ジャスティスダンガンロンパX4 強くてコロシアイ再履修 作:M.T.
「さて…と。黒幕としての仕事はきちんとしないとね。はいはーい、皆必ずどれかに投票して下さいね!無投票はナシですよ!投票の結果、オマエラの運命はどうなるのか!?ワクワクでドキドキの投票ターイム!!」
そう言って私のオリジナルがタブレットを押した瞬間、カウントダウンが開始される。
『再履修』を選べば、全員が死ぬ。
『留年』を選べば、全員がここから出る事は一生叶わなくなる。
『卒業』を選べば、あの女が死ぬ。
私が選ぶべき答えは…………
「わ、ワシは卒業するぞ…!闇内がそれを望んでおるのじゃ…!」
「脱出を諦めるなど、生きる事を諦めたも同然だ」
「私は…外に出て殺されるくらいなら…」
「俺は……歌音と一緒に出られないなら…」
皆は、それぞれの想いを胸に、自分なりの選択をしようとしていた。
ある者は、自分に希望を託した者の為に。
ある者は、自分の正義の為に。
ある者は、自分が生き延びる為に。
ある者は、絶望のままに死んでいった者のもとに残る為に。
私は………
『留年』する事を選んだ。
敵だらけの外に出たって、何も希望も見出せない。
かといって、オシオキを受けるのも嫌だ。
だったら、脱出を諦めてここに残るしかないじゃない。
それしか選ぶ道が無かった。
元々、ここに閉じ込められた時点で最初から希望なんてないんだもの。
今更この選択を悔いても仕方ない。
私は、最後まで迷いつつも、『留年』のボタンを押した。
そして、ついにその時はやって来た。
私のオリジナルは、モノクマの笑い声を真似しながら不気味な笑顔を浮かべる。
「うぷぷぷぷ…投票の結果、オマエラの運命はどうなるのか!?『卒業』か『留年』か、はたまた『再履修』か!?ドッキドキでワックワクの投票結果……オープン!!」
VOTE
卒業 2票
留年 3票
再履修 0票
「うぷぷぷぷ、やっぱりそうくるよね!そりゃあ、外に出たって周りは敵だらけ!絶望しかないもんね!だったらずぅーーーっとここで暮らした方がいいよね!というわけで、再履修は0票、留年が過半数の票を集めたので…残念でしたー!オマエラは留年!一生ここで学園生活を続けてもらいます!」
「…………」
私のオリジナルは、モノクマのような笑い方で高笑いしながら、投票結果を表示した。
『留年』に票を入れたであろう秋山君と目野さんが安堵の表情を浮かべる一方で、『卒業』に票を入れたであろう古城さんと加賀君は絶望の表情を浮かべていた。
彼らにしてみれば、せっかく脱出する事だけを希望にここまで生き残ってきたというのに、その希望すらも奪われて、最悪の結末以外の何物でもないだろう。
私は、自分で『留年』に票を入れておきながら、彼らに対して後ろめたい気持ちが溢れてきた。
「クソッ……!ふざけるな…こんなの……!!」
「そんな…嘘じゃろ!?いやっ、嫌じゃあ!!ワシをここから出せ!!出してくれ!!」
「うぷぷぷぷ、ダメでーす。もう投票で留年が決まっちゃったんだもの。オマエラは一生ここから出られません!」
加賀君と古城さんの抗議も虚しく、私のオリジナルは手元のタブレットを操作した。
すると、どこからか機械音が聞こえてくる。
その音に気がついた加賀君は、ハッとしてエレベーターの方を見る。
「………待て、何の音だ?」
「ふふふ、今玄関を封鎖したのよ。だってもうあなた達には必要無いでしょう?」
「そんな…!そんな…!!」
私のオリジナルがニヤニヤしながら言うと、加賀君と古城さんはエレベーターの方へと走っていく。
私のオリジナルがいつの間にか設定を変更したのか、エレベーターは一人でに開いた。
