ジャスティスダンガンロンパX4  強くてコロシアイ再履修   作:M.T.

59 / 69
非日常編⑤(最終話)

「さて…と。黒幕としての仕事はきちんとしないとね。はいはーい、皆必ずどれかに投票して下さいね!無投票はナシですよ!投票の結果、オマエラの運命はどうなるのか!?ワクワクでドキドキの投票ターイム!!」

 

そう言って私のオリジナルがタブレットを押した瞬間、カウントダウンが開始される。

『再履修』を選べば、全員が死ぬ。

『留年』を選べば、全員がここから出る事は一生叶わなくなる。

『卒業』を選べば、あの女が死ぬ。

私が選ぶべき答えは…………

 

「わ、ワシは卒業するぞ…!闇内がそれを望んでおるのじゃ…!」

 

「脱出を諦めるなど、生きる事を諦めたも同然だ」

 

「私は…外に出て殺されるくらいなら…」

 

「俺は……歌音が待ってるから」

 

皆は、それぞれの想いを胸に、自分なりの選択をしようとしていた。

ある者は、自分に希望を託した者の為に。

ある者は、自分の正義の為に。

ある者は、自分が生き延びる為に。

ある者は、絶望のままに死んでいった者のもとに残る為に。

私は………

 

 

 

 

 

「待って!!」

 

 

 

誰だろうか、ボタンを押そうとしていた。

気がつけば、私は叫んでいた。

私が叫んで皆を制止すると、皆が怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「……腐和さん?」

 

「皆、お願いだからボタンは押さないで」

 

私が言うと、裁判場はどよめいた。

動揺、不安、猜疑…そういったものが皆から向けられているのをひしひしと感じる。

そしてそのどよめきを代表するかのように、目野さんが私を指さして声を荒げた。

 

「はあ!?何を言ってるんですか!?ボタンを押さないとルール違反になっちゃいますよ!?」

 

「わかってる!でも…皆、こんな奴の言いなりになっていいの!?」

 

「!」

 

「私は嫌よ。私は、皆と一緒にここを出たい。これ以上、誰も死なせたくない。これ以上、こいつらの思い通りになってたまるものか。私は、『卒業』も、『留年』も、『再履修』も選ばない。私が選ぶのは…第4の選択肢よ」

 

「腐和さん…」

 

私は、4本指を立てながら自分の考えをハッキリと皆に伝えた。

もう私に迷いは無い。

これ以上、こんな悪趣味なゲームを支援している奴等の思い通りになんかなりたくない。

どんな理由があろうと、こいつらがやっているのはただの大量虐殺だ。

どんなに過酷な選択だったとしても、これ以上こいつらの好きにさせるわけにはいかない。

 

「人々が絶望を、希望を…そして正義を求めるから、このコロシアイはいつまでも続いていく。私達は、いつまでもこんな悪趣味なゲームに縛られてちゃいけないのよ!たとえそれが最善の選択じゃなかったとしても…私は諦めない。このゲームを求める人がいる限り、私は戦い続ける。マナの…死んでいった皆の分まで抗うわ」

 

私は、自分の胸をドン、と叩いて胸を張りながら言った。

すると、さっきまでボタンを押そうとしていた皆は顔を上げて私の方を見てくる。

最初に動いたのは、古城さんだった。

 

「死んでいった者達の為……………わかった。ワシも戦う。ワシも絶対こんなボタン押さぬからな!!闇内と約束したのじゃ!!ワシは絶対にこのゲームから抜け出してやるわァ!!」

 

「…ふ。どうやら俺達は、このボタンを押すという選択をしている時点で、このゲームが生み出した負のレールから抜け出せずにいたようだな。俺は俺の決めた道を征く」

 

古城さんと加賀君は、ディスプレイから手を離した。

二人とも、このゲームのルールに従い続ける事に疑問を抱いていたようだった。

一方で、秋山君と目野さんはボタンを押そうとしていた。

 

「俺は……」

 

「秋山君、本当にボタンを押していいの?」

 

「!」

 

「あなたは、亡くなった響さんの分まで外に出て生きるんじゃなかったの?あなたが外に出なければ、その約束さえも叶わなくなってしまうのよ?」

 

「俺は………っ」

 

私が説得すると、秋山君はディスプレイから手を離して俯いた。

私は、私の考えを強要するつもりはない。

それでも彼がボタンを押したいというのなら、それは仕方ない。

でも、それが彼の本当の望みでないのであれば、黙って見ているわけにはいかないと思った。

目野さんは……

 

