぴゃ、ぴゃぁ!な、なんでもありません!

 ごめんなさい!」

 

かくして、私はこのアンドロイドと楽しく、銃の使い心地や改良点について、情報交換していたのに、彼女の主人である翡翠によって止められてしまった。

 

「はいはい!あなたの銃が立派なのはわかったから。

 さっさと本格交渉に入るわよ」

 

「ひ、翡翠様!そんなご無体な〜!

 あ、後イザム様、これが私の専用電脳チャットのアドレスです!

 い、いつでもいいので連絡してください!」

 

名残惜しくも、翡翠に連れられ、この銃持ちアンドロイドと離れさせられてしまったのであった。

 

 

そして、場所は移り、いつもの談話室。

 

「確かにあなたの商品を疑ったのは謝るわよ。

 でも、うちの娘を勝手に口説くのはやめてくれないかしら?」

 

何故かやや不機嫌な翡翠に、そのように文句を言われる。

こちらとしては、別にそのようなつもりはなかったため反論したがどうやら今回はそう言う意味ではないらしい。

 

「あのね?

 あの娘は、見た目は良くても戦闘用アンドロイドなのよ?

 それなのにあんなに距離感の近い異性に詰められると色々勘違いするかもしれないじゃない」

 

一瞬でも何言ってんだこいつとも思ったがどうやら翡翠の表情から嘘をついていないのが伝わって来た。

いつから、もしやこの世界は貞操逆転世界の可能性がワンチャン?

 

「馬鹿なこと言ってないでさっさと本交渉に入らせてもらうわよ」

 

あっはい。

 

「それにしても、あなたがあの地雷物件で工場作ったから一体何の暗喩かと思ったけど……。

 まさか本当にまともな弾と銃を持ってくるとはね」

 

彼女はそう言いながら、今回自分がココへと持って来た商品。

サブマシンガンの【サンダークラウド】とその銃弾【サンダーボルト】。

これらは、件の事故物件から帰ってきた後あそこを有効活用して生まれたものだ。

要するに、あそこに無限に暴走自動機械がわくのなら、それらを素材に分解し、商品を作る工場をその場に作ればいいじゃないという理論だ。

 

「それにチャレンジャー業界やこちらの伝手的にも銃はメジャーで売りやすい商品だからな。

 このサイサカだと銃程度、学校に通う学生でも持ってるメジャーな護身具だ。

 それこそ業界人なら最低限のマナーと言っても問題ないくらいには」

 

でもよく考えたら、懐に銃を忍ばせるのがマナーな世界とか、割と末期ではあるな。

どんな世紀末だ。

 

「流石に赤子のおしゃぶりは、強化ガラス超えて合金装甲を貫いたりはしないわよ。

 その言い訳をしたいなら、もっと普通の銃を。

 せめて、サイボーグの皮膚を貫かないレベルの銃を作ってから言いなさい」

 

「大丈夫、それなら、この銃には安全な空気銃モードがあるから」

 

「威力は?」

 

「……アンドロイドなら、そこまで問題ないはず」

 

「だめそうね、あとでチェックさせてもらうわ」

 

やっべ、そっちのモードはチートで本能的につけた機能だから、詳しい機能を聞かれてもうまく答えられないぞ。

後で言い訳を考えておかなきゃ。

 

「ところでそれよりも、一番大事なことを聞きたいんだけど……」

 

「あ~、その、銃の機構についてか?

 それについては……」

 

「いや、それを聞いたら流石に技術盗用になっちゃうでしょ。

 そういうのじゃないわよ」

 

一瞬一番聞かれたくない部分が根掘り葉掘り、聞かれるかと身構えたが、そうやら話はそうではないらしい。

では何かと聞き返すと、彼女はこう答えた。

 

「……で、工場の中身、いや、中で雇っている人や会社環境を知りたいのだけど?」

 

「あ~…そっちかぁ」

 

だが、それに続いてきた翡翠の質問もそこまでこちらにとっては、そこまでありがたくないものであった。

 

「こちら一応アンドロイド人権派よ?

 確かにあなたがこの超短期間で、危険地帯に工場を作れたのも、そこの商品に問題がないのはわかった。

 でも、あんな危険地帯に突然工場を建設して、なおかつそこを手元から外しても安全を確保し続けるなんて、どんな手品を使ったのかしら?