私、秋山君、目野さんの三人もエレベーターに乗り込んで1階へ向かう。
1階に向かうと、外に繋がる玄関ホールにシャッターが降りていた。
古城さんは、真っ先にシャッターの方へと走っていくと、大声で叫びながらシャッターを何度も叩いた。
「おい!!開けろ!!開けてくれ!!誰か、誰か!!ここから出せ!!出してくれ!!」
古城さんが悲痛な声を上げながら何度もシャッターを叩くが、シャッターはびくともしなかった。
私達が『留年』を選んでしまったからだ。
すると、私のオリジナルが後ろから歩み寄って古城さんに言い放った。
「無駄よ。そのシャッターは、核爆弾でも傷一つつかないわ。あなた達は、一生ここから出られないのよ」
「そんな…!うっ、ふぅううっ、うぁああぁああああああ…!!」
「……………っ」
私のオリジナルが冷淡に言い放つと、古城さんはその場で泣き崩れ、加賀君も拳を握りしめながら俯いた。
二人が絶望の表情を浮かべていると、秋山君と目野さんが二人に歩み寄って言った。
「ごめん、二人とも…」
「ごめんなさい…ごめんなさい…!」
「……ごめんなさい」
秋山君と目野さんは、『卒業』に票を入れた二人に謝った。
私も、二人に謝った。
私達が『留年』に票を入れた事で、外に脱出するという希望を失ってしまった。
私は、自分達が『留年』を選んだ事で、彼等から希望を奪ってしまった事を、今になって心の底から後悔した。
でも今からどんなに後悔したってもう遅い。
投票は終わってしまったんだ。
どんなに嘆いたって、時は元には戻らない。
「ふふふ、大丈夫よ。あなた達の安全は、私が保証してあげる。さ、皆で一緒にずっとここで暮らしましょう?」
私のオリジナルは、ニコッと優しく微笑みながら手を差し伸べた。
希望を失った今の私達には、彼女が聖母のようにすら思えた。
もう、希望も、皆との約束も、何もかも忘れよう。
全てを忘れて、この人に全てを委ねてしまおう。
◇◇◇
「………ん」
私は、寄宿舎の自分の個室のベッドで目を覚ました。
時間は…6時55分。
朝食まではあと5分か…
私がベッドから起き上がろうとした、その時だった。
「おっはよー!緋色お姉ちゃん!」
突然9歳くらいの女の子が部屋に入ってきて、私の布団に飛び込んできた。
その娘は、加賀君に似た癖っ毛の紺色の髪と、目野さんに似た鶯色の瞳をした女の子だった。
女の子は、私の腕を引っ張ると無理矢理ベッドから引き摺り出した。
「お姉ちゃん、早くいこーよ!朝ごはん遅れちゃうよ!」
「ごめんなさい。支度したらいくわ」
女の子が私を食堂に引っ張って行こうとしたので、私は急いで支度をした。
お気に入りのブラウスとスカートを身につけて、髪を後ろで結んで、最低限の化粧をする。
クローゼットにしまってある制服は、もう何年も着ていない。
……私には、もう必要ないからね。
「ごめんお待たせ。行きましょうか」
「うん!」
私が支度を終えて声をかけると、女の子はニコッと満面の笑みを浮かべながら頷いた。
誰かさんとは違って本当に素直でいい子ね。
私は、女の子と手を繋いで一緒に食堂に向かった。
「きゃはは、待て待て〜!」
「待たないよ〜だ!」
食堂では、子供達が駆け回ったり、遊んだり、朝食の準備をしたりしていた。
この光景だけ見ると、ここはまるで孤児院のようだった。
食堂にいる子供達には、全員に私以外の4人の特徴が見てとれた。
食堂で走り回っているのは、3、4歳くらいの男の子で、目野さん譲りの珊瑚色の髪と加賀君譲りの水色の瞳をした男の子、そして古城さん譲りの小豆色の髪と秋山君譲りの紫色の瞳をした男の子だった。
