昔、女子だと思って結婚の約束までした子が転校してきたけど実は男だと発覚した(泣)   作:匿名

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再開 (真)

「あれは何ですか?」

「3の2の教室」

「あれは何ですか?」

「3の3の教室」

「あれは何ですか?」

「3の4の教室」

「あれは……」

「もういいだろっ!学級表札に書かれてある差だから。俺にいちいち聞かなくても分かるだろ!」

「つれないですねー」

「つれなくて悪かったな!」

「次はちゃんと釣竿を用意しなければ」

「そっちの釣りかよ!」

 

結論から言うと俺は千尋の学校案内をすることになった。

 

正しくは、「せざるをえなくなった」だが。

 

千尋のやつ先生に俺が案内すると言ってやがったのだ。

先生に言っていなかったらこの話は俺と千尋の2人で完結していた。

2人で完結する分には俺が一方的に断ったとしても千尋が断られたという事実が残るだけであとは何も無い。

 

だがここに学校側の人間(先生)が入ってしまうと、この話は急に面倒になる。

先生に言ってしまったということは、先生の監視の中にあると言ってもいい。先生とは、いわば中立的な立場の人間だ。俺が正当な理由もなしに一方的に断わったと知ってしまえば先生としては見過ごせるものじゃない。

理由を聞かれたりあるいは説教をされたりするかもしれない。先生にあまりいい感情をもらっていない俺は、日頃の鬱憤を晴らすべく嬉々としてそういうことをされるかもしれない。さっき中立的な立場とは言ったが中立的な立場(笑)の方が合ってるかも。

 

……まぁなんにせよ何故昔一緒に遊んでいた幼馴染ってだけでこんだけ執着するのか謎だが、千尋は俺以外に学校案内を頼のむつもりはないらしい。そういう事なので千尋が学校案内に俺を指名し続ける限り俺は正当な理由つまり体調不良や家の用事を理由に断ったとしても断り続けるのには限界が来てしまうのだ。

 

結局のところ先生が介入した時点でどう足掻いたって面倒にしかならないので今日学校案内をさっさと終わらせた方が得策だと考えついたのだ。

そして今に至る。

 

 

「……でも本当に驚きました。まっくんが住んでいる地域に帰ってきたとはいえ転校先の学校がまっくんが通っている学校だなんて」

 

「それはそうだな。俺も驚いた」

 

それも驚いたが千尋が男だということに俺は1番驚いた。今も性別が♂️なんて嫌な冗談だと言って欲しいくらいだ。

 

「これはやっぱり運命ですね!」

 

「やめろよ!男と運命なんて!考えるだけで鳥肌が立つ」

 

「でもちゃんと持っていてくれたんですね。缶バッジ」

 

千尋はそう言って自分の胸元に着けている缶バッジをトントンと人差し指で叩く。

 

えっなんで缶バッジを持ってるって分かったんだ!?

俺胸ポットの中に入れてるし千尋には見せてないはずなんだけど

 

そんな思いが顔にでていたのか千尋はしたり顔で話しを続ける。

 

「さっきあなたがバックの中に教科書を詰め込んでいるときに胸ポケットの隙間から銀色が見えたので、もしかしたらと思ったんです。その顔の変化を見るとやっぱり缶バッジだったんですね。」

 

どうやら釜をかけられていたらしい。

ついでに俺は結構顔にでるタイプの人間だというのが分かった。地味にショックだ。俺は今まで感情を表情に出さないクール系男子だと思っていたのに。

 

釜をかけられ顔の表情でバレるなんてなかなかダサい。

 

ダサい俺はこの気持ちを誤魔化すように足の歩くスピードを早める

 

すると俺が早歩きになることによって俺が先に進んでそれを追うように小走りをする千尋という構図になる。

 

「待ってくださいよー。早いですってば」

 

「嫌だね。早くこの面倒な学校案内を終わらせたいから急ぎ足で行くぞ。俺が面倒な学校案内をしてあげているだけでもありがたく思う事だ」

 

「言われなくても感謝はすごくしてますよ」

 

「ついた」

 

俺が急に足を止めたことで後ろから追っていた千尋は止まることが出来ず「ぎゃふ」という叫び声にもならない声を発して、俺の背中にぶつかる。

 

そんな千尋を気にもとどめず俺は話を続ける。

 

「ここが家庭科室だ。調理実習のときに使ったりする。ここのポットを使ってカップ麺のお湯を沸かすアホが居たそうだが基本的にそういうのはダメだ」

 

「なるほどカップ麺を沸かしたい時は自分でポットをもってこいという事ですね」

 

「何でそうなる」

 

 

「ここが理科室だ。サボりたいがためにここにある人体模型を勝手に持ち出して自分の制服とウィックを着させ、授業中に自分の身代わりにしたアホが居たとか。もちろんそんなのもダメだ」

