ジャスティスダンガンロンパX4 強くてコロシアイ再履修 作:M.T.
でもそれが良き
十七日目。
昨日探索して疲れたからか、今日は何だかよく眠れた気がする。
朝の支度を終えて趣味のミステリーを読んでいると、あのモノDJの喧しいアナウンスが鳴り響いた。
『ヘェイグッッモォォォニン!!ゴミクズ共ォォォ!!!朝の7時をお知らせするぜイェア!!!今日も張り切ってけェ!!!』
ホンット毎日毎日うるっさいわね。
ストレスったらありゃしない。
私は、アナウンスが鳴ってすぐに部屋を出て朝食の手伝いをしに食堂に行った。
ーーー 食堂 ーー
「おはよう」
「おはよう、腐和さん」
私が食堂に行くと、既に秋山君が来ていた。
秋山君は、既に食堂の掃除やテーブルセッティングを始めていた。
今日はマナ、館井君、リカの三人が厨房で朝食を作っていた。
私も朝食の準備を手伝っていると、時間通りに加賀君、古城さん、知崎君、目野さんが来た。
…やっぱり今日もネロは来てないか。
「困ったわね」
「腐和さん、もう放っときなよ。ここにいる皆は無事集まれたんだしさ」
「そうはいかないわよ。後で私が朝食を届けに行くわ」
私は、朝食会が終わったらすぐにネロに朝食を届けに行く事にした。
今日の朝食は、ご飯、鰆の照り焼き、フキの味噌汁、タマネギと絹さやの卵とじ、山菜の味噌漬けというシンプルなメニューだった。
昨日リクエストしておいた和食セットを美味しく頂き、皆で朝の報告会を済ませた後、私はネロの部屋の前に洋食セットを置いておいた。
昨日は昼も夜もちゃんと食事に手をつけられてはいたけど、流石に3回も食事会に参加しないとなると心配ね…
「緋色ちゃーん、探索いこーよ」
「……そうね」
私は、今日もマナと知崎君と一緒に探索をする事にした。
今日は昨日調べなかった研究棟に行ってみようかしらね…
ーーー 研究棟 ーーー
エレベーターで4階に行くと、目野さん、館井君、ネロの研究室が並んでいた。
私達は早速、目野さんの研究室に行く事にした。
ーーー 【超高校級の機械技師】の研究室 ーーー
目野さんの研究室の入り口は鉄製の扉になっていて、彼女のシンボルとも言えるスパナとドライバーの絵が描かれている。
私が部屋の扉をノックしようとした、その直後だった。
ドカァン!!!
「「「!?」」」
突然研究室から大爆発が起こり、爆炎と黒煙が上がった。
私と知崎君は運良く爆破を免れたものの、マナは爆発に巻き込まれて服が消し飛び、さらには爆発のせいで芸術的な転び方をして色々と際どい事になってしまっていた。
…何と言うか、デジャヴね。
ご愁傷様。
「きゃはは!まーたマナちゃんがエロエロな事になっちゃったねぇ!ねえねえ何でそんな事になっちゃうの?不思議不思議!」
「うわあああん!!なしてうちだけこうなると〜!?」
知崎君がマナを揶揄っていると、マナは困り果てた。
流石に目のやり場に困るので、私の上着を貸してあげた。
するとその時、爆発のせいか煤まみれになった目野さんが高笑いしながら出てくる。
「ハッハア!!!いやはや、まさか外に人がいるとは思いませんでした!!ごめんなさい!!」
「目野さん…あなた、今何やってたの?」
「新たな電力供給システムちゃんを作ろうとしていたのですがね、失敗しました!!よくある事です!!アッハッハ!!」
『よくある事』って…
あれだけの爆発起こしといて、よくそんなあっけらかんとしていられるわね。
殺人事件や学級裁判ではあんなに怖がってたのに、自分の趣味の事となると平気で危険な事をできてしまうあたり、いい意味でも悪い意味でも職人魂といったところかしら。
「で!!あなた方は何故ここにいるんです!?」
「研究棟の探索をしていたの。もし良かったら研究室の中を見せてもらえない?」
「そういう事でしたらええどうぞ!!私の機械ちゃん達を見せてあげましょう!!」