全員、私以外の4人の子供だった。
「ねえおとーさん、今日の朝ごはんなぁに?」
「パンケーキ」
「やったあ!ねえ、ぼくも焼くの手伝っていい?」
「んー、じゃあお願いしよっかな」
「わーい!」
秋山君は、厨房で皆の分の朝食を作っている。
その隣では、秋山君譲りの濃紫の髪と目野さん譲りの鶯色の瞳をした7、8歳くらいの男の子が上機嫌ではしゃいでいた。
どうやら、秋山君の息子は厨房で朝食作りを手伝っているようだった。
すると、私を食堂に連れてきた女の子が、加賀君と目野さんの方へと走っていく。
加賀君はコーヒーを飲みながら雑誌を読んでいて、目野さんはその隣で大きなお腹を撫でていた。
「ねえパパ、ママ!見て見てー!これ、あたし一人で作ったんだよ!」
「よく出来てる」
「凄いじゃないですか!さすが私の娘ですね!」
「えへへー♪」
女の子が自分で組み立てたオルゴールを二人に見せると、二人は頭を撫でながら自分の娘を褒めた。
一方で、古城さんはというと…
「闇内…ワシは、ワシはどうすれば良かったんじゃ…?」
古城さんは、暗い表情で俯いてぶつぶつと何かを言いながらお腹に手を当てていた。
目野さんと古城さんは、加賀君と秋山君の子供を妊娠していた。
最後の裁判から10年が経った。
私達は、今もなおこの未来ヶ峰学園で共同生活を続けている。
初めからこの学園で生活する気でいた目野さんと秋山君は、すぐに共同生活に適応した。
今ではむしろ、コロシアイがあった時より生き生きしているようにすら思える。
そして加賀君も、最初の方こそ出たがってはいたものの、割とすんなり共同生活に適応し、彼なりに快適に暮らしている。
古城さんは…出られないと悟って絶望し、何にも楽しみを見出せずに壊れてしまった。
研究棟の研究室に引きこもってはぶつぶつと譫言のように何かを言っているのが、かれこれ何年も続いている。
最初の数ヶ月はコロシアイがあった頃とほとんど変わらなかったけど、ある出来事をきっかけに事態は急変した。
目野さんが妊娠したのだ。
多分あの時既に目野さんは、男子二人と関係を持っていたんじゃないかと思う。
秋山君も加賀君も、コロシアイ共同生活をしていた頃は自分の亡き想い人の為に貞操を守るつもりでいたのに、目野さんだってあれだけ機械にしか興味無さそうにしていたのに、たった数ヶ月で簡単に身体を許してしまった。
きっと、無期限の共同生活を強いられてどこか歪んでしまった部分があったんだと思う。
私のオリジナルが一生生活の安全を保証すると約束してしまったものだから、これをきっかけに目野さんは二人の子供を何人も作った。
そしてそれは、古城さんも同じだった。
彼女は共同生活に適応できずに心が壊れてしまい、二人のされるがままとなってしまった。
背が伸びて大人びた身体つきにはなっていたものの、今ではもはや子供を産む為の機械と化してしまっていて、以前の覇気はどこにも感じられなかった。
「先生〜!ねえご本読んで〜」
「あ〜、ずるい!あたちが先!」
「はいはい、皆仲良く順番にね」
子供達は、私のオリジナルの元へ駆け寄って甘えていた。
私のオリジナルは、子供達に『先生』と呼ばれて聖母のように慕われていた。
独自で開発した不老薬の投与によって、高校生にも思える若々しい容姿は未だ健在だった。
何も知らない子供達からしてみれば、食べ物を恵んでくれて自分達の面倒を見てくれる聖人のようにしか見えないだろう。
実際、私だって思い始めてる。
この人についていけば、何も心配は要らないと。
オリジナルは、ニッコリと笑みを浮かべながら私達の方を見た。