 

「なるほど。サボりたい時はもっと自分にそっくりのクオリティの高い人形を用意しろという事ですね」

 

「だから何でそうなる」

 

 

「ここがパソコン室だ。ここのパソコン使ってえっちぃ動画を見たアホが居たそうだが、そんなことすれば学校のパソコンだから履歴が残ってすぐバレる。そういうのを見たければ家でやることだな」

 

「なるほど足跡が残らないようにちゃんと学校のパソコンのデータを書き換えろという事ですね」

 

「……もういいよそれで」

 

 

それからも俺は保健室や体育館、食堂などを紹介していった。

 

そして事は図書室の紹介の時に起こった。

 

「この図書室生徒どころか先生すらいませんね」

 

千尋の言う通りこの図書館には俺と千尋しか居なかった。

 

「あぁ、一応ここは放課後も利用していい事にはなってるが図書室の先生は昼で帰るからな。放課後の貸し出しは行ってないんだよ。勉強したいやつは自習室を使うし放課後は人がいない事が多い」

 

「へぇ。そうなんですね。……あっ」

 

「どうした?」

 

「一時期友達に貸して貰ってた本があったのでつい」

 

そこにあったのは結構分厚いシリーズ物の小説本だった。

 

俺はそれを一冊手に取る。分厚いだけあって結構重さがある

 

「この本か?」

 

「そうです、その本です。その本は前の学校で友達がおすすめしてくれてわざわざ家から、始まって完結するまでの5冊分を貸してくれたことがあったんです。

でもそのあとまた別の友達が同じ本を5冊分持ってきたんです。

どうやら僕がこの本をおすすめされていて「読んでみたい」と言ったのを聞いて、持ってきてくれたそうで。

せっかく持ってきて貰ったのにすぐ持って帰らせるのも嫌で、結局五冊と五冊で計10冊の分厚い本を重いのを我慢して家に持って帰った事があったなーと」

 

「友達か」

 

「はい友達です」

 

「俺はそもそも友達がいないから貸し借りなんて一度もしたことないんだよな。」

 

竹野は表面上では友達として扱っているが実際は本当に友達かと言うと怪しい。

喋るのだってあっちから一方的に来たときだけだし、一緒に弁当を食べたこともなければ連絡の交換もしていない。

友達の定義は曖昧であるがこれを友達と言って良いのかどうか。

恐らく竹野も俺の事は表面上は友達だと言っているが本当のところは思ってない気がする。

 

「いつから友達がいないんですか?」

 

「千尋と分かれてからは一回も友達を作れてないな」

 

「え!ってことは小中高校の今に至るまでずっと一人ぼっちだったって事ですか!?」

 

「まぁそうなるな」

 

「マジですか…。友達は意外と簡単に作れますよ!きっとまっくんだってーー」

 

カンタンか。カンタンね。

 

その時俺の何かがプツンと切れた。

 

 

 

 

俺は唯一の友達だった千尋が遠くに行って一人ぼっちになった。

 

変化は望んでいなくても友達は欲していた。

 

だけど自分から動いて友達を作る勇気もない。

 

ただ待つだけの臆病者だった。

 

小学生、中学生、高校生と来て一度もチャンスがなかったわけじゃない。

 

相手から友達になってくれようとした子もいた。

 

でも全部からまわり。

 

台無しにしてきた。

 

孤独という物は結構精神に来るものがある。

 

そこで無意識の内に自分の心を守るため自分は友達が作れないんじゃなくて、理由があってわざと親しい友達を作ってないという考えにすり替えていた。

その理由に一番適した物が千尋の事だったから、俺には結婚の約束までした幼馴染みがいるからそれ以外の友達は無理に作らなくていいと自分の心に言い聞かせて、心の平静を保ってきた。

でもそんな千尋はそもそも女じゃないと知り心の平穏を保っていたものが崩れて、俺がこの数十年間友達が作れず我慢している間に千尋は俺が欲しいものを簡単に作っていた。

 

腸が煮えくり返る。

 

はっきり言ってこんなのは、八つ当たりだ。

 

自分でも分かっている。

 

でも押さえていたこの感情はもう止められない。

 

 

 

 

「なぁ千尋」

 

「はいなんです?」

 

「いいよな、千尋は。もうこの学校の人気もので」

 

「またまたー。人気者ってそれは無いですよ。ただ転校生が珍しいだけですってば」

 

「最初はそうかもな。でも千尋は顔も良いし性格も昔のおどおどしていた感じがすっかり無くなって、明るい性格になってる。すぐこの学校に馴染んで本当の意味で人気者になる」

 

「僕をそんな高く買ってくれていたなんて。なんかこそばゆいですね」

 

「一方俺は、昔千尋と居る時はだいぶ明るかっと思うが今はこんなにひねくれた暗い性格になっている。ほんと真逆に育ったよな俺たち」

 