そう言って目野さんは、私達を研究室の中に入れてくれた。
目野さんの研究室の中はまさに機械加工工房となっていて、様々な部品や機械が所狭しと置かれていた。
作業中のデスクから漂うオイルと金属の匂いや、金属同士が擦れて火花が散る音がして、部屋の中はとても賑やかだ。
部屋の中には、目野さんが作ったと思われる機械類が並んでいて、どれも芸術品のようだった。
目野さんは、まるでサーカスのパフォーマンスでもするかのように、リズミカルかつスピーディーに機械部品を組んでいた。
「わぁ〜、美香子おねえすごいねぇ!まるで楽器でも演奏してるみたい!」
「あれでちゃんと組めてるのかしら…?」
「できました!」
そう言って目野さんが得意げに見せてきたのは、機械でできた義手だった。
「メカアームちゃん第53号です!!これは筋電義肢といってですね、神経と接続する事でまるで自分の腕のように動かす事ができるのです!さらにさらに!深海1万mの水圧にも耐え、形状記憶合金を使用しているので約百通りの変形が可能なのです!!接合部分と表面は人体に優しい素材でできているので、金属アレルギーの方でもご使用いただけます!それだけではなくてですね!!このボタンを押すと何とマッハのロケットパンチを放つ事もできるのです!!」
そう言って目野さんが手元のスイッチを押すと、義手が火を吹いて飛び上がった。
義手は天井目掛けて一直線に飛んだかと思うと、天井に激突して粉々に砕けた。
「うわーーーん!!私のメカアームちゃんがあああ!!」
「理不尽!!」
目野さんは、自分で義手を壊しておいて、何故か知崎君にスパナで殴りかかってきた。
…うん、私も理不尽だと思うわ。
目野さんの奇行が激しすぎてあの知崎君がツッコミ役になってるのが、何というかカオスね…
ーーー 【超高校級の大工】の研究室 ーーー
マナの着替えが終わった後、私達は館井君の研究室に入る事にした。
館井君の研究室は、木製の扉だった。
扉には、彼の才能をイメージした大工道具のイラストが描かれている。
私は、一応ノックをしてから彼の部屋に入る事にした。
するとすぐに館井君が出てきてくれた。
「……むっ。お前達か。どうした?」
「今、研究棟の探索をしてるの。迷惑じゃなければ研究室の中を見せてもらえないかしら?」
「それは別に構わんが…何も面白いものは無いと思うぞ?」
そう言って館井君は、私達を研究室の中に入れてくれた。
…何だか、目野さんの奇行を目の当たりにした後だからか、常識人で良識人の彼の存在が本当にありがたく感じる。
「ありがとう。じゃあ少しお邪魔させてもらうわね」
私達は、館井君の部屋に入った。
館井君の部屋の中は、ログハウス風のアトリエになっていて、デスクや棚などは全て木製のものが置かれていた。
壁一面に大工道具がずらりと並んでいて、館井君が描いたと思われる図面が棚の中に積まれていた。
何というか、職人さんの部屋って感じね…
「館井くんの部屋は全部木でできとーんやなあ!」
「やっぱり才能が大工さんだから?ねえそうなの?どうなの?知ってる?」
「これは俺の才能…というよりは、俺の趣向に合わせた造りになっているのだろうな」
「え?」
「俺は自然が好きだからな。俺自身が古い日本家屋で生まれ育った事もあって、木造建築が一番落ち着くんだ。この研究室は、俺達が最も才能を発揮できる環境を完備してある……のだと思う」
なるほどね…
館井君が木造建築が好きだから、より集中できる環境で才能を発揮できるように、研究室の内装も木造になっているのね。
「ねえ、それは今何をしてるの?」
館井君は、作業用のデスクに紙を広げて何かを描いていた。
見たところ、タワーか何かの図面のようだ。
「ああ、図面を書いているんだ」
「図面?」