「全員揃ったわね。それじゃあ、皆で朝ご飯にしましょう」
「「「「はーい!」」」」
オリジナルが笑顔を浮かべながら言うと、子供達は一斉に元気よく返事をした。
この光景も、もはや見慣れた光景だ。
私達が食事の挨拶をすると、子供達は一斉に朝食を食べ始めた。
私も秋山君が作ってくれたパンケーキとカボチャのスープを口に運んだ。
私のオリジナルは、赤ちゃんを抱き抱えてミルクをあげていた。
食事が終わると皆で後片付けをして、年長の子供達は勉強に、私達は家事や小さい子供達の世話に勤しんだ。
私は、ここにいる子供達が産まれてから元気に過ごしているところを間近で見てきた。
栄養満点で美味しいご飯、寝心地のいいフカフカのベッド、子供達を飽きさせない娯楽施設、勉強を教える為の教育設備…この学園には何でも揃っていた。
荒廃していて敵しかいない外の世界とは大違いだ。
今なら、秋山君と目野さんがどうしてすぐ『留年』を選んだのがわかる。
私は、どうしてあの投票の直前まで、ここから出るかどうかで迷っていたのだろう。
「ねーね、ねーね」
「ああ、ごめんなさい」
私が考え事をしていると、目野さん譲りの珊瑚色の髪と秋山君譲りの濃紫の瞳をした1歳くらいの女の子が、私の髪を掴んで話しかけてきた。
私は、私の髪を掴んできた女の子と一緒に遊び、同時に他の子達の世話もした。
生き残りの女子の中では、私だけが一度も子供を持った事が無かった。
時々亡くなったマナの事を思い出してしまって、どうしてもそういう気分になれなかった。
そのせいか私だけが召使いのような立ち位置だったが、特に不満は無かった。
ここには何の不自由もないし、私達を殺そうとしてくる敵もいないし、病気や飢餓の心配もない。
純粋に私を慕ってくれる子供達は可愛いし、労働も苦ではなかった。
まさにここは楽園と言っても過言ではないだろう。
夕食と一日の家事を終え、子供達を全員寝かしつけた後は、私達大人だけで寄宿舎の娯楽施設で遊んだり各々の研究に勤しんだりした。
私達はもうとっくに成人しているので、オリジナルもそこら辺は気を利かせて外の世界からお酒や煙草などの嗜好品も仕入れてくれている。
さらにはギャンブルもし放題で、頼めば外では違法なものも色々と仕入れてくれるそうだ(流石に実際にお願いして仕入れてもらった事はなかったけれど)。
ここでは、『ここから出てはいけない』、それさえ守れば何をしても許されるのだ。
「ふわぁ〜あ…じゃあ私、先に寝ますね〜。おやすみなさぁ〜い」
「……ワシももう寝る」
目野さんは、眠そうにあくびをしながらひと足先に自分の個室へと戻っていった。
古城さんも、そそくさと自分の部屋に戻っていってしまった。
男二人と私一人……気まずいわね。
私がそんな事を考えていると、秋山君が声をかけてくる。
「あの…さ、とりあえず、俺の部屋来る?」
「え?あ、そうね……」
秋山君の提案で、まだ起きていた私達3人は秋山君の部屋に集まった。
私達3人は、しばらく秋山君の部屋でまったりして過ごした。
ここにマナが一緒にいたらどんなに良かったか…
ふとそんな考えが頭をよぎり、私は最後にマナと撮った写真を眺めた。
すると、加賀君がワインのボトルとワイングラスを運びながら話しかけてくる。
「また聲伽の写真を見てるのか」
「……まあね」
私は、ふと加賀君が今どう思っているのか気になった。
彼は、元々は『卒業』に票を入れていたのだ。
最初の数日間こそここから出る方法を必死に探していたのに、今ではすっかりそれもなくなった。
本当にここから出る事を諦めたのだろうか?
