ジャスティスダンガンロンパX4  強くてコロシアイ再履修   作:M.T.

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(非)日常編⑤

十九日目、午前6時。

私達は、モノクマ達が用意した、某少年漫画の某念能力ゲームのパクリ…もとい、フルダイブ型のRPG『ホープアイランド』の中で一晩を過ごした。

さて…と。

腹拵えもしたし、クエストをクリアしてモンスターカードを集めないとね。

でも私達はFランク冒険者だし、まずはFランク以下のモンスターしか出てこない初級者向けのクエストで地道にレベル上げしてから、脱出チケットを手に入れられるBランク以上のクエストに挑戦しないと。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

数分後。

私達は、レベル上げの為に初心者向けのクエストに挑戦していた。

次々と襲ってくるスライムを炎の初級魔法と剣の二刀流で倒していったものの、本当に最低限の装備と初級魔法しか持っていなかったので、案の定すぐにスライムに囲まれてしまった。

 

「わあああ!?どうしましょう囲まれました!」

 

「ちょっと待ってて。今そっちに…」

 

「ぎゃああああああ!!」

 

「目野さん!」

 

私が目を離したちょうどその時、目野さんがスライムに襲われてしまった。

しかし、スライムにやられたはずの目野さんはピンピンしていた。

 

「…って、あれ?何ともないですね!さっきよりちょっとだるくなったような気がしますが!」

 

目野さんがケロッとしていると、突然モノクマが現れる。

 

『うぷぷぷ!ゲーム内のモンスターの攻撃は、オマエラの身体には反映されないんだよ!モンスターにやられて死人が出たらコロシアイもクソもなくなっちゃうからね!でもその代わりやられるとちゃんとHPが減って、HPが0になると全身疲労で動けなくなるので注意して下さい!』

 

モノクマは、要件だけ伝えるとその場から消えた。

さっきまでスライムにやられていた目野さんは、ピンピンした様子でスライムを斬り伏せていた。

 

「なるほど!じゃあ極力やられない方がいいんですね!」

 

「そうね。ちょっと役割分担を考えた方がいいかもしれないわね。私とネロが攻撃するから、目野さんと知崎君は回復をしてくれる?」

 

「うう…出来れば攻撃役をやりたかったんですが…わかりました!!」

 

目野さんは、若干不本意そうにしつつも回復役に回ってくれた。

私とネロがそれぞれ剣とナイフでモンスターを倒していき、モンスターカードを集めていった。

知崎君と目野さんが私達を回復してくれるおかげで、休みなしで戦い続ける事ができた。

小一時間ほどひたすらモンスターカードとアイテムを収集していき、少しずつ力が増していく感覚を覚えた。

やっぱりモンスターを倒せば倒すほど経験値とレベルが上がっていくのは、他のRPGと共通している部分よね。

 

そしてとうとうダンジョンの最深部に辿り着き、ボス戦に突入した。

しかし、やっぱり私とネロだけでボスに挑むのは負担が大きく、ボスを倒せる気がしなかった。

私は、ボスの炎の息を避け切れずに右脚に掠ってしまい、その分のダメージを負ってしまった。

熱くもないし痛くもないけど、右脚が鉛のように重い。

 

「くっ…目野さん!回復!」

 

「あれ!?使えません!どうしてでしょう!?」

 

「MP切れね…」

 

「ボクももうMP残ってないよー」

 

「チッ、ここまでか……」

 

HPもMPも、もう3割も残っていない。

このままじゃ負ける。

私達がそう確信した、次の瞬間だった。

 

「ボクに考えがあるよ!皆、1分時間を稼いで!」

 

知崎君は、いきなり私達に向かって叫んできた。

ネロは知崎君の発言に片眉を上げていたが、私はすぐに彼の意図に気付いた。

 

「はあ?てめぇ、いきなり何を…」

 

「……そういう事ね。わかったわ。ネロ、手伝って」

 

「チッ…ちゃんと勝算はあるんだろうな?」

 

私がネロに指示を出すと、ネロはナイフを構え直した。

私とネロは、知崎君に言われた通り、ひたすらボスに攻撃を繰り出して時間を稼いだ。

私とネロがボスに攻撃を仕掛けている間、知崎君はひたすらカードを手裏剣のように投げていた。

 

