ジャスティスダンガンロンパX4  強くてコロシアイ再履修   作:M.T.

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非日常編④(オシオキ編)

昨日、午前0時。

寄宿舎のラウンジに、二つの影があった。

一つは【超高校級の泥棒】知崎蓮、一つは【超高校級のAI】リカのものだった。

知崎は、ラウンジのソファーにふんぞり返ってリカに尋ねる。

 

「ねえリカちゃん、ボクをこんな所に呼び出して、一体何の用?」

 

「知崎クン、お願いがあるのデス。アテクシをーーーーー…

 

 

 

ーーー

 

 

 

そしてその翌日、14時25分。

知崎は、植物庭園で燻製器を焚いていた。

 

「……さーてと。これで下準備は万端っと」

 

知崎が燻製器を焚くと、植物庭園の中はあっという間に煙で充満し、監視カメラにも映らなくなった。

すると知崎は、その状況を利用して一瞬で早着替えをして白瀬の格好になった。

白瀬の格好をした知崎は、懐からサバイバルナイフを取り出す。

 

「【超高校級の絶望】は燃え盛る炎の中で殺されて、皆は犯人を探すために奮闘。黒幕を殺したボクは糾弾されて、キラキラのお星様!絶望は死んだ、でもボク達の戦いはこれからだ!……うん、我ながら最高の茶番だね。ふふふ、残念だったねクマちゃん。ボクはこのままトンズラこくから。キミ達になんか殺されてやらないよ」

 

知崎は、白瀬の格好をして満足げに笑っていた。

知崎の目的、それはモノクマを出し抜いてこのコロシアイを終わらせる事だった。

絶望の象徴である白瀬クロヱに大勢の視聴者の前で『死』を与え、人々を絶望から解放する。

そして黒幕と自分の死を、他の生きている仲間達の糧にする。

『自らの手で絶望を終わらせる』、それが今回の彼の殺人の目的だった。

知崎が上機嫌で笑っていると、植物庭園に聲伽が駆けつけてきた。

聲伽は植物庭園の中で火事が起こっていると勘違いしてスプリンクラーのスイッチを押し、中に入っていた燃料を撒いた。

 

「おっ、マナちゃん来た来た。さて、やりますか!うぷぷぷ、イッツアショータイム!!」

 

そう言って知崎がチャッカマンを点火した、その瞬間だった。

 

 

 

ゴオッ

 

 

 

「!?」

 

突然チャッカマンの日が気化した燃料に引火し、あっという間に燃え広がって大爆発を起こした。

するとその爆発で、植物庭園の監視カメラが壊れる。

知崎はこの時、初めて気がついた。

自分が持ってきた燃料は灯油ではなくガソリンだという事に。

だが、気付いた時には既に遅かった。

 

 

 

ブーーーッ ブーーーッ ブーーーッ

 

 

 

『監視カメラの破壊は校則違反です。処刑を開始します』

 

そのアナウンスが鳴り響いた、その直後だった。

一瞬にして槍と雷が降り注ぎ、そして……

 

 

 

ザシュザシュザシュッ

 

 

 

ドカァアアアアアアン

 

 

 

処刑が終わると、そこには槍で刺された丸焦げの身体があった。

辛うじてまだ息があった知崎は、弱々しい声で呟く。

 

「………ははっ、まあお似合いの展開、か」

 

その言葉を最後に、【超高校級の泥棒】知崎蓮は息絶えた。

モノクマを出し抜いてオシオキされる事なくコロシアイを終わらせるつもりが、呆気なくモノクマに処刑された。

あまりにも皮肉で虚しく、絶望的な最期だった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

VOTE

 

聲伽愛 5票

 

知崎蓮 1票

 

 

 

『うぷぷぷぷ、お見事大正解ー!!【超高校級のAI】リカサンに電流流しまくって殺したのは【超高校級の泥棒】知崎蓮クン、そして【超高校級の泥棒】知崎蓮クンに校則違反をさせて殺したのは【超高校級の幸運】聲伽愛サンでした!!』

 

『ギャハハハハハ!!!まさかの5連続正解かよポウポウ!!いやぁーしっかしテメェらひでーなぁ!!わざとじゃなかったってのにあっさり愛ガールに投票するんだもんなぁ!!テメェらの友情なんか、シャボン玉みてぇに軽くて脆かったんだナァ!!』

 

「違う!うちが投票するごと頼んだっちゃん!」

 

『ハッハァ、それにしても…おいおいヒーローガール!!クロの愛ガールですら自分に投票してたのに、蓮ボーイに投票するなんてテメェどういうつもりだアァン!?』

 

「う、うう…うう……!!」

 

「ごめん…ごめんね緋色ちゃん。ごめんなさい……!」

 

私のせいだ。

私が灯油とガソリンのラベルを入れ替えたから。

私が知崎君の花粉症を悪化させたから。

私が余計な事をしたから…!

