ジャスティスダンガンロンパX4  強くてコロシアイ再履修   作:M.T.

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Epilogue 贖罪への道、さよならの出口
エピローグ


私達は、エレベーターに乗って地上に上がった。

学園内のロックは全てリカが解除してくれたわけだけれど…

でも、問題はここからだ。

ここからどう生きていくか考えないと。

 

『それについてデスが、お任せクダサイ皆サン!』

 

うわ、ビックリした。

…何だ、リカか。

というか今この子、しれっと私の心読まなかった?

 

『実はアテクシ、ここにいる間に外部の方とコンタクトを取っていたのデス』

 

「ええっ!?それは本当かァ!!?」

 

『ええ、まあ。外にはアナタ達の事を憎んでいる方ばかりデスので、協力者を探すのは中々骨が折れマシた。たはは…』

 

古城さんが問い詰めると、リカは苦笑いを浮かべながら頭を掻いた。

私達が裁判をやっている間にセキュリティー解除どころか外部とのコンタクトまで試みていたとは…

前々から思ってたけど、この子ハイスペックすぎて末恐ろしいわね。

 

「それでリカ、結果はどうだったんだ?」

 

『はい。一人、見つかりマシた。アテクシが救助要請を送信したところ、二つ返事で駆けつけてくれマシた。既にこちらの動きを把握して、ここに来てくれているようなのデス』

 

しかもここに来てくれるの…?

ちょっと待って、助けてくれるのは本当にありがたいけど、話がとんとん拍子で進みすぎて逆に怖いわね。

私がついツッコミそうになると、目野さんがリカに抱きついて褒めちぎった。

 

「ほ、本当ですかぁ!!?やったぁ、私達助かるんですね!!でかしましたねリカ!!さすが私の娘です!!」

 

『えへへ…それほどでも…大有りなのデス!えっへん!』

 

目野さんがリカを褒めちぎると、リカは自分の成し遂げた功績に胸を張った。

…でも、本当にリカが生きてくれてて良かったわ。

彼女がいなかったら、私達は、黒幕も含めて全員で助かるなんて選択は出来なかったでしょうから。

私がそんな事を考えていると、裏口の方から音がした。

 

「!いま、裏口の方から音がしたぞ!?」

 

「行ってみましょう」

 

私達は、音のした裏口へと向かった。

でもまだ何か罠があるかもしれない。

いくらリカがこの学園を掌握してくれたとはいえ、まだ油断はできない。

私達が裏口を警戒していると、外部からの電波を受信したリカが私達に声をかける。

 

『皆サン、安心してクダサイ。外にいるのは味方デス』

 

「………え?」

 

リカが私達の警戒を解く為に伝えた、その直後だった。

裏口の扉が開き、中に誰かが入ってくる。

その人は、銀髪と切れ長の目が特徴的な長身の男性だった。

男性は、私達に歩み寄ると声をかけてきた。

 

「君達か。ここでコロシアイに巻き込まれたという未来ヶ峰学園の生徒は」

 

「ええと…はい。あの、あなたは?」

 

「私は弦野という者だ。ダンガンロンパの負の遺産であるコロシアイを根絶する為に、仲間と共に活動している」

 

私が尋ねると、弦野と名乗る男性は胸に手を当てて答えた。

この人が、私達の協力者……

 

「本当にこの人信用して大丈夫なんですか?」

 

「どぉ〜も胡散臭いのぉ」

 

『彼等は、かつて行われたコロシアイをきっかけに、コロシアイを根絶する為、世界各地に拠点を置いている活動家デス。彼等の活動内容は、先程全て拝見致しマシた。この人を信用してクダサイ』

 

目野さんと古城さんが弦野さんを怪しむような目で見ると、リカが答えた。

リカ、いつの間にそこまで調べていたのね……

…というか古城さんに目野さん、あなた達だいぶ失礼よ。

 

「君達のオリジナルの罪は十分に理解しているつもりだ。私達が君達を助けようと、世間は君達を決して許しはしないだろう。それでも罪を償い続ける覚悟のある者、世界と戦う覚悟のある者は私について来なさい」