「これから建てる予定だった建物の図面だ。どうしても作業をしていないと落ち着かないからな。気分を落ち着かせる為に、頭の中にあった建築物を図面に起こしていたんだ」
館井君は、机の上の図面と向き合いながら言った。
寸分の狂いもなく、図面が描き記されていく。
流石は【超高校級の大工】ね…
私が傍から図面を見ながら感心していると、館井君が少し愚痴をこぼす。
「本当は実際に身体を動かして測量や建築の下準備をしたかったんだが……こんな状況だから致し方ない」
「そうね」
やっぱり館井君も、争いを避ける為にここで暮らすという判断をしていたけど、やっぱり現状には窮屈さを感じていたのね。
私達は、館井君の研究室を少し探索した後、すぐに隣のネロの研究室に向かった。
ーーー 【超高校級のマフィア】の研究室 ーーー
ネロの研究室は、何というか、19世紀のヨーロッパを思わせる重厚感のある両開きの扉があった。
扉には、ネロの所属しているガラッシアファミリーの紋章が描かれている。
私が部屋のドアをノックして一応中にネロがいるかどうかを確認しようとした、その時だった。
「何の用だ」
中にいると思われるネロが、私達に向かって話しかけた。
私は、研究室の中を見せてもらおうと思い、ネロに声をかけた。
「研究棟の探索をしているのだけれど、迷惑じゃなければ中を見てもいいかしら?」
私が声をかけると、中にいたネロが答えた。
「………勝手にしろ」
ネロからの許可が出たので、私達はネロの研究室を探索する事にした。
ネロの部屋は全体的にシックな装いで、ペルシャ絨毯の上に高級感のあるソファーとガラステーブルが置かれている。
後ろの壁にはマフィアの勢力図を書き記した地図が、そして両側の壁には銃やナイフなどの武器が置いてあった。
さらには、地図の横にはネロのお気に入りと思われる帽子がいくつか掛けてあった。
「ここは……」
「多分、俺のファミリーのアジトをモチーフにしてるんだろうなァ。ボスは小洒落たもんが好きな人だったから、こういうアンティークとかを買い揃えてたのさ。俺は学がねえから良さがさっぱりわからねえがな」
「へえ…」
食峰君の時もそうだったけど、その人が前に活動していた場所をモチーフにしているっていうのはあるわよね。
多分、その人が才能を最大限発揮する為の工夫なのでしょうね。
ふとガラス製のローテーブルの上に目をやると、高級そうな葉巻の箱が置いてある。
「…あれ?あなた、葉巻吸う人なの?」
「まあな。本当は葉巻も嗜むんだが、ボスが嫌いだからな。自分の部屋でたまに嗜む程度にしてんのよ」
「へえ…」
「せっかく開放してもらった研究室を使わねえのも何だし入ってみたんだが、案外悪くねえな。ここにあるもんは俺に馴染む」
そう言ってネロは、部屋を全体的に眺める。
ふとネロの方を見てみると、ローテーブルの上には分解された銃の部品が置いてあった。
「ねえ、ネロくん。今何しとーと?」
「銃の手入れだ」
ネロが答えると、マナがビクッと肩を跳ね上がらせる。
…そりゃあ、内通者だって聞かされた後で銃の手入れをしてるなんて聞いたらいい想像はしないわよね。
ネロは、小さくため息をつきながら口を開いた。
「…別に殺そうだなんて考えてねえよ。ただの職業病だ。銃を手入れしてねえと落ち着かねえんだよ」
「そう……」
やっぱり、平静を保っていたネロも、いきなりこの閉鎖空間に閉じ込められて少なからず追い詰められていたのね。
私がそんな事を考えていると、知崎君が銃の部品に触ろうとする。
「ねえねえネロおにい!これはなあに?」
「触んじゃねえ」
知崎君が銃に触ろうとすると、ネロが威圧した。
私も、知崎君の襟首を掴んで止めた。
「知崎君、無闇に人の部屋にあるものを触らないの」
「ぶー…」
私が注意すると、知崎君は頬を膨らませて不貞腐れた。
ネロは、威圧こそしていたものの、知崎君に対して嫌悪感はない様子だった。
…あれっ?
