ジャスティスダンガンロンパX4  強くてコロシアイ再履修   作:M.T.

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エンド分岐:卒業ルート

「さて…と。黒幕としての仕事はきちんとしないとね。はいはーい、皆必ずどれかに投票して下さいね!無投票はナシですよ!投票の結果、オマエラの運命はどうなるのか!?ワクワクでドキドキの投票ターイム!!」

 

そう言って私のオリジナルがタブレットを押した瞬間、カウントダウンが開始される。

『再履修』を選べば、全員が死ぬ。

『留年』を選べば、全員がここから出る事は一生叶わなくなる。

『卒業』を選べば、あの女が死ぬ。

私が選ぶべき答えは…………

 

「わ、ワシは卒業するぞ…!闇内がそれを望んでおるのじゃ…!」

 

「脱出を諦めるなど、生きる事を諦めたも同然だ」

 

「私は…外に出て殺されるくらいなら…」

 

「俺は……歌音と一緒に出られないなら…」

 

皆は、それぞれの想いを胸に、自分なりの選択をしようとしていた。

ある者は、自分に希望を託した者の為に。

ある者は、自分の正義の為に。

ある者は、自分が生き延びる為に。

ある者は、絶望のままに死んでいった者のもとに残る為に。

私は………

 

 

 

 

『卒業』する事を選んだ。

私は、私のオリジナルを殺して外に出る。

黒幕以外の私達がここから出る事か全員が永遠にここで暮らし続ける事、そして一からやり直す事しか選べないのなら、私達全員の脱出を優先するべきだ。

出来れば黒幕には生きて罪を償って欲しかったけれど…こうなったものは仕方なかったんだ。

今更この選択を悔いても仕方ない。

私は、最後まで迷いつつも、『卒業』のボタンを押した。

そして、ついにその時はやって来た。

私のオリジナルは、モノクマの笑い声を真似しながら不気味な笑顔を浮かべる。

 

 

 

「うぷぷぷぷ…投票の結果、オマエラの運命はどうなるのか!?『卒業』か『留年』か、はたまた『再履修』か!?ドッキドキでワックワクの投票結果……オープン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

VOTE

 

卒業 3票

 

留年 2票

 

再履修 0票

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぷぷぷぷ、やっぱりそうくるよね!そりゃあ、自分達を殺そうとしてきた奴の命より、自分達が脱出する事の方が大事だよね!というわけで、再履修は0票、卒業が過半数の票を集めたので…おめでとうございまーす!オマエラは、晴れて卒業となります!」

 

「…………」

 

私のオリジナルは、モノクマのような笑い方で高笑いしながら、投票結果を表示した。

『卒業』に票を入れたであろう古城さんと加賀君が安堵の表情を浮かべる一方で、『留年』に票を入れたであろう秋山君と目野さんは絶望の表情を浮かべていた。

彼らにしてみれば、心の拠り所にしていたものを失い、自ら敵だらけの地獄の中へ飛び込まなければならないのだから、最悪の結末以外の何物でもないだろう。

私は、自分で『卒業』に票を入れておきながら、彼らに対して後ろめたい気持ちが溢れてきた。

 

「うぷぷぷ!それにしてもオマエラ、ゴミクズのくせによくやったよ。エクセレントよ!」

 

私のオリジナルは、不気味な程に明るい表情で笑っていた。

たった今この瞬間、彼女の死が確定した。

皆への復讐の為に人生を棒に振るい、最期はそれすらも中途半端のまま死んでいく。

…彼女は、本当にこんな事を望んでいたのだろうか。

いや、今更そんな事を気にしたって仕方ない。

彼女を殺す決断をしたのは、他でもない私達なのだから。

 

「さーてと、そろそろ時間も押してるし、()()やっちゃいましょうかね」

 

「…!アレってまさか…!」

 

「うぷぷ、決まってるでしょう?コロシアイの華といえばオシオキ!最後くらいド派手に一発決めさせてよ」

 