 

弦野さんが言うと、私達は顔を見合わせて頷き、彼についていった。

私達は、彼の操縦するヘリに乗って未来ヶ峰学園を去っていった。

…もう、あの校舎を目にする事は無いのかもしれない。

コロシアイの為だけにあそこで生み出された私からしてみれば、あそこは地獄だったかもしれない。

でも、だからといって、あの学舎で皆と過ごした時間まで地獄だったわけじゃない。

だからきちんとお別れはしておかないと。

 

 

 

それから数十分後、私達を乗せたヘリが到着したのは、本土から遠く離れた孤島だった。

そこには、弦野さんやその仲間の方々が活動拠点にしている施設があった。

私達は、しばらくは弦野さんが所属する組織、『未来機関』のお世話になる事となった。

 

「いいか、今や君達は世界の敵なんだ。騒ぎが沈静化するまでは本土に戻る事はできないと思ってくれていい。だが、ここにいる人間は君達の味方だ。さ、中に入りなさい」

 

そう言って弦野さんは、私達を施設に案内してくれた。

私達が施設を訪れると、何人かの活動家の方達が私達を出迎えてくれた。

 

「はじめまして。君達の事は生中継で見てたよ」

 

「ケッ、正直『絶望』共をここで匿うのァなぁ…」

 

「あんまりそういう事言わん方がええよ」

 

私達の事を快く受け入れてくれる人もいれば、元絶望という事で匿うのを反対している人達もいた。

良かった、受け入れてくれる人がいた。

外の世界は、私達の敵だけじゃなかった。

私達を許せない人達に対しては、これから少しずつ償いをしていこう。

決して許されようとは思わない。

それでも、償いをしていきたいんだ。

共にコロシアイを生き延びてきた皆と。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「……………」

 

私は、皆のお墓の前で手を合わせた。

その後ろでは、私のオリジナルが杖をついて立っていた。

あの後、結局コロシアイに参加した皆の遺体は組織の皆に運び出してもらい、私達で皆のお墓を作ったのだ。

私達の家族や友人はもうこの世にはいないから遺族の元に遺体を返す事はできなかったけれど、あの狭い冷蔵庫の中に閉じ込めたままでいるのはあまりにも可哀想だと古城さんが言い出した。

…流石に11人分のお墓を作るのは骨が折れたけどね。

 

私は、皆のお墓に、一人ずつお花と線香をあげた。

せめて向こう側で安らかに眠れるようにと、祈りながら手を合わせる。

私が皆のお墓から立ち上がると、オリジナルも私と同じように手を合わせた。

 

あの後、私のオリジナルは医務室に運び込まれた。

足に後遺症は残ってしまったけれど、組織の方々の適切な処置によって順調に回復していった。

オリジナルは、『どうして黒幕の私を助けたんだ』と私達に問い詰めてきた。

 

確かに、彼女は私達の仲間を死に追いやった。

独りよがりな正義の為に、過去の殺戮ゲームを利用した。

その事は一生許すつもりはない。

でも、だからといって彼女に死んで欲しいとは思わない。

死をもって全てを終わらせるなんて間違ってる。

皆の命を奪ったからこそ、その罪を一生かけて償わせるべきだと思った。

 

…それに、ほんの少しだけ、彼女が報われる事を願ってしまったんだ。

元々彼女だって、白瀬のせいで人生を滅茶苦茶にされた被害者だ。

その白瀬には死に逃げされて、込み上げてくる怒りや憎悪を皆に向けるしかなかったのだろう。

誰も幸せになれないまま皆と心中するなんて、そんなの、あまりにも報われないじゃないか。

投票の瞬間、あの一瞬、私は私を助けたいと思った。

それを邪魔するルールになんか、縛られたくなかった。

 

これが最善じゃなかったかもしれない。

他にもっといい選択があったかもしれない。

それでも私は、私の決断を決して後悔しない。

 