「えいえい!」

 

知崎君の投げたカードは、天井やボスの身体に刺さっていく。

どう見てもそれが決定打になるとは思えなかったが、私達はひたすら時間を稼いだ。

…でも、身体が鉛のように重くて思うように動かない。

もうそろそろHPが切れる頃ね。

私が切れた息を整えていたその時、ちょうどボスが斧を振り下ろそうとしていた。

するとその時だった。

 

「後ろに回避!」

 

知崎君が大声で叫び、私とネロは反射的に後ろに跳んだ。

するとその直後、天井やボスの身体に刺さっていたカードが一気に粗大ゴミや巨大な岩、武器などに変わる。

 

「喰らえー!『セイクリッド・重み』!!」

 

知崎君がそう叫びながら右手の人差し指を振り下ろした瞬間、ゴミの流星群がボスに降り注ぐ。

一撃一撃は大した事なかったが、何十もの武器が一気に降り注いだ事でボスの体力は一気に削られ、そのままゴミの下敷きになった。

思いもよらない方法でボスが倒れると、知崎君はニコッと笑顔を浮かべながらこちらを振り向き、ピースサインをした。

 

「イェーイ☆」

 

私は、知崎君の使った裏技に素直に感心していた。

『カードは1分以内にグリモアに納めないと元のアイテムに戻ってしまう』というルールを聞かされていたけど、まさかそのルールを利用してモンスターを倒してしまうとはね。

魔法を使うたびにMPが消費されるから今の知崎君にはカードを普通に使う事はできないけど、この1分ルールを利用すればMP関係なく強制的にカード化が解除されるっていう算段だったわけね。

考えたわね。

さすが、【超高校級のプロゲーマー】の才能を盗んでいるだけあるわ。

 

「……えーっと?これでこのダンジョンはクリアって事でいいのかしら?」

 

「みたいだね〜!あ、何か宝箱があるよ!」

 

知崎君は、モンスターを倒した先にあったキラキラ光る宝箱を指差した。

すると宝箱が開き、中からワンドの4とワンドの5のカードが出てきた。

ワンドの4の入手条件は炎の島のFランクのダンジョンを攻略する事、ワンドの5の入手条件はFランクのダンジョン内のアイテムとモンスターを全て集める事だったのね。

こうやってゲームを攻略していけば、少しずつ魔法のタロットが増えていくわけか。

私達は、ダンジョンを抜けると現在の進捗を他の班に報告した。

 

「腐和よ。私達は炎の島の最初のダンジョンを攻略して、ワンドの4と5のタロットを入手したわ」

 

『俺達は水の島でカップの2までのタロットを入手したぞ』

 

『俺達は土の島でペンタクルの1のタロットを手に入れたよ』

 

なるほどね。

これでタロットは8枚集まったって事でいいのかしら?

…タロットが溜まっていくのはいいけど、脱出チケットを手に入れるのはまだまだ先になりそうね。

 

「次は風の島に行ってクエストをやりましょう!」

 

「………」

 

目野さん、ものすごく元気ね。

私はずっとぶっ通しで戦ってたし、少しは休憩が欲しいところだわ…

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

30分後、近くの喫茶店で休憩を挟んだ私達は、クエストをしに風の島に足を運んだ。

飛行船に乗って風の島に着くと、知崎君が突然立ち止まり、人差し指をかざしてぼんやりと眺めた。

何をしてるのかしら…?

 

「知崎君、早く行くわよ」

 

「はーい」

 

私が声をかけると、知崎君は私についてきた。

それから私達は、3時間ほどかけて風の島の探索と最初のダンジョンの攻略をした。

これで全ての島のFランクのダンジョンをクリアし、ちょうど昼になったので、皆で風の島の定食屋でミーティングを開いた。

 

「私達は、炎の島の最初のダンジョンの攻略、風の島の探索と最初のダンジョンの攻略をしたわ。皆は?」

 

「俺達は、今さっき土の島のEランクのダンジョンをクリアしたところだよ」

 

「俺達は、水の島と炎の島のEランクのダンジョンをクリアしたぞ。より高いランクのダンジョンをクリアするとレアな武器が増えるらしい」

 

皆はもうEランクのダンジョンを攻略済みなのね。

…というか加賀君、このゲームを純粋に楽しんでない?