「ねえ。加賀君は、『卒業』に票を入れたのよね?もうここから出たいとは思わないの?」
「君は何を言ってるんだ?『留年』に票を入れたのは君だろ」
「それはそうなんだけど…」
確かに私は『留年』に票を入れた。
実際、今はその選択を全く後悔していない。
でも、あれだけ必死に外に出たがっていた人がここまで学園の生活に馴染んでしまっているのを見ると、どうも異様さを感じずにはいられなかった。
すると加賀君は、ワインをグラスに注ぎながら語り始める。
「むしろ今じゃ、『卒業』に票を入れた自分が馬鹿らしいよ。ここには何の不自由もない。俺は何故、あんなにも必死にここから出たがっていたのだろうな」
「…里香ちゃんは?里香ちゃんの事しか愛さないんじゃなかったの?」
「そんな事を言っていた時期もあったな。だが、里香と愛し合っていた俺とここにいる俺は別人だ。だったら里香に操を立てる義理は無いだろう?」
「そう………ねえ、秋山君。あなたは響さんの事が好きだったんじゃなかったの?」
「うーん、それはそうなんだけどね。でも俺と響は心で繋がってるからそれでいいんじゃないかな。大丈夫、歌音ならたとえ身体で繋がる事ができなくても、ずっと俺と一緒だから。あの二人には、歌音の代わりをしてもらってるだけだよ」
「そう……」
加賀君は、かつての自分の恋人を別の自分が愛した女性だと割り切る事で、彼女への想いを綺麗さっぱり忘れ、古城さんや目野さんとの関係を正当化していた。
秋山君は、心の中では未だに響さんを一番に想いつつも、もうこの世にはいない彼女とでは決して満たす事のできない欲望を、全く関係のない二人にぶつけた。
二人とも、普通の価値観を持った人からすれば最低だと思う。
でも私は、彼らを軽蔑はしなかった。
純粋に、そういう考え方もあるのか、としか思わなかった。
私も、ここで暮らしているうちにどこか歪んでしまったのだろうか。
「君もいつまでも過去に捉われず、ここで楽に生きていく事だけを考えたらいい。心配するな。ここには、それを責める者は誰もいない」
「………それもそう、なのかもしれないわね」
加賀君が私の肩に手を置くと、私はふ、と息を漏らした。
私は何を迷っていたのだろうか。
そもそも、ここで永遠に苦しみのない暮らしをしていく事を選んだのは私だったはずなのに。
ここで暮らす事を選んだのであれば、何もかも、流れに身を任せてしまえば良かったんだ。
私がため息をついて決心した事を表情で表すと、秋山君が私の身体を持ち上げてベッドに運んでくれた。
彼が私の着ている服に手をかけてくると、私は、煮るなり焼くなり好きにしろ、と言わんばかりに黙ってそれを見届ける。
その後はもうお察しの通りで…これじゃあまるでまな板に乗せられた魚じゃないか、と自嘲の念を込めながら彼等に身を委ねた。
◆◆◆
その頃、食堂では。
明かりのついておらず誰もいない食堂に、何者かが侵入する。
その人物は、古城だった。
古城は、そのまま厨房に侵入すると、ぶつぶつと何かを呟きながら厨房で何かを物色する。
古城の手には、一本の包丁が握られていた。
「闇内……あんな狭い所に閉じ込められて…一人は寂しいじゃろ?ワシも今そっちに……」
古城は、ぶつぶつと独り言を呟きながら懐に包丁をしまった。
するとその時だった。
「ふわぁ〜あ…喉渇いちゃいましたぁ。水、水〜…」
「!」
突然、目野が寝ぼけ眼であくびをしながら食堂に入ってくる。
まだ酒が抜けていないのか、間延びした口調と千鳥足が治っていなかった。
そして、暗がりの中から古城の姿を見つけ出した。
「…ふにゃあ、あれぇ?古城さんじゃないですかぁ。こんな時間に何やってるんですかぁ〜?」
「………お主の方こそ、ここに何の用じゃ?」
「喉渇いたんでお水飲みに来ました〜」
そう言って目野はフラフラと厨房に行き、浄水器の水を飲んだ。
