パイロット・アーカイブ   作:QAAM_M1911

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その名はスレイヴ

「DE、クーパーの援護に行けるか!?」

『現段階では不可能、周囲の掃討を優先して下さい』

「チィッ、今向かえるのは俺だけだってのに!レーザーコアスタンバイ!」

 

愛機のDEと共に敵陣のど真ん中で孤立した。周囲のIMCタイタンやらがそこまで強くないのが救い、レーザーコアで全てを薙ぎ倒す。残ったリーパーや歩兵を粗方スプリッターライフルで蹴散らし、後からノコノコとやってきたリージョン級のプレデターキャノンをヴォーテックスシールドにより跳ね返す。

 

「DE、アークの状態は?」

『シャーシ番号BT-7274よりデータ受信、フォールド・ウェポンは発射体制。』

「……引き上げ時か。ドロップシップ、こちらDE-1911のスレイヴ!誰でも良いから迎えに来れるか!?」

『こちら第6部隊の2番ドロップシップ!迎えに行ける!ランデブーポイントを確認、到着まで120!』

 

運は悪くなさそうだ。周辺にタイタンの反応はなし、歩兵こそ居るが既に逃げ出している。

 

「こちらスレイヴ。サラ司令聞こえるか!」

『こちらサラ、どうしたの?』

「DEのシャーシの回収は出来そうか?」

『星が吹っ飛ぶから無理ね、新造するしかないわ。でもデータコアがあれば大丈夫、シアキットを摘出してドロップシップへ!』

「了解した。」

 

タイタンから降り、DEが武装を仕舞ってからこちらに身を屈める。

 

『パイロット、ご武運を。』

「もう戦いは終わりだがな。ほら、帰るぞ。後の事はクーパーに任せよう。」

 

シアキットをシャーシから外し、小脇に抱える。愛銃のLスターを構えて歩兵隊の警戒をすること30秒。ドロップシップが到着した。

 

「早かったな!」

「飛ばしてきたのさ!さぁ大尉早く!」

 

ジップラインが垂れ、それに捕まる。背後から敵タイタンの反応、だがドロップシップにはシールドがある。歩兵隊のチャージライフルが殺到し、一度身を隠すトーン級。

 

「よし行くぞ……何だ!?」

 

突如として起こった大爆発。フォールドウェポンを破壊した余波か。

 

「巻き込まれちまうぞ!」

「ジャンプドライブを、早く!」

「一か八か……行くぞ!!」

 

間に合ったのか間に合わなかったのか、星が割れてしまう程の衝撃波はなしにしろ船内は大荒れだ。次の瞬間、通常よりも長い違和感を感じた。

 

「ジャンプドライブの暴走……クソッ!」

 

次の瞬間、船内がひしゃげた。皆が壁に大きく叩きつけられ、俺以外が壁と壁に挟まれミンチになった。ジャンプキットの緊急動作で生き残れたが、俺も事故の衝撃で叩きつけられたため、今は動けそうにない。

 

「どこの惑星に墜落した……?」

 

緊急回復用の興奮剤でどうにか回復し、何とか潰れていないコックピットに入る。どうもジャンプドライブの不具合で地面に後方から墜落した様だ。それも速度が下方向に加算されていたらしい、通りで頑丈なドロップシップが破壊される訳だ。

 

「こちら第6部隊2番ドロップシップのスレイヴ!ミリシア、誰でも良い!応答願う!」

 

コックピットは無事ではあるが、ガラスが操縦士の各所に突き刺さり出血がひどい。俺では助けられそうもない……というより、もう死んでいる。機材はいくらか生きてはいる、特にタイタンコアを起動出来る強化バッテリーが生きているのはありがたい。シアキットは……ここに置いて行く他ない。緊急用のデータナイフ、スマートピストルを仕舞い、フル装備で周囲の探索に入る。

 

……前に、DEの起動だ。コアをヘルメットの左耳部分に嵌めて、強化バッテリーと接続する。俺は潜入してシステムの拿捕などの破壊工作をする関係上、DEの直接的な援護が必要不可欠である。その為コアを持って潜入、敵陣地近くでタイタンフォールするのが俺の戦い方の基本だ。ヘルメットを改造してあるのもそれが理由になる。

 

「DE、面倒な事が起きた。ちょっと色々調べる必要がある。」

『了解。マッピングシステム……機能不可能。考慮される可能性は二つ。アークの影響の可能性、フロンティアの惑星でない可能性。』

「ジャンプドライブの不具合が起こった、後者だろうな。」

『私のコアは当時スリープ状態だったため、アークの影響はなし。ドロップシップの機材は?』

「割と生きている、だが無線も通じない。壊れた奴も墜落による物理的な破損だ。」

『了解。ここをフロンティア外の惑星と断定。』

 