ネロってひょっとして、子供が嫌いなんじゃなくて……
「あ、いけない。もう昼食の時間だから行かないと」
「あー!そういえばそうだったね!」
「先行ってくるわね。ネロ、あなたもたまには来なさいよ」
私は、他の皆に声をかけて先に厨房に向かった。
ーーー 食堂 ーーー
食堂では、既に秋山君とリカが食事の準備をしていた。
館井君は、食堂のテーブルセッティングをしてくれている。
私も早く準備しないと…
4人で昼食の準備をしていると、他の5人も集まってくる。
「二人とも、ネロは?」
「呼んだけどつまらんかったばい。ホント頑固ばいね」
「そう…」
今度こそ来てくれると思ってたけど、ダメだったか…
やっぱり、内通者だってバレたから皆と一緒に居づらいのかしらね。
今日の昼食はトルコ風ピラフ、豆のスープ、トマトとキュウリと唐辛子のサラダ、鶏肉のヨーグルト焼き、アシュレ風プディングといったエスニックなメニューだった。
ミーティングの後、私はネロの部屋の前に昼食を届けに行き、各自自由探索の時間となった。
ーーー 購買部 ーーー
私は、昨日の探索とゲームで稼いだメダルを手に、購買部に向かった。
色々と必要なものを買い揃えて、余っていたメダルでモノモノマシーンを引いてみた。
出てきたのは、黄金のカナヅチと零戦プラモデルだった。
うーん、誰にあげたら良いものか…
ーーー 4ーA教室 ーーー
「……?」
A組の教室には、既に誰かいるみたいだ。
私は、A組の教室のドアを開けて中にいた人に声をかけた。
「あなたも探索中?」
私が声をかけて振り向いたのは、館井君だった。
「むっ……腐和か。実は今、メダルが落ちていないか探していたところだったんだ」
「メダルなら、ゲームセンターのゲームで稼げばいいんじゃない?」
「……恥ずかしい話なんだが、俺はあまりゲームが得意ではないからな。こうやって地道に集めていた方が早く貯まるんだ」
なるほどね…
あ、そうだ。
館井君なら、このカナヅチぶんじゃないかしら?
「館井君。渡したいものがあるのだけど、いいかしら?」
「むっ…俺にか?」
私は、モノモノマシーンで手に入れた黄金のカナヅチを館井君にプレゼントした。
すると館井君は、僅かに目を見開いて驚く。
「……これを俺に?」
「ええ。モノモノマシーンで手に入れたの。あげるわ」
「でも…本当にいいのか?」
「私は持っていても使わないし…せっかくなら館井君が持っていた方がいいんじゃない?」
「そうは言っても、何か礼を……」
「要らないわよ。お礼目当てであげたわけじゃないし」
私が言うと、館井君はおずおずとカナヅチを受け取った。
「そういう事なら…ありがたく受け取っておこう」
館井君は、少し照れ臭そうにしていた。
どうやら気に入ってくれたようだ。
私は、自由時間を館井君と過ごす事にした。
A組の教室で、向かい合わせに座って一緒に話をした。
「館井君はどうして大工になったの?」
「……俺の家は、代々大工業を営んでいたんだ。父の仕事を幼い頃から間近で見ていた俺は、父の仕事に憧れて育ってきた。館井家の長男だった俺は、当然家業を継いだ。俺自身は父の仕事を継いだ事を誇りに思っているし、むしろ俺がうちの家計を支えていきたいと思っているんだ」
なるほどね…
元々継ぐ事が決まっていた仕事だけど、奇しくもそれが自分の望んでいた天職だったと。
憧れていたお父さんと一緒に仕事ができて、館井君もさぞ誇らしいでしょうね。
「…だが、実は俺の家は、俺が家業を継ぐまでは赤字だったんだ」
「え…?」