そう言ってオリジナルは、手元にあったスイッチに手を伸ばす。

彼女は、自分で自分を処刑する時となっても笑顔だった。

オリジナルは、大袈裟な身振り手振りをしながら、自分に対しての死刑宣告をした。

 

「今回は、【超高校級の希望】腐和緋色サンのために!!スペシャルな!!オシオキを!!ご用意しました!!!ではでは、オシオキターイム!!!」

 

私のオリジナルの声が、裁判場に響き渡る。

私のオリジナルは、上機嫌で赤いボタンを押した。

ボタンに付いている画面に、ドット絵の私をモノクマとモノDJが連れ去る様子が映っていた。

 

 

 

 

 

ーーー

 

GAME OVER

 

フワさんがクロにきまりました。

 

オシオキをかいしします。

 

ーーー

 

 

 

腐和のオリジナルは、首輪をつけられると、抵抗する事なく自らチェーンで引き摺られていく。

腐和のオリジナルが連れて来られたのは、ディスコ、夜のセレブ街、レストラン、奈良の庭園、そして教室など、統一性のないゴチャゴチャしたセットで飾られた混沌とした処刑場だった。

そこで画面上に文字が現れる。

 

 

 

ーーー

 

超高校級の絶望的おしおき

 

元・【超高校級の希望】腐和緋色 処刑執行

 

ーーー

 

 

 

腐和はまず、 南京錠付きの鋼の十字架に磔にされる。

するとそこで、『LOCKでROCKなRock ’n’ Roll!!』というタイトルが表示される。

最初に執行されたのは、【超高校級のボーカリスト】響歌音のオシオキだった。

腐和は、十字架に磔にされたまま高速回転させられ、モノクマの音痴な歌を聞かされながら観客席から岩やガラス玉を投げつけられる。

凶悪な殺意を込めて投げられた岩やガラス玉が、磔にされた淑女の身体に直撃する。

吐き気がする程の速度で回されながら岩やガラス玉を投げつけられても、腐和は平然とした様子で笑顔を浮かべていた。

むしろ、自分が今受けているオシオキを楽しんでいるようにすら見えた。

すると画面が切り替わり、今度は夜のセレブ街の背景となった。

 

腐和は、今度は夜のセレブ街の屋上に連れて来られた。

するとそこで、『月にかわっておしおきよ!』というタイトルが表示される。

2番目に執行されたのは、【超高校級のメイクアップアーティスト】越目粧太のオシオキだった。

腐和は、紺色のスカートに赤いリボンのセーラー服を着た小鳥遊、赤いスカートに紫色のリボンのセーラー服を着た腐和、青いスカートに水色のリボンのセーラー服を着た聲伽、緑色のスカートにピンク色のリボンのセーラー服を着た目野、オレンジ色のスカートに紺色のリボンのセーラー服を着た聖蘭、ピンク色のスカートに赤いリボンのセーラー服を着た古城、紺色のスカートに黄色いリボンのセーラー服を着た玉越、深緑のスカートに紺色のリボンのセーラー服を着た響のコスプレをしたモノクマ達が現れる。

聲伽のコスプレをしたモノクマがウォーターカッターで腐和の身体を斬りつけ、腐和のコスプレをしたモノクマが火炎放射器で腐和の身体を焼き、目野のコスプレをしたモノクマがスタンガンでありったけの電流を腐和に浴びせ、聖蘭のコスプレをしたモノクマがレーザーガンで腐和の身体を撃ち抜き、古城のコスプレをしたモノクマがメガホンで腐和に音波攻撃を直撃させ、玉越のコスプレをしたモノクマが風の剣で腐和の身体を斬りつけ、響のコスプレをしたモノクマが水の砲丸を腐和に投げつけ、小鳥遊のコスプレをしたモノクマが巨大な三日月を腐和に投げつける。

腐和は、嬉々とした表情で8匹のオシオキを受けていた。

すると画面が切り替わり、今度はレストランの背景となった。

 

