サイバーだけどパンクでなし―211×―ルームランナーズ   作:どくいも

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ゴハッチュウ!

 

「ほい、これが今月の納品分だな」

 

「わ~~!!来た来た!

 ほんとに、本当におニューのメイド服だぁ!」

 

「防弾、防爆、防電!

 これなら戦闘に着ていっても問題なさそうじゃのう」

 

「あ~、いいなぁ、戦闘のエリート部隊は。

 ねぇねぇ、このメイド服には農業用のとかないの?

 着たらそれだけで、植物の発育がよくなるとか」

 

「いや、先に武器の確認をしろよ」

 

さて、宝石の庭と光王王学校との取引開始後。

あのあと、こちらの工場経営はおおむねうまくいっており、商品も無事売りさばけていた。

今の自分の工場は自動機械撃破とそれのスクラップ分解、さらにはその加工を行っているわけだが、その生産量や出荷量はおおむね無問題。

いくつかの備蓄を作りつつも、おおむね黒字に経営できているのであった。

 

「武器に関しては、おぬしたちを信用しているからの。

 それに今は弾の一発でも無駄にはしたくない状態じゃからな」

 

「あれ?もしかして何か抗戦があったとか?

 それで何か弾が足りなくなったとか……」

 

「いや、ちがうちがう。

 今は特にどこかと争ったりはしておらぬ。

 じゃが、前回のコノミ救出作戦あったじゃろう?

 実はあの時、割とどこの組も無茶をしていたようでな……」

 

「え?でも、死者はほとんど出ていないって聞いたぞ?」

 

「死者はほとんど出てはおらぬ、そこは間違いない。

 が、それ以外いろいろと面倒でなぁ…」

 

ジーの話を詳しく聞くと、どうやら今の十三地区は前回の抗争以降、それとない武器不足に陥っているようだ。

それこそ、今すぐに急を有するほどとは言わないが、一部の金属製品やサイボーグパーツがほんのりと値上がりする程度には、問題が起きているらしい。

 

「う~~ん、確かに日常生活でほんのりと消耗品とかの値段が上がっている気がしなくもないが……。

 個人的にはそこまで感じないかな」

 

「聞くところお主は自給自足しておるから、関係ないかもしれんが、割と大手の組じゃとでかい問題じゃぞ?

 特に銃弾の類は十三区内部での地区内生産が限定的じゃからのぅ」

 

聞くところによると、この微妙に武器が足りない問題はそれこそ暴動が起きたりするほどではないらしい。

が、十三地区の奥様の井戸端会議や上位のチャレンジャーの間で愚痴が出る程度には広まっている話題ではあるそうだ。

でも、流石に井戸端会議で銃や弾丸の相場を話す人妻集団とか、世も末感が半端ないな。

 

「でもまぁ、だからと言ってうちに武器生産の声の嘆願とか、お願いが来たりとかはなかったけどな」

 

「そりゃそうじゃろ。

 ワシらはお主を信用しているから問題ないが、普通は作ってまだ1年もたっていない工場の銃や弾なんて、安全や信用度で買う気がおきんからのう!

 学校のほうはどうやったかは知らんが、少なくとも主人である翡翠様が買うといわなければワシらだって、お主から格安高品質だからと言って、銃器を買おうなんて思わんからな」

 

言われてみればそうである。

特に銃弾や弾は自分の命を預ける、大事な武器なのだ。

だからこそ多少の値段や性能の低さがあっても、それに安全性や信頼がプラスされていれば後者を選ぶのは必然である。

まぁ、それ以上に今自分が販売している銃器やらの兵器はそもそも十三区内限定とはいえほとんど宣伝していない、あくまで持ち込み含めた受注販売だという点が大きいけどな。

 

「ま、それでもわしらはおぬしらを信用しているから、これからもばっちり銃器含めて、おぬしの工場の商品はどんどん買わせてもらうつもりだがな。

 とくに、メイド服とかメイド服とか」

 

「銃器のほうはまだいいけど、メイド服はあんまり主力商品じゃないんだよなぁ。

 そもそもそこまで売る気ないんだけど」

 

なぜかジーさんもメイド服を手に取り、こちらに笑顔を向けてくる。

がこちらとしては、あくまでメイド服は翡翠に頼まれたが故の銃器のおまけ商品。

まさか、銃器よりそっちの需要が高いとは、いろんな意味で予想外である。

 

「えぇ~~!!このメイド服もっと売ってくださいよ~!!

 そうだそうだ!」

 

「そうだそうだ!私たち戦闘アンドロイドもおしゃれしたい!

