昔、女子だと思って結婚の約束までした子が転校してきたけど実は男だと発覚した(泣) 作:匿名
「ただいま」
すっかり日も沈んだ頃に家に到着してドアを開ける。
千尋と繁華街へ行って帰ってくればもう19時になろうとしていた。
俺は学校が終わってから帰宅するのにこんなに遅くなったことは、今までにほとんどない。あったとしても居残りだとかそれぐらいだろう。
俺は帰宅部だ。帰宅部所属の人間は学校が終わってから家に帰宅するまでの速度が重要で早ければ早いほどいい。俺はそれを忠実に守り帰宅部として最高の成績を納めていた。だが俺は絶対に家に帰るのが遅くなるであろう、友達と放課後遊ぶという欲望には抗えず、帰宅部としては愚行としか言わざる負えない行動に走ってしまった。
悪い、全国に居るであろう帰宅部所属の人間達。もうこんな俺は帰宅部を名乗っちゃいけない。でも何だ帰宅部である事を捨てたのに感じるこの充足感。これがトモダチ。
「お帰りなさい。なにぼけっとして突っ立てるの。早く入ったら?」
俺が玄関で架空の組織である帰宅部を引き合いに、充足感に包まれているとリビングから母さんが顔を覗かせた。
「あれ、珍しい。母さんがこの時間に家に居るの」
父さんもなのだが母さんは普段仕事で帰りが遅い。
なのでこんなに早く家に帰っているのは先ほども言った通り珍しいのだ。
「いつもよりちょっとだけ早く仕事が終わっただけよ。それより私はあんたの方が珍しいと思うんだけど?私の知ってる限り学校が終わったらすぐ家に帰るようなあんたが、この時間に帰ってくるなんて」
「それはチャットアプリでも言ったけど、友達と遊んでたんだよ。」
「ふーん。ま、遅くなりすぎないようにね。」
母さんは胡散臭そうなものを見るような目で俺を見て嗜める。あ、これ信じてないな。友達と遊ぶ事すら信じてもらえない子供って何なんだよ。
別に何が何でも信じてもらいたい訳じゃないので俺はこの状況をスルーしてリビングに入る。
リビングに入ってそこに妹が居ないのを確認して母さんに聞く。
「母さん來珀は?」
それを聞いた母さんは何故かため息をつく。
「あんたって子は。本当にシスコンね。帰って早々妹の確認?」
「悪い?これは兄としての義務なんだよ」
すると先程よりもっと大きくため息をつかれた。
「來珀ならあんたよりちょっと前に帰って来て、すぐ自分の部屋に入って行ったけど」
「そうなんだ」
それこそ珍しいといううものだ。ウチの妹は基本的にリビングの住人なので自分の部屋に居る時の方が少ない。リビングに居ないのなら遊びに行っているのだろうと考えるくらいには、家の中のリビングに居る。そんな妹が家に帰ってすぐ自分の部屋に入っていったという。俺は千尋が学校で何かあったんだろうかと千尋の身の上を案じる。
◇
※一方その頃、真城の妹の來珀はーー
「兄に友達…か」
私は自分の部屋のベットにバタンッと倒れ込む。
兄の隣にいた人は女子制服で多少デザインは異なるが兄と同じような制服を着ていた。恐らく同じ学校の人なんだろう。
あんな兄に友達が出来るとは思わなかった。到底信じれないが兄が私に言っていないだけで、あの距離感は彼女の可能性もあるのじゃなかろうか。まぁ、限りなくゼロに近い可能性ではあるのだけど。
兄に友達もしくは、彼女が出来たという事は家族として喜ぶべきことなんだろうし、うっとうしい兄が妹離れをしてくれるきっかけになるかもしれないのだ。
これは私にとって良い事なはずなのに何故か素直に喜べない。
私の中にモヤモヤとした物が残る。
「はぁ」
思わずため息がでる。
「筋トレしよ」
最初の頃はスタイルのいい体型を作るべく密かに始めた筋トレだったが、それから数年経った今では誰にも言っていない趣味兼ストレス発散方法になっていた。
そのまま私は、心を無心にして筋トレをしばらくする。筋トレを終え無意識に気合いが入っていたのかいつもより、しすぎた感はあるがしばらくすると私に心地よい疲労感がやってくる。私はその時だけは何も考えず心地よい疲労感にしばらく浸る事が出来た。
その次の日私は、筋トレを始めてから徐々に無くなっていった筋肉痛の激痛に久々に見舞われた。
私の考える完璧美少女は最初からスタイルが良くて筋トレなんてする必要がないし当然筋肉痛にだなんてならない。そのため完璧美少女を演じる私は学校で筋肉痛だって事がバレないように一生懸命我慢してその日を過ごしたのだがそれはまた別の話だ。
◇
昼休みいつもの場所で弁当を食べる準備をしていると遅れて千尋がやって来た。
「どうしたんですか、まっくん。最近元気ないですよね。特に今日は一段と顔色が悪いです。そんな顔をしていたら死人と間違えられてしまいますよ」
千尋が到着早々そんな事を言ってくる。俺って今そんなに酷い顔をしてるのか。まぁそれは仕方がないか。今俺には耐え難い事が起こっているのだから。この一週間どうにか我慢していたがもう耐えられない。
「……ぃんだよ」
「はい?」
「……ないんだよ」
「何がないんですか?」
「ここ1週間ろくに妹とコミニュケーションを取ってないんだよ!」
「……ちなみにどれくらい取っていないんですか?」
「1日に短い会話のやり取りを3、4回くらい」
俺がそう答えると千尋は呆れたと言わんばかりに首を振る。
「…あのですね、まっくん。僕は一人っ子なんでそこまで詳しくはないですが、思春期真っ盛りな兄と妹の関係なんてそんな物じゃないですか?1日に一言だって会話しない所もあると思いますし」
