心優しいヒットマン   作:田舎の異音

4 / 7
第4話『重バ場クラシカル』

当日中山レース場へ行き、ドクタースパートと共にバ場を歩いてみる。すぐに僕の靴は泥まみれになった。

 

T「不良バ場だ、物凄く重いヤツだ...」

ドクター「ホクトオーちゃん苦労しそうですね...」

T「ホクトオーだけじゃないぞ。他のウマ娘もかなり苦戦するはずだ」

 

剛原「淀場じゃないか。バ場の視察か?感心だな」

T「剛原さん、今日はよろしくお願いします」

剛原「あぁ、弟弟子のお前とG1で会うのは久しぶりだな。ドクタースパートも今日はいい条件がそろってるみたいだな。お互いいいレースをしようじゃないか」

T「!(やはりドクタースパートの事をマークしていたか...)はい、もちろんです」

 

剛原さんは、僕の兄弟子である。まだ助手だったころの僕に、自分が担当しているウマ娘を任せてくれたり、指導方法を伝授してくれたりした。間違いなく今の自分があるのは剛原さんのおかげである。

 

ドクター「怖そうな雰囲気のトレーナーですね」

T「そうだね。でもとても温かい人だよ。僕の恩師さ」

ドクター「成長したところ、みせたいと思ってるんじゃないですか?」

T「!!心を読むのはやめてくれよ~...」

ドクター「分かっちゃいますって!...まぁ、見ててくださいよ。トレーナーさんの初G1、私が絶対にプレゼントしますから」

T「あぁ、信じてるよ」

 

 

 

 

 

 

 

美しいファンファーレが演奏される。いよいよ出走だ。空はぬかるんだバ場を残して完全に晴れ上がった。少し傾いた太陽が、彼女の白衣をオレンジ色に照らし出す。

 

T「きれいな勝負服だな...」

 

そう思った思ったのもつかの間で、彼女はさっと枠入りを済ます。観客が沸いていよいよボルテージは最高潮だ。

 

 

みんなが待ってる

今からいくよ

 

 

ゲートが開いた!

 

 

ドクタースパートを含め、素晴らしい優駿だけに出遅れはない。

 

ドクター「(...)」チラ

 

スタートして最初の直線、ドクタースパートがサクラホクトオーの位置を確認する。

 

ドクター「(彼女は最内...それにしてもトレーナーさんが言ってた通り、内側の子はみんな走りにくそうにしてる...)」

 

内側で固まって走るウマ娘たちを横目に、ドクタースパートは涼しげな顔でバ群を外から締め付けていく。そして1コーナーから2コーナーの中間地点で、間に2人挟んだ内側にサクラホクトオーがいる位置まできた。

 

T「(いいぞ、じーっと見てろ...そこはサクラホクトオーの一挙手一投足がわかるポジションだ)」

 

向こう正面の直線に入る。直線半ばに入ったところで、サクラホクトオーは急にスピードを上げる。そしてサクラホクトオーが内から交わしたウマ娘が、突如体勢を崩した...骨折だ!そのウマ娘の後ろと内側にいた子たちはあおりを受ける。

しかしドクタースパートは外にいたため、影響は皆無だ。サクラホクトオーにも影響はない!

 

ドクター「(ひゅ~外側に位置取ってて助かった~...あ、ホクトオーちゃんの隣が空いた...よし、ここからが勝負...!)」

 

向こう正面の直線の終わり、ドクタースパートはサクラホクトオーに並びかける!

 

ホクトオー「(...!いつもなら内側でもまれてるはずなのに!?)」

ドクター「(今日は...勝手が違うよ!)」

ホクトオー「(くっ...!?バ場が悪くて足がっ...!!)」

ドクター「(懐かしいね!故郷の.....コースがッ!)」

 

直線が終わって第3コーナーに入る!

ドクタースパートとサクラホクトオーは.........並ばないッ!!

ドクタースパートが交わしたぞ!サクラホクトオーの位置がどんどん下がっていく!

 

ドクター「(いよいよ第4コーナーね...みんな下り坂でスピードにのってるから外にふられるはず!)」

 

第3コーナーまでは前で固まっていた4人が今、スピードにふられてバラける!

 

「「道が開けた!!」」

 

T「今だ!スパートをかけるんだ!」

 

ドクター「(...って思ってそうだな~。よし!行くよ!!)」

 

最終直線残り200mのところで、ドクタースパートが伸びてきた!不良バ場を物ともせずに突っ込んできた!!

 

T「これは...勝てる!!」

 

 

 

 

 

剛原「淀場、うちのウィナーズサークルちゃんを忘れてもらっちゃ困るぞ」

T「!!」

 

 

 

 

ドクター「(後ろから!誰か!!追い込んでくる!!!)」

ウィナーズ「芝ではまだ勝ったことないけど!私だって勝ちたいさ!!」

 

ドクタースパートと同じように、バラけた間から物凄い勢いで突っ込んできたのは葦毛のウィナーズサークル!差がどんどん縮まっていく!3・2・1...!

 

その時、不意に彼女の両親、前トレーナー、横断幕を持ったファンたちの事が頭をよぎった。すかさずその映像を声にだして叫ぶ!

 

T「みんなのことを思い出せ!!お前の事を育ててくれたみんなだ!!!」

 

ドクター「(そうだ....そうだそうだ!届けるんでしょG1ッ!あと100mくらいこの脚で!...そう、みんなが育ててくれたこのスパートに、全てを懸けるッ!!!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

剛原「......おめでとう」

 

T「えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『勝ったのはドクタースパートッ!ドクタースパート...淀場です!ドクタースパートです!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アナウンサー「初のG1勝利おめでとうございます。今のお気持ちはいかがですか?」

T「ドクタースパートが最後の最後まで頑張ってくれたおかげです。本当に感謝しています。また、彼女のような素晴らしいウマ娘を育ててくださった北海道の関係者の方々、そして僕に任せてくださった方に心から感謝しています。本日は本当にありがとうございました!」

 

 

 

 

 

 

 

皐月賞後 帰り道

 

 

ドクター「トレーナーさん」

T「どうしたんだい?」

ドクター「走る前、私からのプレゼントって言ったじゃないですか」

T「あぁ、そう言ってたね」

ドクター「みんなからのプレゼントだったんですね」

T「そうだね....僕も大事なことを忘れていたよ」

ドクター「なんですか?」

T「本当に大切なのはG1でも何でもなくて....ドクタースパート、キミ自身だ」

ドクター「もう!それは....読めませんよ///」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。