ジャスティスダンガンロンパX4  強くてコロシアイ再履修   作:M.T.

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Chapter.3 餓鬼は欲望に飢えている。
(非)日常編①


ふと目が覚めた。

電子生徒手帳で時間を確認すると、4時10分。

あれから、ほとんど眠れなかった。

 

小鳥遊さんと越目君が死んだ。

学級裁判を利用して私達全員を殺そうとしていた小鳥遊さんと、残酷な方法で処刑された越目君。

二人が死んだ時の光景が脳裏に刻み込まれ、未だに目を閉じると鮮明に思い出す。

朝食作りにはまだ早かったが、もう一度眠れる気がしなかったので、外を散歩する事にした。

 

 

 

ーーー 【超高校級のメイクアップアーティスト】の研究室 ーーー

 

私はまず、越目君の研究室に向かった。

前に彼の研究室に来た時は明るい雰囲気だったけれど、肝心の彼がいないとどうも暗い雰囲気に感じられる。

ふと、私の髪型のウィッグが被せられたマネキンが目に留まった。

私の顔を模ったマネキンには、彼の研究したであろうメイクが施されていた。

 

「……綺麗」

 

自分で言うのはなんだけれど、彼のメイクが施されたマネキンは思わず魅入ってしまうほど美しかった。

そういえば、彼には一度もメイクを教えてもらいに行けなかったわね。

こんな事になるなら、もっと彼と仲良くしていれば良かった。

そうすれば、事件を未然に防ぐ事ができたかもしれない。

 

「ごめんなさい。こういう時どういう顔をすればいいのかわからないの。あなたの事をどう思っていたのかも、正直よくわからないの」

 

私は、彼の事が好きだったのかもしれない。

恋愛感情かと言われると、多分違うと思うけれど…

同年代の男子とここまで仲良くなれたのは初めてだったから、私は彼の事が友達として好きだったんだと思う。

友達を失うと、こんなにも心が痛くて、虚しくなるものなのか。

 

「短い間だったけれど、一緒に過ごせて楽しかったわ。それと、あなたが好きだと言ってくれたのは嬉しかった。ありがとう」

 

私は、越目君に最後のお別れを告げて、研究室を後にした。

 

 

 

ーーー 【超高校級の獣医】の研究室 ーーー

 

小鳥遊さんの作業用のデスクの上には、私がプレゼントした猫のぬいぐるみが置いてあった。

…結局、このプレゼントが彼女との最後の思い出になっちゃったわね。

 

ふとデスクの上のパソコンが目に留まる。

私は、ほんの思いつきでパソコンに触れてみた。

何か小鳥遊さんが生前に残した手がかりがあるかもしれない。

パソコンを立ち上げてみた。

しかし案の定、パスワードでロックされていた。

試しに、彼女の名前と誕生日を組み合わせた文字列を打ち込んでみた。

 

…ダメね。

まあこんな簡単なパスワードで開いたら逆にビックリだけど。

考えあぐねていると、ふと、右にあった棚が目に留まる。

よく見ると、一列だけ本の並べ方が不自然なのに気がつく。

ほんの思いつきで、本のタイトルの頭文字を左から順に並べて入力してみた。

ええと、N、I、J…この並び方から浮かび上がる文字列は…

 

『Nijntje Pluis』

 

確か、彼女が好きだったウサギのキャラクターの名前の原語訳だ。

入力してエンターキーを押すと、開いた。

パソコンのデスクトップには、二つのPDFのファイルと、見た事のないソフトが並んでいた。

一つ目のファイルには、この学園生活を通して得た収穫が事細かに書かれていた。

二つ目のファイルには、私達全員に向けた手紙が入っていた。

私は、私宛の手紙を開いて読んでみた。

 

 

 

〜〜〜

 

腐和さんへ

 

まずあなたには、謝らなければならない事があります。

私は、あなた達を学級裁判で死なせる為に、越目君を殺しました。

保身の為に、あなた達を道連れにしようとしました。

でも私は弱い人間だから、最後まで迷っていました。

結局、裏切られるのが怖くて、皆を裏切ってしまいました。

本当にごめんなさい。

 