腐和は、今度はレストランの厨房に連れて来られ、巨大なケバブの機械に磔にされる。

するとそこで、『注文の多い料理店』というタイトルが表示される。

3番目に執行されたのは、【超高校級の美食家】及び【超高校級の殺人鬼】食峰満のオシオキだった。

モノクマが機械のスイッチを入れると機械は高速回転し、腐和の周りがメラメラと燃え上がる。

そこへパチンコ玉が撃ち込まれ、白い犬が飛びついて腐和に噛みつき、高圧洗浄機で白濁液と酢臭い液体を浴びせられ、さらには塩と大量の油を頭から被せられる。

料理されている最中もなお、腐和は始終笑顔を浮かべていた。

すると画面が切り替わり、今度は奈良の庭園の背景となった。

 

腐和は、今度は法隆寺を模した塔の頂上に磔にされる。

するとそこで、『柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺』というタイトルが表示される。

4番目に執行されたのは、【超高校級の大工】館井建次郎のオシオキだった。

住職の格好をしたモノDJが、鐘撞き棒で腐和の身体を何度も叩く。

何度も何度も身体を打たれてもなお、腐和は不気味な笑みを絶やさなかった。

だがそろそろ身体にも限界が近づいてきたのか、次第に彼女の浮かべる笑顔に元気がなくなっていく。

鐘が撞き終わると画面が切り替わり、今度は教室の背景となった。

 

腐和は、ベルトコンベアの上の席に座らされる。

するとそこで、『補修』というタイトルが表示される。

最後に執行されたのは、【超高校級の幸運】聲伽愛のオシオキだった。

ベルトコンベアは、少しずつ腐和を巨大なプレス機へと運んでいく。

まるで死への時を刻むようなプレス機の音を聴いてもなお、腐和は笑顔を浮かべていた。

ベルトコンベアは、後ろへ後ろへと腐和を運んでいき、そしてとうとう腐和がプレス機の真下へと運ばれた。

すると、今まで一定のリズムでプレスを繰り返していたプレス機が、腐和の頭上でピタリと止まる。

腐和が、恐る恐るゆっくりと顔を上げた、その直後だった。

 

 

 

ガンッ

 

 

 

プレスの音と共に、ぐちゃりと潰れる音が聞こえる。

その瞬間、プレス機の下からは赤い液体が潰れたトマトのように飛び散った。

その後もプレス機はけたたましい音を立てながら下の鉄板を打ち続け、どこからか夕陽が差し込んで真っ赤な液体に染まったプレス機を逆光で照らしていた。

 

 

 

 

 

「…………終わった」

 

誰だっただろう、誰かが最初にポツリと呟いた。

秋山君と加賀君は、ただ茫然と黒幕である私のオリジナルのオシオキを眺めていた。

一方で、古城さんは私のオリジナルが潰れるところで目を逸らしかけ、目野さんは相変わらずオシオキのあまりの悪趣味さに顔色を悪くしていた。

黒幕が死んだ。

これでようやく、コロシアイから解放された。

けれど誰も、歓喜の声は上げなかった。

黒幕が目の前で、あんな残虐な方法で殺された。

いくら同じように私達の仲間を殺してきたとはいえ、本人が死んでも全く喜ぶ気にはなれなかった。

 

「…ねえ、皆」

 

口を開いたのは、秋山君だった。

秋山君は、エレベーターの赤い扉を指差していた。

見ると、エレベーターの扉は開いていた。

 

「これ、動くよ。俺達、これに乗って地上に帰れるよ」

 

「なるほど。ハッキングした奴が居なくなったから、俺達にも操作できるようになったというわけか」

 

秋山君が報告をすると、加賀君が顎に手を当てながら考え事をした。

すると古城さんが勢いよく飛び出し、我先にとエレベーターに乗り込んでいく。

 

「おうおう!!そうと決まれば、こんなカビ臭いところさっさと抜け出すぞ!!」

 

「ええええ!?私、正直嫌なんですけど!?だって、外には敵がいっぱいいるんですよ!?そんな危ない場所でどうやって…」

 

古城さんがエレベーターに乗って高笑いしていると、目野さんが泣き言を言った。

このコロシアイ学園生活を『卒業』し、コロシアイから解放された皆は、エレベーターに乗り込もうとしていた。

…さて、私もエレベーターに乗らないと。

 

 

 

………あれ?