それこそ、一般人ならアンドロイドを使いつぶすぐらいの選択肢しか出ない程度には」

 

「でも、言うてアンドロイドを雇うのも安くないぞ?

 あそこを鎮圧できるレベルのアンドロイドを一から全部購入でそろえるとなると、工場を新しく建てるよりも金がかかるだろ」

 

「でも、長期的に見れば、それをやっても十分ペイが取れる。

 そう、今のあなたほどのコネクションがあれば、ね」

 

翡翠は一瞬こちらを強い眼光でにらむが、すぐに優しい目に戻った。

 

「……まぁ、でもなんだかんだ、あなたはそんなことする人じゃないわよね。

 その程度のことは十分にわかってるわ。

 でも、もしあなたがこれから販路を広げていくのなら、そんな悪評を立てる輩絶対一人や二人出てくるから」

 

「えぇ~、あんまり販路を広げるつもりはないんだが」

 

「それは無理よ。そもそも私に売り込みに来た時点で、今の私の取引先からは絶対にやっかみを受けるし。

 あなたはすでに、光王学校にもこの銃を売り込んだのでしょう?

 なら、もう遅かれ早かれよ」

 

翡翠の言うことはもっともであり、同時に私はこの商売の厳しさをちょっと甘く見ていたといわざる得ない。

そもそもだ、今回私がこれらの銃を売るのはあくまで、十三地区内部の知り合い限定のつもりだったのだ。

それでもまさか、悪いうわさが出てしまうとは……。

 

「なぁ、翡翠。

 お前なら、そういう根も葉もないうわさなら、問題なくもみ消せるんじゃないか?」

 

「できるにはできるけど、それだってあなたがどんな工場を運営しているかを見なきゃ。

 私も嘘かどうかなんて判定できないでしょ」

 

もっともである。

 

「というわけで、いいからさっさと観念して、件の工場がどんな工場なのか。

 せめてその実物を私の眼に見せてほしいわ。

 大丈夫、アンドロイド以外の多少の悪事ならちゃんと見逃してあげるから」

 

それに関しては問題ないのだが……

 

「でもまぁ、先に言っておく。

 見ても引くなよ」

 

「え」

 

 

◆◇◆◇

 

 

かくして、その後現れるは元超厄物件。

現在は兵器工場。

かつてはただ頑丈なだけのビルだったそこは、外装を含めかなり一新され、上にも下にも拡張済み。

もちろん数か月前は自動機械がはびこるだけの危険地帯だったお外までは受付やガードマンがいる立派な工場兼会社に!

そう、そこだけを聞けばここは、問題ない優良企業。

会社と工場一体型の、新しい工場に過ぎない。

過ぎないはずなのだが……。

 

 

 

「いらっしゃいませ、ご主人様♪お嬢様♪

 本日はどのようなご用件ですか」

 

「ね~ね~、ご主人様ぁ。

 そろそろ私達にも、メイドとしてのお仕事をさせてくださいよぉ。

 みてみて!そのために、お茶会の作法プログラムを入れたんですから!」

 

「うげっ、きち…いや、雇い主か。

 す、す、す、すまんが、今回はあの治験をやらないぞ!

 こ、これ以上俺自身が壊されるのはまっぴらだからな!」

 

「俺は男俺は男俺は男俺は男…」

 

「まだそんなこと言ってるの?

 もう借金を返す当てもないんだし、おとなしく体に慣れちゃいましょう。

 この体も慣れると楽しいわよ~♪」

 

「必殺、メイド・ブラスター!!」

 

「すごい!無駄にエネルギー弾発射機能付きの体にしてもらってる!

 ……でも、その料金があれば、元の体に戻れるのでは?」

 

「いや、この体も高性能だし、もういいかなって」

 

「それな」

 

なんと、その工場には無数の(外見は)メイドアンドロイドのサイボーグのパラダイスが!

そして、そんな個性豊かなメイドに囲まれつつ、その歓待を受けている翡翠からは、ポツリとこんなことを言われた。

 

「……とりあえず、このメイド服も商品として売ってくれない?

 言い値で買うから」

 

さもあらん。

 

 

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