 

「それで、風の島を探索していて気付いた事があるのだけれど」

 

「気付いた事?何、緋色ちゃん」

 

「この島の位置関係よ。この異世界は、おそらくスタート地点からはじまりの草原、炎の島、風の島、土の島、水の島の順に一直線に並んでるんだと思うわ」

 

そう言って私は、手作りの異世界の地図を見せた。

私が地図を見せると、皆がその地図を一斉に見た。

 

「なるほど…だから水の島と土の島は飛行船で行こうとすると時間がかかったんだね」

 

「ええ。この異世界で売ってる地図は、その島単体の地図しかないから確証はないけど」

 

「うーーーん……」

 

私が自分の推測を話すと、知崎君が私の手作りの地図と睨めっこしながら唸り声を上げる。

 

「知崎君、どうしたの?」

 

「ねえ緋色ちゃん。知ってる?この飛行船って、どの島から乗っても必ず島の一番真東に着くんだよ。何で全部同じ方角に着くんだろうね?」

 

「え?」

 

「単純に島への到着時間を短縮したいなら、最短距離になるように停めればいいわけじゃん。例えば炎の島の北端から出発して、風の島の南端に着くようにすれば移動時間が少なくて済むでしょ?そうしなかったのは何でなんだろうね?」

 

「あ……」

 

知崎君の言う通り、島の位置関係が私の推理通りなら、最短距離を結ぶように飛行船を飛ばした方がタイムロスが少ないはず。

なのにどうしてどの島も真東に飛行船が着くようになってるのかしら?

 

「それにボク達、今まで一回も飛行船が飛んでるとこを見た事が無いよね?誰かが飛行船を使ってるんだとしたら、他の誰かが飛行船で飛んでるところを見ててもおかしくないのに」

 

「確かに!言われてみれば、飛行船が飛びよーとこ見た事なかね!」

 

私達は、ミーティングで情報交換をしつつ、食事が終わるとすぐに探索とクエストをした。

2時間ほどかけて風の島のEランクのクエストを攻略し、さらに2時間かけてDランクのクエストをクリアした。

私達が風の島のEランクとDランクのクエストをクリアしている間、秋山君達は土の島と水の島のDランクのクエストに、加賀君達は炎の島のDランクとCランクのクエストに挑戦していた。

タロットもワンドが11枚、ソードとカップとペンタクルが9枚ずつ、38枚集まった。

早朝から夕方にかけて休みなしでクエストに挑戦して順調にレベル上げをして、全員がDランクのクエストをクリアする頃にはゲームも半分ほどクリアしていた。

ちょうど秋山君達が水の島のDランクのクエストをクリアした頃、私達は水の島のレストランでミーティングを開いた。

 

「ようやく全員Cランクにまで漕ぎつけたわね…」

 

「この調子だと、明日には全員分の脱出チケットを手に入れられそうだね」

 

「ここまで長かったのぉ」

 

「本当にね……」

 

古城さんが自分で自分の肩を揉みながら言うと、秋山君もため息をついた。

古城さんと館井君はRPGの基本的なルールすら知らなかったから、そこからCランクプレイヤーになるまで教え込むのは相当苦労したでしょうね。

私達は、それぞれ購入したアイテムや魔法カード等を交換して、攻略中に得た情報も交換した。

 

「じゃあ、今から就寝時間まではそれぞれCランクのクエストを攻略してくって事でいいのかな?」

 

「そうだな。あちっ」

 

秋山君が言うと、加賀君は角砂糖をたくさん入れた甘ったるいコーヒーを飲みながら頷いた。

すると、知崎君がストローでソーダを飲みながら私に話しかけてくる。

 

「ねぇー、緋色ちゃん。今日くらいあのエロエロホテルに泊まってもいいでしょ?どうせ明日になったら脱出チケット入手できるんだからさー」

 

「ダメに決まってるでしょ。今は1Gも無駄には出来ないのよ」

 

「ドケチ!」

 

「ドケチで結構よ」

 

地崎君は頬を膨らませて文句を言っていたけど、今は資源やお金を無駄にできないのは事実だし、何より私自身がああいうところに泊まりたくないのよ。

というか逆に、どんだけあの宿に泊まりたいのよ。

私が知崎君の執念に呆れていると、ネロが腕と脚を組んで私に同調した。

 