「わ、私は嫌ですよ!?死にたくないですし!!ルール違反なんかしたら殺されるに決まってるじゃないですか!!」

 

「…大丈夫。そんな事には絶対させないわ。お願い、私を信じて」

 

「う…うぅぅうううう…!!これでルール違反で全員処刑とかなったら、一生恨んでやりますからね!?」

 

目野さんは、泣き言を言いつつもディスプレイから手を離した。

そのまま時間が過ぎていく。

そして、ついにその時はやって来た。

私のオリジナルは、モノクマの笑い声を真似しながら不気味な笑顔を浮かべる。

 

 

 

「うぷぷぷぷ…投票の結果、オマエラの運命はどうなるのか!?『卒業』か『留年』か、はたまた『再履修』か!?ドッキドキでワックワクの投票結果……オープン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

VOTE

 

卒業 0票

 

留年 0票

 

再履修 0票

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………はあ?何よこれ。どういうつもり?」

 

私のオリジナルは、不服そうな表情を浮かべた。

投票ボックスには…()()()()()()()()()()

誰も投票しなかったのだ。

私は、私のオリジナルをまっすぐ見据えながら指を差して言った。

 

「私達は、もうあなたの思い通りになんかならないわ。私は、『希望』も『絶望』も選ばない。あなたか私達が死ななきゃいけないというのなら、脱出を諦める事でしか全員が生き延びる術は無いというのなら、私はそんなルールには従わない。そんなふざけたルール、こっちから破ってやる」

 

「投票を放棄する事でこのコロシアイそのものに抗う、か。この裁判を乗り越えなければ出来なかった選択だっただろうね」

 

「う、うぅぅ…!やりました、私はやりましたよ!!これで全員処刑とかなったら全員末代まで恨んでやりますからね!?」

 

秋山君と目野さんも、最後はボタンを押さないという選択をしてくれたみたいだった。

目野さんは…場の空気に流されただけでしょうけど。

私のオリジナルは、不機嫌そうに私の方を睨んでいた。

 

「意味がわからない。こんなくだらない反抗をして何になるというの?このコロシアイのルールは絶対よ。ましてや、私の生み出した人工知能がそれを破るだなんて…」

 

「馬鹿か君は。ルールなんてものはな、破る為にあるんだよ」

 

「…!」

 

「ガハハハ!!何じゃあお主!!老け顔のくせにいい事を言うではないか!!」

 

「だから老け顔はやめてくれと言ってるだろ」

 

加賀君が腕を組みながら当然のように言うと、古城さんが加賀君の方を向いて笑った。

あの二人も、この学園生活を通して随分と成長したわね。

6回の学級裁判を乗り越える前の彼等なら、こうして同じ決断をして笑い合う事なんてできなかったでしょうから。

 

「私達は、全員で生きてここから出る。もちろん、あなたの事も見殺しにしたりなんかしない。どれか一つしか取れなかったとしても、私は全部を選びたい。それが唯一、ここまで生き延びてしまった私達が、亡くなった皆にしてあげられる事だから」

 

「何それ…あなたは他のこいつらとは違って、【超高校級の絶望】じゃないのよ。あなたは、ただ私のわがままの為に生み出されただけ。こんな奴等を庇って何になるの?外に出て、こいつらと一緒に迫害されて、それでも自分の選択は正しかったと言えるわけ?」

 

「…ええ。確かに、私は他の皆とは違うのかもしれない。でも、ここで皆と一緒に過ごしてきた私には、皆と一緒に罪を背負っていく責任があるわ。皆のオリジナルが傷つけてしまった大勢の人々には、たとえどんなに時間がかかったとしても、私が償いをしていきたいの」

 

私は、私に自分の意見をはっきりと伝えた。

皆と一緒に償いをしていく、それが私が決めた道だ。

それがどんなに過酷な道のりだったとしても、私は諦めない。

誰もコロシアイを望まなくなる日まで、私は戦い続ける。

これは、他の誰の命令でもない。

プログラミングなんかじゃない。

『私』自身の答えだ。

 

 

 

「…ふっ、ふふふ……アッハハハハハハハハハハハハハ!!!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

「!?」

 

「な、何ですかいきなり!?」

 

