「こんなところでで悪いが、一旦俺シャーレに戻る。」
「マジか、何でだ?」
「シャーレの方が色々とセキュリティの問題やら閲覧できるデータベースの関係上DEが活躍できる。皆、先生の事頼んだぜ?」
「分かった。先生の事、護る。」
「女の子に守られるってのは、少々悔しいが仕方ねぇな。君らほど頑丈な身体してねぇし、銃もまともに握れない。」
戦場ではプライドもへったくれもない、それはシャーレに加入してから最初に兵士として先生に言った事だ。それはしっかり響いている様でなによりだ。
「じゃぁな。アロナにも色々と伝えておく、一応チャージライフルを貸し出しておくから重装甲相手の時に使え。」
「悪いな。じゃ、情報収集頼んだぜ。」
グータッチした後、俺は安く譲ってもらったバイクを飛ばしてシャーレ部室へと帰った。
『スレイヴさんおかえりなさい!どうされましたか?』
「ちょっときな臭い事案だった。情報が要る。」
『了解です、ネットワーク接続します!』
「DE、キヴォトスの裏社会の情報を洗うぞ。DEとアロナでファイアウォールの増強とVPNを頼む。俺が情報の精査をする。」
『了解。ログは取りますか?』
「無論だ。些細な情報でも持っていた方が光明に繋がる。」
アビドスが借りたという闇金業者の情報は直ぐに手に入った。だが流石にネット上に銀行内部のやり取りは残さない様だ。完全に独立したネットワークで管理されていると見て間違いない。
「……収穫はなし。いや、闇金業者の雇っている相手の情報があるだけで十分以上か。」
『襲撃をするのですか?』
「俺じゃなくて、対策委員会がな。特にシロコ。観察すれば分かるが、倫理観の無かったパイロットそっくりの性格だった。真顔で借金返済で強盗を提案する様な気がするんだよ。」
『いくらなんでも、そこまでではないんじゃないですか?』
「思い過ごしだと良いが……ん?」
パソコンの画面に見落としがないかと再び目を通した時、妙なものを見つけた。
「
『パイロット、緊急通信です。』
「誰からだ?」
『先生ですね。』
「繋げ。」
そう言うと、俺は別のネットワークで通信を傍受する。
『スレイヴ!頼みがある!』
「どうした!」
『セリカが行方不明なんだ。情報が欲しい!』
「セントラルネットワークにアクセスしろって事か。待ってろよ……」
セントラルネットワークであればアロナの防護だけで十分、DEにセリカの端末反応の消えた場所を調べさせる。目的が一つならDEの方が処理速度は断然に上だ。
「砂漠化の進んだ市街地の端……誘拐されたか!」
『クソ、マジかよ……』
「確かヘルメット団の主力が集まってただか言ってたな。けど俺が今から目的地に行くまでにバイクでも結構掛かる、今回の件は皆で解決してくれ。」
『分かった。』
通信を切り、再びネットワークの海に潜り込む。先ほどの雑魚共の記述を更に洗い出してかれこれ三時間ほど。
「……これ以上の情報がない?接点がないならどうしてここにコイツらの記述が存在する?」
『結論、情報が消去された可能性。』
『しかも、情報が完全に上書きされてます。相当知られたらマズイ事でしょうね!』
「……いや、これで繋がった。コイツら、ヘルメット団に資金援助をしてやがる。」
『パイロット、決めつけるのは時期尚早かと。』
「だが確実に手を組んでるのは確かだ。でなければまずあんな闇金業者の記録に残ってて普通に活動出来ている筈がない。それに、何かまた別の……もっと力のある奴がその援助をしている。」
『……裏社会のドン、とかでしょうか?』
「かもな。多分そろそろ向こうも終わった頃だろうし、通信を繋げるか。」
『スレイヴ!何とかなったぞ!』
「セリカの具合は?」
『流石にFlak41を喰らって、ふらついてたねー。今シロコが保健室に運んでったとこ。』
「……Flak41、対空砲だったか?」
『あのチャージライフル、凄い威力だったぜ。まさかFlakが溶けるとは思わなかった。』
「それが売りだからな。で、どうして戦車があんなチンピラ共の所に?」
『あ、それは私から説明します。入手経路は分かりませんが……あの対空砲には、キヴォトスで使用が禁止されている違法部品が使用されていました。』
違法部品、つまるところ普通には流通しない非正規部品だ。フロンティアでも似たようなものでイージスランクなんてものはある。そっちはまぁ普通の改造パーツみたいなもんだが、例えるならエイペックスプレデターズのスローンやバイパーのタイタンに使われた改造パーツみたいな代物だ。
「……いよいよ俺の情報が現実味を帯びて来たな。」
『そっちの情報はどうだ?』
「闇金業者の情報の中にヘルメット団の記述があった。何か繋がりがあると見て良いだろう。」
『……資金援助、とか?』
「まぁそれはともかくとして……明日俺もそっちに戻る。生徒たちの意見も聞きたいしな。じゃあな、お休み!」
通信を切り、俺も自室で寝ることにした。シャーレはセキュリティ万全、安心して眠れるのは本当にありがたい話だ。
「……それでは、アビドス対策委員会の定例会議を始めます。本日は先生方にもお越しいただいたのでいつもより真面目な議論が出来ると思いますが……」
「まぁそう硬くなるなよ。いつも通りに、ちょいとスパイスを加えるだけでいいさ。よろしくな。」
「さて、それで議題は?」
「はい、本日は私たちにとって重要な問題……学校の負債をどう返済するかについて具体的な議論を行います。」
「はい!はい!」
「おっ、セリカ。何かいい意見あるのか?」
「はい、黒見さん。お願いします。」
「……あのさ、まず名字で呼ぶの、まずやめない?ぎこちないんだけど……」
(あのツンケンした態度どこ行った?先生、まさか落としたか?)