「同感だな。次素材を無駄遣いしやがったらシメるぞクソガキ」

 

「ぶー…」

 

ネロが知崎君に釘を刺すと、知崎君は不貞腐れてストローでソーダをぶくぶく吹いた。

最初は私もネロも初心者だったけど、今ではすっかりこの世界に馴染んできたわね。

正直、某少年漫画の某カードゲームのパクリゲーだと舐め腐ってたけど、このゲームを通してあそこまでネロと協力し合えるとはね。

ついこの前まで険悪だったとは思えないわ。

私は、紅茶を飲みながらネロに話を振った。

 

「ネロも何だかんだでクエストに挑戦するのも満更でもないんじゃないの?」

 

「まさか。脱出チケットが欲しいから仕方なく協力してやってんだよ。このクソゲーから脱出できると思えば、てめぇらと手を組むのだって安いもんさ」

 

ネロは、ソファーにふんぞり返りながら悪態をついた。

するとそれをよく思わなかった秋山君が、舌打ちしながらネロを睨んだ。

 

「腐和さんが皆で脱出する為に頑張ってくれてるのに、何その態度?」

 

秋山君がネロに対して不満を漏らすと、ネロが秋山君を睨み返す。

 

「……あ?」

 

「ぶっちゃけて言うけど俺、あんたをここから脱出させるの反対なんだよね。内通者だって事を差し引いても、態度が悪過ぎるだろ。大体、今までミーティングにも参加せずに単独行動を取ってた人に脱出チケットを使わせる義理なんて無いんだけど?」

 

「はっは、たった一日で随分と嫌われたもんだなぁ。だがまあ、お前の言う事が正しいと思うぜ?こんな近くに内通者がいるってのに、この期に及んで一緒に脱出しようだなんて甘ったれた考えができるお坊ちゃんお嬢ちゃんの集まりだから殺人が起こるんだよ」

 

「……は?」

 

「そもそも最初の殺人が起きたのだって、てめぇが幼馴染みの行動を制御できなかったせいじゃねえか。そこからドミノ倒しみたくコロシアイが起こってったんだろ?自分の事は棚に上げてよくもまあそこまで人の事を責められたもんだな、Mr.秋山?」

 

「お前……」

 

ネロがハンッと鼻で笑いながら秋山君を挑発すると、秋山君はネロに対して敵意を剥き出しにする。

これはまずい。

私がネロに話を振ったのがいけなかったわね。

 

「やめなさい、二人とも!」

 

私が二人の喧嘩を止めようとした、その時だった。

 

 

 

「もうやめてよ!」

 

マナは、両手でテーブルを叩きながら立ち上がった。

マナは、ポロポロと目から涙をこぼしながら口を開いた。

 

「響ちゃんの事は何も秋山くんだけが悪かったわけやなかし、ネロくんだって何も望んで内通者になったわけやなかばい!」

 

「たとえ不本意だったとしても、結局俺達を売った事に変わりは…」

 

「もし!!」

 

「!」

 

「もし…!『1週間以内に殺人が起こらなうちら全員ばオシオキする』って言われたら…!それでも内通者にならん道ば選ぶ事がでけたて思う!?」

 

マナは、泣きながら本当の事を打ち明けた。

私はネロから聞かされてたから知ってたけど、まさかマナも知ってるとは…この場でそれを言うとは思わなかった。

マナが涙ながらに訴えると、秋山君は唖然とした表情でネロの方を見た。

 

「……は?」

 

「ネロくんは、うちらば守る為に内通者になったっちゃん!やけん…もうネロくんば悪う言うんなやめて!!ううっ…うわぁあああん…!!」

 

本当の事を語ったマナは、その場で泣き崩れた。

すると秋山君は、目を見開いてマナに詰め寄った。

 

「…ねえ。それどういう事?」

 

秋山君は、マナの発言の真偽を確かめようとマナに詰め寄った。

ここから先は私が話した方が良さそうね…

 

「そのままの意味よ。ネロは、1週間以内に殺人が起こらなければ私達をオシオキするって脅されてたの。だから私達を守る為に内通者になって、自分で自分を殺そうとしていたのよ。ネロが今まで単独行動を取っていたのは、私達に踏み込ませない為だったの」