 

こんなの、私がマナを殺したようなものだ。

私がマナを…

今まで私を助けてくれた子を、初めて友達になってくれた子を、殺した。

私は、私は………!!

 

「そんな事より!!知崎さんがリカを殺したのはどうしてだったんです!?リカに恨みでもあったんですか!!」

 

目野さんは、リカが殺された事に対して憤っていた。

目野さんにとって、リカは娘も同然だったんだ。

家族を突然奪われて、黙っていられるわけがなかった。

すると加賀君が、俯いて珍しく悲痛そうな表情を浮かべながら言った。

 

「………おそらく、リカが自分を殺すよう知崎に頼んだんだ」

 

「え………?」

 

「リカはわかっていたんだ。初めから、この学園生活に『白瀬クロヱ』なんていう人物は参加していないという事、別の誰かがこのコロシアイを仕組んだという事を。このままでは、コロシアイを望む誰かに自分のデータが悪用されて、また誰かがコロシアイをしてしまうかもしれない。そうなったら、全員で生きて脱出するのは絶望的になる。だからこそリカは、データをコロシアイに悪用されるくらいならと、知崎に自分を殺すよう頼んだんだ」

 

「そんな…!!う、嘘ですそんなの!!」

 

私は、加賀君の話を聞いてようやく納得した。

どうして加賀君の研究室にいるはずのリカが、研究室の異変を私達に報告しなかったのか。

この計画は、リカが知崎君に持ちかけたものだった。

研究室に侵入されて殺されるのは計画の内だったのだから、それを私達に報告しないのは当たり前の事だったんだ。

 

「おそらく知崎は…俺達の邪魔をするフリをして、実はここにいる誰よりも、この悪趣味なコロシアイを終わらせようと努力していたんだ。今思えば、モノクマ達が俺達にコロシアイ学園生活を強要してきた時、一番反発していたのは奴だった。奴はこのコロシアイ学園生活が始まった時から、自分の死をもってコロシアイを終わらせる事を考えていたのだろうな」

 

「…………」

 

加賀君の言う通りだった。

今思えば、知崎君は今までの裁判で、ずっと私達を生かす為に動いていたように思える。

最初にわざとモノクマ達を怒らせたのは、モノクマ達を怒らせたらどうなるのかを自分の身を挺して実験する為。

面倒臭がり屋のくせに最初の殺人が起こる前のパーティーの手伝いに積極的に参加していたのは、パーティー中に殺人が起きないかどうか見張る為だった。

小鳥遊さんに動機DVDの内容を伝えに行こうとした越目君を非難したのは、動機DVDが原因でコロシアイが起こるのを防ぐ為だった。

三回目の殺人が起こる前に闇内君と一緒にふざけたのは、コロシアイを止めようとしている闇内君の気持ちを汲んだから。

異世界で脱出チケットのカード化を解いたのは、私達を現実世界に帰さない事でコロシアイを防ぐ為だった。

今までの裁判で犯人がわかっていたにもかかわらず言わなかったのは、奮闘虚しくクロになってしまった人に一秒でも長く生きていて欲しかったから。

今思えば、小鳥遊さんが知崎君をスケープゴートにしたのは、おそらく彼がコロシアイを止めようとしているのに気付いたからだろう。

私達は彼をずっと非難してきたけれど、それすらも彼の狙い通りだった。

『皆には一秒でも長く生きていてほしい』、あれは紛れもない本心だった。

知崎君は、自ら悪役を演じて、自分を犠牲に私達を生かそうとしていたんだ。

 

「な、何じゃと…!?じゃあ奴が今までしてきた事は…!!」

 

「…全部、俺達のヘイトを集める為の演技だった。きっと知崎君は、誰よりも俺達を生かそうとしていたんだよ」

 

「……………」

 

秋山君が言うと、私達は全員黙り込んでしまった。

私は知崎君を非難してきたけど、誰よりもコロシアイを止めようとしていたのは彼の方だった。

感情だけが先走って何もできなかったばかりかマナを犯人にしてしまった私には、彼を責める資格なんて無かったんだ。

 

