人道に乗っ取る清く正しい研究者(笑) 作:発表
燃え盛る炎。爆ぜる空間。触れるだけで焼けてしまう程の熱の嵐。その空間の中、それを作り出した元凶は呟いた。
「──あぁ、此度の実験は失敗だな」
歪なマスクをした白髪の医者──そう、医者であったはずだ。助けるため、救うためにここに来た人であったはずだ。
しばらくを共に過ごし、彼女にも助けたい人がいることを聞いた。共に笑った。この人なら信じられると思って、魔女様を託した。その筈だった。
瓦礫の下から無理矢理手を伸ばす。ガタリと音が鳴った
その人は、少女はそして初めて私に気が付いたようだった。不思議そうに目を丸めた。青色の瞳が興味深げにこちらを見据える。
「……おや? まだ生きていたのか?」
「……この、クソ外道が……」
焼けた体に鞭を打って這い上がる。足が潰れているが、そんなことはどうでも良い。目の前の白衣の少女を睨んだ。
「クソ外道? その言葉は受け入れられない。何故なら私は人道に沿っているからだ。
私は助けたいんだ。助けたいから
「……だからって……この村をこんなにしていい理由にはならないわ! 騙して! 奪って!! 貴女がその『助けたい人』を助けるために! それ以上の人が死んでるじゃない!! 魔女様をどこにやったのよ!! この外道!!」
そして言い切った。荒い息が漏れる。足が立たない。グシャリと地面へ体が落ちた。
そして──なにか音が聞こえた。
『──ギシャァア!! ギシャァ……ァア!!』
「おや? 以外だ。動けるのか……だが、理性がない。やはり失敗だな。これではあの子を助けられない」
少女は、かつてセフィーと名乗ったその医者は、悲しげな目をして
それは、ライオンのような頭をしていた。それは鳥のような足をしていた。それは、全ての生物をごちゃ混ぜにしたかのような醜悪さを纏っていた。
そしてなにより、それは不完全だった。足のバランスがおかしいのか、何度も転びながらこちらへ向かってくる。心なしか私の方へ。
怖気が走った。こんな魔物なんて見たことも聞いたこともない。セフィーが答えることを期待せずに、恐怖の発散のために問いかける。
「……なに、その……化け物は……」
「化け物? ……なにを……あぁ、なるほどな。では紹介しよう。これが君の慕っている魔女様だ。残念ながら失敗例であるが」
「………は?」
意識が凍った。今、こいつはなんて言った?
「聞こえなかったのか? それが君のいう『魔女様』だ。幸いなことにまだ生きている。適切に管理すれば生きながらえるだろう。恐らく、と注釈は付くが」
「……魔女、様……?」
段々と声が弱々しくなっていく。化け物が転び、起き上がらなくなった。その足は地面の砂を削るだけ。
それを呆然と見ていた私に、セフィーが声をかけた。
「なんだ? 早くしなければ生きながらえるということすら怪しいぞ。
教えたはずだ。治療後にはアラトメル草5g、ソート石2g、アンテラの花の花弁0.5g、そしてそれらを混ぜた魔力融解液100mLが必要になると」
「……セフィー、アンタ……………」
冷たい瞳がこちらを見遣る。今分かった。以前、魔女様と私の話をしたときに彼女の瞳に灯っていたのは優しさなんかではなかった。それはきっと……『興味』だったのだ。
「──最初から……最初から! 最初から!!」
声がそれしか絞り出せない。目の前の少女の形をした化け物を殺そうと、手を伸ばして魔術を──、
「それはいただけないな。私はあの子のために生きなければならないんだ」
セフィーが手を伸ばす。ズシャリとなにかに貫かれた。ゲホッ、と暖かいなにかが漏れる。意識が霞む。いつの間にか、化け物は──きっと、魔女様だった物が近くまで来ていた。それは舌を出して、私の中から出た物を舐め取った。私の様子を気にするように何度もそれを繰り返す。
そして、私は閉じかける視界と意識を最後に、吐き捨てた。
「──……なんて言おうと……アンタの歩む道は、人じゃないわ。いつか……絶対に、報いを受け、る……」
それを最期に、女は倒れ伏した。残るのは獣が血液を舐め取る音と、一人の少女の呼吸音だけ。
そして少女は、その瞳になんの色も灯さず淡々と言い切った。
「きっとそう言われることもあるだろうと理解している。認めてくれる人が少ないことも分かっている。だが、これは私が確かに人道を歩んでいることの証でもある。
だから私は諦めない。助けるために、私は私の大切な妹を助けるために、実験を──実証をし続ける」
リリースおめでとうございます! という思いと、セフィーちゃん萌え~という思いで書きました。
シャドバを知らない人は是非こういう風に、DCGとしての面白さだけじゃなく、ストーリー性があるんだよ、ってことだけでも覚えていってくれると助かります!
設定とかの齟齬は……まあ追々ということで。