千尋にそんな事を言われても俺はああ、そうですか。じゃあこの関係のままでいいですね、とはならない。
俺にとってはこれは深刻な問題なのだ。
何故か1週間前から妹に急に避けられるようなった気がする。
普段リビングに入り浸っていた妹も最近は自分の部屋に居る事が多い。家族で食べる夕食もご飯を食べ終えたらすぐに自分の部屋に戻っていく。
何よりこの一週間妹に起こしてもらってないのだ。現状、妹に気を利かせた母が俺を起こしに来ている。え?自分で起きろって?それは野暮ってもんだ。
とにかく俺は完全に妹に避けられている。
理由は分からない。分かるならもう解決している。
「もー、元気出してくださいよまっくん!本当に兄妹の関係がヤバくなった時には私も手伝いますから!ね?それよりこれを見てくださいよ」
そう言って千尋に数ページ分、何か書れたノートを渡される。
「……これは?」
「この前の作戦会議で決めた事に役に立ちそうな情報を、集めたノートです。」
妹の件で頭がいっぱいになりがちな俺ではあるがこの一週間、千尋の言った通りに俺の望みを叶える為の作戦会議を俺と千尋の2人で行っていた。
まず沢山の友達を作るにあたって最初に誰を友達にするかが議題に上がった。自分と友達になってくれそうな人を最初の段階で絞っておこうと考えたのだ。そしてその話し合いの結果正確に誰にするかまではまだ決まらなかったが最初の友達は過去の俺のように友達が居ない生徒に、友達になってもらうという事になった。
2年生になっても学校に友達が居ない生徒には大きく分けて二つの人間が居ると思う。一つ目は友達をわざと作らない人間だ。これは何だかの理由でそういった物を必要としておらず一匹狼に自分からなった人間。
二つ目は過去の俺と同様に作りたくても友達を作れない人間だ。自分には友達を作る気があっても、性格、周りの環境、その人のいまの状況などによって1匹狼になざるおえなかった人間。
そして今回は二つ目の友達を作りたくても作れない人間をターゲットにすることにした。
これは初めて自分から友達を作るのに比較的俺と友達になってもらいやすそうという浅ましい考えから来ているのだが、千尋の『どんな相手でも気づいたら仲の良い友達になっている』とかいう、もはや説明にすらなっていない友達の作り方を実践する気にはなれないので仕方ないと言い訳させてくれ。
まぁ、それから多少の微調整を行なって、数日前にこの件についての情報収集を開始したのだが……
「マジか。もうこんなに情報集めてきたのかよ…。すごいな千尋」
決まってからたった数日で役に立ちそうな情報を千尋が沢山持ってきた。俺も一応情報集めをしていたのだが全く集まっていない。
「えっへん。もっと褒めてくださってもいいんですよ。この学年を中心に色んな生徒に話しかけて会話の中でさりげなく情報を引き出していったんです。」
これは俺には出来ないことだ。悪い噂ばかりの俺は、まず最初の段階から無理だろう。俺が情報収集をしようと、いきなり会話しようとしても不審がられて相手にしてもらえないというオチだ。
対象的に千尋はというと本人はこういったことにはうとそうだが、周りが話している事を不可抗力だがどうしても耳に入ってしまうことがある。そんな時に千尋の人気は2年の中で相当高まりつつある事がわかってしまう。そういった事も考えると徐々に上がりつつある人気とその性格もあってかいきなり話しかけたって不審がられないのは不思議では無い。
しかし千尋は人気者になるとは思ってはいたが、一週間近くでもうこのような状況のなのだ。このまま行けば2年のとは言わず学年全体で人気者になれるのはそうそう遠くないだろう。そういった事を考えていたからか「千尋は学校一の人気者になったりしても俺の友達で居てくれるよな」そんな言葉を無意識の内にふと漏らしていた。
言葉に発した後に自分が何を言ったのか理解して羞恥心に襲われる。
「悪い。なんか気持ち悪い事を言った」
その言葉を飲み込むのに時間がかかったのか数秒の間が空き、その後あはははと笑い始めた。なんだか最近似た様な事があったなと既視感を感じながらも、恥ずかしい事を言った自覚はあるため、これ以上を笑われるのは俺としては面白くない。
「もういいだろ。」
千尋が笑うのを止めてくれないため、笑いを止める様言うが、止めてくれない。今度はさっきより強めに言おうとする。
「だからもういいだーー」
「離れることはありませんよ」
「え」
笑いによって目尻にたまった涙を手で拭いながら声を被せる様に千尋は言う。
「…なんでそんな簡単に言い切れるんだよ」
「離れる必要がないからです」
「………答えになってない」
「そうですか?」
「そうだよ」
◇
「ねぇ、ちょっといい?」
掃除終わり後の休み時間、俺はいつものように机に突っ伏していると自分の真上から声がした。声からするに女子の声だと思われる。俺に女の子が話しかける訳ないので、これは恐らく自分の机を挟んだ状態で誰かに話しかけたのだろうと決めつけた。俺は知っている。俺に千尋以外で会話してこようとする奴は居ないと。だからもし俺がこれに勘違いをし、自分の事だと思い込んで顔を上げたら自分に話しかけていないというオチだ。絶対に恥ずかしい。
「本田くん。起きてるんでしょ?そうしてる所悪いけど、お願い。顔を上げてくれる?」
えっまじ?今、本田って言った?俺の名前だよねそれ。
俺は顔を上げる。
そこにはここのクラスの女子クラス委員長
大幅修正を行なって、遅くなってしまいました。申し訳ございません。