『ギャハハハ!!テメェら、何かオレ様にガチ惚れ濡れ濡れのギャルのパンティみたくしっとりした空気醸し出してるけどよ!!テメェら何か忘れてる事無えか!?』

 

「忘れてる事…?」

 

『オシオキだよ!!O!!SHI!!O!!KI!!裁判の敗者には潔く退場してもらわねぇとなぁ!!』

 

「まっ、待って!!お願いやめて!!マナは、マナは悪くないの!!」

 

「緋色ちゃん……」

 

「だってあんなの…っ!あんなの不可抗力じゃない!私がラベルを入れ替えたりなんかしなければ、私が知崎君にティッシュをあげたりなんかしなければ、知崎君は間違えてガソリンを使ったりなんかしなかった!!私が…私が知崎君を殺したようなものよ!!だからオシオキされるのは私のはずでしょ!?」

 

『うぷぷ、なーにを言っちゃってるんですかね!今回のクロは、スプリンクラーのスイッチを押してガソリンをぶちまけた聲伽サンだよ!オマエラ、皆聲伽サンに投票して正解したじゃん!今更裁判の結果は変更できませーん!』

 

ふざけるな。

そんなの、認めない。

罷り通っていいわけがない。

マナは何も悪くない。

火事を止めようと思ってスイッチを押しただけ。

知崎君を殺そうと思ったわけじゃない。

それで処刑されるなんて間違ってる。

許されるわけがない。

 

「ふざけるな!!こんなの…こんな裁判無効よ!!マナは犯人なんかじゃない!!そもそも、校則違反したからって知崎君を殺したのはあんた達…「緋色ちゃん」

 

私が叫ぶと、マナが止めに入った。

マナは、悲しそうな目をしながら精一杯の笑顔を浮かべていた。

 

どうして…?

これから殺されるのよ?

なのに、どうしてそんな顔ができるのよ…!

 

「あんね、うちね…うちがクロで良かったっちゃ思うとーっちゃん。うちがスプリンクラーんスイッチば押しゃんやったら、他ん誰かが押しとったかもしれん。そしたら、そん人がクロになってしもうてたわけやろ?これで良かったっちゃん。うち、これ以上誰かが死ぬところば見とうなかったけん…うち、今まで皆ばろくな目に合わしぇてこんやったけど、今回は皆ば守れた。最高の幸運だよ」

 

「ちっとも良くないわよ!!あなたが死ぬじゃない!!」

 

「うん、そうやな。ごめんね、緋色ちゃん。一緒にここを出るって約束、守れんやったね」

 

マナは、悲しそうな笑みを浮かべながら私に歩み寄ってきた。

…やめてよ。

そんな顔しないでよ。

私の気持ちはどうなるのよ!?

 

「緋色ちゃん。うち、緋色ちゃんの事好いとったよ」

 

マナが悲しそうな笑みを浮かべながら私に抱きついてくると、私はここにきて初めて自分の気持ちに気がついた。

多分私も、マナの事が好きだったんだ。

友達として好きだったのか、それとも恋愛感情だったのか…

…もしかしたら、両方かもしれない。

マナは、私に特別な感情をくれた。

いつでも私の味方でいてくれた。

マナの優しさには何度も救われた。

私は……………

 

「緋色ちゃんは強うて優しいけん、これからも皆を引っ張っていくるて思う」

 

「私が……優しい…?」

 

「そうだよ。だって緋色ちゃんは、うちん為に泣いてくれとーやろ?……やけん緋色ちゃんは、うちみたいにならんでな」

 

「…………!!」

 

私はその言葉を聞いて、自分の無力さに打ちひしがれた。

私がかつてマナに放った『私のようにはならないで』という台詞が、今になって自分に返ってくるだなんて、思いもしなかった。

マナは私の強さが羨ましいと言っていたけれど、そんな事はない。

本当に強いのは、マナの方だった。

私は、館井君の言う通り、何もできずに皆が死ぬのを見ている事しかできなかった臆病者だ。

私達を生かす為にオシオキを受け入れたマナのようには、強くはなれない。

 

「それじゃあね、皆。絶対、今度こそ全員で脱出してね」

 

「う、ううう…!!」

 

何が『全員で脱出してね』よ…!

その『全員』にあなたが含まれていないんじゃ、何の意味もないじゃない…!!