もしこの手紙を読んでいるのなら、あなたの手で私に引導を渡して下さい。

あなたは私と違って強い人だから、きっと真実に辿り着いてくれると信じています。

その時はどうか、私を許さないで下さい。

そして願わくば、コロシアイの犠牲者は私で最後にして下さい。

 

最後に、腐和さんとお話できてとても楽しかったです。

こんな私と仲良くしてくれてありがとう。

さよなら。

 

〜〜〜

 

 

 

この手紙を読んで、私はどうしようもなくやるせなくなった。

小鳥遊さんは、あのトリックが暴かれる事をわかってたんだ。

彼女は、私達を道連れにして自分の秘密を守ろうとした。

でも心のどこかでは、私達に自分の罪を暴いてほしかったんだ。

結局私達を道連れにはできなくて、罪を全部一人で背負おうとしていたんだ。

 

「馬鹿…!そう思ってたなら、一人で全部抱え込んで死のうとするんじゃないわよ…!」

 

私は、行き場のない感情が募るあまり、小鳥遊さんの作業用デスクを殴った。

私は結局、最後まで彼女を信じさせてあげられなかった。

もっと彼女とぶつかり合って、私達を信じさせてあげる事ができていれば、あの事件は起こらなかったのかもしれなかったのに。

私が机を殴ると、その揺れで机に置いてあったぬいぐるみが倒れた。

ぬいぐるみを見てみると、ぬいぐるみの顔に涙のシミがいくつもついていた。

きっと殺人計画を実行する直前に、このぬいぐるみを抱きしめながら、私達に裁かれる覚悟を決めていたのだろう。

小鳥遊さんがどんな思いで殺人計画を決行したのか、それを想像すると胸が締めつけられるように痛くなった。

私は彼女を許さないけど、憎む事もできなかった。

彼女は単なる被害者ではなかったけれど、彼女自身も被害者である事には変わりない。

憎むべきは、彼女を穢した連中と、最後の一線を踏み越えさせたモノクマ達だ。

 

「小鳥遊さん。私はここから出て、あなたを傷つけた奴等に必ず一生かけて償わせてやるから。どうかゆっくり休んで」

 

私は、拳を強く握りしめながら決意を固めた。

ここから出る理由ができた。

彼女の人生を踏みにじった奴等を、一人残らず捕まえてやる。

 

 

 

ーーー 食堂 ーーー

 

私が食堂に行くと、食峰君と秋山君が先に朝食を作ってくれていた。

 

「おはよう」

 

「…おう。おはよう緋色」

 

「おはよう腐和さん」

 

三人とも挨拶を返してくれたけど、見るからに元気が無かった。

あんな事があったんだもの、元気なんて出ないわよね。

今日のメニューは…

 

和食セットがご飯、白身魚の塩焼き、長芋と絹さやの煮物、ジュンサイの酢の物、コゴミの浅漬け。

洋食セットがトースト、白身魚のフライ、コーンとマカロニのサラダ、グリンピースのポタージュ、ゴールデンキウイ。

 

食峰君は、今日も肉類や赤みの強い食材を使った料理を避けたメニューにしてくれていた。

三人で朝食を作っていると、しばらくしてマナも厨房に顔を出した。

 

「おはよー」

 

マナも、見るからに元気が無かった。

マナは小鳥遊さんと仲が良かったものね。

 

「マナ、大丈夫?」

 

「うん…うちらが前向かな、生きてここば出る事なんてできんもんね」

 

私が尋ねると、マナが答える。

心なしか、少し無理しているように思える。

 

「今は無理に前を向かなくてもいいと思うわ。人はいつでも前を向いていられる程強くはないから」

 

私が言うと、マナは涙を拭いながら頷く。

私にマナの為にしてあげられる事は、彼女が折れそうな時に手を差し伸べてあげる事くらいしかないけど、少しでもマナの力になりたかった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

