頭のおかしい神様が転生作業を担当した結果 作:どうしてこうなった
あけおめ。
「もっと力を抜け、固くなり過ぎた」
「……はい」
「よし、そのまま己の内にある力を感じ取れ」
「はい」
「緊張せずとも良い、使い方自体は
「ッ……はい!」
ふーむ、そんな物なのかね、力という物は。
「……これは原理の前に使い方を知ってしまった者に対する方法だ。お主の様に全く知らぬ状態であればまた別の取り組み方が必要だ」
「そうか……わかった」
あの謎の穴に、二人して飛び込んでから、もう一週間が経った……らしい、聞いた話なので確証は無いが。
俺か?俺は二日前までずっと寝ていたよ、思ったより重症だった様だ。
「今は、傷の完治と身体を慣らす事に注力するが良い、お主への訓練はそれからだ」
「……わかった」
この爺さんは、俺と同じ……
行き場に困っていた俺達に、居場所をくれた上に、修行までつけてくれているこの爺さんには、頭が上がらないよ、本当に。
爺さんはかなり前……少年時代にこちらに飛ばされ、今まで生き続けて来たとの事、かなり前から無差別転生は行われてる様だな。
となると、あの女神は一体何がしたいんだ?
神の気まぐれ、で済ませて良いならまだ気が楽なんだけどなぁ。
「あの神にはあの神なりの思惑があるのだろう」
「そう、なのか?」
「そう考える他に、出来る事は無い、奴はこの場には居ないのだから」
「……」
それはそうなんだが……こう、もっと……ふーむ。
「身体を治す事に注力せよと言ったばかりだろう、大人しくしていろ」
「いや……なんだか、なぁ」
……ぐ、ぬ。
この感じの雰囲気を出し始めた爺さんは、少し不味いかもしれん。
この一週間は、状況の整理だけじゃなく、ちょっとしたすれ違いも起こらせていた。
「……
「……先輩?」
「俺は先輩ではないが」
俺と共に逃げて来た少女……ヒメ、だな。
一緒に逃げ、共に助かった少女だが……少し問題がある。
「私より先に転生しているので先輩です」
「ほとんど誤差の様な物だろう」
「だったら、先輩の名前を教えて下さい」
「それは……」
俺の実名、である。
俺が教えれば早い話なんだ、うむ、返す言葉が無い。
くだらないと思われるかもしれんが、俺は名前を言いたくない、少なくとも今は、まだ……ヒメには。
「……」
「……」
「……何で、教えてくれないんですか?」
悲しそうな顔をしたヒメに、俺も罪悪感を覚えない訳ではない、けれども。
「……今は言えない、少なくとも、今は」
これは、俺のくだらない意地である。
この少女に抱いてしまった、小さな出来心……あとは、男としての意地か。
多分共感は得られんし、俺自身何故こうしたのか、はっきりと答えられる自信はない。
「だったら、いつ教えてくれるんですか」
「いつか、だ」
「そんなに、信用出来ませんか、私は」
「そう言う事では、ない……だが、答えたくない、今は」
その所為で、俺とヒメの間には……小さな溝がある、気がする。
結構、心にくる物があるな、これは。
「……双方、そこまでにしておけ……名前なぞ、この場では関係の無い事だ、あまり重く受け止めるな、ヒメ」
「……はい」
「そして……お主も、
「……」
「その心中に佇む物を理解しないわけでも無いが、説明をする気が無いのであれば、その思いは唯ヒメを苦しめる枷となる事を忘れるな」
なんつーか……爺さんの言葉の一つ一つが、重い。
先人としての言葉の重み、という奴だろうか。
「……ああ」
「ふむ……では戻るぞ、夕餉の支度もせねばならん」
「……」
それから数日が経ち、俺も修行に参加が許される事となった。
まあまだリハビリ程度の事でしか無いが、な。
「……今日はここまでだ、双方、よく頑張ったな」
「ああ」
「はい」
だが全くと言って良い程……いや、むしろ悪化しているか。
「「……」」
空気が重い、原因が俺であるとわかっていても、この空気感は些か堪える。
「……すまんが、買い出しを頼めるか」
「……え?」
「予定外の客が、今夜来る事になってな、食材が足りん……が、儂はその対応で手が離せん……故に、二人で追加の買い出しを頼みたい」
「なら、私が」
「ヒメ一人では量が多い、男手が必要になるだろう」
「だったら俺一人で構わんが」
普段の買い出しも、俺とヒメのどちらかが行っている、量が多かろうが俺であれば問題ない筈だが。
「……最近は少々、きな臭い、だから二人で行け」
「な……」
「え……」
「良いな?」
「「……
と、言われてヒメと最寄りのスーパーに向かっているわけだが。
「「……」」
気まずいにも程がある。
天気はまだギリギリ日が差していると言うのに、俺とヒメの間の空気は、暗闇よりも暗く感じる、何言ってんだ俺は。
「「
「「……」」
セリフが被って更に気まずい。
いや何処の漫画だ、シャレにならんぞ。
「えっと……先輩から、先にどうぞ」
「いや、ヒメからで構わんぞ」
「いえ、私の方は大した事ではありませんので、先輩からどうぞ」
「俺の方も些細な事だ、気にするな」
「「……」」
ぐ、ぬ……どうしてこうなる?
こうなったら先に言ってしまうか?いやさっきの言葉の手前、俺から言うのはなぁ。
「……ふふ」
「……なんだ、ヒメ」
「ふふ……いえ、その……先輩の表情を見てたら、その……ふふ」
「そんなに顔に出やすいのか、俺は」
こちらの顔を見ながら、突然笑い始めたヒメ……顔に出やすいと言われた覚えはないのだが。
「そういう訳じゃないんです……その、頭の中で迷ってた事が、突然おかしく思えてしまって」
「む……」
「よくよく考えたら、私だって
「いや、それは……」
仕方のない事だろう。
突然自身の慣れ親しんだ身体が全く別のものになった上に、自身の名前すら書き換えられたんだ。
「仕方のない事、で済ませたくないんです」
「……」
「……ちょっと寄り道しませんか?先輩」
「?わかった」
「ここです、先輩」
「……ここは」
ヒメに連れて来られた場所は、街の外れにある、ちょっとした岬?の様な場所だった。
「ここは、先輩が寝込んでいた時、色々あって見つけた、私のお気に入りの場所です……ここだと、不思議と落ち着けますから」
確かに、綺麗な場所だ。
元から長閑さを感じる街だが、ここに来るとそれがより顕著に感じる事が出来る、良い場所だな。
「……私は」
「……」
「仕方がないから、と自分を妥協させたくはありません、けど……未だに私は、
そうだろうな、そんな楽観視出来るような問題でもない上に、ヒメはどちらかと言うと重く考えてしまうタイプだ。
「なので……先輩、一つお願いがあります」
「……なんだ」
その時の、覚悟を決めた様な、少女の表情を、俺は果たして忘れる事が出来るのだろうか。
「私が、
……いや、きっと忘れられないんだろうな、俺は。
何故なら、その時の少女の表情が 。
「 先輩の名前を、教えて下さい」
「……わかった、教えるよ、その時は……だから、頑張れよ」
「!……はい!」
笑顔が、とても、
「そう言えば、買い出し……」
「……あ」
「……二人は、まだか……」
書くつもりはあまりなかったのに、いつの間にか書いていた現象。
どうして何でしょうか?
ちょっと文章に違和感を感じるかも知れませんが、書いた時間帯で作者の状態を察して頂けたら有り難いです()
手直しはちゃんとしますので。