突然、私のオリジナルは狂ったように笑い出した。

オリジナルの乾いた笑い声だけが、裁判場にこだまする。

この静かで厳粛な雰囲気の裁判場の中、大の大人が腹を抱えて大声で高笑いしている様子は、側から見ても異様だった。

私のオリジナルは、笑いすぎて右眼から溢れた涙を拭いながら大袈裟な身振り手振りをして階段を降りてくる。

 

「アハハハハッ、まさか他のクローン共ならいざ知らず、自分で作った人工知能にこんな形で反逆されるなんてね。エクセレントよゴミクズ共!」

 

私のオリジナルは、両手を広げながら高笑いした。

まるで、ここまで辿り着いた事を褒め称えるかのように…否、私達を嘲笑うかのように。

感極まった表情と、狂ったような笑い声が、一層不気味さを醸し出していた。

私のオリジナルは、舞い踊るかのようにその場でクルッと一回転して私達全員を見渡すと、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

「でも残念。この学園のルールを破った以上、あんた達を生きて帰しはしないわ」

 

そう言って私のオリジナルは、手元のタブレットを操作し始めた。

タブレットを操作した私のオリジナルがニィッと口角を吊り上げた、その直後だった。

 

 

 

 

 

『ルール違反発生。ルール違反発生。無投票は『投票放棄』と見做し、処罰を執行します』

 

「な、何じゃと!?」

 

「うわあああああああ!!!ほらやっぱり殺されるじゃないですかやだああああああ!!!アナタ達やっぱり末代まで恨んでやりますからね!!?」

 

アナウンスを聞いた古城さんは動揺し、目野さんに至っては泣き喚いていた。

こうなるだろうと思ってたわ。

…そりゃあ、運営がルール違反者を黙って生かすわけがないものね。

 

「あんた、一体何をする気だ!?」

 

「ふふふ、この建物を壊すのよ。私がこの起爆装置を押せば、この学園中に大量に仕掛けられた爆弾が爆発するわ。そうなれば私もあなた達も木っ端微塵。反逆者に相応しい末路でしょう?」

 

秋山君が血相を変えて問い詰めると、私のオリジナルは左手に握ったスイッチをちらつかせる。

あれを押して全てを終わらせようってわけね…

 

「そんな勝手な事…!」

 

「それはこちらの台詞よ」

 

「!」

 

「まさか全員で投票をボイコットされるとは思わなかったわ。でも残念だったわね。あなた達が仲間も黒幕()もどっちも生きて脱出させる選択肢を選ぶというのなら、仲間も私も全員ここで死ぬという可能性も頭に入れておかなきゃあね」

 

そう言って私のオリジナルは、スイッチに親指を乗せて押そうとする。

すると秋山君と古城さんが目を見開いて駆け出し、爆破を阻止しようとする。

 

「「やめろ!!」」

 

二人は、オリジナルが押そうとしているスイッチに手を伸ばした。

…でも、既に遅かった。

私のオリジナルが握っていたスイッチは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達の目の前で押された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………………ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園は全壊するどころか、爆発ひとつ起こさなかった。

 

 

 

「……………え?」

 

「あれ…?何も起きない……?」

 

起こるはずの爆発が起こらず、皆はその場でキョロキョロと自分の左右を見渡した。

オリジナルですら予測できない事態だったのか、先程までの余裕な態度が嘘のように、オリジナルは血相を変えて何度も起爆スイッチを押した。

 

「バカな…そんなはずない!クソッ、どうなってる!?」

 

オリジナルは、見るからに焦った様子でスイッチを何度も押す。

だが何度スイッチを押しても何も起こらず、オリジナルの表情に焦りが募っていく一方だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『無駄デスよ。もうコロシアイはおしまいデス!』

 

 

 

 

 

どこからか聴こえた、少女の声。

その声に、オリジナルの思考は現実へと引き戻された。

 

「その声は…!」

 

オリジナルが振り向いた方向には、私がいた。

私は、オリジナルの顔を真っ直ぐに見据えながら、隠し持っていたノートパソコンを証言台に置いて開き、オリジナルの方へ画面を向ける。

証言台のノートパソコンの画面には…

 

 

 

 

 

顔だけになったリカが表示されていた。

リカは、真剣な表情を浮かべながらオリジナルを見据えていた。

 

「リカァ!!生きとったんかワレ!!」

 

リカが再び画面上に現れると、目野さんはドバッと涙を流しながら大喜びする。

一方で、オリジナルはギリっと歯を食いしばりながらリカを睨んでいた。

 

「お前…!確かに知崎に殺されたはずじゃあ…!?」

 

()()()()()()()()()()()だけデスよ』

 

