昔、女子だと思って結婚の約束までした子が転校してきたけど実は男だと発覚した(泣)   作:匿名

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プロローグ
砕ける理想(泣)


「なぁ、お前彼女作らねーの?」

 

「あ?」

 

今日から高校2年。高校1年生の一年間でそこそこ喋るようになった男子生徒が登校中にふらっと現れ、そんなことを聞いてくる。

 

「急にどうした?というか、それ言ったら竹野もじゃん」

 

「ぐっ。それはそうだけど。お、俺は作れるけどわざと作ってないんだよ」

 

「あーはい。はい」

 

「自分から振っておいてなんだよその態度っ。でお前はどうなんだよ」

 

「俺?友達がお前しかいない時点で察してくれ。作りたくても作れないんだよ、竹野と同じでな」

 

「いや、だから俺は作れるけどわざと作ってないだけであって!」

 

「はいはい、分かった、分かった」

 

「ちっ」

 

竹野はひとつ舌打ちしてわざとらしくため息をして話を続ける。

 

「まーでも安心した。じゃあ俺ら2人で先駆けなし同盟をあと2年組もうじゃーー」

 

「あ!でも!一つ彼女ができる可能性があった」

 

竹野が喋ってる途中に俺が声を重ねる形で遮る。

 

「はぁ??お前に?」

 

「これだよ。これ」

 

そう言って俺は胸ポケットに入れていた缶バッジを取り出し見せつける。その缶バッジはキズや汚れが少し目立つが、見た目は至って普通の缶バッジだ。

 

「あー、昔小さい頃に、結婚の約束までしたっていう幼馴染の。その缶バッジもその時にお揃いで揃えたって話してたな」

 

「あぁ、そうだ。覚えてくれていて僕は友人として嬉しいよ」

 

「まぁ一カ月に1、2回のペースでその話聞いたしな。忘れろってのが無理な話だ」

 

「だってこれ色んな人に自慢したいけど、喋れるの竹野しかいないし。友達いなさすぎて」

 

「でもそいつを彼女にするのは無理だと思うぞぉ。この際ハッキリ言っておくが、それ以来一回も会ってないんだろ?十数年前の小さい頃にした口約束ぐらいで、今も思ってくれるわけがない。多分その女の子、今頃お前のことなんか忘れて彼氏作ってるぜ」

 

「絶対ない。そんなのあるわけない!絶対今も千尋は俺のことを思ってくれてるんだ!それにあいつ小さい頃でもあんなに顔も整ってて可愛かったんだ。今は絶対成長して超絶美少女になってるに違いない」

 

竹野は話を聞いていたが、この話題に飽きたのか別の話にうつる。俺でも多少の空気は読めるので、ここでその会話はやめる。

 

「そういや、俺ら高校2年。違うクラスだってな」

 

「は?まじかよ。またボッチに逆戻りかよ。ていうか、そのクラス替えって今日発表されるはずだろ?なんで知ってんだよ」

 

 

「ん?なんかリークされてた」

 

「今日発表なのにそんなに情報ダダ漏れで大丈夫かよウチの高校。なんか心配になってきた」

 

「もう今更だろ。んじゃ俺はここんとこで」

 

そう言って学校が目の前になると竹野は、軽く手を振りふらっと居なくなるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

高校の2年生になってから二週間が経った。

俺は教室の中でやはりというか、1人も友達を作れず相変わらず孤立している。

竹野がたまに自分の前にふらっと現れて、話し相手になってくれるのが唯一の救いだ。

竹野は猫みたいなきまぐれな男で、あいつは気分でその時の行動やおしゃべり相手を決める人間だ。そんな一貫性がない人間だがそれ故か、あいつは男限定で友好関係がとても広い。カースト上位の陽キャからカースト最下位の俺まで広く浅い関係を続けている。

 

竹野の話は一旦置いといてみんながガヤガヤと教室中で会話をしながら過ごすなか、俺は今日も教室で話し相手がいない孤独な時間を机にうつ伏せになって過ごしていた。

すると引きドアを開けるガラガラという音がして、担任の先生が声を上げたのがわかった。

 

「おーい。席に着けー、今から転校生を紹介するぞ」

 

クラス中は一瞬静まり返り再び喧騒を取り戻す。

『転校生』というワードがみんなの話を盛り上げているようだ。

 

そんな中俺は、どうせ美少女でもイケメンでも仲良くなれないので、ぼっちは大人しく顔を伏せ寝たふりを継続する事にした。

 

「本当は一学期が始まってすぐみんなと同じように登校する予定だったが、家庭の事情で二週間遅れての登校になった。もう皆んな既に友達の輪が構築されてるなか、ここでは友人がゼロで不安かも知れない。だからすぐこの高校へも馴染めるように皆んなも仲良くやってほしい」

 

俺もこのクラスに友人いないよ先生。俺にもそれ言ってよ。

 

「じゃあ入って来てくれ」

 

その言葉を合図に再びガラガラと引きドアを開ける音がする。

 

転校生と思わしきカツカツという足音が自分の視界が塞がれているためか、神経が研ぎ澄まされて妙に大きく聞こえる。

 

そしてカツカツという足音がピタリ止まる。

 

「それじゃ自己紹介を頼む」

 

「はい、転校して来た 木島・千尋 と言います。よろしくお願いします」

 

ちひ、えっ今なんて言った?千尋って言った!?千尋ってまさか俺がずっと信じ続けていた千尋のこと!?もしかしなくても俺のターンが来ちゃった!?これってあれだよね?なんでお前なんかがこんな美少女と幼馴染で仲が良いんだよ!って妬まれる王道パターンだよね?

 

俺は伏せていた顔をばっと上げ千尋と名乗った張本人に目を向ける。

 

そこにいたのは、肩まで切り揃えられた髪に整った顔立ち、そして大きな瞳。中性的な顔ではあるが美少女と言われれば美少女に違いない。それに小さい頃に千尋に渡した缶バッジを胸ポケットにつけていてくれた。この転校生は、絶対昔よく遊んでいた千尋ではあるのだけど、一つ問題がある。

なぜか千尋は男子制服を着ていた。

 

千尋に対して女子生徒が声を上げる。

 

「ねぇねぇ!千尋って男子服着てるけど男なの?」

 

「はい、この中性的な顔と声でよく性別がどっちか聞かれますが、僕は男です。」

 

そう言って、その女子に爽やかな笑顔を見せる。

 

今の笑顔を見て、その女子生徒は顔を真っ赤にしてフリーズした。

 

これを聞いてクラスの女子は黙っちゃいない。

 

「きゃーー!」「めっちゃ美少年じゃん!!」「かっこいい!!」

 

などと女子は大はしゃぎ。

 

対照的に男子は口には出さないが、がっかりしている様が手に取るようにわかる。

 

それは俺も例外ではない。

俺は今まで彼女がいなくても俺には昔結婚まで約束した幼馴染がいると、自分に言い聞かせ心の支えにしていたのだ。そう信じていたのだ。だがそれは今、崩れ去ってしまう。今まで女の子だと思っていた千尋が男だったのだ。

 

俺のショックは他の男子生徒に比べても数十倍デカい。

あまりにもショックで茫然自失してしまう。そんな自分の視線に気付いたのか千尋は俺と目が合う。目が合った瞬間千尋はさっき女子に見せた爽やかな笑顔とは程遠い顔で口を歪ませて僕を見た。その顔はあまりにも一瞬だったため、俺以外は気づいていない様子だった。

 




勢い大事。
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