人道に乗っ取る清く正しい研究者(笑)   作:発表

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最愛の妹へ:第◆◆◆回結果報告

「今回もダメだったよ」

 

 セフィーはベッドの上で寝込むなにかに向かって話し掛けていた。その瞳は手元へと集中し、一時も揺らぐことはない。

 

「やはり、人を歪めようとするのは難しいのだろう……君なら、解決策も分かったのかな」

 

 手に持つのはリンゴと包丁。まるでそうしろと言われたかのように、その手には淀みがない。

 シャリシャリという子気味の良い音を鳴らしながら、リンゴを剥き続ける。

 

「意志薄弱な生物ですら呑まれる。人を”人”たらしめる物が揺れると、理性が消える」

 

 続ける。

 

「ああ、実を言うと理性を持った人主体の生物は完成しているんだ。ただ、完全に形がズレる。そのせいで記憶すら転げてしまってね、出来上がるのは単なる化け物さ」

 

 『喋るんだ、こう、なんというか深みのある声でね』、とセフィーは軽く笑いながら、剥き終えたリンゴを皿の上へ置いた。

 それを分けようと、包丁を上から入れる。

 

「多分声に関しては手順の問題だな。あの手順だと最終的な肉体が同一の物になるんだ。見た目もそこまで変わらない。声帯もほぼコピーさ。

 ……学派の連中はアレを『素晴らしい成果』などと言うが、私はそうは思えない。だって、アレでは君を助けられない」

 

 ザクリ、と一度深く包丁を落とす。カタン、と皿と机が音を奏でた。

 

「足りない。足りないんだ。だから……足りないから、継ぎ足す。切っての開いて次へ進む」

 

 何度もそれを繰り返す。そして、6等分されたそれを満足げに見つめると、机の上に置いた。

 

「実験と実証を繰り返す。いつか辿り着く筈だ。そのときこそ、君を完全に救うときなんだ。

 君から貰った言葉は忘れていない、もう怖がって実証を躊躇うことはしない」

 

 ベッドの上のなにかは、軽くうめき声をあげた。手がふらふらと宙を舞い、それをセフィーはぎゅっと握り締める。

 

「君の言葉を忘れたことはない。いつか必ず助ける。だから、また笑顔を見せてくれ」

 

 そしてセフィーはゆっくりと立ち上がった。椅子が引かれる。机の上のリンゴの一切れが、風に揺られて皿へと開いた。

 それを一瞥するとセフィーはカツカツと音を立てて扉へと向かう。

 

「あぁ、最後に」

 

 扉へと手を掛け、そこでセフィーはふと思いだしたように、ベッドの上の人の形をしたなにかに向けて、淡々と呟いた。

 

「──愛しているよ、我が最愛の妹よ。また会おう」

 

 キィ、と扉が開く。セフィーが消えたその空間では、誰も食べることのないリンゴと、小さな包丁だけがその存在をありありと示していた。

 

 そして、セフィーのいなくなった病室で、彼女は、()()は誰にも聞こえないほどの小さな小さな声で呟いた。

 

 

「お願い……もう、やめて……セフィー……」




正確にはこれ、二次創作というか間を想像を埋めているだけですね!
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