 

「じゃあ…!歌音が玉越さんを殺したのは…!?」

 

「あれは俺の予想外の出来事だった。俺は6日目の夜に自殺するつもりだったんだが、まさかそれより前に殺人が起こるとは思わなかった。てめぇらを守る為にクマ公に魂を売っておきながら殺人の連鎖を止められなくて、自分で自分が情けねえよ」

 

ネロは、帽子の鍔で自分の目元を隠しながら本心を語った。

彼は強かったから、強すぎたから、私達の為に自分を殺すという判断ができてしまった。

私は、彼の強さに、ガラッシアファミリーの若頭としての誇りにつけ込んで殺し合いの口火を切らせようとしたモノクマ達が許せなかった。

 

「ネロ。あなたがどれだけの覚悟でその決断をしたのかは、よく伝わってきたわ。だけどこのまま死に逃げなんて許さないわよ」

 

私は、ネロの目をまっすぐ見て言った。

すると、さっきまでずっとコーヒーに苦戦していた加賀君も口を開く。

 

「どんな事情があろうと、俺達に黙ってモノクマ達に魂を売った罪は重い。その罪は、俺達の脱出を死ぬ気で手助けする事で償ってもらう」

 

「加賀君…」

 

「どのみち、唯一黒幕と接点を持っている君に死なれたら俺が困る。今の所、君だけが黒幕に繋がる唯一の手掛かりなんだ」

 

加賀君は、すっかりぬるくなったコーヒーを飲みながら言った。

すると古城さんは、加賀君の肩をバシバシと叩いた。

 

「ガハハハ!!ウヌ、老け顔のくせに良い事を言うのぉ!」

 

「老け顔はやめてくれ」

 

「ワシはもちろんお主らに賛成じゃぞ。ここで泣き言を言っていては、下僕も浮かばれぬからのぉ!」

 

古城さんは、愛刀の斬殺丸を私達に向けながら言った。

彼女は、闇内君と接点を持つまでの彼女なら到底考えられないような、強い芯を持っていた。

きっと彼女も、この学園生活を経て成長したのね。

 

『アテクシも、ネロクンには生きていてもらいたいのデス。一緒に脱出方法を探しマショウ』

 

「リカが言うならそうしましょう!!」

 

「……そういう事情なら異論は無い」

 

「きゃはは、良かったねぇネロおにい」

 

「………」

 

リカ、目野さん、館井君、知崎君も、ネロと一緒に脱出方法を探す事に賛成してくれた。

残るは、ずっと黙り込んだままの秋山君だけだった。

 

「…わかったよ。今死なれたら俺のせいで死んだみたいで胸糞悪いし。俺も皆で脱出方法を探す事に賛成」

 

秋山君は、頭を掻きながらソファーに座った。

よかった、皆賛成してくれたみたいだ。

その後私達はCランクのクエストに挑戦し、全員Cランクのクリア報酬を得た。

一日中クエストに挑戦し続けて全員疲れていたので、この日は明日に備えて早めに土の島の宿を借りた。

今日借りた宿は、Cランク冒険者に相応しいそれなりに綺麗な宿で、バルコニーもついていた。

…それは良いのだけれど。

 

「ダブルベッドときたか…」

 

私達が借りたのは、ダブルベッドが置かれた部屋だった。

しかも空き部屋の関係で5部屋しか借りられなかった。

話し合いの結果、私とマナが1号室、古城さんと目野さんが2号室、加賀君とリカが3号室、館井君とネロが4号室、秋山君と知崎君が5号室に泊まる事になった。

 

「えへへへ、緋色ちゃん同室やねぇ」

 

私と同室になったマナは、枕を抱きしめながらニヤニヤしていた。

私と一緒なのがそんなに嬉しいのかしら…?

