昔、女子だと思って結婚の約束までした子が転校してきたけど実は男だと発覚した(泣) 作:匿名
女子制服を着た千尋はいよいよ美少女にしか見えない。
下手な女子高校生より女子高校生している。
ちなみにアカシである缶バッヂはその姿でもちゃんと胸ポケットにつけている。
「…一応確認なんだが、お前は男で間違いないんだよな?」
「僕は男で間違いありませんよ。360度どこからどう見ても僕は男じゃないですか」
360度どこからどう見ても男に見えないからこんな質問をしているんだが。
「‥‥じゃあその制服は?」
「あーー。これですか」
そう言いながら千尋は自分のスカートをちょこんとつまむ。
「これはですね。この学校の男子制服を作った時に一緒に作ったんです」
俺が聞きたいのはそこじゃない。
「そうじゃなくてだな。なんで女子制服きてるんだよ。今なら女と言われた方がまだ信じられる。」
「そういう事ですか。これはですね。あなたも知っている通り私は昔、女物の服を来ていたじゃないですか。あれは母親が本当は娘が欲しかったらしく、一人っ子ということもあり僕は母親に小さい頃女の子物の服を着せられていたんです。その影響で今も可愛い女の子の服をきるのがちょっとした趣味みたいになってしまったんです。そこでせっかくなら男子制服と女子制服をその日の気分に合わせて使い分けようかなと思いまして」
結構真面目に返ってきた。
ネタに走った理由かと思ったのに。
なんだか申し訳ないことをした気持ちになる。
「そ、そうなのか。でもそんな格好して学校には何か言われたりはしないのか?」
「それはきっと大丈夫です!今は多様性の時代なんです。個人個人の個性を尊重する時代なんです。もし僕が男だからって女子制服を来ている事に学校側がケチを付けるとするなら、今の時代相当問題になるでしょうしね」
「そういうものなのか」
「そういうものです」
まぁ、千尋が大丈夫だと言ってるんだし大丈夫なんだろう。実際、千尋が女子制服来てることによって誰かに迷惑がかかる訳でもないしな。あ、でも一部の男子高校生に迷惑がかかりそうではある。
こんな美少女の姿をした男がいたら健全な男子高校生の性癖が歪みそうではあるが、俺は名も知らない犠牲になるだろう男子高校生より千尋の方が優先度は高いので悪いが千尋のためにも犠牲になってくれ。
……あと千尋に限ってそういった事はないと思うが一応聞いとこう。
「その格好の事でクラスの人に何か悪口とか言われたりしてないか?」
千尋は一瞬驚いたような顔を見せるがすぐその表情も消えニコッと笑って言う。
「してませんよ。むしろ皆さんから褒められたり可愛がられたり好印象の物ばかりです。……心配してくれたんですね。僕の事」
「そりゃあそうだろ。仮にも友達なんだし。それぐらいはする」
でもそうか。やはりそうだったか。これが俺などのフツメン、ブサメンが女子制服を着て、この学校に来てしまえば即学校の笑い者&引かれてバッドエンドルートまで一直線。攻略本見ないでもはっきりわかんだね。
でもこれを顔のいい奴がすると話は別だ。顔が良ければその顔の良さで、服がどんなものであろうと大抵は似合ってしまうのだ。全く同じ服であってもフツメンとイケメンではイケメンの方がオシャレに見えてしまうアレである。世の中、不平等なのだ。世の中『だがイケメンに限る』の言葉が通用する世界なのだ。そんなイケメン達は全員カラオケで毎回盛り上がるサビだけ歌えなくなる呪いでもかかってしまえばいいのだ。
イケメンの話になったから話を戻すが、千尋は中性的な整った顔のお陰もあって似合ってしまうから酷いことになるとはあまり思っていなかった。
実際その通りだったし。
「まっ。最初は驚いたけど千尋がそれでいいなら俺もそれでいいと思うぞ」