私が全員を呼びに行くと、しばらくして皆が揃った。

平常運転の知崎君、加賀君、目野さん、ネロ。

昨日の事で元気を失いつつも、少しずつ前を向こうとしている古城さん。

二人を失って消沈している館井君と闇内君。

聖蘭さんに至っては、昨日の事が余程ショックだったのか、全く口を利いてくれなくなってしまった。

だが前回と決定的に違うのは、古城さん、館井君、闇内君の知崎君に対する態度だ。

昨日知崎君を疑っていた目野さんは、一日休んで頭が冷えたのか普段通りに振る舞っていたが、他の三人は知崎君に対する疑念が拭い切れなかったようだ。

 

「んー、美味しいねぇ!……あれ?皆、食べないの?」

 

「…誰のせいだと思ってるんでござるか」

 

「全くじゃ。誰かさんのせいで飯が不味いのぉ」

 

「ふーん。あ、要らないならもらっちゃうよ?いいよね?」

 

「…貴様、いい加減にしろ」

 

「わーいわーい四面楚歌ー♪」

 

知崎君が三人を煽ると、闇内君、古城さん、館井君があからさまに気分を悪くする。

知崎君は、それを面白がってさらに三人を煽った。

私は、食事の手を止めると、知崎君に敵意を向けている三人に注意をした。

 

「皆、もうやめましょう。そうやって疑心暗鬼になっていたって仕方ないでしょう?」

 

「じゃがなぁ!!此奴は…!」

 

「古城さん、館井君、闇内君。あなた達は一旦頭を冷やしなさい。あんな事があった後で酷かもしれないけど、一時の疑念に身を任せて誰かに当たり散らしてたら、それこそ我が身を滅ぼすわよ。それは超高校級としてあるまじき醜態なんじゃなくて?」

 

私が鋭い視線を向けて低い声で言うと、先程まで知崎君に敵意を向けていた三人は大人しく朝食を食べ始める。

すると知崎君が、調子に乗ってしてやったりと言った表情を浮かべた。

 

「だってさ!緋色ちゃんの言う通りだよ!」

 

「知崎君。君もだよ。皆の不安を煽るような事をした君が一番悪い」

 

「はーい」

 

私に続けて秋山君も不機嫌そうに言うと、知崎君は不貞腐れながらトーストにバターとリンゴジャムを塗って齧った。

こういう時に献身的に皆のケアをしてくれた小鳥遊さんと、明るく笑い飛ばしてくれた越目君はもういない。

私は彼等のように優しくはなれないけど、私なりのやり方で皆を引っ張っていこう。

時に冷酷な面が出るかもしれない。

皆の反感を買うかもしれない。

それでも、私にできる事をやるんだ。

 

「ご馳走様」

 

「あの…もうよろしいでしょうか?」

 

そう言って手を挙げたのは、聖蘭さんだった。

聖蘭さんは、まだ精神的に回復していないのか、俯いて暗い表情をしていた。

 

「私、お部屋でお祈りをしたいので…すみません」

 

そう言って聖蘭さんが席を立とうとした、その時だった。

 

 

 

『解散?認められないわぁ!』

 

『ヘェイまた会ったなゴミクズ共!!!』

 

またあの二匹が現れた。

するとマナは、珍しくモノクマ達に辛辣な言葉を浴びせた。

 

「…前から思うとったんだけど、キミらちょっと痩しぇた方がよかて思うよ?」

 

『ハッハァ!!バカ言え!!オレが痩せたらモテすぎちまうだろうが!!』

 

『よっ!さすがブラザー!』

 

マナがモノクマ達に無自覚の暴言を吐くと、モノDJとモノクマが茶番を始めた。

すると聖蘭さんが痺れを切らした様子で口を開く。

 

「あの。用件は手短に済ませていただけるとありがたいのですが」

 

『二回目の裁判を乗り越えたテメェらのために、新しいエリアを開放してやったぜポウポウ!!』

 

「なるほどね。もう消えていいよ」

 