「ウチはどこにもない高い技術で安心して暮らせる家を建てるのを売りにしていたんだが、海外の建設会社の支店が近くに出来てからは仕事がめっきり減ったんだ。そっちの方が多少耐久性が低くても安く早く建てられるから、昔ながらの建築技術を重んじているウチからは客足はどんどん遠のいていって、優秀な技術者も買収されてしまったんだ。おかげでウチは大赤字を抱えてな…一時期は弟や妹が毎日腹を空かせていたよ」
「それで家計を支えてあげなきゃって躍起になっていたのね」
「ああ。俺は、弟や妹に腹一杯食わせてやる為に、父の仕事を継いでからはどんな依頼でも請け負った。俺の家を赤字に追いやった会社が匙を投げた要望も、全て応えてみせた。初めは大した事無かったが、少しずつ客足も戻ってきて、ウチで働きたいという優秀な技術者も集まってきたんだ。俺が世界的に評価されるようになった頃、未来ヶ峰から【超高校級の大工】としてスカウトされて、そのスカウトがさらに客足を呼んだんだ。……俺に超高校級の才能が無かったら、今頃どうなっていたか…」
そうだったのね…
初めはお父さんに憧れて始めた大工職だったけど、結果的に開花した才能が家族を救ったのね。
「俺が大工を目指したのは、家計を支える為……と言ったが、実はもう一つ理由があるんだ」
「理由って…?」
「俺の妹が、難病を抱えているんだ。治療には難しい手術が必要らしくて、医者には莫大な金がかかると言われた」
「じゃあ、妹さんの手術費を稼ぐ為に…?」
「それもある。だが一番に理由は、あいつ自身の望みだ」
「え?」
「いつか世界一の大工になって、歴史に残るような建造物を作るって妹と約束したんだ。だから俺は、その夢を叶える為に毎日現場に立って技術を積み重ねてきたんだ。絶望的事件の再来で破壊された歴史的建造物を建て直し、ある王国の王宮の建築にも携わるようになって、ようやく俺は世界一の大工として認められ、妹との約束を果たす事ができたんだ」
館井君は、真剣な表情で自分の掲げていた目標を語った。
彼がストイックに仕事を請け負っていたのは、家族を支える為だけじゃなくて、妹さんとの約束を叶える為だったのね。
「……聖蘭と闇内が外に出るか出ないかで揉めた時、俺は聖蘭側についた。一番の目標だった妹との約束は達成されていたし、何より外に出ようと躍起になる事でコロシアイが起こるのが怖かったからな。小鳥遊が越目に殺されて、外に出たいという気持ちが揺らいでしまったんだ。俺は結局、自分が怖いからとお前達の事を考えずに脱出を躊躇するような弱い人間なんだよ」
「そんな事ないわよ。こんな状況で、ずっと自分の意見を持ち続けられるほど人は強くないと思う。むしろ、こんな状況でも良識を失わずにいられるあなたは十分人としてできてると思うわ」
「………そうか」
館井君は、少し俯きながらポツリと呟いた。
ええっと…今のフォローは正解だったのかしら?
私がそんな事を考えていると、館井君が顔を上げて言った。
「腐和。俺は、お前達に感謝しているんだ」
「…え?」
「俺は今まで見た目で怖がられて避けられたり、変に頼りにされてしまったりしていたから、お前達が俺を普通の高校生として見てくれている事が本当に嬉しいんだ」
「いいのよ。当然の事だもの。何か困った事があったら何でも相談してちょうだいね」
「ああ」
館井君は、僅かに微笑みながら頷いた。
…彼の笑った顔、初めて見たかもしれない。
どうやら館井君と仲良くなれたみたい。
《館井建次郎との好感度が1アップしました》
私は、館井君と別れた後、教室の探索を続けた。
ーーー 4ーB教室 ーーー
ここは一昨日と変わったところは何もないわね。
メダルが何枚か落ちていたので、回収しておこう。
次は4ーCの教室を見てみる事にした。
ーーー 4ーC教室 ーーー
ここも一昨日と変わったところは何もないわね。
メダルが何枚か落ちていたので、回収しておこう。
ええっと…これで校舎の探索は全て終わったのよね?
