ジャンケットバンク ——The Beginner—— 作:上伊
「これにて6ラウンドが終了し……本ゲーム『ジャンケン
「クソッ――!?」
走って逃げだした猫崎だったが、すぐに行員に足を掴まれ、どたんと倒れてそのまま審査に移らされる。
喚きながら連行される、そんな姿を尻目に、俺は眠そうにのびをするマフツさんに話しかけた。
「あの……助かったよ。なにからなにまで」
「んー? いや、いいよ。ボクも面白いもの観れたしね」
「面白いもの、か……?」
「うん。君……ほんとに一回も、「勝てる」選択肢を選ばなかった。いや、選べなかったのかな?」
「俺の運が悪いって話か?」
マフツは、本当に悪意はないとでも言うように首を振る。
きっと、それは善意でもないのだろうけど。
「ああいや、誤解しないで欲しいんだ。ボクは、運が絡むゲームってあんまり好きじゃないんだ。なぜなら、一番面白いはずの運の要素をある程度操作できちゃうから。でも……君の運は。まるで決まってるみたいに、ことが進んでいくみたい」
彼は、非常に興味深そうに俺に目を寄せる。
「だから……もし君に、やる気があるなら。ボクと遊ぼう。ボク、ここの銀行でつい最近一段上のランクに上がったんだ。君も、その残高なら、4リンクに昇格できるはずだからさ」
安楽が、ぼんやりと真経津の背中を見送る中。
一人の銀行員と、その先輩らしき銀行員が会話を交わす。
「あれは……」
「聞いているか? 真経津晨という男。「デギズマン」かもしれないという話が上から通達されている」
「だから、あんな無茶なゲームが承認されたんですか……。しかし、マフツ本人は、ちょうど先日4リンクに昇格手続きが申請されたばかりの5スロットじゃないんですか?」
「……その、5スロットでの勝ち方。知ってるか?」
「あまり、詳しくは。」
「なら教えてやるよ——使われたゲームは『ウラギリスズメ』で——」
「なるほど……中央支店でそんなことが」
「「会わない方がいい人間がいる」っていうのもあながち間違いじゃないかもしれねえ」
「だとすると。彼と関わるどころか、大きな借りを作った「彼」の場合は」
「――まさしく、最高にツイてねえ。最悪だ。俺は正直あの若造は……ここで「負けてた」ほうが、まだ運が良かったと思うぜ」
「なるほど——。称するなら、
ビギナーズ・アンラックですか」
『ビギナーズ・アンラック』
安楽 希。ツイてない男。
カラス銀行賭博口座、66,000,000より、特別融資分、金16,000,000を徴収し、
口座には50,000,000が残る。
残高が50,000,000を超えたことで――
「4リンク」へ昇格した。
彼はその凄まじい運の無さ故に。
凄まじい速さで、地獄の階段を駆け下りていく。
これにて5スロット、『ジャンケン&バンク』編終了です。
書きながらゲームのルールや出し抜き方など考えたので粗目立っていたらすみません。
今章は、原作での『ウラギリスズメ』と同じ立ち位置にしたかったのですが、思った以上に長くなってしまいました。やはり、序章として一つのゲームを成り立たせていた田中一行先生は素晴らしいと再認識します。
もしお読みでなければ、田中一行先生の「ジャンケットバンク」、おすすめです。
また、次回の4リンクでのゲーム案が何一つたっておりませんので、更新に時間がかかるかもしれません。運に激弱でもなんとか出し抜けそうなゲームやルールを少しでも思いついたら、作者のTwitterでも、ここの感想欄でも構いませんので教えて頂けると非常に助かります。