『あ、そう?いいんだ?せっかくアレ教えてあげようと思ったのになー!』

 

「アレ?アレって何?気になるなぁ!教えてよ!」

 

モノクマが不機嫌そうに去って行こうとすると、知崎君は目を輝かせて食いついた。

するとモノDJが無駄に大きな腹を抱えて高笑いする。

 

『ギャハハ!蓮ボーイは食いつきがいいなぁ!テメェらも見習えよ!』

 

『えー、実はですね。オマエラの中にボク達の内通者がいます!』

 

「なっ…!?」

 

「どういう事だ?」

 

『そのまんまの意味ですよ。じゃ、バイバーイ』

 

『スィーユーアゲイン!!』

 

モノクマとモノDJは、私達の不安を煽るだけ煽って去っていった。

 

「見事に嫌味だけ残していったわね」

 

私は当然、あんなものを真に受けてなんかいなかった。

仮に内通者がいたとしても、今ここで炙り出すなんて愚の骨頂だ。

でも、他の皆はそうは思わなかったようだ。

 

「嘘じゃろ…!?ただでさえ殺人鬼がおるというのに、裏切り者までおるのか!!」

 

「大ピンチですねぇ!っていうかぶっちゃけ詰んでません!?」

 

「わーいわーい阿鼻叫喚!わーいわい!」

 

「ウヌは黙っとれ!!この殺人鬼が!!」

 

「馬鹿馬鹿しい…これだからガキは嫌いだ」

 

まずいわね…

皆、モノクマ達のせいでパニックになっている。

するとマナと食峰君が、皆を落ち着ける為に前に出た。

 

「皆!落ち着こうや!そげんして疑心暗鬼になるんがモノクマ達の狙いかもしれんやろ!?」

 

「そうだぜ!!あんなもん、どうせデタラメだ!!こん中に裏切り者なんかいるわけねえだろ!!」

 

マナと食峰君は、皆を落ち着けようとした。

すると、先程から考え込んでいた秋山君が口を開く。

 

「うーん…俺、思うんだけどさ。モノクマ達は俺達の不安を煽る為にわざと『内通者』って表現してたけど、正確には『情報源』って表現が正しいよね。悪気が無くて無自覚に情報を流してるってケースもあるだろうし。仮にモノクマ達の言う事が本当で俺達の中に情報源がいたとしても、そいつが必ずしも俺達の敵だとは限らないんじゃない?」

 

さすが秋山君…

モノクマ達の言葉にも全く動揺してないわね。

 

「そうね。皆、それよりまずは探索をしない?せっかく新しいエリアが開放されたんだし」

 

「そうやな!」

 

「わーい、ボク探検大好きー!」

 

私が提案すると、マナが頷き知崎君も賛成した。

するとそのタイミングで、腕を組んで船を漕いでいた加賀君が目を覚ます。

 

「…ん。これから探索に行くのか?」

 

「加賀君…あなた、もしかして今まで寝てた?」

 

「すまん。あまりにも生産性の無い論争だったものでつい」

 

この状況で寝れるって…ある意味すごいわね。

しかも寝ててもちゃんと話の内容把握してるし。

 

「とりあえず、探索は前回通りくじでいいかしら?」

 

「うん、いいと思うよ」

 

「じゃあ早速担当を決めるわね。聖蘭さん、無理はしなくていいけどせめて探索には参加してくれない?」

 

「……わかりましたわ」

 

聖蘭さんも探索には参加してくれるみたいなので、私は更新されたマップを開いた。

見ると、校舎と研究棟の3階、それから寄宿舎のプレイルームが開放されているようだ。

校舎の方は教室が三つ、美術室、物理室、家庭科室、外国語教室、指導室。

研究棟は食峰君、聖蘭さん、闇内君の研究室が開放されている。

私は、早速くじを作って探索の班を決めた。

結果は、

 

 

 

プレイルーム:館井君、目野さん

美術室:秋山君、知崎君

物理室:私、加賀君

家庭科室:食峰君、聖蘭さん

外国語教室:マナ、ネロ

指導室:古城さん、闇内君

教室:探索が終わった班から各自自由に探索

 