何だか頭が重い。

視界がグルグルする。

息がうまく吸えない。

ぐらぐらと目眩がして、立っているだけでもしんどい。

私は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「腐和さん!?」

 

突然、腐和さんがその場で倒れた。

まるで、糸の切れた操り人形のように。

俺達はすぐに腐和さんに駆け寄り、肩を揺すった。

けれど、腐和さんは目を覚まさなかった。

古城さんは、動揺した様子で腐和さんの肩を掴み、勢いよく揺すった。

 

「腐和のやつ、いきなりどうしたというのじゃ!?」

 

古城さんが肩を揺すっていると、加賀君が顎に手を当てて考え込んだ。

そして自分なりの結論が出たのか、腐和さんを見てポツリと呟く。

 

「…強制シャットダウンか」

 

「え?」

 

「腐和は、黒幕の指示で動く人工知能だった。操り手がいなくなった今、腐和の中に埋め込まれた人工知能が機能を停止し始めているのだろう」

 

「そんな…じゃあ、腐和はどうなるのじゃ!?」

 

加賀君が腐和さんを診察しながら言うと、古城さんが加賀君に詰め寄る。

すると、隣にいた目野さんが俯いたまま答える。

 

「…推測の域を出ませんが…このまま目を覚さないか、最悪死ぬと思います」

 

「嘘じゃろ…!?何故じゃ!?ワシらは黒幕に勝ったんじゃろ!?卒業を選べば、ワシら全員で脱出出来るんじゃなかったのか!?」

 

「……腐和さんのオリジナルは、ちゃんと確認していたんだ。『『卒業』を選んだ時に脱出できるのは、『私』以外の全員だ』って。クローンは自分の分身のようなものだ。クローンの腐和さんも、あの人の言っていた『私』の中に含まれていたんだよ」

 

「そんな…そんなの、まかり通っていいわけないじゃろうが…!」

 

古城さんが俺達に向かって声を荒げてきたので、俺が自分なりの結論を話した。

すると古城さんは、絶望の表情を浮かべて俯く。

加賀君も、目を閉じて俯いていた。

二人は、自分達が『卒業』を選んだ事で腐和さんを殺してしまう事になったのを、今になって後悔していた。

腐和さんは、今まで無意識のうちに俺達をコロシアイに誘導し、間接的に事件を起こしてきた。

それが今になって自分に返ってきたんだ。

古城さんは、俯いたまま肩を小さく揺らして泣いていた。

 

「せっかくここまで来たのに…こんなの、こんなのってあんまりじゃろ!?」

 

古城さんはその場で泣き崩れ、加賀君と目野さんも何とも言えない表情で俯いていた。

俺は、目を瞑ったまま動かない腐和さんを横抱きにしながら、皆に提案した。

 

「……外に連れ出してあげよう」

 

「え?」

 

「腐和さんだって、ここまで裁判を乗り越えてきた仲間なんだ。仲間外れは可哀想でしょ…?」

 

俺が言うと、何人かは頷いた。

本当は、俺も心のどこかでいつか腐和さんが目を覚ましていつものように話しかけてくれるんじゃないか、そんな淡い希望を抱いていた。

そしてそれは、俺以外の皆も同じだった。

皆、心のどこかでは、腐和さんがまた帰ってきてくれるんじゃないかって信じていた。

言い出しっぺの俺は、気絶した腐和さんをおぶってエレベーターに乗り込んだ。

すると、他の皆もエレベーターに乗り込む。

 