弦野さんは、あの後オリジナルを諭してきた。

『自分や世界中の人々の鬱憤を晴らす為にコロシアイというダンガンロンパの負の遺産を利用したのは、決して許される事ではない。君は世界の混乱を招いたんだ。君に死んで逃げる道は選ばせない。自分の尻拭いは自分でしろ』

それが彼のかけた言葉だった。

それを聞いて、オリジナルはようやく死ぬ事を諦めたようだった。

今では人生の先輩として、私達の指導をしてくれている。

それが彼女なりの償いなのだろう。

 

 

 

「皆、行きましょう」

 

「うん」

 

私が声をかけると、皆が立ち上がった。

私達は、リカも含めた6人…いえ、7人で本拠地を出発した。

本拠地を出発してから数十分、私達は秘密のルートを通って目的地へと向かった。

向かった先は、今ではもうその機能を果たさなくなった未来ヶ峰学園だ。

未来ヶ峰学園は、私達の活動によってその闇が明るみに出た事で閉校を余儀なくされ、校舎を取り壊す事になった。

校舎を取り壊す原因になったのは私達だけど、あそこは私達の学舎でもあった。

だから取り壊される前に、皆で校舎を見に行く事になったのだ。

これは、私達生き残りのメンバーが皆で話し合って決めた事だ。

 

小高い土地に聳え立つ校舎。

その奥には、寄宿舎と研究棟が建っていた。

バッシングを受けてから多少荒らされたり落書きされたりはしていたけれど、定期的に清掃に行っているおかげか、思ったよりは酷い有様ではなかった。

かつての私達の学舎の前に、かつての生徒7人が並び立つ。

全員組織の制服である黒いスーツに身を包み、前に踏み出した。

私達は、校舎に足を踏み入れて中を散策する。

 

「まあ当たり前といえば当たり前ですけど…あんまり変わってませんね」

 

私達が校舎の中に入ると、目野さんが最初に口を開いた。

目野さんは、髪を下ろしていて、前より垢抜けて今ではすっかり大人の女性になっていた。

心なしか性格も大人びて、小さい事で騒がなくなったような気がする。

…まあ、未だに機械を舐め回す奇行は治っていないようだけれど。

 

「ここに来ると、あの時の事を思い出すのぉ…」

 

古城さんは、玄関ホールをキョロキョロと見渡しながら口を開く。

古城さんはあれからぐんと背が伸びて、目野さんとほとんど変わらない背丈になった。

多分、以前の彼女しか知らない人からしてみれば、誰だかわからないでしょうね。

彼女はコロシアイ生活を通して成長して、今でも私達の中で一番頼りになるんじゃないかと思う瞬間がある。

 

「うん。たった一ヶ月の付き合いだったけど、まぁ濃い一ヶ月だったよね」

 

秋山君は、頬を掻いて微笑みながら口を開いた。

秋山君はあれからより好青年に磨きがかかって、まるで一流モデルのような背の高い美青年に成長した。

内面もイケメンなだけあって、組織の女性メンバーにはそれはもう大人気となっている。

未だに毒舌は健在だけれど、前に比べたらだいぶ丸くなった印象を受ける。

 

「一ヶ月しか過ごしていない筈なのに、そんな気がしないな。オリジナルがここで過ごした記憶の影響をどこかで受けているのか…」

 

加賀君は、顎に手を当てて一人で考え事をしていた。

加賀君は、組織のメンバーに半ば強制的に散髪と髭剃りをやられ、髪は清潔感のある短めのオールバックにされていた。

私達は普段から過ごしてきたからようやく彼のイメチェンに慣れたけど、正直、名乗らなければ誰だかわからないと思う。

実際、髪を切った後組織のメンバーから『誰だお前』と総ツッコミを喰らったのは言うまでもない。

 

「その可能性は否定できないわね。ヒトの脳の仕組みは、現代の科学をもってしても完全には解明されていないもの。同じ細胞を持つ者同士で何らかの意識の共有があっても不思議ではないわ」

 