 

 

…良かった。

さっきの三人は知崎君とは一緒にならなかったわね。

 

「腐和か。よろしくな」

 

「ええ」

 

今回は加賀君と一緒か…

物理室の設備とかは彼の方が詳しいだろうし、正直ありがたいわ。

 

「この女からは何の悦びも見出せぬでござる…!」

 

「あぁ!?何か言ったか!?」

 

古城さんと一緒になった闇内君は、見るからに落ち込んでいた。

闇内君あんた古城さんに失礼よ。

彼は意外と選り好みするタイプだったのね。

さて…と。

私達も探索しないとね。

 

 

 

ーーー 物理室 ーーー

 

私達は、校舎の物理室と書かれたスライドドアを開けた。

部屋には何やら巨大な機械が置かれており、実験用の机と椅子が扇状に設置されていた。

両側の壁には機械が並んでいて、後ろの本棚には物理関係の本がズラリと並んでいる。

 

「ほほう…これは素晴らしい」

 

加賀君は、珍しくテンションが上がっている様子で、真っ先に中央にある機械に走っていった。

やっぱり科学系の才能の持ち主としては、こういった設備がある部屋は嬉しいものなのね。

正直何の機械かは少し気になったので、見るからに興奮しながら機械に取り付けられた梯子を駆け上がっている加賀君に尋ねてみる事にした。

 

「その機械、何か特別なものなの?」

 

「この機械は、実験に必要なあらゆる条件を生み出す為の機械だ。中には特殊な環境下でないと難しい実験等もあるからな。この機械の開発には数十年かかったんだが、世界中の天才達が共同開発をしてようやく実現したんだ。例えば…腐和、試しにこれに乗ってみろ」

 

「えっ?」

 

加賀君は、私に何やらボードのようなものを渡してきた。

加賀君が機械を操作した直後、私の身体がふわっと浮いた。

 

「うわぁ!?ちょっと、何やってんのよ!?」

 

「試しに超伝導装置の電源をオンにしてみたんだ。これでこの設備の凄さを少しは理解して貰えただろう?」

 

加賀君は、手すりに掴まりながらドヤ顔をしていた。

いや、わかったからもう降ろして欲しいのだけれど!?

 

「いいから戻しなさいよ!危ないじゃない!」

 

「これは失礼した。設定を少しミスってしまったらしい。今すぐ戻そう」

 

私がボードにしがみつきながら注意すると、加賀君はドジを謝りながら機械を操作し始めた。

加賀君が機械を操作すると、私の身体がボードごとゆっくりと下に落ちた。

全く、油断も隙もありゃしないわ。

 

「すまん、一声かけてから電源を入れるべきだったな。大丈夫か?」

 

「大丈夫じゃないわよ!私じゃなかったらね!」

 

「確かにな。要らん心配だった」

 

加賀君が梯子から降りながら声をかけてきたので私が無事を伝えると、加賀君は何故か開き直ってきた。

…何かもう、悪気が無いのが一番タチ悪い気がしてきたわ。

 

「ええっと…確か物理室には準備室もあるのよね?そっちにも行ってみない?」

 

「そうだな」

 

物理室の探索を終えた私達は、物理準備室を探索してみる事にした。

 

 

 

ーーー 物理準備室 ーーー

 

物理準備室は小さな倉庫のような部屋になっていて、振り子や電圧計、電気棒、静電気発生装置などの実験器具が並んでいた。

加賀君もそうだけど、目野さんとかが見たら発狂しそうね…

よく見ると、備品のダンボールの中にビニールシートが入っていて、その中にメダルが入っていた。

ここには特には収穫は無さそうね。

 

「ねえ。ここにはもう収穫が無さそうだし、空いてる教室を見に行かない?」

 

「……ああ」

 

あっ、ちょっとテンションが下がった。

どんだけ気に入ったのよ。

 

 

 

ーーー 校舎3F廊下 ーーー

 

