ジャンケットバンク ——The Beginner—— 作:上伊
The beginning
銀行とは。
その国で最も金にうるさい人間が集まる場所だ。
彼らは命を削り信用を築く。
融資 貯蓄 保険 運用 小切手 果ては宝くじまで。
それら全てを保証するものが。
徹底的に管理された圧倒的な、大金。
その完璧な金を見て、誰かがこう考えた。銀行は――
――――最高の、賭場になり得る。
カラス銀行。
経常利益日本第三位の市銀。
その地下には、非合法かつ秘密裏に行われている賭場がある。
そして俺は――今。まさにその場所で、負けたらどうなるか分からない賭けに身を投じている。いや、正しくは投じさせられている。
この賭場のフロアは広く、あたりには麻雀やポーカーなんかの、よく見るギャンブルに興じている奴もちらほらと見かける。
そしてその中央——ひときわ目立つゲームテーブルに。ただの一般人であったはずの俺は座っていた。
(どうして……なんでこんなことになってんだよ、俺は!)
これまでのことを必死に思い返してみても、今この場所から逃げ出す方法は思いつかない。
目の前でにやにやと嫌な笑みを貼り付けている男と、俺にらんらんと目を光らせている銀行員共。きっとこいつらから俺が逃げ出そうとすれば……こいつらは容赦なく俺にとどめをさすだろう。
「安楽様。あまりにカード選択に時間をかけられますと、遅延行為と見なされます。ご注意してカードをお選び下さい」
傍で、スコアボードと共に立つスーツ姿の銀行員が俺に声をかける。
彼は、俺がだくだくに汗を流して、おろおろと目を動かしているのが見えてもいないように、淡々とゲームの処理を進めていく。
(助けてくれよ……見てないで……!!?)
そう願えども、銀行員は勿論、周囲のギャンブラーたちもにやにやと俺の様子を見ているだけだ。
それも当然だった。ここは狩場で、どうも餌は俺らしかった。
額の汗を拭って、ボードを見る。そこには「安楽希」という俺の名と、罪人への執行猶予のように、残り軍資金である「500万円」が刻されている。
(俺はすでに、「特別融資」ってやつを受けちまってる……! 既にけっこう敗けちまった……! このゲームでもしも残高がマイナスになるなんてことがあれば、俺は……!?)
俺は震える手で、カードに手をかける。
脚ががくがくと落ち着かず、無理やりに押さえつけようと地面に押し付けても、どこまでも沈んでいくようで感覚がない。
もしかしたら、真っ当な人生で最後の時間になるかもしれないというのに、俺は何故かこんなことになった経緯なんかを思い出していた。
ジャンケットバンクおもろい、が高じて二次創作に手をかけました。
素人作品なので気を抜いて読んで頂けると嬉しいです。