加賀君の考察に対して、私のオリジナルは冷静な口調で自分なりの考察を伝えた。

オリジナルは、髪を短く切っていて、以前とはまた違った印象を受けた。

左眼には眼帯をしており、自殺未遂の後遺症で杖を手放せない生活をしていたが、高校生に見紛う程の若々しい容貌は未だに健在だった。

未来機関のメンバーには脚の手術を提案されたが、自分の愚かな過ちが負わせた傷だから一生抱えていくと言って手術を拒んだ。

 

あれから10年が経った。

私達は、世界中で暗躍している絶望の残党を潰す為、未来機関に所属した。

今では、絶望の脅威に晒された人々の救助や、絶望の残党の殲滅を主な活動内容としている。

私達もお酒を飲める年齢になり、息抜きにお酒を交えながら近況報告や愚痴の言い合いをする事も少なくはなかった。

…古城さんの酒癖が悪いのはちょっと考え物だけれどね。 

 

……閑話休題。

未来ヶ峰学園から脱出した後、私達は当然のように外の世界の人達から迫害を受けた。

絶望の残党は死ねだの、私達の家族を返せだの、散々言われた。

酷い時は石を投げられた事もあった。

 

しばらく迫害は続いて外も出歩けない生活が続いたけれど、幸運な事に、私達を助けてくれる人達が現れた。

その人達こそが、『未来機関』の人達だった。

そこには弦野さん達だけではなく、元々未来ヶ峰学園から逃れてきた生き残りの教員で、以前から絶望の残党を殺す為だけのコロシアイに対して反対していた人達もいた。

さらには、未来ヶ峰学園の教員以外のOBやOGの方々もいた。

元々未来ヶ峰学園が考えていたのは、皆のクローンを世界の復興の為に使う『絶望更生プロジェクト』だったそうだ。

でも私のオリジナルをはじめとした俺達に恨みを持つ人達の暴動によって、半ば強引にコロシアイという名の公開処刑が行われてしまったらしい。

未来ヶ峰学園の先生方は、コロシアイを乗り越えた私達を見て、涙を拭いながらあっさりと皆の事を許してくれた。

『あなた達はかつて世界を滅ぼしかけた絶望の残党とは違う。あなた達が自分の罪を償って未来を変える決断をしてくれた事が、私達の誇りだ』と言ってくれた。

 

それから私達は、未来機関の施設で他のメンバーの方々と共に復興支援をした。

私は、弦野さんに、どうしてコロシアイを無くすためにここまでするのかと尋ねた事があった。

弦野さんは、以前のコロシアイの生き残りの子孫だそうだ。

コロシアイをやめさせる為に世界に向けて訴えた先祖の遺志を継いで、自ら世界に訴える事にしたらしい。

最初は絶望の残党のクローンである皆を受け入れない人々がほとんどだったけれど、少しずつ、皆を受け入れてくれる人達も増えてきた。

皆が、あのコロシアイは間違いだった、二度と繰り返してはいけないのだと気付いたのだ。

 

人々が『絶望』を望むから、『絶望』に立ち向かっていく『希望』を望むから、コロシアイは終わらない。

だったら私達は、『絶望』も『希望』も選ばない。

コロシアイを続ける事が『正義』だというのなら、私達はそんな『正義』は望まない。

私達は、私達自身の、そして世界の未来の為に戦うと決めた。

たとえその未来が輝かしいものでなかったとしても、走り続ける。

たとえ何十億の人々にその声が届かなかったとしても、叫び続ける。

たとえ私達が生きている間に何も遺せなかったとしても、抗い続ける。

それが私達の償いだ。

 

 

 

「…いくよ」

 

秋山君は、覚悟を決めた面持ちで体育館の扉を開けた。

ここは、私がマナ以外の皆と出会って、モノクマによって無期限のコロシアイ生活を強制された場所だ。

未だにここに来ると、槍が掠った場所を無意識に触ってしまう。

思えば、私達の地獄はここから始まった。

…いえ、地獄はとっくに始まっていたのでしょうね。

白瀬がコロシアイを起こす為に自らを手にかけた、その日から。

 

「…………」

 

