ジャンケットバンク ——The Beginner——   作:上伊

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『ケンバンメイズ』

 

「ここ、こんな広いんですね……」

 

 銀行に着くと、「安楽様は初回プレイですので会場まで案内させていただきます」という銀行員が、安楽を地下賭博場の奥まで連れて行った。

 その道中、ロッカーの中に階段があったりなど複雑な道を辿る。

 

「銀行賭博は大きな規模で行われております。聞く所によると、ここカラス銀行以外にも銀行が主催する賭場は存在するようですよ」

「へえ~……」

 

 適当に頷く安楽を、銀行員はじろりと横目で見た。

 

(いくら4リンクとは言え……こんなアホそうなギャンブラーも珍しい)

 

 しかし当然、行員は職務に忠実である。

 

「……到着いたしました、安楽様」

「おっここかぁ。すげー、なんつーか俺こんなでけえ建物入ったの初めてっす」

「……そうでございますか」

 

 明らかにめんどくせえと思われているのにも気づかず、彼はその大きな扉を押し開けた。

 

 

 見た目よりも大きな部屋。内装は、横にカウンター。上にはシャンデリア。ソファーやテーブルなんかも並べられていて、奥にはビリヤードテーブルやダーツ台なんかもある。

 しかし人は一人もいない。すべて装飾用のものらしいが……

 これ、見覚えのある感じの風景だ。これは、

 

「……バー?」

「はい。本日のゲームは、「バー」をコンセプトとしたゲームとなっております」

 

 しかし、バーであるならば一つだけ不気味なことがあった。

 バーであるならば一つでいいはずのものが、そこには二つあった。

 ……中央奥のステージ。そこには、巨大なグランドピアノが

 「二つ」向かいあわせに並べてあった。

 

 そして、それそのものの威容も目にはつくが、当然安楽はその片方に既に座っている一人の男に目が吸い寄せられる。

 すらりとした長身に、誇るような腕章を身に付け、そして……緑の軍服をきちりと着こなし、長すぎる足をなんとかグランドピアノの下に格納しているような、バーには致命的に不釣り合いな男。

 その男が……ぎちりと首を90度回してこちらを向いた。

 

「……初めまして! 自分は陸軍少佐『陸谷 葬一郎』と申します! 貴君が本日の対戦相手でありますか!」

「あっおっおう。俺だ。俺が、プレイヤーだ」

 

 彼はずん、と立ち上がると大股で安楽の前まで歩いてきて、びしり、と敬礼をし手を差し出す。

 

「本日は公正公平に、全力で誠心誠意戦いましょう!」

「ああ、よろしく」

 

 安楽は差し伸べられた手を握る。

 ……なんか、めっちゃマトモそうな奴が対戦相手だな、なんて彼は思っていた。

 命を賭ける、なんていうからビビってたけど、相手は軍の人間らしい。なら、真っ当な人間だろう。

 なんて見当違いなことを考えていた。

 どう考えても、マトモな奴がこんな賭場にいるわけがないというのに。

 一見、穏やかに握手をする二人を背景に、銀行員が大きな声で告げた。

 

「それでは……4リンク、ゲーム『ケンバンメイズ(鍵盤迷路)』、ルール説明に移らせて頂きます!」

 

 

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