俺達を載せたエレベーターは、ゆっくりと上昇していく。

思えば、ここに来てから色々あった。

ここで過ごした仲間を12人も失ってしまった。

黒幕も死んだ。

腐和さんも、いつ目を覚ますかわからない。

それでも今、俺達は生きてる。

誰かを傷つけた過去は、失ったものは元には戻らないけど、今生きている俺達が希望を伝染させていく事はできる。

少しずつでもいい。

ここから出て、皆で希望を取り戻していこう。

どんなに時間がかかったとしても…どんなに過酷な道だったとしても。

 

 

 

ゴゥン

 

 

 

エレベーターが1階で止まり、ドアが開く。

俺達は、一斉にエレベーターから降りた。

見ると、玄関のロックが解除されていた。

…あそこから外に出られる。

 

「行こう、皆」

 

俺達は、外へ…希望に向かって一歩踏み出した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

あれから5年が経った。

俺達もお酒を飲める年齢になり、定期的に4人で集まって、酒を交わしながら近況報告をし合った。

皆はしばらく見ないうちにすっかり大人びていて、古城さんも最初は誰だかわからない程に背が伸びていた。

…古城さんといえば、彼女の酒癖が悪いのはちょっと考え物だったかな。

 

……閑話休題。

俺は今、他の皆と一緒に未来ヶ峰学園が運営していた病院に訪れている。

そこには、俺達の大事な仲間がいる。

 

未来ヶ峰学園から脱出した後、俺達は当然のように外の世界の人達から迫害を受けた。

絶望の残党は死ねだの、私達の家族を返せだの、散々言われた。

酷い時は石を投げられた事もあった。

俺達のオリジナルがやった事が、今になって返ってきたんだ。

それはいい。

俺達のオリジナルが犯した過ちは、俺達が尻拭いをしていけばいい。

 

しばらく迫害は続いて外も出歩けない生活が続いたけれど、幸運な事に、俺達を助けてくれる人達が現れた。

その人達は、元々未来ヶ峰学園から逃れてきた生き残りの教員で、以前から絶望の残党を殺す為だけのコロシアイに対して反対していた。

元々未来ヶ峰学園が考えていたのは、俺達のクローンを世界の復興の為に使う『絶望更生プロジェクト』だったそうだ。

でも腐和さんをはじめとした俺達に恨みを持つ人達の暴動によって、半ば強引にコロシアイという名の公開処刑が行われてしまったらしい。

俺達を助けてくれた先生は、コロシアイを乗り越えた俺達を見て、涙を拭いながらあっさりと俺達の事を許してくれた。

『あなた達はかつて世界を滅ぼしかけた絶望の残党とは違う。あなた達が希望を抱いて前に進んでくれた事が、私の希望だ』と言ってくれた。

 

それから俺達は、先生が用意してくれた隠れ家で暮らしながら、全員全国各地に散らばって復興支援をした。

最初は絶望の残党のクローンである俺達を受け入れない人々がほとんどだったけれど、少しずつ、俺達を受け入れてくれる人達も増えてきた。

少しずつ希望が伝染して、世界は着実に前へと進んでいる。

でも、腐和さんは未だに目を覚まさない。

まるで死んでいるかのように病院のベッドの上で眠っていて、日に日に身体が細くなって衰弱しているのが見てとれる。

誰もが、腐和さんはこのまま目を覚まさずに死んでしまうのではないか、一瞬でもそんな考えが過ってしまった。

 

「おはよう、腐和さん。今日もいい天気だね。ほら」

 

そう言って俺は、笑顔を浮かべながら病室のカーテンを開けた。

古城さん、目野さん、加賀君は、それぞれ持ち寄ったお見舞いの品を病室に置いた。

俺達は、腐和さんの前では明るく振る舞っていようと決めた。

もし彼女が目を覚ました時、俺達が暗い顔をしていたら、きっと腐和さんが悲しむだろうから。

 