私は、体育館の中をぐるっと見渡してみた。

体育館の中は、備品が全て片付けられていて、もはやただのだだっ広いだけの部屋となっていた。

元はといえばコロシアイの宣言の為にここに集められたわけだけれど、ここまで綺麗さっぱり片付けられると何だか寂しいわね。

…確か、ここで私が知崎君を庇ってモノクマとモノDJに殺されかけたのよね。

もうその時の焦げ跡は、綺麗さっぱり無くなってるけど。

それから、あそこの床で加賀君が落書きをしていたのよね。

彼の思いついたら何でもそこで書いてしまう悪癖も、今となっては懐かしいわね。

私が物思いに耽っていると、後ろから秋山君が声をかけてくる。

 

「次、行こっか」

 

「ええ」

 

秋山君が声をかけたので、私は体育館をもう一度振り返ってみてから、次の場所に向かった。

ここに来たら、コロシアイが起こった場所や思い出の場所を順番に見ていこう。

ここで過ごした皆で話し合って決めた事だ。

 

 

 

次に向かったのは、保健室だ。

ここは、最初の犠牲者である玉越さんが亡くなった場所だ。

私は、彼女の死と再び向き合う覚悟を決めると、保健室の扉を開けた。

保健室は、すっかりベッドや備品を片付けられていて、何も残っていなかった。

床を見てみると、綺麗に掃除されていた。

こうしてみると、ここで玉越さんが亡くなったのが嘘のようだ。

でも確かに、彼女はここで亡くなったんだ。

 

玉越さん…

いつでも明るく私達を引っ張ってくれた、良いリーダーだった。

どんなに追い詰められても決して希望を失わず、全員で助かる方法を常に模索し続けていた。

私自身、彼女の明るさやリーダーシップにはとても救われた。

そんな彼女がよりによって私達の仲間に殺されてしまうだなんて、一体誰が想像しただろうか。

思えば、彼女の死からコロシアイが加速していったようにも思える。

でも、彼女が私達に思いを繋いでくれたからこそ、私達は今こうして生きている。

彼女の足掻きを無駄にしない為にも、世界からコロシアイが消え去る日まで、戦い続けよう。

 

そして響さん。

彼女は、玉越さんを殺してしまい、最初のクロとして処刑された。

言動が荒いところはあったけど、本当は繊細で仲間想いな人だった。

 

「玉越さん…あの時はごめん。君の想いに応えてあげられなくて…歌音を止められなくて。歌音…止められなくて、お前の想いに気づけなくてごめん。俺、生きるからさ。生きて、抗って、コロシアイをやめようって言い続けるから。だから、安らかに眠ってね」

 

秋山君は、腰を屈めて膝をつくと、玉越さんと響さんに向けて別れの言葉を告げた。

多分、彼の言った事は、二人には伝わったと思う。

秋山君が立ち上がると、私達は次の場所に向かった。

 

 

 

次は、小鳥遊さんが亡くなったプールと更衣室だ。

私達は、更衣室とプールを順番に調べていった。

更衣室は、ロッカーやベンチなどを撤去されていて、男子更衣室も女子更衣室も色違いなだけでほとんど変わらない内装となっていた。

小鳥遊さんが殴り殺されて血が飛び散った場所や小鳥遊さんの首が切断された場所は、綺麗になっていた。

そしてプールは、水が抜かれていて、備品を全て撤去されていた。

私はふと、ここに持ってきた小鳥遊さんの猫のぬいぐるみを見た。

猫のぬいぐるみには涙のシミがついていたけれど、今ではすっかり乾いて目立たなくなっていた。

小鳥遊さんは、自分の過去ごと道連れにする為に越目君を殺そうとして、返り討ちに遭って殺されてしまった。

 

小鳥遊さん…

喋れないなりにコロシアイで荒んだ私達の心を癒そうとしてくれた、優しい子だった。

きっと、私達を裏切って第二の殺人を起こす事だって、苦渋の決断だったのだろう。

あんな事になるなら、もっと彼女を理解してあげられれば良かった。

でも、あの子が加賀君や目野さんと一緒にリカを作ってくれたおかげで、私達は黒幕を殺さずにここから脱出するという選択ができた。

 

