パイロット・アーカイブ   作:QAAM_M1911

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意図せず敵に塩を送る

「……来たか。」

 

素顔のバレない様にヘルメットを被り、便利屋68の到着を確認した。どうやら向こうは依頼人が俺だと見て驚いてる様だ。

 

「待って待って!!?ああ、あれって最近噂の……」

「壁を走る変態……」

「おいおい、人を変態呼ばわりとは。」

「あははは、眉唾物とも思える戦果を次々と出しといて良く言うよ。」

「けどホントに任務はこれだけ、ですか?あ、呆気ないと言うか……」

「あぁ、これだけだ。ほら、約束の金だ。ピンで20枚、予定時刻丁度だからボーナスで5枚上乗せだ。」

「嘘!?手っ取り早く片付けた甲斐があったわ!」

「……まぁ、何にせよ多少は金欠が解決出来た、次の仕事に行きましょ。」

「あぁ、頑張れよ。」

 

そう言うと、俺は荷物を開封して全てが無傷である事を確認する。

 

「仕事の手腕は中々、こうなりゃ直ぐに戻って進化シールドを着せた方が良いな。」

『パイロット、バイクなら敵勢力の到着予想より30分は早く着けます。急ぎましょう。』

「30分、っつーか相手の統制を見る限り殆どが傭兵擬きだからだろ。何よりアビドスの高校はこの10ブロック先だぜ?すぐ戻るか。」

 

バイクに荷物を乗せて、一気にエンジンを吹かした。

 


 

「よし、お前らこれ着て臨戦体制だ。」

「えっ、どうして!?というかコレ何よ?」

「敵の襲撃がある。コイツは進化シールド、この前テスターを依頼されたアレだ。」

「どうして襲撃があると分かるんですか?」

「ちょいと、経験的にな。アヤネ、周辺警戒怠るなよ?」

「はい……あ!校舎より南20km付近で大規模な兵力を確認!」

「おいでなすった!直ぐにシールドの着用、いやその前にバッテリーで充電急げ!」

 

タイタンバッテリーで進化シールドの充電を行う。7人分の充電でも1分ほどで完了する。改めて出力お化けだと痛感する。

 

「ヘルメット団……とは考えにくい。」

「この前ラーメン屋で会ったアイツらだ。便利屋68ってのだ。」

「え……あの4人!?」

「う〜ん、日雇いの傭兵かあ。結構高いはずだから、パイロットの言ってた事が当たってるかもね〜」

「これ以上接近されるのは危険だな……全員出動だ!スレイヴも頼めるか?」

「無論だ、その為にこれの運び屋を便利屋68に依頼したんだ。奴さん動揺するぜ?」

「おっと、以外にラクな仕事になりそーな予感。」

 

油断するのはどうかとは思ったが、どうやら油断ではなく余裕が出来たらしい。なら良かった。皆を率いて、出動する。

 

「なっ……なんでリッパーがここに居るのよ!?前情報と違いすぎるじゃない!?」

「……嵌められたみたい。報酬が破格だったからちょっと怪しいと思ったけど、こっちを把握するための……」

「全く、恩知らずな奴らね!ラーメン無料で特盛にしてあげたのに。」

「あははは、その件はありがと。けどそれはそれ、これはこれ。こっちも仕事でさ?」

「公私はハッキリ区別しないと。受けた仕事はキッチリこなす。」

「そのせいで敵に塩を送っちまった訳だけどな?」

「うぐっ……」

 

そうちょっと突き刺して見るが、どうもあの社長様は人情味に溢れてる様だ。ならそこを突くまで。

 

「さて……行くとするか。指示は任せるぞ。」

『了解です!パイロット、周辺に居る下っ端の掃討をお願いします!』

「任されて。じゃな、ここは頼むぜ。」

「あ!ちょっと待ちなさい!!」

「は〜い、あなたたちの相手は私たちですよ〜!余所見してたら、足元掬われるかもですね!」

「……あっちは敵わないから無視して、こっちをやるよ。」

 

 

まぁ所詮日雇いの傭兵だ。数合わせと言うものか、あのヘルメット団と良い勝負だ。まぁ明らかなアルバイト集団であるから流石に可哀想なので痛め付けは程々、2時間は動けなくなるくらいに止める。

 

「しかしまぁ……向こうは賑わっとりますなぁ。中々骨のある奴らだ、ここまで決着がつかないとはな。」

 

アビドスの5人は相当な手練れだし、そこに進化シールドと言うバフもある上に俺から戦闘指導もちょいとしている。それに耐え抜くのは少なくともパイロットの攻撃に対応出来るくらいの腕はあるだろう。まぁ反撃とか回避とかが出来るかは別として。

 

「6時のチャイム……ん?奴ら引き上げて行きやがるな。」

『スレイヴ、聞こえるか?敵勢力の撤退を確認。』

「追撃は?」

『無駄に弾を消費するだけだ。こっちも補給が必要だしな。』

「分かった、帰投する。皆よく頑張ったな。後で反省会するぞ。」

『は〜い、分かりました!』

『それより、あの敵勢力についての情報を洗いませんと。』

「あぁ、それについてはDEが纏めてある。明日は反省会だけじゃなくデブリーフィングも、だな。」

 


 

「よぉ、お早い登校ご苦労さん。確か今日は利息返済日だったか?」

「はい。スレイヴさんもお早いですね。」

「まぁな、ちょいとその銀行員が気になってな。」

「……変な事、しないでくださいね?」

「分かってる、ここで必要以上に目を付けられるのは困るからな。」

 