「ねえ腐和さん。今ね、世界は少しずつ元に戻り始めてるんだよ。皆が、あんなコロシアイ間違ってるって気づき始めたんだ。俺達は、俺達を助けてくれた人達と一緒に、世界中の人達の復興支援をしてるんだ。…全部、君のおかげだよ。君がいなければ、ここから出る事も、希望を持ち続ける事も出来なかった。希望を持ち続ける事の大切さを、君が教えてくれたよね」

 

俺は、笑顔を浮かべながら腐和さんに話しかけた。

聴こえていないのはわかってる。

それでも、俺達の声が彼女に届いてると信じたかった。

 

「…だからさ。そろそろ目を覚ましてよ。あの時みたいに、俺達に話しかけてよ」

 

俺は、縋るように腐和さんに話しかけた。

気がつくと、頬を伝うものがあった。

古城さんも泣いていて、加賀君と目野さんも俯いている。

…ああ、おかしいな。

腐和さんの前では涙を見せないって、皆で決めたはずなのに。

今だけは出て欲しくないのに、どうして涙が出てきて止まらないんだろう。

 

俺が流した涙は、腐和さんの手に落ちた。

するとその次の瞬間、腐和さんの手がピクッと僅かに動いた。

 

「「「「!!」」」」

 

俺達は、一斉に腐和さんの顔を覗き込んだ。

今、確かに腐和さんが動いた。

やっぱり、希望を持ち続けて前に進んできた事は、間違いじゃなかったんだ。

俺達は、腐和さんがまた戻ってきてくれると信じて、彼女の小さな挙動ひとつ見逃さずに見守った。

 

 

 

 

「ん……………」

 

小さな声と共に、腐和さんは眠そうに重い瞼を開けた。

目を擦りながら、少しずつ目に景色を取り入れていく。

しばらく瞬きを繰り返した後、彼女はついに起き上がった。

 

「腐和ぁ…良かった、良かったぁ…!!」

 

古城さんは、感極まって大粒の涙を流しながら腐和さんに抱きついた。

腐和さんが困惑する中、目野さんも腐和さんに抱きついた。

俺も加賀君も、三人が抱き合っているのを見つめながら、腐和さんが戻ってきてくれた事を心の底から喜んだ。

………だけど。

 

 

 

「…………えっと、すみません。どちら様でしょうか?」

 

「……え?」

 

腐和さんは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、困惑した表情を見せながら俺達に話しかけた。

…そんな、嘘だよね?

そんな訳がない、そう思ったのは古城さんも同じだったのか、古城さんは笑いながら腐和さんに話しかけた。

 

「どちら様って…何を言っておるのじゃ!?ワシじゃよワシ!!元・【超高校級の考古学者】、古城いろはじゃあ!!全く、ワシの前でとぼけるとは、ウヌはいい度胸じゃな!!」

 

古城さんは、自分の胸を叩きながら自己紹介をした。

俺達が知っている腐和さんなら、古城さんの事を、あの学園で古城さんとどうやって過ごしてきたのかを知っているはずだ。

すると腐和さんは、古城さんの顔を見てしばらく考え込んだ後、何かを思い出したかのように僅かに目を見開いて口を開く。

 

「古城いろは……ああ、思い出しました。確か、存在すら怪しいとされていた徳川埋蔵金を発見して、その功績が認められてスカウトされた天才考古学者…でしたよね?お会いできて光栄です」

 

「…………は?」

 

腐和さんが微笑みながら言うと、古城さんは呆気に取られる。

腐和さんが浮かべた笑み、それはまるで()()()()()()()()()()営業スマイルだった。

それを見た古城さんは、わなわなと震えながら腐和さんを問い詰める。

 

「お、お主、何を言っておるのじゃ…!?ワシの事を覚えていないのか!?」

 

「ええと…すみません、未来ヶ峰学園のホームページや特集を調べた程度の情報しか…あの、それよりここはどこですか?私はどうしてここで眠っていたのでしょうか?」

 

