東方回転精 作:匿さん
スティール・ボール・ランがアニメ化されるので初投稿です。
少し書き方を変えてみたり…
爪が本来あるべき場所から少し浮いた位置で回転していた。
本来ならば驚くんだろうが俺はそれを知っていた。いや、漫画の中でだが見たことがあった。
(タッ
シルシルと高速回転する不気味な音が響く中、一人と一匹は俺の指先を凝視している。奴は野生の勘からか、先程の動きを止めてこちらを警戒したまま動かない。
(ほ、本当にタスクなのか!?あのジョニィジョースターの!?)
そんなことがあるはずがないと頭では分かっているが…
(分かってはいるが心がコイツは本物だと言っている!現に俺は今、幻想郷にいる。幻だって実体になるはずだ。)
(夢でも幻でも何でもいいッ!やるなら今だ!!)
咄嗟に人さし指を奴の顔に向け、牙と牙の隙間の柔らかそうな部位に向ける。
(発射の仕方は知らないがとにかく撃て!!!)
ドシュッッ
キシャアァァァッッッッッ!!!
爪弾は口の肉に当たり、奴の下顎を切り落としながら貫通する。あまりの苦痛からか絞め上げていた俺の事など忘れたかのようにその巨体でのたうち回り、俺は空中に投げ出された。
脱出できたのを喜ぶべきなんだろうが如何せん投げ出された角度が悪かった。
「ウグッ!い…痛てぇ…」
地面を転がり、ボロ雑巾のような身体で立ち上がると俺を囲むように黒光りする壁ができていた。
(まさかこいつッ!巨大な体格を利用して押し潰す気か!?)
奴はぐるぐると俺の周囲を回っているが、手負いの頭部は決して見せない。
(クソッ!せっかく能力も使える様になったのにこんなところで死ねるわけがない!!)
半ばやけくそ気味に爪弾を連射してみる。
ドシュドシュッッ
しかし肉まで届かず堅牢な外骨格に弾かれ、金属音に似た音だけが響き必死の抵抗も終わる。
(やはり厳しいか…どうする!?よじ登れそうだけど動いてるし…ジョニィみたいに地面を掘って圧死を回避してみるか?)
様々な案が浮かんでは消え背中を嫌な汗がつたう中、ここであることに気がつく。
(壁が迫ってきていない!?一体なにを…)
ハッ!!!
悪い予感はいつも当たるもので、振り返ってみると壁の向こうから奴がこちらを見ていて目が合う。大量の小さな目が集まってできているその複眼は、ただ真っ直ぐに獲物を捕らえていた。
「こいつッ!」
西部劇のガンマンの様に人差し指を向けるも、発射する間も無く隠れられてしまった。が、たった一つの勝ち筋を閃く。
(奴は恐らく、俺が頭部の位置を把握出来ないのをいいことに、背後からトドメを刺そうとしているんじゃあないのか?だったらこっちもそれを利用してやる!)
空間の真ん中に立ち、あえて動かず誘うかのように背中を無防備にしたまま攻撃を待つ。ほんの数秒だが俺にとっては数分のように感じられた。
そして…
「そこだァッ!!!!!」
先ほどの傷を抉り爪弾は内部をズタズタにし頭部を貫通する。その際、体液が辺りに撒き散らされ、こちらにも飛んでくるがそんな事を気にしている余裕は無かった。
(ま…まだ動くのか…?)
奴はまさに襲いかかろうとしていたその体勢のまま硬直している。万が一に備え迂闊に近寄らずにいると…
キ…キシュゥゥゥ…
と、小さく鳴き
ドサアァァァッッ
その場に崩れ落ちる。それと同時に腰が抜け地面に座り込んでしまう。つい先日まで普通の高校生だったのだ、無理もない。
「ハア…ハア…ハア…ハア……た…助かった……」
だが何故、背後の物を正確に打ち抜けたのだろうか?その答えは地面にあった。
「これがあってよかった…」
(咄嗟にさっきのナイフの反射を利用するのを思いついたのは我ながら冴えてたな。ラッキーラッキー!)
俺は折れたサバイバルナイフの刃を大切に鞘にしまい、ポケットに放り込む。他人から見るとガラクタに過ぎないが今は命の恩人に思える。
だが初めての命のやりとりを終え、その興奮も徐々に冷めるとともに小さな罪悪感が生まれてきた。
(向こうから襲ってきたとはいえ…殺してしまった…)
相手は節足動物だが現代の価値観では悪とされている殺し。喜びと日常との落差に軽く絶望し、天を仰ぐとあることに気がつく。
(綺麗な夕焼けだな…空が綺麗なオレンジ色だ。夜になると星も切れなんだろうなぁ)
(ん………?)
「マズイぞッ!日が暮れる!!!!!」
ちなみに実際のムカデは神経系が各節にあるので頭が欠損しても動きます。
筆者はウソつきではないのです。ストーリーの都合を優先するだけなのです……。