僕とライスは、あの皐月賞の時と同じように濡れたバ場を視察しにきた。しかし靴に泥がついたときの心境は、あの時とは正反対だ。
T「どう思う、ライス」
ライス「少し、重いね」
T「今日はとにかく、ブルボンの後ろをついていくんだよ。前に前に、その気持ちを忘れないでね」
ライス「うん。ライス、できる限りのことをやってみるね...!」
T「あぁ、それでいいよ」
出走するウマ娘は18人、ライスは16番人気だった。ライスがへこむといけないので、この事は伝えていない。ただ、直前に調子があがってきているので、掲示板にのることをちょっぴり期待していたりする。
畑原「淀場さんじゃないですか。こんにちわ」
T「畑原くん!今日はキミの担当の子も出走するんだってね」
畑原「ええ、マヤノペトリュースっていうんですけど...」
畑原くんは顔を伏せて口ごもる。
T「何かあったのかい?」
畑原「彼女、今日が引退レースなんですよ...」
T「もしかして怪我を隠して走らせてる訳じゃないだろうな?」
畑原「僕は絶対にそんなことさせませんよ!ただ、どうしても日本ダービーを彼女のレース人生の区切りにしたいみたいで...説得しても無駄で」
T「そうだったのか、すまない....担当ウマ娘の意思を最大限尊重するところは、畑原くんの長所だよ」
畑原「ありがとうございます...あ、そろそろファンファーレが始まりますね」
T「あぁ。精一杯、応援しようじゃないか」
ライスは7枠13番、ミホノブルボンは7枠15番、マヤノペトリュースは3枠5番だ。
ライスから1人挟んで外側にミホノブルボンは、いる。
そして今ゲートが開いた。
スタートからグイグイと先頭を目指すブルボン。そのすぐ内側にぴったり引っ付いているのがライスシャワーだ。
取り敢えずスタートはうまく決まった。1コーナーを回る頃には、ライスはブルボンの2番手の位置を確保する。
ライス「(とにかく今は、ブルボンさんについてく、ついてく...!)」
T「(いいぞライス!その位置をキープするんだ!)」
畑原「(ペトちゃん今は我慢だ我慢!仕掛けるのは第4コーナーを曲がって道が開いいてからだよ!)」
ミホノブルボン「(1000m通過タイム61.2秒...1ハロン(200m)間平均12.24秒,シミュレーション通りです)」
ライス「(まだ大丈夫...まだライスはついて...いける...ッ..!)」
T「(す、凄いじゃないかライス!向こう正面に入ってもまだ2番手でレースができている...)」
ライスシャワーは何とか置いていかれまいと、歯を食いしばってブルボンを追走している!さぁいよいよ第3コーナーに入ったぞライス!ここら辺りでライスの外側を追走していたウマ娘のスタミナが切れた。ブルボンに迫るのはライスと、その内側を走るマーメイドタバンだ!
第4コーナーに入ってもなお、ライスはブルボンの追走を諦めない!それどころか、さらに距離を詰めているではないか!?それまで3バ身ほどあった差は今や1バ身まで縮まった!途轍もない精神力とスタミナによってしか成せない離れ業だ!!
T「僕はひょっとすると、ライスを過小評価していたかもしれない...」
畑原「淀場さん!見てくださいよペトちゃんが!ペトちゃんがっ!!」
T「ペトちゃん?えらく可愛い呼び方d...な、あれはッ?!」
第4コーナーを曲がって直線を向いたころ、それまで後方で待機していたマヤノペトリュースが、爆発的な末脚で上がってくるではないか!
T「これは...並ぶぞ!!」
畑原「Oh my God!! Fantastic!!!」
ゴールまで残り200mの地点で、2人は完全に横に並ぶ!しかしライスもマヤノペトリュースも、ブルボンしか眼中にない!
『ブルボン先頭ッ!ブルボン先頭ッ!ブルボン先頭だッ!!』
しかし無情にも、ブルボンとの間には4バ身ほどの距離が空いている...!
『恐らく勝てるだろう!もう大丈夫だぞ、ブルボン!』
ブルボンは、2人を余裕で引き離して快勝した!しかし、今はそれよりライスのことだ!今は少しだけリードされている!
だがゴール前100mの地点、マヤノペトリュースの脚がピタリと止まった!
そしてほぼほぼ同時にゴールする.....!!
T「一体...どっちだ?」
畑原「.......頼む!」
『1着はミホノブルボン!6戦6勝です!そして2着には......ライスシャワーです!まさかまさかの大波乱となりました今年の日本ダービー!!3着にはマヤノペトリュース!!.......』
T「お疲れさま、ライス」
ライス「お兄さま!ライスがんばったよ!!」
T「あぁ...!ダービーで2着になるなんて...ライスはホントにすごいウマ娘だよ」ナデナデ
ライス「えへへ///.....ねぇ、お兄さま?」
T「どうした?」
ライス「マヤノペトリュースさんの想い、受け取ったよ」
T「!!」
ライス「じゃぁ、ウイニングライブの準備行ってくるね!」
駆けていくライスを見送る。そういえばウイニングライブも、初めは恥ずかしくて出たがらなかったっけ。
入学したばかりの怖がりなライスシャワーはもういないくなった。すっかり一人前のウマ娘に成長してくれたんだ。そして背負うものもできた。精神的にも肉体的にも、これからもっともっと強くなって、沢山勝ってほしい。ライスの将来が、僕は今から楽しみだ。
T「これでもう、誰のところにいっても大丈夫だな!」