古城さんが腐和さんを問い詰めると、腐和さんはオドオドした様子で尋ねる。

腐和さんは初対面の人間を相手にしているかのように腰が低くなっていて、俺達と一緒に過ごしていた頃の覇気はどこにも感じられなかった。

すると、腐和さんの他人のような振る舞いに痺れを切らした古城さんが、腐和さんの胸ぐらを掴んで怒鳴り散らす。

 

「腐和!!貴様、ふざけるのも大概にせんか!!」

 

「ちょ、ちょっと落ち着いてください…!私、あなたの事は知らなくて…」

 

「やめなよ古城さん…!」

 

「落ち着け、今さっき目を覚ましたばかりなんだぞ!」

 

今起きたばかりの腐和さんに対して古城さんが掴み掛かったので、俺と加賀君が咄嗟に古城さんを引き剥がした。

古城さんは、泣きながら腐和さんに向かって叫ぶ。

 

「何故じゃあ!?貴様、何故ワシらの事を覚えておらぬのじゃ!?せっかく目を覚ましたというのに…こんなの、あんまりじゃろうが!!」

 

古城さんは、俺達の腕の中で子供のように喚き散らした。

俺達も、気持ちは古城さんと同じだ。

せっかくまた皆で再開できたというのに…

腐和さんは、俺達の事を何も覚えていない。

どうしてなんだよ…!?

 

 

 

「……再起動、ですか」

 

「…え?」

 

唐突に、目野さんがポツリと呟いた。

すると目野さんは、自分なりの考察を話し始める。

 

「ほら、パソコンでデータを保存せずに電源を切ると、そのデータが消えるじゃないですか。きっと腐和さんにも同じ事が起こったんですよ。一度機能を停止した後で再び回復したから、私達と過ごした記憶が全て抜け落ちているんです」

 

「そんな…!!嘘じゃ嘘じゃ嘘じゃ…!!うわぁあああああああん…!!」

 

目野さんが言うと、古城さんはその場で泣き崩れた。

せっかく、皆で生きてあの学園から脱出できたのに。

せっかく、希望を信じてここまで来たのに。

こんなの、あんまりじゃないか。

 

「ねえ腐和さん…お願いだから、思い出してよ。あの時みたいにさ、俺達に話しかけてよ。頼むからさ…!」

 

俺は、腐和さんの肩を掴みながら懇願した。

そんな事を願ったってどうにもならないってわかっていたはずなのに。

彼女が失った記憶は、二度と戻ってこない。

そんな事は、俺だってわかってる。

でも、それでも、希望を信じたいじゃないか。

 

「……ごめんなさい。あなた達の事は、本当に何も知らないの。…でも、どうしてだろう。あなた達の事が、とても大切な人のように思えるの。どうしてだかわからない。でも、でも…!ずっと、あなた達に会いたかった…!」

 

腐和さんは、涙を流しながら言った。

俺達は、肩を震わせて泣いている腐和さんと抱き合った。

きっとこれから先も、彼女が俺達の事を思い出す事は無いだろう。

それでも、希望を胸に、一緒に前に進んでいこう。

 

 

 

 

 

Chapter.6 All We Need Is Justice ーBAD ENDー

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

『未来ヶ峰学園卒業証書』

 

BAD ENDクリアの証。

未来ヶ峰学園の卒業証書。

この証書を手にした時点で、初めて未来ヶ峰学園を卒業したと認められる。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 卒業メンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

以上5名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

元・【超高校級の希望】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

以上13名

 

 

 

 

 

今更だけど推し教えて

  • 腐和緋色
  • 聲伽愛
  • 玉越翼
  • 小鳥遊由
  • 知崎蓮
  • 食峰満
  • 越目粧太
  • 聖蘭マリア
  • 古城いろは
  • 加賀久遠
  • 目野美香子
  • 館井建次郎
  • 秋山楽斗
  • 響歌音
  • ネロ・ヴィアラッテア
  • 闇内忍
  • リカ
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