アヤネが部屋の奥に入ると、俺は一緒に登校してきた先生を見る。

 

「……何かあったか?」

「いや、昨日の便利屋の子と会ってさ。」

「ほー、その様子なら襲われもしなかったみたいだが?」

「公私を区別する子だったし、仲良くしてもいいんじゃないかな?」

「ま、それはそれだが一度敵対した以上いつ寝首を掻かれてもおかしくはない。気を付けろよ。」

「それは十分に分かってる、あの殺気はもう受けたくねぇって……」

 

 

 

「全員揃った様なので始めます。まずは、2つの事案についてお話ししたいと思います。最初に、昨晩の襲撃の件です。DEさん、お願いします。」

『昨日我々を襲ったのは「便利屋68」と呼ばれるゲヘナの部活です。便利屋とは、依頼された件は何でもこなす業者になります。先日パイロットも活用しましたね。』

「おかげで進化シールドにバッテリーを安全に運べたんだ。敵に塩を送るってやつで、面白いだろ?」

『パイロットのギャグセンスは分かりませんが、部員の情報を共有します。まず、リーダーのアル。自らを社長と称している、あの赤い髪の女性です。また、その下には三名の部員が存在し、それぞれに肩書きがあるそうですが……優先度が限りなく低い為、割愛します。』

「いやぁ〜、本格的だねー」

「社長さんだったんですね☆凄いです!」

「いや、あくまで自称だしな……スレイヴはどう思う?」

「まぁ確かに本格的ではあるが所詮生徒だな。俺の戦ってた奴らは過去の依頼主が敵になってても動揺しねぇ様な奴らだったからな。ま、プロと比べちゃ世話ねぇってやつだが。」

 

いやホントにエイペックスプレデターズとは比べちゃいけないのだが。全員パイロットだし、何ならその精鋭の中でもトップだし……マジでどうやってクーパーの野郎は全員薙ぎ倒してったんだ?

 

「それで、今はアビドスのどこかのエリアに入り込んでいる様です。今朝も会いましたし……」

「ゲヘナ学園では、企業が許可されてるの?」

「それはないと思いますが……勝手に起業したのではないでしょうか?」

「あら……校則違反ってことですね。悪い子たちには見えませんでしたが……」

『反論。過去にかなりの非行を尽くしてきた様子であり、ゲヘナ学園でも問題児の扱いを受けている様子。』

「そんな危険な組織が私たちの学校を狙っているのです!もっと気を引き締めないといけません!」

「次はとっ捕まえて取り調べでもするかー。」

「はい、機会があれば是非……」

「アヤネちゃん、何かあったの?並々ならぬ恨みを感じるんだけど……」

「……いえ、特に何も。」

 

(この朴念仁というか、タラシというか、この先生は……)

⦅結論、闇討ちに注意。⦆

 

「続きまして、セリカちゃんを襲ったヘルメット団の黒幕についてです!先日の戦闘で手に入れた戦略兵器の破片を分析した結果……現在は取引されていない型番だと判明しました。」

「もう生産してないって事?」

「それをどうやって手に入れたのかしら……」

「ブラックマーケット一択だな。それ以外に入手する方法はほぼないし、チンピラ集団の活動場所としてうってつけ。DE、例の情報を。」

『了解。先ほどの便利屋68ですが、彼女らもブラックマーケットに出入りしている痕跡があります。両者の関連性を探る事を推奨します。虎穴に入らずんば虎子を得ずです。大胆に行きましょう。』

「よっし、決まりだねー。ブラックマーケットを調べてみよう。意外な手掛かりもあるかもしれないしね。」

 

実際、ブラックマーケットならアビドスが借金をしているカイザーローンの息が掛かっていると見て良い。ここを探るのは一番の近道と言える。とりあえず、調査の日程を決めて今日のところは解散となった。

 


 

「ヒャッハー!見て下さいこれ!何と!オルタネーターというSMGを作ってみたんですよ!!」

「あ!?いつの間に作ったんだよこれ!?」

 

進化シールドの評価レポートの提出をする為に再びエンジニア部を訪ねたところ、まさかのオルタネーターとご対面。オルタネーターは10mmの弾丸を二つのバレルで交互に撃つとかいう……設計者の頭が狂ったような仕組みである。まぁその性能は折り紙付き、というか数あるSMGの中でも愛用者が多いくらいには優秀ではある。

 

「10㎜も流通してますから、弾薬補給も問題なし!です!」

「夢中で気が付かなかったけど……作るのに2日徹夜してた。眠い。」

「おいおい、ウォーゲームの方はまだなのか?」

「基盤やらプログラムもかなり必要ですから、ちょっと外部にも協力してもらわないと無理ですね。今色んな所に声を掛けているんですけど、中々予定があってというところが多くて……」

「まぁ、そこはまだ待ってるさ。というか本当によく作ったなこれ……ウォーゲームのログから見て、一から作ったのか?」

「ああ、他にもエキセントリックな銃ばかりで……ふふっ、エンジニアとして内心日夜はしゃいでいるよ。」

「今はクレーバーって銃を作ってる。威力だけを最大限に引き出したあの造形……たまらない。」

「……あんたらマジで天才だけど馬鹿だな。いい意味で。」

 

エンジニア部、恐るべし。因みにだがオルタネーターは俺が引き取る事になった。エンジニア部の面々でも扱えないどころか、試射で皆驚くほどに外しまくったらしい。まぁそうなるよな、フロンティア製は。

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