そして、越目君。

お調子者なムードメーカーで、ピリピリしたコロシアイ生活を明るく盛り上げようとしてくれていた。

そんな彼が小鳥遊さんを殺してしまうなんて、誰が予想できただろうか。

…結局、最期まで彼の想いには応えてあげられなかったわね。

 

「小鳥遊。お前の望み通り、俺達はここから脱出したぞ。…裁判の時は、『死んで良かった』だなんて言ってすまなかった」

 

「越目君。あなたの想いに応えられなくて…裁判では追い詰めるような事を言ってごめんなさい」

 

加賀君は、頭を下げて小鳥遊さんに謝った。

彼は多分、あの後小鳥遊さんの遺書を読んで、彼女の本心を知ったんだと思う。

今更謝るなんて遅すぎるとも思ったけれど、彼自身が彼女の事を思いやれるようになったのは大きな変化だった。

加賀君と私が小鳥遊さんと越目君に謝ると、私達は次の場所に向かった。

 

 

 

次は、聖蘭さんと闇内君が亡くなった家庭科室と指導室だ。

私達は、家庭科室と指導室を順番に調べていった。

家庭科室と指導室は、備品を全て撤去されていて、隠し扉も封鎖されていた。

聖蘭さんは食欲に飢えた食峰君に食べる為に殺され、闇内君は皆を食峰君から守ろうとして殺されてしまった。

 

聖蘭さん…

常に世の為人の為に尽くす、心の綺麗な人だった。

その純粋さにつけ込まれて、私達に助けを求める事もできずに殺されてしまった。

今でも、彼女を守ってあげられなかった事を後悔してる。

私達が食峰君の本性に気付いていたら、彼女を守れていたのだろうか。

 

闇内君…

セクハラばかりで第一印象こそ最悪だったけど、私達を守る為に戦ってくれた勇敢な人だった。

彼だって、闇内家を守る為に誰よりもここから出たかったはずなのに。

その闇内家はもうとっくの昔に滅んでしまったけれど、彼が命懸けで守った古城さんはまだ生きている。

それだけでも、彼が身を挺した意味はあったんだ。

 

そして、食峰君…

彼は、自分の欲望を満たす為だけに聖蘭さんと闇内君を殺した殺人鬼だ。

正直、彼についてだけは『思い出したくない』の一言に尽きる。

でも食に対する情熱や才能は本物だったし、何度も私達を救ってくれたのは事実だ。

 

「聖蘭さん。俺達は今、俺達の罪を贖う為に戦ってるんだよ。遠い道のりだけど、君達が少しでも救われるように頑張るから。だから安心して眠ってね」

 

「闇内…見ておるか?ワシは、今もこうして生きておるぞ。お主がワシを生かしたんじゃ」

 

「食峰君。あなたのした事は、最低だと思う。だけど、あなたの遺したものは私達が受け継いでいくわ」

 

秋山君と古城さんと私は、聖蘭さんと闇内君と食峰君に声をかけた。

私は願った。

聖蘭さんと闇内君にとって、皆がこうして生きている事が救いになりますようにと。

秋山君と古城さんが聖蘭さんと闇内君に話し終えると、次の場所に向かった。

 

 

 

次は、ネロが亡くなった転生ルームだ。

ゲームセンターのゲームは全て撤去されていて、転生ルームの電源も入らないようになっている。

今でも転生ルームに入ると、ネロがここで亡くなった事を思い出してしまう。

ネロは、内通者だったという理由で館井君に殺されてしまった。

 

ネロ…

最初は嫌な奴だと思っていたけれど、彼は私達を守る為に自らの命を懸けようとしていた。

私が最初に抱いていた人物像とは程遠い、ガラッシアファミリーの若頭に相応しい誇り高い人だった。

彼は強すぎるからこそ、私達の為に自殺をしようなんて決断ができたのだろう。

せっかくゲームを通して絆が深まったと思ったのに、それも呆気なく裏切られてしまった。

…結局、彼を助ける方法は、最後まで見つけてあげられなかったわね。

 