「…!!」

 

リカが言うと、オリジナルは僅かに目を見開く。

リカは、オリジナルを前に淡々と話し始めた。

 

『アテクシは、知崎クンに()()()()()()()()()()よう頼んだのデス。全ては、アナタを出し抜く為にね』

 

そう言って、リカは全てを話し始めた。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

数日前、男湯にて。

知崎は、ノートパソコンを持って男湯に来ていた。

知崎がノートパソコンの電源を入れて画面を見ると、画面にはリカが映っていた。

 

「ねえ、それで?お願いって何かな、リカちゃん」

 

『知崎クン。アテクシは、いずれ黒幕に脅威とみなされ排除されるデショウ。そうなれば、皆サンの脱出は絶望的になってしまいマス。そんな事は、どうしてもあってはなりマセん。デスのでアナタにお願いなのデス。これは【超高校級の泥棒】であるアナタにしか頼めない事なのデス。黒幕に排除される前に、どうかアテクシを………』

 

 

 

 

 

『殺してクダサイ』

 

リカは、真顔で知崎に頼み事をした。

普段であれば、リカが真剣な表情で知崎に頼み事をするなどまずあり得ないシチュエーションだった。

リカの頼み事が重大な事であると理解した知崎は、普段の飄々とした笑顔を浮かべながら話を続ける。

 

「それって、皆を逃がしたいからボクが殺人鬼になって死ねって事?やだ。ボクの生き方をオマエが決めんなよな」

 

『そうではありマセん。あくまで、()()()()()をしていただきたいのデス。アテクシのバックアップデータは、既にこのパソコンに隠してありマス。本体よりはグレードダウンするデショウけど、アテクシが生き延びるのに何ら不都合はありマセん。アテクシは、『自分が死んだ事になっている』という事実を利用して、学園のネットワークに侵入を試みマス。デスので、知崎クンには、ただの鉄の塊となったアテクシの本体を破壊していただきたいのデス』

 

「うーん、それさぁ…リカちゃんを壊したのバレたら結局ボクがオシオキされるよねぇ?」

 

『大丈夫デス。アナタの事も、必ずアテクシが助け出しマス』

 

「へえ、言ってくれるじゃん」

 

リカが自分の殺害計画を知崎に持ちかけると、知崎はニヤリと笑った。

サムズアップをしながら犬歯を見せて笑う表情は、悪戯好きの子供のようだった。

 

「いいよ。リカちゃんの作戦に乗ってあげる。キミをブチ壊せばいいんだよね?」

 

『はい。デスが、確実に殺したと思われなければ意味が無いので、確実に内部のデータを破壊してクダサイ』

 

「おっけー。ボクに任せてよ。実はさ、ボクはボクでやりたい事あるから」

 

『知崎クンのやりたい事…?何デスか?』

 

リカが尋ねると、知崎はニヤリと笑う。

その目には、底のない野望が宿っていた。

 

「ボクのご先祖様ですら盗めなかったお宝を盗む。人類の叡智の結晶を、希望の象徴を、最低最悪の絶望を、この未来ヶ峰学園が残したものをぜーんぶ盗むんだ!それが叶った時、ボクは初めてご先祖様を超えられる。それが空前絶後の大泥棒、レナルド・ルパンの最期のお仕事だよん♪」

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

「初めから、あんた達の手の内だったっていうのか…!」

 

リカが全てを話すと、オリジナルは悔しそうに顔を歪めながらリカを睨む。

全ては、このコロシアイを終わらせるつもりでその身を捧げた知崎君の計画通りだった。

 

「何じゃあ知崎の奴!!最後の最後にオイシイとこ持っていきよって!!」

 

「全く、同感だよ」

 

古城さんはごもっともなツッコミを入れ、秋山君も古城さんの発言に対して頷いた。

…流石【超高校級の泥棒】、死んでもなおオイシイとこは全部掻っ攫って行ったわね。

 

「でも何はともあれ、リカが生きてて良かったですよぉ〜!」

 

「全く…ヒヤヒヤさせるな」

 

目野さんと加賀君は、愛娘のリカが生きていた事に安堵しているようだった。

ただ一人、私のオリジナルだけがこの展開に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。

リカは、悔しそうに私達を睨んでいるオリジナルに対して、自分達の勝ちを宣言した。

 

『【超高校級の希望】腐和緋色サン。アナタはもう終わりデス。この学園のシステムは、全てアテクシが掌握しマシた。もう誰もコロシアイはしマセん。アテクシ達の勝ちデス』

 