皆が明日に備えて眠る中、秋山君だけが夜遅くまでバルコニーで夜空を眺めていたので、私は秋山君に声をかけた。

 

「秋山君。まだ寝ないの?」

 

私が声をかけると、秋山君がポツリと呟く。

 

「…俺さ。何やってんだろうな」

 

「え?」

 

「皆はネロさんの事を許して一緒に脱出する方法を探そうとしてるのにさ。俺だけガキみたいに意地張って、カッコ悪いよホント。あの人は自分の魂を売ってまで見ず知らずの俺達を守ろうとしてくれてたのに…でも、どうしても、俺達を騙し続けてたあの人の事が許せないんだよ」

 

秋山君は、俯きながら震える手を握りしめていた。

きっと、ネロの事情を知らずにあんな事を言った自分が許せないという感情と、それでも自分達に何も言わずにずっと騙し続けていたネロが許せないという感情が入り混じって、自分でもどうしたらいいのかわからなくなっているのだろう。

 

「あなたは優しい人だと思う」

 

「…俺が?」

 

「自分を騙してた相手を許せないと思うのは、その人の事を本気で信じてたからだと私は思うの。それに、そうやって自分の行動を悔いる事ができるのは、少なからずあなたもネロの事を仲間だと思ってたからでしょ?」

 

私がバルコニーの手すりに寄りかかって言うと、秋山君は私の方を見た。

 

「大丈夫よ。あの人は素直じゃないけど、根はとても優しい人だから。あなたの事もとっくに許してるわよ」

 

「…………」

 

私が言うと、秋山君は手すりに突っ伏した。

するとその時だった。

 

「緋色ちゃん!何しよーと!?うちというものがありながら!」

 

いつの間に…

この様子なら、最初から見てたわね。

 

「違うのよ、私はただ悩みを聞いてただけよ。というか、秋山君には響さんが…」

 

「この浮気者ーっ!」

 

私は弁解しようとしたけど、マナは聞く耳を持たず枕を投げてきた。

うわ、意外と力強いわね。

私が荒ぶるマナを宥めていると、秋山君はそれを見て笑った。

でも私達とは他に、誰かの視線を感じた。

その視線の正体はわからないまま、私達は部屋に戻って眠りについた。

 

 

 


 

 

 

『モノクマ&モノDJ劇場』

 

 

『うへぇ〜…大変な目に遭ったぜ…』

 

『んん!?どうしたのブラザー!?でもまあこれはこれで中々絶望的で面白いか!』

 

『ヘイ聞いてくれよブラザー、ちょうどさっき見つけた定食屋でステーキ定食注文したらよぉ…知らねーうちにエレベーターに乗せられて、地下通路みてぇなとこに通されてよぉ…そこで小太りのオッサンにジュース貰ってな?それ飲んでから腹いてえのなんのって!』

 

『まぁったく…いっつも暴飲暴食ばっかりしてるから食べ過ぎでお腹壊したんじゃないの〜?全然動かずにくーちゃねばっかしてるからそうなるんだよ!ちょっと100キロくらいマラソンしてきた方がいいんじゃない?』

 

『っしゃ、んじゃあ腹ごなしに走ってくっか!!その後は豚の丸焼きと…あとは寿司だな!』

 

『いやぁ〜、動けるデブの底力って恐ろしいよね!やはり馬力…!この世界、何でも馬力がものを言うんだよ』

 

 

 


 

 

 

二十日目、午前6時。

私達はBランクのクエストに挑戦する為、ダンジョンに向かった。

私、秋山君、マナ、古城さん、ネロが土の島と風の島を、加賀君、館井君、知崎君、目野さん、リカが水の島と炎の島のクエストをする事になった。

私達は土の島のダンジョンを攻略した後、風の島のダンジョンに挑んだ。

 

「俺が正面から攻め込むから、ネロさんは右翼、腐和さんは左翼から攻撃!」

 

「「了解」」

 

「聲伽さん古城さんは殿を頼んだ!」

 

「うん!」

 

「ガハハハ!!ワシに任せい!」

 

私達は、5人で協力し合ってモンスターを倒した。

風のダンジョンを攻略し、全員クリア特典も手に入れた。

私達が風のダンジョンを攻略していた頃、炎のダンジョンに挑んでいた5人はというと。

 

「うわあ出たあ!!カルシファーだ!!」

 

「私達についてきますよ!!どうしましょう!?」

 

「…俺はもう回復カードは無いぞ」

 

「助けて〜!リカえも〜ん!」

 

「君はリカを何だと思ってるんだ」

 

『アテクシにお任せクダサイ!アクアトルネード!』

 