そして、館井君…

自分が生き残る為に、ネロを殺してしまった。

本来は人殺しなんてしない紳士的な人だったのに、あのコロシアイが彼を歪めてしまったんだ。

今でも、彼がオシオキされる直前の乾いた笑い声が、頭にこびりついて離れない。

 

「ネロさん…あの時はあんな事言いましたけどね、今になってようやくアナタの立場に立たされる気持ちがわかったんです。あの時は、酷い態度をとって…すみませんでした」

 

「館井。裁判では馬鹿にするような態度を取ったが、今では君の気持ちがわかる。本当にすまなかった」

 

目野さんと加賀君は、ネロと館井君が座っていた席があった場所に向かって頭を下げた。

目野さんは、自分が悪者になってまで窮地に立たされた仲間を助けようとする人間の気持ちが理解できたようだった。

以前の彼女なら、決して自分の行いを反省したりはしなかったでしょうから、彼女なりに成長したのでしょうね。

二人がネロと館井君に謝ると、次の場所に向かった。

 

 

 

次は、知崎君が亡くなった植物庭園だった。

植物庭園の植物は全て撤去されていて、火事による焦げ跡だけが残っていた。

知崎君の遺体が串刺しにされていた場所は、綺麗に片付けられていた。

知崎君は、不運の重なりによって監視カメラを壊してしまい、その結果モノクマとモノDJに処刑された。

でも最後は結局、リカを殺したフリをする事で、黒幕の監視を掻い潜って学園のネットワークを奪還し、オイシイところも、この学園自体も、全てを掻っ攫っていってしまった。

 

知崎君…

最後まで何がしたいのかわからない人だと思っていたけれど、誰よりもコロシアイを止める為に抗い続けていた人だった。

今思えば、彼はずっと、私達を生かす為に動いていた。

それを迷惑行為と決めつけて邪魔をしてきたのは私の方だ。

…本当に反省しなきゃいけなかったのは、私の方だった。

 

そして、マナ…

ここで出会ったその日から、私のバディとしていつでも一緒にいてくれた。

私が折れそうな時は彼女が支えてくれた。

私は、そんなマナに対し、心のどこかで惹かれていた。

私は、彼女に誰よりも生きていてほしかった。

 

「知崎君。皆を守れなくて…コロシアイを引き起こしてしまって、ごめんなさい。私、強くなるから。強くなって、コロシアイを止める為に戦い続けるから」

 

私は、黒幕として皆を殺してしまった事、そして知崎君にしてきた事を謝った。

きっと彼が生きていたら、無邪気な子供のように笑い飛ばして、イタズラの一つや二つをして嵐のように去っていっただろう。

 

「…それからマナ。あなたは、私に新しい感情を、絆の大切さを教えてくれたわよね。私、コロシアイの犠牲者はあなたで最後にするから。だから…どうか私達を見守っていて」

 

私は、溢れそうになる涙を堪えながら、マナに伝えた。

今になって、彼女が言った『最高の幸運』という言葉を思い出した。

彼女は、自分の死という不運と引き換えに、私達を生かしてくれたようにも思える。

知崎君の計画が黒幕に気付かれずにリカが学園のネットワークの奪還に成功したのも、弦野さんがここに来てくれたのも、私達が仲間と一緒にこうして抗い続ける事ができているのも、全ては『幸運』のおかげだ。

マナが死んでもなお、彼女の幸運が、私達を助けてくれたんだ。

『コロシアイの犠牲者を自分で最後にする』、それこそが、マナ自身の死という不運が無ければ決して起こり得なかった最後の幸運だった。

…全く、どこまで私達に遺せば気が済むのよ。

 

私は、知崎君とマナに自分の思いを伝えると、踵を返した。

もう言いたい事は言った。

行こう。

 

 

 

次は、情報管理室内のモノクマ操作室だった。

モノクマ操作室は封鎖されていて、今ではもう入れないようになっていた。

すると、私のオリジナルは踵を返して情報管理室を後にする。

 