 

『うぷぷ、それじゃあもう思い残す事もないみたいですし?そろそろファイト一発やっちゃいましょうかブラザー!!』

 

『OH YEAH!!ヘイ喜べリスナー諸君!!今回も張り切ってやってくぜYEAHHHHH!!』

 

「…………いやだ」

 

モノクマとモノDJが上機嫌でオシオキの準備をすると、マナは俯いたままぽつりと呟いた。

マナは、俯いたままガタガタと震えていた。

 

「いやだいやだいやだいやだ!!うち、やっぱり死にとうなか!!」

 

「マナ…!!」

 

マナは、絶望で顔を真っ青にして泣き喚きながら暴れた。

マナだって、本当はここから皆と一緒に出たかったはずなのに。

ここから出て、まだやりたい事があったはずなのに。

私のせいで…私がマナを……

 

『今回は、【超高校級の幸運】聲伽愛サンのために!!』

 

『スペシャルな!!オシオキを!!ご用意しました!!!』

 

『『ではでは、オシオキターイム!!!』』

 

「うぁあああああぁああああああああああああああ!!!!!」

 

無情にもモノクマとモノDJの声が鳴り響く中、マナはその場で膝をついて大声で泣き叫んだ。

マナの悲痛な叫び声が、裁判場に響き渡った。

モノクマはピコピコハンマーを取り出して、一緒に出てきた赤いボタンをハンマーで押した。

ボタンに付いている画面に、ドット絵のマナをモノクマとモノDJが連れ去る様子が映っていた。

 

 

 

 

 

ーーー

 

GAME OVER

 

コエトギさんがクロにきまりました。

 

オシオキをかいしします。

 

ーーー

 

 

 

聲伽は、首に首輪をつけられると、そのまま上へ上へと引っ張り上げられる。

腐和は、引っ張り上げられる聲伽の方へと必死に走っていった。

踏み込んだ拍子にヒールが折れるのも気に留めず、聲伽の方へと手を伸ばした。

 

 

 

だが、伸ばした手は届かなかった。

引っ張り上げられる聲伽の頭からは、彼女のトレードマークでもあるベレー帽が落ちた。

聲伽を追いかけて手を伸ばした腐和は、手を伸ばした勢いで転び、転んだ場所にベレー帽が落ちた。

もう一度追いかけようとしたその時には、聲伽は既に手を伸ばしても絶対に届かない高さへと引っ張り上げられていた。

 

 

 

ーーー

 

補習

 

【超高校級の幸運】聲伽愛 処刑執行

 

ーーー

 

 

 

聲伽が連れてこられたのは、どこかの教室だった。

聲伽の背後ではガンッ、ガンッと金属と金属がぶつかり合うようなうるさい音が鳴り響き、音が鳴ると同時に教室全体が揺れる。

聲伽は、学校によくあるタイプの席に座らされ、顔を真っ青にして冷や汗を浮かべていた。

その正面では、モノクマとモノDJが黒板に絵や文字を書いて保健体育の授業をしていた。

聲伽の背後では、巨大なプレス機が規則的に降りる、打つ、上がるという単純作業を繰り返し、うるさく単調なリズムを刻んでいた。

プレス機の造形も、どこか断頭台を思わせる造形をしており、これから聲伽が迎える末路を物語っていた。

聲伽の席はベルトコンベアの上に設置されており、少しずつ背後のプレス機に近づいていく。

 

プレス機が鳴る度、一歩、また一歩と死が近づいていく。

今までのオシオキと違って肉体的な苦痛は無かったが、プレス機が刻む単調なリズムが、迫り来る確実な死を告げる。

少しずつ死が近づくという感覚が、ゆっくりと、しかし確実に聲伽の精神を削っていく。

それは正しく処刑までの時を刻む鐘の音だった。

 

 

 

ガンッ、ガンッ、ガンッ、ガンッ

 

 

 

プレス機が教室を揺らす程の衝撃を生み出しながら下の鉄板を打ち続け、ベルトコンベアはゆっくりとプレス機に近づいていく。

1mm、また1mmと確実に死が近づいていく。

プレス機までの距離が1mを切り、耳が痛くなる程の音が背後で響く。

これから死にゆく聲伽に対して、モノクマとモノDJは『生命の誕生』と書かれた黒板を見せて保健体育の授業をし、彼女がこれから迎える末路を皮肉った。

決して死の恐怖と絶望からは逃さないよう、ベルトコンベアはゆっくりと聲伽を死へと導いていく。

プレス機へ近づけば近づくほど、聲伽は表情に恐怖を募らせ、呼吸と脈拍が多くなっていく。

身体の奥で、うるさい程に心臓が鼓動する。

死に近づけば近づくほど、身体は、本能は、生き急ごうとする。

身体中の血を、汗を、息を速く走らせていく。

 