目野は水を飲みながら、酔っ払って大きな声で独り言を言った。
「いやぁ〜、それにしても、ここでの暮らしは何不自由なくて本当に楽しいですね。全く、加賀さんも古城さんも、なんで『卒業』なんかに票入れたんでしょうか?ホント、バカみたいですよぉ〜」
「…………!」
その言葉を聞いた古城の中で、プツン、と何かが切れた。
その瞬間に今まで溜め込んでいたものが一気に溢れ出し、気がつくと目野の方を振り向き、包丁を持って突進していた。
◆◆◆
「ん………」
私は、秋山君の個室のベッドで目を覚ました。
まだお酒が完全に抜けていないからか、それとも眠気のせいか、頭が重い。
キングサイズのベッドの中央には私が、そしてその両脇には秋山君と加賀君が横になっていた。
お互い全裸で、所謂事後というやつだ。
…そりゃあ閉鎖空間で若い男女がいたら、当然そういう事もするわよ。
逆にどうして今まで一度もこういう事をしてこなかったのかが甚だ疑問だわ。
仕方ないじゃない、加賀君に『初めてなのか?』なんて言われて小馬鹿にするような笑みを向けられたんだもの。
経験が無かったのは事実だけど…
でもまさか、保健室にあったアレを今になって使うとは思わなかったわ。
そんな事を考えながら私が眠い目を擦っていると、部屋のインターホンが鳴った。
慌ててパジャマを着てから部屋のドアを開けると、部屋の前に今朝私を起こしてくれた女の子と、女の子の弟と思われる男の子が立っていた。
「あら、二人ともどうしたの?」
「んん〜…おしっこ…」
私が尋ねると、男の子がぐずり出した。
状況から察するに、男の子が夜中にトイレに行きたいと駄々をこねたから、女の子が弟を連れて一緒に私達を呼びに行ったといったところだろう。
「あ、じゃあ一緒に行きましょう」
私は、部屋を出て二人を1階のトイレに連れて行った。
私が二人のトイレを待っていると、食堂の扉が僅かに開いている事に気がつく。
…誰かが食堂にいるのかしら?
そう思って扉をそっと覗くと……
「っ……………!?」
食堂からは、血生臭い匂いが漂ってくる。
思い出したくもない、あの忌々しい匂い。
食堂の電気をつけて、ゆっくりと視線を下に移すと、そこには………
目野さんが、大量の血を流しながら生気のない顔をして倒れていた。
「なに、これ……どういう事……?」
私は、理解が追いつかなかった。
どうして、目野さんが倒れているの?
何がどうなっているの…?
私がぐちゃぐちゃになった思考をどうにかまとめようとすると、目が合ってしまった。
目野さんを殺したであろうその人と。
その人は、血のついた包丁を握りしめ、大量の返り血を浴びてただ呆然とそこに立っていた。
その人は……
古城さんだった。
「おねーちゃん、何かあったの?」
「来ちゃダメ!!」
背後から女の子の声が聴こえたので、私は咄嗟に叫んだ。
だが、既に遅かった。
食堂の外にいた姉弟は、見てしまった。
食堂の中で起こっていた惨劇を…床に倒れて息絶えている、自分達の母親の亡骸を。
◇◇◇
その後、私はその場で古城さんを取り押さえ、大人達全員を食堂に集めた。
子供達は、自分の母親の死を見せるのはショックが大きすぎるだろうという事で、寝かせたままにしておいた。
目野さんは床に仰向けに倒れたまま顔に布を被せられ、古城さんは両手を後ろで縛られていた。
目野さんを刺し殺してしまった古城さんは、絶望の表情を浮かべてぼんやりと一点を見つめていた。
「古城…貴様、自分が何をしたのか分かってるのか?」
「…………」
加賀君が腕を組んだまま古城さんを見下ろして睨みつけながら尋問したが、古城さんは何も答えなかった。
秋山君も、古城さんに冷たい視線を向けながら尋ねる。
「古城さん…どうして目野さんを殺したりなんかしたんだ。答えろ」
「…………」