まだ時間があるし、もう一度音楽室でも調べてみようかしらね。
ーーー 器楽室 ーーー
「…あ」
器楽室に行くと、ネロがレコード盤を物色していた。
昼食会には参加してなかったけど、どうやら変わりは無さそうだ。
「何をしてるの?」
「何か聴きてえもんでも無えかと思ってな。ここで探してたんだよ」
へえ…
ネロってこういうレトロなものとか好きなのね。
あ、そうだ。
昨日のクレーンゲームの景品、ネロにあげたら喜ぶかしら。
「ネロ。渡したいものがあるのだけど、いいかしら?」
「あ?」
私は、クレーンゲームで手に入れたタバコをネロにプレゼントした。
するとネロは、僅かに目を見開く。
「………いいのか?」
「我慢してるんでしょ。自分の部屋だけでなら吸っていいから」
「んじゃあ、お言葉に甘えてありがたく戴こうかね」
ネロは、そう言ってタバコを受け取った。
どうやら喜んでくれたみたいだ。
私は、自由時間をネロと過ごす事にした。
器楽室で、二人で横並びに腰掛けて一緒に話をした。
「ネロはどうして【超高校級のマフィア】になったの?」
「……俺はスラムで生まれ育ったんだ。本当の母親は誰だかわからねえ。父親には無理矢理金を盗みに行かされて、店の金を盗ったのがバレたら店主に半殺しにされた。命からがら帰ってきたと思ったら父親に金をふんだくられて、金は全部酒とクスリとギャンブルに消える、そんなクソみてえな毎日の繰り返しだったよ。だが俺が6歳の時、父親が不良に目ェつけられて呆気なく殺されて、俺は独りになった。最期までクソ親だったから、死んでも特に何も思わなかったがな」
…想像以上に壮絶な人生ね。
現代日本で生まれ育った私からしてみれば、想像もつかないような話だわ。
「そこからは、生きる為に必死だったよ。盗みや殺しも平気で繰り返した。こっちが殺らなきゃ殺られるかのたれ死ぬだけだったからな。どうしても食うものが見つからなかったら、ゴミ溜めの中から食えるもんを漁って食った。ま、平和な国で生まれ育ったお嬢ちゃんにはわからねえだろうけどよ」
「…………」
「ケンカも強くなきゃ生き残れなかったから、毎日ケンカばっかりしててよ。気がついたら、いつの間にかスラムで一番ケンカが強くなってたんだ。俺がスラムの中でそこそこ有名人になった頃、当時はまだそこまで台頭してなかったガラッシアファミリーの頭目がスラムに来たんだ。ボスは、俺の腕っぷしを気に入ってくれたみたいでよ。俺に『その力を俺達の為に使ってくれないか』って言ってきたのさ。俺は、最初は何で知らねえ奴の為に力を貸してやらなきゃいけねえんだって思ったね。でもファミリーに入ってから、そういう考えが変わっていったんだ」
「え?」
「うちのファミリーは、俺みてえな社会から必要とされねえゴミクズを分け隔てなく構成員として受け入れてんのさ。ある奴は人種差別を受けて住む場所を追われた奴、ある奴は紛争で家と家族を失った奴、国を滅ぼされて命からがら敵国の兵士から逃げてきた亡国の王子サマなんてのもいたよ。ウチの構成員は、人種や経歴、信じてる神サマ、何もかもが違う奴等が、ボスに忠誠を誓ってんだ。おかげでファミリーに入ってからはすげぇ居心地が良くてよ。いつの間にか、ボスの為に尽くす事が俺の誇りになっていったんだ。それに、守らなきゃならねえもんもできたしな」
「守らなきゃならないもの?」
「ああ。俺がファミリーのNo.2に上り詰めた頃、ボスに娘が産まれてよ。俺ァお嬢の世話係を任されたんだ。お嬢はちょうど俺が女を知った頃に生まれて、生まれてからずっと一緒にいたから、俺にとっちゃお嬢は娘みてぇなもんなのさ。ずっとお嬢の面倒を見てたせいか、お嬢と同じくらいの歳のお前らを見るとどうも情が湧いちまってなぁ……」
「じゃあ、子供が嫌いって言ってたのは…」
「遠ざけるためだ。俺が内通者だって事がバレた時に、容赦無く俺を切れるようにな」
「何言ってるの…?」
「俺は、あのテディベアに誰かを殺すよう言われたんだ。1週間以内に殺人が起きなければ、てめぇらを全員処刑するって言われてよ」
ちょっと待って、何それ!?
そんな話、今まで一言も聞いてなかったんだけど!?
聞いてた話と全然違うじゃないのよ!
じゃあネロは、私達全員を人質に取られたからモノクマ達に従ってたって事…?