降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる、降りる、打つ、上がる。

 

その不気味なまでの単純作業が、決して逃れられない運命を、現実を突きつける。

80cm、70cm、60cm、50cm…………。

少しずつ、死との距離が縮んでいく。

 

とうとうプレス機との距離が10cmを切り、授業をしていたモノクマとモノDJが慌てふためく。

もう逃げられない事を悟った聲伽は、顔を真っ青にして涙を流しながら目を瞑った。

そして、プレス機がぐぁっと上に上がる。

プレス機が上に上がった直後、ベルトコンベアに乗った聲伽がプレス機の真下に来る。

すると、今まで一定のリズムでプレスを繰り返していたプレス機が、聲伽の頭上でピタリと止まる。

聲伽が、恐る恐るゆっくりと顔を上げた、その直後だった。

 

 

 

ガンッ

 

 

 

プレスの音と共に、ぐちゃりと潰れる音が聞こえる。

その瞬間、プレス機の下からは赤い液体が潰れたトマトのように飛び散った。

その後もプレス機はけたたましい音を立てながら下の鉄板を打ち続け、どこからか夕陽が差し込んで真っ赤な液体に染まったプレス機を逆光で照らしていた。

 

 

 

 

 

『『エクスカリバーーーーーーー!!』』

 

「ひぃいいいいいい…!!」

 

「そんな…嘘じゃろ…?聲伽ぃ…!!」

 

「聲伽さん…」

 

「………すまない、聲伽」

 

「うっ…うう…う゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

 

マナが死んだ。

ここで目を覚ました私に初めて話しかけてくれたあの子が、

私が絶望に打ちのめされそうになった時に何度も助けてくれたあの子が、

一緒にここから出ようと約束してくれたあの子が、

私にとっての希望だったあの子が………死んだ。

 

もう何も考えられない。

考えたくない。

もう、ここから出ようという希望すら見えてこない。

生きたいとすら思えない。

こんな事なら、知崎君を助けたあの時、巻き込まれて死んでおくんだった。

私は……………

 

 

 

『うぷぷぷぷ、いやぁ〜流石の腐和サンでもこれは耐えられなかったみたいだね!あー楽しかった!』

 

『ギャハハハハ!!アドレナリン100%だぜYEAH!!それにしてもテメェらよく頑張ったな!!イケメンハンサムボーイのオレ様が特別に誉めてやらァ!!ホラホラ惚れちまってもいいんだぜ!?女性陣は体育館裏に集合か!?んん〜!?』

 

「貴様ら……」

 

『ギャハハハ!!テメェらには裁判を乗り越えた褒美にメダルをプレゼントしてやるから、ジャンジャン有効活用しやがれってんだ!!』

 

「う゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!!あ゛ぁ゛あ゛あ゛!!」

 

「腐和……」

 

「無理もない。俺達は今まで、腐和に頼りすぎたんだ。一人に頼りきりにしていた代償だ」

 

皆が私を心配していたけれど、私はもう何も考えられなかった。

今はただ、感情に任せていなきゃやってられなかった。

そうじゃなきゃ、壊れてどうにかなってしまいそうだった。

すると、秋山君が私に歩み寄ってきた。

 

「……腐和さん。大丈夫だよ。俺達がついてるから。俺達じゃ聲伽さんの代わりになれないかもしれないけど、俺達も君の力になりたいんだ」

 

「おうおう!!そうじゃぞ!!ワシらは仲間ではないか!!」

 

「生きて全員でここから出ようと言ったのは君だ。忘れたとは言わせんぞ」

 

「わ、私も、今さっきの事ですし…」

 

「皆………」

 

皆は、感情に任せてただ泣き喚いていた私のフォローをしてくれた。

秋山君は響さんを、古城さんは闇内君を、加賀君と目野さんはリカを失ってつらいはずなのに…

それでも、こんな私を支えようとしてくれてる。

…ようやく、頭が冷えてきた。

私は、一時の感情に任せて、マナが私に託してくれた最後の約束さえ忘れてしまうところだった。

私にはまだ、こんな私と一緒にここから出たいと思ってくれている仲間がいる。

……いつまでもこんなところで立ち止まってなんていられない。

生きなきゃ。

立ち上がらなきゃ。

マナの分まで、この罪を背負っていかなきゃ。

 