話がキリのいい所でまとまりをみせたその時、丁度学校のチャイムが鳴る。
「授業が始まるチャイムがなったのでそろそろ戻らないとですね。あっ、それと今日一緒に昼ご飯食べましょうよ!昼ご飯食べながら話したい事もありますし!」
断る理由もないので頷く。
「あぁ。わかった」
何気に学園生活で俺は初めて友達と一緒に弁当を食べる。
うん。いいね。なんか青春ぽい。
◇
昼休み俺と千尋は、俺的穴場スポットである屋上に繋がるドア付近に来ていた。
理由は昼ご飯を食べるため。
「あのです。まっくん」
俺が弁当を広げて食べていると横で同じく弁当を広げ食べている千尋が話してくる。
「ん?」
「ここって1人ぼっちで食べる所を見られたくなくて、それが嫌で食事場所として選んだのがこの場所だったんですよね?」
「まぁそうだな」
「なら僕という友達が出来たんですから別にここで食べなくてもいいんじゃないですか?」
「それはそうなんだが、この場所はほぼ1年間ぼっちな俺を迎え入れてくれた場所だからな、愛着も結構湧いてるんだよ。ここを離れるってのはなんかこの場所に浮気した感じがして嫌なんだよな。」
もうこの場所は俺の第二の家と言っても過言じゃないかもしれない。
「……それにあまり千尋にも迷惑かけたくないし」
「まっくんに対する沢山の悪い噂の事ですね」
「知ってたのか」
「そりゃー知ってますよ。いくら私がこの学校に来て2日でもあんだけ沢山噂されていれば嫌でも耳にします。だから今日だって人がいる所では僕に話をしようとも、させようともしなかったんでしょう?どうせまっくんの事ですから『悪い噂の流れている自分に関わっているのが知られたら千尋まで何か悪意に晒されるんじゃないか』みたいな事を考えたんでしょう?」
「……」
「ほんとに沢山、色んな悪い噂が流れてましたよ。露出趣味があるだとか、女の子を脅しただとか、一方的にキレて首を締めただとか、中学生時代にストーカーをして警察沙汰になったとか、あいつはたけのこ派だとか、とにかく言い出したらキリがありません。」
「いや待て、全部の噂に言いたいことあるが最後の噂は絶対おかしいだろ。」
「この学校に入学する絶対条件にキノコの山好きで、たけのこの里派は入学拒否じゃありませんでしたっけ?」
「なわけあるかよ!全国のたけのこ派のみんなと俺に謝れ!」
「結局たけのこ派なんですね。ごめんなさい」
千尋はペコッと頭を下げる。
今は女装してるせいかその仕草も可愛らしく見えてしまう。
なんか悔しい。
俺は気を取り直しして話を続ける。
「……というかその噂を知っていたのに俺に近ずいたのか。」
「そんなのが立とうが立つまいが結局は近ずいてますよ、きっと。それにどれもこれも嘘ばかりなんじゃないですか?」
「たけのこ派以外はどれも嘘ばっかりだな。1年の頃から知らない間に見覚えのない噂ばかりが流れていた。」
「なら信じますよ。あなたがそのような人間じゃないなんて見てたら分かりますし。」
見てたらわかると言っても再開してから俺らはまだ今日入れて2日しか経ってない。
「そんな簡単に信じきっていいのか?自分で言うのもなんだが、こんなに怪しい人間は相当いないと思うぞ。火の無い所に煙は立たぬとか言うし」
「ーーーーそれならその火はあなたのではなく、別の誰かが用意した火なだけですよ」
そういった千尋の目は笑っていなかった。
「まっ。今回の話したいことはそれじゃないんです。本題は別なんです。えいっ」
「あっ。俺の唐揚げ!」
千尋が最後まで残しといた俺の唐揚げを勝手に取って頬張る。
千尋は美味しそうにもぐもぐ食べる。
「美味しいです。お母さんが作ったんですか?」
「そんなに美味しそうに食べてもらってなんだか申し訳ないだがそれ、冷凍食品だ」
あっ。千尋の顔が真っ赤になった。