古城さんは、秋山君の質問にも答えなかった。
二人はわかっていないようだったけれど、私には古城さんが目野さんを刺してしまった理由が何となくわかった。
ここで共同生活をする事が決まった時点で、古城さんの心はもうとっくに壊れていた。
そしてきっと、目野さんが古城さんを殺人に踏み切らせるような事を口走ってしまったのだろう。
こうなるのは時間の問題だったんだ。
私は…いえ、私達は、この何不自由ない楽園を失うのが怖くて、ずっとその事から目を背け続けてきたんだ。
すると、古城さんがポツリと口を開く。
「何でじゃ……」
「?」
「人を殺したんじゃぞ…?何故外に出られんのじゃ…人を殺したら外に出られるはずじゃったじゃろ……?」
古城さんは、絶望でくすんだ瞳を私達に向けて言った。
もう彼女は正気ではなかった。
人を殺してまで外に出ようとした。
彼女はそこまで追い詰められていたんだ。
私が絶望の表情を浮かべた彼女から目を背けようとした、その時だった。
ザクッ
「……………え?」
「………ガフッ」
突然、古城さんが目を見開いて口から血を吐いた。
彼女のお腹には、深々と包丁が刺さっていた。
古城さんに憎しみの目を向けて涙を流しながら包丁で刺していたのは、今朝私を起こしてくれた女の子だった。
「よくもママを…殺してやる!!」
女の子は、ガチガチと歯を慣らして息を荒くしながら、古城さんに対して怨恨を剥き出しにしていた。
私は、咄嗟に女の子を取り押さえ、包丁を手放させた。
女の子は、私に取り押さえられてもなお、暴れながら古城さんを罵り続けていた。
「人殺し!!あたしのママを返してよぉ!!返してよぉぉぉ!!うわぁああああぁあああん!!」
古城さんは、女の子の怨嗟の声を聞きながら、目野さんと同じように冷たい床の上に倒れ込み、ゆっくりと息を引き取っていった。
その様子を見ていた私のオリジナルは、不気味な笑みを浮かべていた。
「うぷぷ♪オマエラ、ユニバース25って知ってる?どんな生き物でも、どんなに不自由のない楽園を用意されたとしても、結局最後は滅んじゃうんだよ。外敵からの恐怖を取り除いたところで、オマエラは結局コロシアイからは逃れられない。ま、生物としての性だよね。せいぜいここで一生楽に生きるといいよ。絶望的な破滅が訪れるその時まで、ね」
Chapter.6 All We Need Is Justice ーNORMAL ENDー
《アイテムを入手した!》
『手作りの時計』
NORMAL ENDクリアの証。
コロシアイ学園生活が始まってから9回目の誕生日に子供達からプレゼントされたもの。
今はもう壊れてしまい、時を刻む事は永遠になくなった。
ーーー 生き残りメンバー ーーー
【超高校級の警察官】
【超高校級の魔術師】
【超高校級の音楽プロデューサー】
元・【超高校級の希望】
以上4名
ーーー 死亡メンバー ーーー
【超高校級のバレーボール選手】
【超高校級のボーカリスト】
【超高校級の獣医】
【超高校級のメイクアップアーティスト】
【超高校級の聖母】
【超高校級の忍者】
【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】
【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア
【超高校級の大工】
【超高校級のAI】リカ
【超高校級の泥棒】
【超高校級の幸運】
【超高校級の機械技師】
【超高校級の考古学者】
以上14名
今更だけど推し教えて
-
腐和緋色
-
聲伽愛
-
玉越翼
-
小鳥遊由
-
知崎蓮
-
食峰満
-
越目粧太
-
聖蘭マリア
-
古城いろは
-
加賀久遠
-
目野美香子
-
館井建次郎
-
秋山楽斗
-
響歌音
-
ネロ・ヴィアラッテア
-
闇内忍
-
リカ