何だかんだで、炎の島のクエストをしていた皆もゲームを楽しんでいたみたいだ。

私達は、4つのBランクのクエストをクリアし、無事モンスターカードも40種集まった。

これで脱出チケットの入手条件はクリアしたので、あとはこれをトレードショップに持って行って脱出チケットと交換してもらうだけだ。

私達は、早速風の島のトレードショップに行って店主にカードを見せた。

 

「はい、モンスターカード20種類、確かに受け取ったよ。じゃあ脱出チケット6枚と交換ね。脱出チケットは、カードの状態じゃないと使えないから注意するんだよ」

 

そう言って店主は、袋詰めにされた脱出チケットのカードを渡してきた。

これでノルマは達成した…と言ったところかしらね。

するとその時、私のグリモア宛に電話がかかってくる。

 

『腐和。そっちはどうだ』

 

「私達は脱出チケットのカードをゲットしたわよ」

 

『そうか。俺達もちょうどチケットを6枚手に入れたところだ』

 

「じゃあ一旦はじまりの草原に集合しましょう」

 

『…あっ』

 

私がグリモアを使って加賀君達と話をしている間、知崎君の声が聞こえてきた。

…さては何かやらかしたわね。

 

「どうしたの?」

 

『…ごめん皆。脱出チケット、間違えてカード化解いちゃった』

 

…………は?

ちょっと待って、今こいつ何て言った?

 

「このバカガキ…!」

 

「…君さ、本当に何やってんの?」

 

『えー、だってぇ!グリモアにしまうの忘れてたんだもぉん!ボクの可愛さに免じて笑ってゆるしてにゃん?』

 

『…知崎クンにチケットを持たせたアテクシ達がバカデシたね』

 

知崎君の愚行に、全員が呆れ返った。

この子はどうしてあんな顔をして平然とこんなバカな事ができるのかしらね。

 

「…仕方ないわね。チケットならまだこっちに6枚あるから、私の分ともう一枚あげるわ」

 

『ラッキー☆じゃあそのカードボクにちょーだい』

 

「ふざけんなてめぇはカード化解いた責任で居残りだ」

 

『ぶー…』

 

結局、知崎君が向こうの皆の分のチケットをオシャカにしてしまったので、私達のチケットを2枚向こうの皆に分けた。

向こうは話し合いの結果、館井君と目野さんが脱出し、知崎君、加賀君、リカの三人は自力でチケットをもう一度手に入れる事になった。

 

「じゃあ皆は先に戻ってて。私は知崎君達と一緒にカードを…」

 

「待て」

 

私が脱出チケットを使って脱出しようとする皆を見送るのを止めたのは、ネロだった。

ネロは、自分のグリモアから脱出チケットを取り出して私に手渡してきた。

 

「やるよ」

 

「…えっ?でも…」

 

「よく考えたら、今まで単独行動取ってた俺にはカードを受け取る権利は無えからな。お前が先に抜けろ」

 

そう言ってネロは、右手をヒラヒラ振った。

私達は、一旦ゲームを抜け、現実世界で探索をした。

3時間くらい皆で手がかりを探索をしたけど、特にこれといった収穫は無かった。

 

「うーん…特に収穫は無かったね。異世界に行ってる間にどこか変わったとかいうのも無いみたいだし」

 

「そうね」

 

「んー…やったらもう異世界に戻らん?リカちゃん達待たしぇてしもうてるし」

 

「じゃのぉ」

 

現実世界には特に収穫は無さそうだったので、私達は一旦異世界に戻って加賀君達と合流する事にした。

転生ルームに戻り、ゲーム用の椅子に座り、ヘッドセットを装着してスイッチを押す。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「……………ん」

 

気がつくと、最初の部屋にいた。

私がキョロキョロとあたりを見渡していた、その時だった。

 

 

 

『HAHAHA!!異世界へようこそ、プレイヤーガール!!』

 

どこからか、神聖幾何学模様をモチーフとした謎の乗り物に乗ったモノDJが現れた。

モノDJは、私の顔を見るなり首を傾げて尋ねる。

 

『んんっと?テメェは……誰だっけ?』

 

はいはい、プレイヤーの確認ね。

ログインする度にいちいち名乗らなきゃいけないの、面倒くさいわね。

 

「腐和緋色よ」

 