 というか、バトルスーツ対応のメイド服とか、こういうのが欲しかった感が半端ないんですけど!

 これって個人用に予約はできませんか?」

 

「費用じゃなくて個人用で、自費で買うから!!

 相場の3倍くらいなら出すからさ~!!お願いお願い!」

 

しかしながら、この宝石の庭にいる無数のアンドロイドから詰められ懇願されてしまう。

流石にこれほどの大量のアンドロイドのお願いをむげにすることもできず、結局次回もメイド服を増産製造することが決定してしまったのでしたとさ。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「なんで自動機械から、布地がドロップしないんだろうか?」

 

「流石にそれは、世迷い事が過ぎますわよご主人様」

 

さて、場所は変わってメイド工場(仮)。

そこで現在私は、いくつかの作業機械のメンテナンスを行っていた。

 

「でもさぁ、宝石の庭は予想通りだが、まさか光王学校でもメイド服入荷の搬入増加を頼まれるとは思わないじゃん?

 あそこは普通に学生服だし、制服での登校ルールがあるじゃん?

 なのに、メイド服を頼む流れになるとは思わないじゃん」

 

「一応、アンケートのお手紙では、【生徒会の一部メンバー】やら【保護者の要望】とか。

 なんなら、【学生服の一種として登録してくれたら、補助金で買える戦闘服としてお得でいいよね】みたいな複合的な理由だそうです」

 

工場管理人代行のメイドアンドロイドがそう報告してくれる。

個人的にはこのメイド服は、あくまでこの工場内の従業員の作業着としても使える私服程度に増産したつもりだが、どうやらこの服自体の評判は思ったよりも良すぎたようだ。

一応ゲーム内時代でのメイド服は、【ただの中性能なお手軽製作防弾チョッキ+α】

であり、特徴として【普通に防弾チョッキを売るよりも高く売れるレシピ】程度の価値しかなかったが、やはりゲーム時代と現実ではそれなり以上に違うというなのだろう。

もしこの世界がいまだ完全にゲームのようなルールで成り立っており、それこそアイテムを作れば作るだけすぐに売れる世界なら、今の状況はむしろありがたい。

ボーナスタイムになっていたかもしれないだろう。

 

「でもさぁ、野性の自動機械って、あいつら別に布地はドロップしないんだよなぁ。

 しかも、メイド服のための布地はそれなりに、高価な布を使わなきゃいけない上に、加工も必要だし」

 

「別にその辺の安物の布地じゃダメなんですか?」

 

「だめ、その辺手を抜くとメイド服の防弾性能とか一通り全部落ちるから」

 

「あらら……」

 

そうなのだ。

なんとこのメイド服は、この工場で作られる商品でこそあるが、このメイド服を作るためには、わざわざ外部から布を入荷してくる必要があるのだ。

幸い、この工場でつくられる銃や弾などの兵器はこの工場周辺で発生する自動機械を破壊し分解すれば大体事足りる。

が、このメイド服だけはそうもいかない。

このメイド服を作るにはわざわざこの工場区画の外部の反物屋へと行き、布類を購入しなければならないのだ。

 

「わざわざ反物を購入云々するくらいなら、自動機械狩りをもっと活発にさせて、祷やら武器を増産したほうが管理が楽なのになぁ」

 

「なら注文を断られてみれば?」

 

「でも、せっかくできたお得意様を無碍にするのは、違う気がしてねぇ。

 ……それにメイド服が一通り売り終われば、今度は武器のほうももっと買ってくれるだろうから……」

 

「ご主人様は儲けたいのですか?それとも、別に儲けたくないのですか?

 結局、どちらなんですか?」

 

「別に命を懸けるほどではないし、目立って危険な目に合うのはまっぴら。

 が、儲けられるなら儲けたいし、貯金は多ければ多いほどいい。

 大体人間ってそんなもんじゃない?」

 

「……まぁ、それもそうですか」

 

管理人代行アンドロイドが溜息を吐きながら、自分に賛同してくれた。

かくして、私は工場内に複数のメイド服作成機を作りつつ、日々銃器とともにメイド服を作成。

そのために、外部から淡々と反物を仕入れつつ、それをメイド服に変換する作業を繰り返すのでした。

 

 

◆◇◆◇

 

 

なお、数日後。

 

 

「す、すいません!

 輸送中のメイド服用の反物が、どこかのグループによって横取りされてしまいました!

 なお、それとともに、わが社に脅迫メールが届きました。」

 

「は????」

 

 

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