私達は、3ーA、3ーB、3ーCの順に教室を調べていった。

教室の内装は、1階の教室とほとんど変わらなかった。

3ーAの教室には、特にこれといった収穫は無かった。

3ーBの教室のボードには、

 

『何かあると思ったか!?残念!!カリスマDJのオレ様でした!!』

 

とモノDJの字で落書きがされていた。

本当にいちいち不愉快ね。

私は、教室の黒板を消してから隣の3ーCの教室に入った。

3ーCにも、特にこれといった収穫は無かった。

私達が食堂に戻ろうとした、その時だった。

 

 

 

 

 

「「ぎゃあああああああああ!!!!」」

 

突然、古城さんと闇内君の声が2階の廊下から響き渡る。

二人は確か、指導室を調べていたはずよね?

何かあったのかしら…!?

 

「二人に何かあったのかも…行きましょう加賀君」

 

「…………」

 

私が加賀君に話しかけると、加賀君はその場に立ち止まって何かを考え込んでいた。

 

「何してるの!?早く!」

 

「ん?あ、ああ」

 

私が加賀君を急かすと、加賀君は何か思うところがある様子で私についてきた。

私達は、古城さんと闇内君に何があったのかを確かめる為に急いで2階の廊下に駆けつけた。

 

 

 

ーーー 校舎2F廊下 ーーー

 

私達が駆けつけると、二人は技術室の前で尻餅をついていた。

 

「古城さん!闇内君!何があったの!?」

 

私は、先程叫び声を上げた二人に駆け寄って尋ねた。

すると古城さんは、技術室を指差しながら口を開く。

 

「ゆっ…幽霊じゃあ!!幽霊が出たんじゃあ!!」

 

「…は?」

 

「アレはきっと小鳥遊の怨霊じゃあ!!」

 

「あっ、悪霊退散でござる!!」

 

二人はパニックを起こしてわけのわからない事を喚いていた。

小鳥遊さんの怨霊…?

この人達は何を言っているのかしら?

ふと技術室の方に目を向けると、確かに小鳥遊さんと同じくらいの背丈の人影があった。

敵か味方か、そもそも何者なのか、何故こんなところにいるのか、疑問が次々と頭の中を埋め尽くしていく。

すると次の瞬間、その人影は技術室の扉をすり抜けて古城さんと闇内君の前に現れた。

 

「「ぎゃあああああああああああ!!!!やっぱり悪霊だあああああああああ!!!!」」

 

二人が身を寄せ合って騒いだ、その次の瞬間だった。

 

 

 

 

 

『いきなり現れて人を悪霊呼ばわりとは、ひどい人達デース!アテクシはそんな非科学的な存在ではないのデスよ!まあアテクシは人でもないんデスけどね!』

 

「えっ…?」

 

私の目の前には、信じがたい光景が広がっていた。

古城さんと闇内君の目の前には、小鳥遊さんにそっくりな女の子が立っていた。

でも目の前の女の子はモデルのようなスレンダー体型で、髪もプリズムのように虹色にキラキラと光っていて、目はネオンブルーの光を放っている。

冷静になって見てみると、どう見ても小鳥遊さんとは別人だ。

ネオンブルーの光を放つセーラー服を着ていて、何故か三毛猫をモチーフにしたと思われるヘルメットを装備している。

突然現れた女の子は、私達に気がつくと、パァッと笑顔を浮かべた。

 

『あーっ!ちちぃーーー!』

 

女の子は、満面の笑みを浮かべると、何故か私の隣にいた加賀君に飛びついてそのまま押し倒した。

 

「へ?」

 

加賀君がいきなり初対面の女の子に押し倒されているのを見て、私は思わず目を点にした。

というか今…『父』って言わなかった?

高校生にこんな年齢の娘がいるわけないし、じゃあ、この子は一体…?