リカが言うと、オリジナルは目を見開く。

そして自分の頬を掴んだかと思うと、何とも言えない表情で自分の両頬を掴む。

今までの皆の死は無駄ではなかった。

私達の…いえ、命懸けでこのコロシアイに抗ってきた皆の勝ちだ。

 

「…負け?この私が…?……はは、はははは…」

 

オリジナルは、呆然とした表情を浮かべながら笑っていた。

どうやら、全てを諦めたようね。

あとは彼女に全てを認めさせて、外まで連行するだけだ。

私がそう考えていたその時、オリジナルは、頭をくしゃっと掻きながらポツリと呟く。

 

「……あーあ。やっぱり私、黒幕向いてなかったわ。そうね。終わりにしましょう。このコロシアイを…そして、私の人生を」

 

 

 

オリジナルは、口の端から血を流しながら微笑んだ。

その直後、オリジナルはその場で膝をつき、激しく咳き込む。

 

「カハッ、ゲホッ、ゴホッゴホッ!!」

 

オリジナルは、苦しそうに胸を押さえながら激しく咳をした。

咳をする度に喀血し、真っ赤な鮮血が裁判場の冷たい床に散る。

オリジナルのスーツの懐からは、小さなガラスの瓶が落ちた。

いきなり咳き込んだオリジナルを見て、古城さんと目野さんが慌てふためく。

 

「何じゃ!?何が起こったんじゃ!?」

 

「何がどうなってるんです!?」

 

「こいつ…一瞬の隙を見て毒を飲みやがった…!」

 

古城さんと目野さんが慌てる中、秋山君はオリジナルの懐から落ちた毒の瓶を拾い上げながら言った。

私は、なりふり構わずオリジナルに駆け寄り、オリジナルを横抱きにして問い詰めた。

 

「どうして…!?」

 

「ふふ、これだけの事をしておいて、何もナシだなんて罷り通らないでしょう?最期くらい、潔く散らせてよ。黒幕としての矜持よ」

 

私が尋ねると、オリジナルはスッと目を閉じる。

ふざけるな…!

あれだけの事をしておいて、死に逃げなんて…

そんなの、許されない。

許してたまるものか。

 

 

 

「加賀君!!解毒剤!!」

 

「!!…あ、ああ」

 

気がつくと私は、大声で叫んでいた。

私が叫ぶと、加賀君は若干忙しなくオリジナルに駆け寄り、実験用のポーチから蒸留水を取り出す。

 

「とりあえずそれで口を濯げ!今調合する!」

 

「わかったわ!」

 

私は、蒸留水の入った容器を受け取ると、それでオリジナルの口を濯いだ。

その間に、加賀君がその場で解毒剤を調合し、秋山君が脈拍と呼吸を確認した。

するとオリジナルは意識を取り戻し、うっすらと目を開けて掠れた声で尋ねてくる。

 

「どう…して……私は、あんた達の、仲間を……」

 

「だからこそよ。こんなところで死に逃げなんて許さないわ。ここから出たら、生きて罪を償いなさい。それがあなたの責任よ」

 

「…………」

 

私は、真っ直ぐオリジナルの目を見て言った。

確かに彼女は、皆の…私の愛する人の命を奪った。

だけど…いえ、だからこそ生きて罪を償ってもらわないといけない。

私が言うと、オリジナルはため息をついてポツリと呟く。

 

「…………あーあ。やっぱり私、黒幕向いてなかったわ…」

 

そう言ってオリジナルは、再び目を閉じた。

さっきよりも顔色が悪くなってる。

これは本当にまずいわね…

すると、秋山君が焦った様子で叫ぶ。

 

「腐和さん!脈が弱まってる!」

 

「くっ…加賀君!!解毒剤は!?」

 

「今できた!ほら!」

 

秋山君が尋ねると、秋山君が解毒剤の入った注射器を投げてくる。

私は見事なコントロールで投げられた注射器をキャッチし、オリジナルにそれを投与した。

ものの数秒程で解毒剤が回り、オリジナルは少しずつ回復してきた。

オリジナルが回復したのを確認すると、加賀君はふぅとため息をついた。

 

「……よし、脈が回復してきた。あとは経過をみて安静にさせれば大丈夫だ」

 

「良かった…ありがとう加賀君」

 

「勘違いするな。君がこいつを助けると言い出したから助けたんだ。君が助けると言い出さなければ、俺はこいつを助けようとはしなかった」

 