と、なると俺は孤立無援である。幸いジャンプキットも破損しておらず、弾数が無限のLスターがある。敵が居たとしても生き残る事は可能だろう。

 

「DE、酸素濃度の計測は出来るか?」

『計測中……完了。凡そ20%。』

「俺が生きてるからそうだと思ったが、やはり地球やハーモニーとほぼ同じか。」

『はい、そして少量ですが硝煙等の微粒子も計測されました。』

「人が居るのか?」

『はい。また、文明レベルも高めかと。』

 

硝煙が検出されたとなると、少なく見積もって第一次世界大戦程度には文明は発達していると見ていい。俺たち程の文明レベルではないと思うが、警戒するに越した事はない。

 

「……DE、探索をしようと思う。ドロップシップの座標を記録しておいてくれ。」

『了解。気を付けて下さい。可能な限り支援はします。』

 


 

「……文明があるとは聞いていたが、これは中々。」

『結論、西暦2000年代の文明レベルです。』

「だが色々と変だ。暴徒が発生し過ぎている……というより、これが恒常化しているな。」

『また、別種動物などの特徴を備える女性が居ます。気を付けて下さい。』

「ふぅむ……どう動くか。」

『結論、Lスターの火力を調整することを推奨。』

「あまり殺すのは良くなさそうだしな。それにオーバーヒートもしにくくなる。」

 

Lスターの調整は簡単に終わる。その気になればEPG程のデカいのを見舞えるが、それだとヒューズが一発で飛ぶ。だからあまり推奨されてはいないが……威力を弱めるのであれば別だ。作業が終わると、不意にDEが俺に提案をする。

 

『……パイロット、暴徒の鎮圧をしては如何でしょうか。』

「俺が?」

『先ほど暴徒が制圧されていましたが、戦闘力としてはスペクター一個小隊と同等です。戦車や戦闘ヘリなども確認されていますが、パイロットの装備で対処可能なレベルです。』

「なら良い。チャージライフルも威力を下げるか。チャージハック最大レベル、対人戦レベルにまで下げるか?」

『旧世代の戦車であれば貫けるかと。』

「こういっちゃなんだが、無辜な人民を攻撃する暴徒が出るのを待つのは気が引けるな。」

『ですが、安全に接触するにはこれしかありません。敵の敵は味方、ではありませんがひとまず攻撃される可能性は低いかと。』

「だな、万が一撃たれたらやり返せばいい。」

 

その場で、俺はその辺で収穫した果実をかじりながら機を待った。毒なくて助かった。

 


 

キヴォトスに来て、先生に着任した初日。連邦生徒会のシャーレ部室をどうにか奪還し、シッテムの箱の開放。サンクトゥムタワーのアクセス権を修復した。濃い一日だったが、またここに暴徒が襲来してきた。

 

「もうひと頑張りしろ、という事でしょうか。」

「また来たの!?懲りない……というかなんと言うか。」

「ごめん、もうひと頑張りしてもらえるかな?」

「私も帰れませんし、やるしかありませんね。」

「治安の維持、本当に難しくなりましたね。また戦車まで居ますし……」

 

とにかくやるしかない、と思ったその時。リンの電話端末が鳴り響いた。

 

「どうしました……え?はい……分かりました。」

「何かありましたか?」

「……こんな状況で、ですが壁を走る正体不明の人物の目撃情報が多数挙がっていると。」

「壁を走る……いやいや、有り得ないでしょ!」

「ですが、報告が挙がっているのは事実。頭に入れておいて、今は戦いましょう。」

 

オフィスの入り口に部隊を展開する。戦車が居るとは言え、先ほども戦った相手だ。懸念点としては、皆の疲労か。

 

「全く……連邦生徒会長はどこに行ったのかしら、ここまで暴れられたら手の付けようがない。」

「しかも先ほどより規模が大きい。注意しながら―」

 

とその時だった。上空から敵陣に向かって蒼く光るなにかが落ちて来た。

 

「あれは……?」

 

とチナツが言った瞬間、それが爆ぜた。どうやら手榴弾の類だったようだが、感電させる手榴弾は見たことがない。更に、上空から赤い光が降り注ぎそれら一つ一つが不良生徒真っすぐに命中する。

 