 

『えへへへへ!驚きマシタか!?アテクシ、ちちとははとねぇねに会いたい一心で、自分で実体化ホログラムを創造したのデス!アテクシはいい子デスか?褒めてクダサイ!』

 

「ああ。まさか俺が教えなくとも実体化ホログラムを自分で作ってしまうとはな。だが、出てくる時は一声かけろ。何事かと思ったじゃないか」

 

『あっ、それは失礼しマシた!てへっ☆』

 

女の子は、ウインクをしながら自分の頭をコツンと叩いた。

『父』に『実体化ホログラム』。

この二つの単語から、彼女の正体に何となく察しがついた。

私は、それを確かめる為に女の子に尋ねてみる事にした。

 

「ねえ。あなたってひょっとして……」

 

私が尋ねようとすると、先程まで女の子を指さして悪霊だの何だの騒いでいた闇内君が嫉妬を爆発させて血涙を流しながら喚き散らす。

 

「ぬ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!加賀殿!!その女子は一体誰なのでござるか!?加賀殿だけズルいでござる!!何故拙者に紹介せずに黙っていたのでござるかぁああ!!!」

 

ホントうるさいし醜いわね。

おかげで一番聞きたかった事を聞き逃しちゃったじゃないのよ。

そして、嫉妬に狂った闇内君の奇声のせいで、他の人達も様子が気になってゾロゾロと2階の技術室の前に集まってきた。

 

「何だうるせぇぞクソガキ共」

 

「えっ、今ん声闇内くん!?何があったと!?」

 

「大丈夫か忍!!何か今すげえ声聞こえたけど!!」

 

「…はぁ。今度は何ですの?」

 

ネロ、マナ、食峰君、聖蘭さんが騒ぎを聞いて駆けつけてきた。

マナと食峰君は、さっきから何故か加賀君に懐いている女の子を見て目を丸くする。

 

「「えぇええええええええええええええ!!?誰その子!!?」」

 

マナと食峰君は、女の子を指さして同時に尋ねた。

女の子は、何故か加賀君にベッタリとくっついて甘えていた。

 

『えへへ、ちち〜♪』

 

「ち、ちちぃ!?じゃあ加賀くんはこの子の父親って事!?」

 

「マジか!?久遠オメェいつの間に子供産んだんだ!?」

 

何故か加賀君を父と呼んでいる女の子に対して、二人とも開いた口が塞がらない様子だった。

ちょっと二人とも色々混乱してるみたいだから、一旦冷静にさせた方がいいわね。

 

「ちょっと二人共。高校生にこんな大きい子供がいるわけないでしょ」

 

「あ、そっか」

 

私がツッコミを入れると、二人とも納得した。

するとその騒ぎを聞きつけて、美術室の探索をしていた秋山君と知崎君までもが駆けつけてくる。

 

「えーなになに!?何の騒ぎー!?知ってる?不思議不思議ー!って!誰その子!?知ってた!?」

 

見覚えのない女の子がいるのを見つけた知崎君は、女の子を指さして驚いていた。

秋山君も、珍しく驚いていたのか、目を点にしてパチパチさせていた。

秋山君は、口元を引き攣らせながら誰もが一番に思ったであろう事を口に出す。

 

「ええっと…色々言いたい事はあるけどひとまず…その子、誰?」

 

秋山君が尋ねると、女の子は立ち上がって満面の笑みを浮かべる。

その可愛らしい笑顔は、まるでアイドルのようだった。

女の子は、笑顔を浮かべてピシッと敬礼しながら挨拶をした。

 

『ええと、とりあえず…Hello, World!』

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の???】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の美食家】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

??? ⬅︎New‼︎

 

残り12名?

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

以上4名

 

 

 

 

 

今更だけど推し教えて

  • 腐和緋色
  • 聲伽愛
  • 玉越翼
  • 小鳥遊由
  • 知崎蓮
  • 食峰満
  • 越目粧太
  • 聖蘭マリア
  • 古城いろは
  • 加賀久遠
  • 目野美香子
  • 館井建次郎
  • 秋山楽斗
  • 響歌音
  • ネロ・ヴィアラッテア
  • 闇内忍
  • リカ

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