実力至上主義教室の13人   作:もうすぐ死にます

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3人称視点は書きづらくて、正直続けられる自信が無いので、1人称視点で進めていきます。


輪廻の悪戯

 

 4月。入学式。私は学校に向かうバスの中、座席に腰を下ろしてゆらゆらと揺れながら、景色の変わりゆく街の様子を眺めていた。思えば随分と変わったものだ。藁を屋根にし、木組みが殆どだった建物は今やコンクリートという素材で作られており、前世の頃とは比べ物にならない程頑丈になった。嵐や地震の度に民が怯える心配もないのは時代の恩恵とも言えよう。

 

 前世と今世を比べつつ、意味もなく物思いに更けていると、バスへの搭乗客が少しづつ増えていく。乗り合わせたほとんどの乗客は、私同様高校の制服を纏った若者たちだ。

 

 だが次のバス停で止まった時、扉が開いた後に腰が酷く曲がった老婆が乗車してくる。だが老婆は足腰を酷く痛めてるらしく、乗る為の段差を上るのも一苦労の様で、発車した後はバスの揺れもあり、立っているのもやっとの状態で此方からしたら見るに堪えない。

 

「すいません。此処どうぞ。」

 

「あら、ありがとうねぇ…」

 

 放っておく事は出来ない。私は自ら老婆に席を譲り、しっかりと腰を下ろせるようにこちらまで誘導してやる。老婆の方は笑顔で礼を言うと無事に席に座る事が出来た。

 

 私はその様子を見て一安心していると、目の前に座席にいる中年男性の読んでいる本がふと目に入り、私は思わず小さな溜息を吐く。中年男性の読み本の題名は『鎌倉幕府滅亡の秘密! 北条家17代の時代に終止符の謎を明らかに!?』 と言う物だ。別にこの本の所持者である男性に非は無い。だがやはりこの本の題名は、私にとってあまり考えたくない事であり、気分の良い物ではなかったのだ。

 

―――私、北条義時が死んでから800年以上の月日が流れた。

 

 そう、あの時私は姉上に看取られながら、毒に体を蝕まれ死んだ筈だった。だが意識を取り戻すと、俺の身体が縮んでおり、何故か赤ん坊になっていたのだ。正直最初は状況を読み取ることができず、自分の正気を疑った。だが年月が経つにつれて徐々に自分が置かれている状況が分かり始め、生後3か月にして自分が俗に言う『生まれ変わり』を体験した事に気付いた。

 

 全く‥‥私も生前、非道な事を山の様にしてきた。極楽浄土には行けぬことを覚悟していたが、まさか地獄ではなく先の世に生まれ変わるとは……神も仏も酔狂な事を考える。

 

 それから先は色々有った。本当に色々とな。今生の知識を学ぶために書物を読み漁った事も有ったし、いざという時に動けるように武芸の稽古にも励んだことも有った、

だが転生してから何より最初に案じた事は、私が命懸けで守ってきた鎌倉の今についてだ。

 

だが調べてみた結果、既に鎌倉は私が死んでから110年後に滅んでおり、紆余曲折あった後の現在では、民が政を担っていると知ったのだ。

 

鎌倉が滅んだと知った時は不思議と涙は出なかった。きっとかの平家と同様に何時か北条の時代にも終わりが来る事は解っていたからだろう。だが自分が命を懸けて守っていた物が、自分が死んだ後に滅んでいたと言うのは何ともやりきれない。できれば何千年も北条の世が続いて欲しかった。先程の溜め息はそれ故のものだ。

 

勿論今生の世に不満がある訳ではない。文と違い電話やメールなら連絡に何日も無駄にする事は無くなったし、ネットも便利だ。今世話になっている私の御両親も朗らかで良い御方だし、何よりこの時代は戦がない。

 

 武者ももうおらず、民が政を担っている事を聞いた時は少々不安を感じたが、ここ近年で日ノ本で戦が起きた事も無いし、異国との交易も良好だ。何も私が心を裂く事は無い。

 