「……ごめんなさい、皆。もう大丈夫よ。大丈夫だから…」

 

私は、涙を拭いながらも立ち上がった。

私は、マナと最後に交わした約束を果たす。

ここから出るまでは、私が、皆を引っ張っていくんだ。

 

『うぷぷぷぷ!はぁ〜〜〜くっさ!!オマエラ密室でオナラしちゃいけませんって人に習わなかったの?って、あ、違った。臭いのはオマエラの友情ごっこだったね!』

 

「モノクマ…あなた達が何をしようと、私達はもうコロシアイなんかしないわ」

 

『ふーん、あっそ。じゃあもうオマエラコロシアイしなくていいよ』

 

「ハッハァ!!そうやって脅そうったって無駄ですよ!!私達は仲間の死を乗り越えて鋼の精神を手に入れたのです!!今更どんな脅しにも屈しな………」

 

目野さんは、腰に手を当てて大笑いした。

だがその直後、そのポーズのまま笑うのをやめて数秒考え込む。

そして……

 

「ほぇえええええええええ!!!?こ、コロシアイしなくていいんですか!?えっ、ナンデ!?」

 

目野さんは、ものすごい顔芸を披露しながら驚いていた。

…うん、うるさいし顔芸は酷いけど私も思ってる事は多分同じだわ。

私がそんな事を思っていると、秋山君が片眉を上げながら尋ねる。

 

「一体どういう風の吹き回し?今まであんなにコロシアイをさせる為に脅してきたくせにさ」

 

『うぷぷぷ、いやぁー実はぶっちゃけちゃうと知崎クンが黒幕をぶっ殺しましたーなんて茶番をやっちゃったせいで、視聴者ももうお開きモードになっちゃっててさ。だから予定はちょっと早いけど、オマエラには最後のゲームをやってもらう事にしました!あ、言っておくけど、今からは誰かを殺しても外には出られないからね?』

 

「いよいよ最終局面という事か…で?大体察しはつくが、そのゲームとは何だ」

 

『ギャハハハハ!!!ズバリ!!最後の裁判では、『黒幕は誰か』、そして『このコロシアイは何の目的で行われているのか』を議論してもらうぜYEAH!!』

 

「…………!」

 

『んじゃあ、今から最終裁判のルールを説明していくから耳かっぽじってよーく聞いとけよ!!今から一定時間、最終裁判に向けた捜査時間を設けるぜ!!んでその後、テメェらには『黒幕は誰か』、そして『このコロシアイが行われた目的は何か』を議論してもらう!!見事正解したら黒幕以外は全員晴れて卒業!!だが間違えたら、全員オシオキ!!っつーわけだ!!ドゥーユーアンダァスタァン!!?』

 

「……なるほど。黒幕との直接対決というわけか」

 

モノDJがルールを説明すると、全員が私の顔を見てくる。

私は、皆の顔を見ながら、力強く頷いた。

私の気持ちは、最初から決まっている。

 

「望むところよ。絶対に、真実を解き明かしてみせるわ」

 

私は、もう折れない。

マナのように…今まで思いを託してくれた皆のように、強くなるんだ。

必ず黒幕とコロシアイの目的を暴いて、皆で卒業する。

…それがマナに、今まで亡くなっていった皆に、生きている私達が唯一してあげられる事だから。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

???の個室

 

ふふふ、いやぁここまで長かった。

まさかここまでとんとん拍子でコロシアイが進んでいくとはね。

やっぱり、記憶を消される前の腐った性根が影響しているのかな?

…でも真実を知った時、あいつらがどういう反応をするのか…楽しみだなぁ。

 

 

 

 

 

Chapter5.この素晴らしい世界に絶望を! ー完ー 

 

Next ➡︎ Chapter.6 All We Need Is Justice

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

『幸運のベレー帽』

 

Chapter5クリアの証。

聲伽の遺品。

両親からスカウト祝いに贈られた。

彼女の将来への願いが込められている。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

残り5名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

以上12名

 

 

 

 

 

今更だけど推し教えて

  • 腐和緋色
  • 聲伽愛
  • 玉越翼
  • 小鳥遊由
  • 知崎蓮
  • 食峰満
  • 越目粧太
  • 聖蘭マリア
  • 古城いろは
  • 加賀久遠
  • 目野美香子
  • 館井建次郎
  • 秋山楽斗
  • 響歌音
  • ネロ・ヴィアラッテア
  • 闇内忍
  • リカ
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