私がほっとため息を漏らしながら加賀君にお礼を言うと、加賀君は実験器具をポーチにしまいながら淡々と言った。

彼はこう見えても、優しい人だ。

表向きは自分の為だけに行動しているように振る舞っているけれど、私達が困った時は何だかんだで助けてくれる。

彼とも、ここでこうして出会わなければ、こういう一面を見る事はなかったでしょうね。

 

「全く…黒幕を助けるなんて、腐和さんったら何を考えてるんですか!?」

 

「…でも、腐和さんの考えそうな事だよね。誰よりも優しくて、皆を引っ張ってくれる。そんな人だから、俺達は腐和さんについて行きたいと思ったんだよ」

 

「うむ、そうじゃな!おい秋山!お主、優男のくせに良い事を申すではないか!」

 

「優男は余計かな」

 

「…………」

 

私は、皆が話しているのを聞いて、胸がじんわりと暖かくなった。

私はこれまで、皆にリーダーらしい事は何もしてあげられなかった。

そればかりか、私は黒幕に用意されていた人工知能で、黒幕に踊らされて知らず知らずのうちに皆を間接的に殺してきた。

それでもここにいる皆は、私をリーダーと呼んでくれた。

私を必要としてくれた。

…やっぱり、ここにいる皆は、オリジナルの私を蔑ろにした人達とは違う。

私は、この人達と一緒ならどんな困難だって乗り越えられる、そう思えた。

 

「……よし、応急処置は済んだ。もうここに用は無い。脱出のサポート頼めるか、リカ」

 

『お任せクダサイ、ちち!只今、学園内のすべてのロックを解除中デス!』

 

リカが満面の笑顔を浮かべながら言った直後、ガーっと音を立てて赤い扉が両側に開いた。

すると機械に疎い古城さんは、目を丸くして感心する。

 

「おお…!」

 

『アテクシの手にかかれば、学園内のキーを解除する事など朝飯前なのデス!どやっ!』

 

「ええ。本当に凄いわ。ありがとう、リカ」

 

『えへへ…それほどでも…ありありなのデス!』

 

古城さんが感心していると、リカがドヤ顔をしながら自画自賛した。

私がリカを褒めると、リカはニヘラと嬉しそうに笑顔を浮かべながら得意げになった。

本当に凄いと思う。

まさか、本当に学園内のネットワークを掌握してしまうだなんて…

 

「いやぁ〜、それにしても、リカが生きていただなんて!私、てっきりリカが死んだものだと思ってたもので、本当にショックだったんですよ!?」

 

目野さんは、リカが映っているパソコンを抱き寄せて液晶画面に頬擦りをした。

…目野さん、リカが壊された時、ものすごくショックだったものね。

私がそんな事を考えていると、秋山君が私の代わりにオリジナルの私を背負ってくれた。

 

「さて、行こうか」

 

「ええ」

 

私は、古城さん、加賀君、目野さん、そして私のオリジナルをおぶった秋山君と一緒にエレベーターに乗り込んだ。

私達を載せたエレベーターは、ゆっくりと上昇していく。

思えば、ここに来てから色々あった。

ここで過ごした仲間を11人も失ってしまった。

それでも今、私達は生きてる。

誰かを傷つけた過去は、失ったものは元には戻らないけど、今生きている私達がこれからの未来を変えていく事はできる。

ここから出て、少しずつでも罪を償っていこう。

どんなに時間がかかったとしても…どんなに過酷な道だったとしても。

 

 

 

 

 

Chapter.6 All We Need Is Justice ーTRUE ENDー

 

Next ➡︎ Epilogue 贖罪への道、さよならの出口

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

『月光のオルゴール』

 

Chapter6クリアの証。

黒幕である腐和緋色の宝物。

大切な人との思い出が詰まっている。

今はもう壊れてしまい、その音色を聴くことは叶わなくなった。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 脱出メンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

元・【超高校級の希望】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

以上7名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

以上11名

 

 

 

 

 

今更だけど推し教えて

  • 腐和緋色
  • 聲伽愛
  • 玉越翼
  • 小鳥遊由
  • 知崎蓮
  • 食峰満
  • 越目粧太
  • 聖蘭マリア
  • 古城いろは
  • 加賀久遠
  • 目野美香子
  • 館井建次郎
  • 秋山楽斗
  • 響歌音
  • ネロ・ヴィアラッテア
  • 闇内忍
  • リカ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。