そんなの、不可抗力じゃない!
「殺さなきゃ全員殺られる。だから俺は、殺人を決行する事にした。…だが、俺にはお前らを殺すっていう選択肢は無い。そんな事をしたら、それこそファミリーの面汚しだ」
「まさか………」
「俺は、俺を殺すつもりだった。だが、その前に俺の予期しないところで殺人が起きた。結局今までそんな事の繰り返しで、ここまで生き残っちまったってわけさ。だが、それも今回で終わりだ」
「え…?」
「俺は、今度こそ俺の死をもってコロシアイを終わらせる。そのつもりで独りになる事を選んだんだ。なあに、今までてめぇの為に人を殺してきた俺にはお似合いの末路だよ」
そう言ってネロは、自分で手入れした銃に弾丸を装填した。
この人が今まで人間不信の悪役を演じていたのは、私達を内通者である自分から遠ざける為だった。
ネロは、私達の知らないところで私達を守ろうとしてくれていたんだ。
彼がシチリアの英雄と呼ばれるガラッシアファミリーのNo.2にまで上り詰めたのは、その強さだけじゃない。
たとえ自分の命を犠牲にしてでも見ず知らずの人達を助けようとする、彼はガラッシアファミリーの若頭に相応しい高潔な人間だった。
だけど……
「自分の命を犠牲にするだなんて許さないわ。あなたには、私達と一緒に生きてここを出てもらわなきゃいけないの。私達を人質に無理矢理内通者をやらされてたなら尚更よ。私も何かできる事があれば手伝うから、そう簡単に死ぬなんて言わないで」
私が言うと、ネロは顔を上げて言った。
「……お前、最高にいい女だな」
私は、全く予想していなかったセリフをネロに唐突に言われて目を点にしてしまった。
そんな事言われたの初めてなんだけど……
でも、どうやらネロと仲良くなれたみたいね。
《ネロ・ヴィアラッテアとの好感度が1アップしました》
ーーー 食堂 ーーー
食堂に行くと、既にリカが調理を始めてくれていた。
調理に取り掛かってしばらくすると、館井君が夕食作りに参加してくれた。
秋山君は、食堂のテーブルセッティングをしてくれた。
今日の夕食は、ビーフストロガノフ、マッシュポテト、カブのサラダ、玉ねぎのポタージュ、杏子のゼリーだった。
今日も、皆無事に一日を終える事ができた。
人間関係は無事とは言えないけど……
明日こそ脱出の手がかりを見つけないと。
『モノクマ&モノDJ劇場』
『マイクテスッ、マイクテスッ!えー、ジャスティスダンガンロンパをプレイしていただきありがとうございます。実は、オマエラに重要な事を伝えに来たんだよ。それじゃあ改めまして…ごきげんよう、オマエラ。さて、今回の指令だが…オマエラには北海道産の高級鮭とばを買ってきてほしいクマ。あとついでに、ブラザーのイビキとオナラがうるさいからオマエラから注意してやってよね。くれぐれも、ボクからの指令だって事は内密に。なお、このメッセージは5秒後に自動的に消滅するクマ!』
ーーー 生き残りメンバー ーーー
【超高校級の警察官】
【超高校級の幸運】
【超高校級の泥棒】
【超高校級の考古学者】
【超高校級の魔術師】
【超高校級の機械技師】
【超高校級の大工】
【超高校級の音楽プロデューサー】
【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア
【超高校級のAI】リカ
残り10名
ーーー 死亡メンバー ーーー
【超高校級のバレーボール選手】
【超高校級のボーカリスト】
【超高校級の獣医】
【超高校級のメイクアップアーティスト】
【超高校級の聖母】
【超高校級の忍者】
【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】
以上7名
今更だけど推し教えて
-
腐和緋色
-
聲伽愛
-
玉越翼
-
小鳥遊由
-
知崎蓮
-
食峰満
-
越目粧太
-
聖蘭マリア
-
古城いろは
-
加賀久遠
-
目野美香子
-
館井建次郎
-
秋山楽斗
-
響歌音
-
ネロ・ヴィアラッテア
-
闇内忍
-
リカ