「戦闘ヘリ?増援要請はしてないはず……」

「上!あれ見て!」

 

ユウカが指さす先。そこにはありえない、だが聞いた話があった。壁を走り、見たこともない銃を構え、射撃ほぼ全てを正確に当てる技術。素人目でも分かる、あれは相当の精鋭だ。

 

「な、なに!?」

「う、撃つんだ!とにかく撃って撃って撃ちまくって!」

 

こちらを無視してまで弾幕を向ける、だが三次元の戦いをしてる奴に弾がそう簡単に当たるはずもない。腕から伸ばした鉤で飛ぶ方向をずらし、挙句の果てにはここの玄関口に飛び降りて来た。

 

「なっ」

「御託はいい!あいつらを倒すのが先決だろう!」

 

声からして男のようだ。懐から出した円状の物体を出すと、そこからバリアーの様な壁が出現し、射撃を防いでくれる。だがこちらからの弾は貫通する様だ。

 

「今はいい、協力して戦うんだ!」

「っ!」

 

先ほどの射撃で殆どの不良生徒は沈黙している。残ったのは戦車とその随伴らしき生徒数名。勝つなら今仕掛けるのが一番だ。

 

「あの戦車は壊してもいいやつか?」

「盗品だから回収したいのは山々ですけど、状況が状況ですから。」

「出来れば無傷で回収したい、か。分かった。歩兵をやってくれ。」

「え、ちょっと!?」

 

そう言うとあの男はバリアーを突き抜けて戦車の前に躍り出た。無論戦車の主砲が火を噴く。だが、それは外れた。とは言え榴弾だ、流石に怪我している筈……だったのだが。

 

「えっ、あの爆風の中で身動ぎ一つしてない?」

「流石にあれを喰らったら私たちも怪我しますが……」

「……怪我だけって、ここの生徒たちどうなってんの?」

 

それはともかくだが、何故かそのまま男は直進し続ける。死の恐怖が無いのか、と思ったが突如男の姿が消えた。

 

「どこに行った!?」

「あ……戦車の上です!」

 

見れば男が戦車の座席に先ほどの銃を打ち込んで乗員を引きずり出していた。だがあの距離まで行くには時間がかかるはず。周囲の随伴歩兵はこちらが処理したが、それにしても消えた位置から一気に近付くのは無理がある。

 

「ほら、終わったぞ。」

 

無傷で戦車を取り返した男。助けて貰ったとは言え、警戒する他ない。既にユウカとスズミは男に銃を向けている。

 

「武器を置いてくれ。連行、というか尋問しなきゃならん。」

「……まぁそうだろうな。しゃーない、俺も路頭に迷ってたところだ。構わん、があまり触るなよ。」

 

男はすんなりと手に持っていた銃を置いた。意外、といえば意外だが敵対している訳でもなくこちらに加勢してくれたのだ。そうするのも妥当かもしれない。

 

「……チナツ、ホルスターの銃とナイフも取ってくれ。」

「はい。」

 

ホルスターに入っていたのは……これまた見たことのないリボルバーとセミオートピストルだ。ナイフの方は特に仕込みはなさそうだ。

 

「で、俺はどうすればいい?このまま腕上げっぱなしはちと辛いんだが。」

「では、この件はとりあえずシャーレ預かりとします。尋問は……仕方ありません、トリニティ自警団から誰か一人護衛を捻出して頂けませんか?」

「……適当で良いか。明日来るように伝えます。」

「じゃ、今度こそおしまいって事でいいのかな?」

「……ですが一応彼を拘束しておいた方が。」

「別に良いんじゃないかな、味方してくれてたしさ。」

「……軟禁という形に留めておきます。」

「急に現れて敵を圧倒したとなれば警戒もされる。俺は構わんよ。」

「…分かった。じゃ、皆お疲れ様!」

 

俺はこうして、とんでもなく濃密な一日を終える事が出来た。

 

 

 

 

『……パイロット、よろしかったのですか?』

「構わんさ、どうせすぐに戻ってくる。」

『あのウィングマン・エリートは……』

「確かに俺の大切なものだ。でもな、そうでなきゃここで信用は勝ち取れない。ここがどこだか分からない、だからこそこうして現地民との信頼関係を築くのが一番安全だ。」

『了解。プロトコル2を変更、現地民の信頼を得ること。信頼とは、人柄や考え方、立ち振る舞いなどに重きを置いた評価のこと。シャーレへの加入を推奨します。』

「待て待て、まだ慌てる時間じゃない。まずはこの惑星の状況を探る事からだな……」

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