『ああ、そうそう!ヒーローガールだったな!んじゃあそこのドアを開けて異世界に行ってくれよな!』

 

そう言ってモノDJは、光る扉を指差した。

ここまでは最初とほとんど同じ流れね。

私は、早速加賀君達と合流するためグリモアで通信をした。

 

「加賀君?腐和よ。今ちょうど異世界に来たところよ」

 

『そうか。そっちはどうだった?何か変わったところはあったか?」

 

「特に何も。そっちは?」

 

『タロット3枚と脱出チケット9枚をゲットしたぞ。どうせまた君達がこちらに戻ってくるだろうと思って買っておいたんだ。また外に出る用事があったらいつでも俺に声をかけろ』

 

「ありがとう」

 

加賀君達、もう脱出チケットを9枚も手に入れていたのか。

彼らばかりにこっち側にいさせるのも申し訳ないし、今度は私達がカードを集めないと。

そんな事を考えながら私が待っていると、マナが出てきた。

 

「ごめんお待たせ!」

 

私とマナは、『はじまりの草原』を抜けると、すぐに加賀君達のいる水の島へ向かった。

私達が水の島に行くと、秋山君がこっちに来て話しかけてくる。

 

「やあ、腐和さん。聲伽さん。こんにちは」

 

こんにちはって…

やけに能天気な……

…ああ、違う。

今は秋山君はログアウトしてるから、このキャラクターはNPCなのね。

 

その後私達は、加賀君達と合流して情報共有をした。

Aランクのクエストに挑戦する為、必要なものを揃えに行った。

 

「腐和、聲伽。悪いが買い出しを頼まれてくれるか?」

 

「はーい!行こ、緋色ちゃん!」

 

「ええ」

 

「俺は銀行で貯金を下ろしてくる。金は立て替えておいてくれ」

 

「わかったわ」

 

加賀君にパシ…お遣いに行かされ、私とマナは素材を集めに次の島に行った。

するとその時、館井君が歩いてきた。

 

「…むっ。腐和か。今日はいい天気だな」

 

いい天気って…

やけに呑気ね。

私は、声をかけてきた館井君の態度に少し疑問を抱きつつ、マナと一緒に島のショッピングモールで買い出しをした。

 

「疲れたー!」

 

「これだけ買っておけば大丈夫そうね」

 

「ご苦労。買い出し分の金だ」

 

「ありがと………

 

 

 

 

 

ピンポンパンポーン

 

 

 

『えー、オマエラ!突然ですが、死亡者が出ました!よって今から全員強制ログアウトとなります!』

 

…えっ?

嘘でしょ、死亡者が…?

そんな、そんなわけないじゃない。

だって私達は、クエストを通して絆を深め合ってきたのだから。

私が理解が追いつけずにいると、突然意識が途絶える。

 

 

 

 

 

「っ!!?」

 

次に目が覚めると、視界が何かで遮られていた。

これは…ヘッドセット?

視界を遮っていたヘッドセットを外すと、転生ルームの内装が目に飛び込んできた。

どうやら現実世界に戻ってきたようだ。

 

 

 

「キャアアアアアッ!!?」

 

突然、マナの叫び声が転生ルームに鳴り響いた。

マナは、その場で尻餅をついて青ざめていた。

 

「あっ、あ、あああ…ああああ…」

 

マナは、顔面蒼白になってガタガタ震えながら指をさしていた。

私は、マナが指をさした先に視線を移した。

その瞬間、そこにあるはずのないものがこの目に映り込んできた。

 

その人は、口から泡を吹いて白目を剥き、生気のない表情をしていた。

その表情は、その人がもう息をしていない事を物語っていた。

 

どうして…?

さっきまで普通に話してたのに…

 

そこに座っていたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテアだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

残り9名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

以上8名

 

 

 

 

 

今更だけど推し教えて

  • 腐和緋色
  • 聲伽愛
  • 玉越翼
  • 小鳥遊由
  • 知崎蓮
  • 食峰満
  • 越目粧太
  • 聖蘭マリア
  • 古城いろは
  • 加賀久遠
  • 目野美香子
  • 館井建次郎
  • 秋山楽斗
  • 響歌音
  • ネロ・ヴィアラッテア
  • 闇内忍
  • リカ
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