(んな訳ねぇっての!)
「……とにかく!会計担当としては、我が校の財政状況は破産寸前としか言いようがないわ!このままじゃ廃校だよ、みんな分かってるよね?」
「うん、まぁね〜」
『毎月の返済額は利息分で788万円程。到底生徒5人だけで返済は追いつくものではありません。』
「そう、今までみたいな稼ぎ方じゃ限界があるわ!なんかこう、でっかく一発狙わないと!」
と言い出したセリカの提案したのはマルチ商法。というか引っ掛かってやがる。んで続いてホシノの提案したのはスクールバスの拉致による生徒数増加。それ拉致側黙ってないで第二第三のヘルメット団生み出すだけやろがい。……で、だ。
「銀行を襲うの。」
「……DE。ほら、な?」
『理解出来ません。解析してはいけないと推測。』
真顔で銀行強盗。アホっつーか論外である。DEが解析投げ出すレベルは正直言って初めてである。IMCの超複雑なな暗号でさえ6時間で解読したDEが、だ。そして……
「アイドル活動なんてどうでしょうか!」
「却下。」
「え?俺は良いと思うが……」
「お前なぁ……まさかとは思うがロリコンか?大の大人が?先生なのに?」
「やめんかい!一番クリーンだったのこれだっただけだぞ!?」
「あのう……議論が中々進まないんですけど、そろそろ結論を……」
「結論出せる意見出てねぇって!なんで俺がツッコミに回らなきゃなんねぇんだ……!」
そうして先生に決定権はいつの間にか委ねられた。無論、アイドル活動を推した先生に俺とアヤネがブチ切れる。
「……いつもふざけてばっかり!銀行強盗とかマルチ商法だとかそんなことばっかり言って!」
「部外者だが首を突っ込ませて貰った以上、真面目な話説教させて貰う……!おら先生逃げんなァ!!」
「ゲェーッ!?」
「……ったく、しゃあねぇ。エンジニア部に融通して貰って量産型進化シールドのテスターやって貰うか。それ以外に案ねぇかな……」
「あれのか?そこまで報酬出せねぇぞ俺たち?」
「売り出した金額の数%でもどうにかなる。仮にチンピラに渡ってもアークグレネードで一発。対抗手段は案外簡単って寸法だ。同時にアークグレネードも売り出せば良いしな。」
ラーメンを啜り、次の手を先生と出し合う。まぁ普通の仕事にはなるが、抗争の間に金も稼げるので悪くはない手だと思う。と、言うかここセリカのバイト先か。意外と美味いじゃないか。フロンティアのも悪くはなかったがやはり本場……で良いのかはともかくとして、気に入る程には美味い。
「さて、と。エンジニア部にも話を通す。もう試作品出来たとかほざいてるから、明日にもブツは届く筈だ。」
「変な機能ついてないと良いが。」
「祈っとけ。タイタンバッテリーも届くから電気を売ることも出来るし、金の糸口は多分にある。」
ゴーストタウンな為、電気を売れるとしたら家を出ても所有権をそのまま持っている奴ら。それと電池に入れて売るとか言う方法もあるし、行事で電気が必要な時にバッテリーと変換器持ってけばかなりコンパクトになる。それを使って金を稼ぐ、と言うのがかなり効率的な方法になるだろう。
「……ん?ありゃ誰だ?」
「この辺じゃ見ない顔だが……ま、皆が楽しそうだから良いか。」
先生はそう言うが、俺としては少し引っかかる、と言うよりありゃ傭兵の類だ。節々の行動を見ると分かるが、あの話している赤い髪の子はともかく、他の3人は明らかにアビドスの制服を見ている。成程、次の獲物はこの4人か。
「……備えあれば憂なしってやつだな。」
「どうした?」
「何でもねぇ、先戻ってるぞ。先に支払っとくぞ。」
「お、おう。」
調べ上げようか、次の敵を。己を知り敵を知れば百戦危うからず。準備をするに越した事はない。
「ってな訳で、だ。アビドス高等学校に輸送を頼むぞ。」
『はーい!しっかり希望通りの設定にしましたから、安心して下さいね!』
「あぁ、そうでなきゃ困る。この前のタバスコ銃事件とか結構洒落ならんぞ。」
とりあえず、全て上手くいったみたいだ。タイタンバッテリーも及第点、それに進化シールドも予想以上の頑丈さだ。後は輸送手段……だが、俺は運び屋を雇う事にした。
「さぁて、少し場を引っ掻き回しますか。奴らの動きってもんも少しは分かる様になるだろ。」
そう言って、俺は電話を掛けた。
「もしもし?」
『はい、便利屋68です!』
「火急の仕事を頼みたい。」
『あー、今はちょっと別の仕事がありまして』
「そのせいで金に困ってるんだろう?半日で終わり、かつ報酬は弾もう。」
何故それを知り得ているのか、と言う疑問だろうか。電話口で押し黙る。まぁ無理もないが、それでも金に困っているのなら受けざるを得ない好条件を提示するまでだ。
『…………依頼内容は?』
「ミレニアムサイエンススクールのエンジニア部より、指定区域に荷物を運んで貰いたい。報酬はそこで荷物と引き換えだ。」
『具体的には?』
「1人5万でどうだろう?」
『……20万円、か。承りました。それで、貴方の名前は?』
そう言うと、俺は偽名を使った。俺の戦友の名前、ではあるがな。
「……俺はリッパー。ランデブーポイントをそちらに送る。では、その仕事振りを拝見させて貰おう。」
尚進化シールドのレベルは青相当です。