「そんなことはーー」

 

「あるね。千尋は簡単に友達を作れるかもしれないけどな!その簡単な事が俺には出来ないんだよ!俺だって私物の貸し借りしたり、沢山の友達と一緒に遊んでやんちゃしたり、テスト前にみんなで勉強会とかしたり……とにかく!俺もみんながやってるような”当たり前”をしたいんだよ!!」

 

「……」

 

「今までは、そういう事が出来なくても千尋、結婚を約束した幼馴染の存在があったからまた会えば、そんなことより楽しい時間が過ごせるって自分に言い聞かせてどうにか堪えてきた!でも男だと知った今支えも何も無くなって今後どうやって生きてけばいいのかもう分からない!いっその事千尋が俺の目の前にあれ以来姿を現さなければ良かったんだ!」

 

「……ッ」

 

「そうすれば俺は理想を理想のまま心の平静を保ってこれからも生きてこれた!」

 

今俺は酷いことを言っている。分かっている。分かっている。でも止まらない。止められない。

 

「本当はお前も心の中で馬鹿にしてるんだろ?」

 

「・・・・・・ぇ?」

 

「男に女だと思って結婚の約束までした馬鹿がいるってな!この学校の案内だって千尋と一緒にまわることによって俺を惨な気持ちにさせるためにやってるんだろ!そうなんだろ!はっはっ。俺がこの十数年間こんなに悩んでたのに、のうのうと生きやがって!何がアカシだ!こんなのーー!!」

 

そう言って胸ポケットに入っていた缶バッジを床に投げつけようとしたその時、パーンと乾いた音がなり自分の頬に衝撃が走る。千尋が俺に平手打ちをしたのだ。俺はいきなりのことで後ろに倒れ尻餅をつく。

 

よく見れば千尋の目には微かに涙が滲んでいた。千尋は俺をギリっと睨んで言う。

 

「なんで、なんでそんなことを言うんですか!あなたが勘違いしていたのも2人とも互いに幼かった事が原因ですし、あの頃は母に女の子の服を着せられてたので勘違いして当たり前じゃないですか!この学校案内だってただ単純にまっくんと話したくて頼んだことなのに!アカシの事だって!そんなっそんなっーー」

 

あぁ、嫌われたな。再び友達になれたかもしれないのに。ほんと馬鹿だよな俺は。

 

「そんな悲しい事を言わないでくださいよ。僕らは”ずっと”友達なんですから……」

 

「え」

 

予想していた言葉とは違うものが返ってきて呆気に取られ硬直する。

 

そんな俺を見ながら千尋は話を続ける。

 

「まっくんが言ったんじゃないですか。僕らは離れていても強い絆で繋がっているって。……それともあなたがいう絆はそんなに脆いものなんですか?」

 

そう言って千尋は優しく微笑む

 

「あーだこーだ言ってましたけど、結局は友達をたくさん作ったり、青春ぽいことしたいってことですよね?なら叶えましょうよそれ。今までそういう事が出来なかったならこれから叶えればいいんです。それを実現できる友達があなたの側にいるんですから。僕はあなたと友達です。友達なんだからいくらでも頼ってください。そして僕が責任持って残りの高校生活を忘れたくても忘れられないくらい楽しい物にしてあげますよ」

 

そう言って尻餅をついた俺に手を差し伸べる。

 

俺は千尋の言葉で平静さを取り戻しつつあった。

 

「でもお、俺は今千尋に酷いことも言って‥‥」

 

「こういう時は何も言わず手をとればいいんですよ!さぁ!」

 

こんな酷いことを言った俺を友達だと言ってくれて、しかも俺の友達作りや青春を送りたいという願いを叶えるために協力をしてくれるという。千尋には今後一生頭が上がら無いかもしれない。心の中で暖かい何かがじんわり広がっていくのを感じる

 

 

ーーー俺は変化を嫌っていながらも友達を求めていた。

だがその両方を得ることはできない。

どちらかを捨てなければどちらかは手に入らない。

だから俺はいつも『友達』を捨て『変化しない』を選び続けてきた。

 

 

 

でも今日が臆病者が勇気を出して一歩踏み出す日なのかもしれない。

 

俺は千尋の差し伸べられた手を強く握る。

 

すると手をいきよいよく引っ張られ体を起こすが引っ張った力が強かったせいで、そのまま行き良い余って互いの頭をぶつける。

 

「いたっ」

 

「あたっ」

 

俺たちはしばらく頭をさすっていたが今ので緊張の糸が切れたのかどちらからともなく笑い出す。

 

しばらく図書室からは2人の人の笑い声が聞こえたという

 

 

 

 

 

 

 

ーーそうして俺はその日、あの頃から2度目の『友達』を選んだ。

 

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