「行きましょう。もう今の私には必要のない場所だもの」

 

私達は、オリジナルについていく形で情報管理室を後にした。

その後は、思い出の場所を一通り見て回った後、校門の前で解散となった。

まだ見足りない気もしたけど、これ以上振り返るとかえってつらくなる気がしたから、自分の中で踏ん切りをつけた。

 

…さよなら、未来ヶ峰学園。

私達の学び舎。

 

 

 

「いやー、久々に校舎を見てたら何か懐かしい気分になってきちゃいました。あ、そうだ。飲み行きましょっか!」

 

「えっ、今から?」

 

「うむ、いい考えじゃのぉ!酒を飲まねば戦ができぬというしのぉ!!」

 

「それを言うなら腹が減っては、だろ」

 

「古城さんさぁ…いい加減にしてよ」

 

「な、何じゃとぉ!?」

 

目野さんの提案で、これから飲み会をするという流れになった。

何で飲み会…というか、古城さんはちょっとは自重してほしいわ。

私がそんな事を思いながら皆と一緒に笑っていた、その時だった。

 

 

 

 

 

「緋色ちゃん」

 

 

 

 

 

「!」

 

今、確かにマナの声が聴こえた気がした。

振り向くと、そこには誰もいなかった。

気のせいだったのかしら?

 

「おい腐和ァ!!何をしておる!?さっさと行くぞ!!」

 

「あ、ええ!」

 

…いえ、きっと気のせいなんかじゃない。

贖罪の道は、きっと終わりなんてなくて、これからも過酷な運命が待ち受けているのだろう。

それでも、進んでいこう。

コロシアイが過去のものとなる、その日まで。

 

 

 

 

 

Epilogue 贖罪への道、さよならの出口 ー完ー 

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

『イースター・エッグ』

 

エピローグクリアの証。

ダンガンロンパシリーズのエンディングでお馴染みとなっているアイテム。

 

『モノクマピンバッヂ』

 

全エンドクリアの証。

かつて白瀬が持っていたもの。

すっかり錆びたバッヂは、コロシアイの終焉を物語っている。

 

 

 

 

 


 

 

 

ーーー 生き残りメンバー ーーー

 

【超高校級の警察官】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級の考古学者】古城(こじょう)いろは

 

【超高校級の魔術師】加賀(かが)久遠(くおん)

 

【超高校級の機械技師】目野(めの)美香子(みかこ)

 

【超高校級の音楽プロデューサー】秋山(あきやま)楽斗(がくと)

 

元・【超高校級の希望】腐和(ふわ)緋色(ひいろ)

 

【超高校級のAI】リカ 

 

以上7名

 

 

 

ーーー 死亡メンバー ーーー

 

【超高校級のバレーボール選手】玉越(たまこし)(つばさ)

 

【超高校級のボーカリスト】(ひびき)歌音(うたね)

 

【超高校級の獣医】小鳥遊(たかなし)(ゆい)

 

【超高校級のメイクアップアーティスト】越目(こすめ)粧太(しょうた)

 

【超高校級の聖母】聖蘭(せいらん)マリア

 

【超高校級の忍者】闇内(やみうち)(しのぶ)

 

【超高校級の美食家】【超高校級の殺人鬼】食峰(しょくほう)(みつる)

 

【超高校級のマフィア】ネロ・ヴィアラッテア

 

【超高校級の大工】館井(たてい)建次郎(けんじろう)

 

【超高校級の泥棒】知崎(ちさき)(れん)

 

【超高校級の幸運】聲伽(こえとぎ)(まな)

 

以上11名

 

 

 

 

 

今更だけど推し教えて

  • 腐和緋色
  • 聲伽愛
  • 玉越翼
  • 小鳥遊由
  • 知崎蓮
  • 食峰満
  • 越目粧太
  • 聖蘭マリア
  • 古城いろは
  • 加賀久遠
  • 目野美香子
  • 館井建次郎
  • 秋山楽斗
  • 響歌音
  • ネロ・ヴィアラッテア
  • 闇内忍
  • リカ
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