 だが光がある所には必ず闇が在る。口封じに横領に汚職―――私が心配なのは今の日ノ本に在る『災いの種』についてだ。よくニュースでは政治家の汚職や犯罪などが報道されており、実際に私も中学の時に火の粉が降りかかった事もあった。それが理由か稀にだがこの日ノ本の事が心配になる事が有るのだ。

 

 だがすでに執権ではない私が政をする事も叶わず、今は只々祈るばかりだ。願わくば、私の様な人間が生まれず、私達が願った『泰平の世』と言う理想を穢さん事を‥‥と。

 

「ねぇ、そこの君。」

 

 すると隣で合っていた女子生徒に突如話し掛けられる。視線を移してみれば其処には自分と同じ学校の制服を身に纏った一人の女子生徒がそこに居た。

 

「――――ッ!」

 

 周りの者達の視線を見れば解かる事だが、『まるで花の如き可憐さ』と言われても、それが比喩ではないと感じる程、その女子(おなご)は容姿が整っていた。私も前世でもこれほどの麗しい物と出会ったのは両手に収まるかどうかの数だろうし、アイツ(三浦義村)なら真っ先に口説いていたであろう。

 

 それだけならば良い。私もそれ程問題視せず、ただ可愛らしい女子と会った程度で事を片付けていたであろう。だが物事はそう簡単に行かないらしい。 

 

 何せ私が彼女を見て真っ先に感じた物。彼女から醸し出される雰囲気―――それは正に私の第三の妻であり、私に毒を持った張本人、のえ。私の目の前に居る女子から感じた雰囲気は彼女のそれと全く同じだったのだ。

 

 まさか、あの者も生まれ変わりを……あまり考えたくはないが、私と言う前例が在る以上有り得てしまう。

 

「あ、ごめんね、急に話し掛けて。吃驚しちゃったかな?」

 

「い、いや……何か御用で?」

 

「ああ、あのお婆さん。腰痛めていそうだったから、席譲ってくれてありがとうって言いたくて。」

 

「いや……大した事では無いさ。」

 

 動揺を隠す為に前世の話し方にならない様気を付けながら、彼女に返答する。実際に真近で見て解った事だが、やはりこの者はのえにそっくりだ。瓜二つ‥‥‥という訳でも無いが、どうにも重ね合わせてしまう。

 

「そっか……優しいんだね。私は櫛田桔梗。君は?」

 

「‥‥江間(えざま)小四郎。」

 

「そっか、江間君だね。よろしくっ。その制服、私と同じ高度育成の新入生だよね?」

 

「ああ……」

 

 やはり彼女の笑顔に違和感を感じる。大方本心ではない取って付けた物であろうが、今の段階では彼女がのえの生まれ変わりである確証は持てない。単純に思い過ごしだと良いのだが‥‥

 

『次は高度育成高等学校前、お降りの方はお知らせ下さい』

 

 すると車内放送が鳴り響き、目的地が近い事を知る。

 

 高度育成高等学校―――国が設立した教育機関であり、東京の埋立地にある日本政府が作り上げた、未来を支える人材を育成する全国屈指の名門校。希望する進学、就職先にほぼ100%応える学校。3年間外部との連絡は断たれる上、学校の敷地内から出るのは禁止された寮生活になるが、広大な敷地内は小さな街になっており、不自由なく過ごす事のできる楽園のような学校。

 

「あっ、江間君! 着いたよ!」

 

「そうだな、降りようか。」

 

 バスを降りると、櫛田と共に学校へと向かう。

 ここが高度育成高等学校……これから私が3年間過ごす場所か‥‥

 

 私は周りの光景を見渡しながら、前を歩く櫛田についていく。周りには多くの人がクラス分けが張り出させてる屋外提示板に集まっていた。

 

「これは……クラス分けか。」

 

「うん、AクラスからDクラスまで有るみたいだね。」

 

 掲示板を見つめる櫛田を尻目に、私はAクラスから順に自分の名前を探す。どうやら櫛田が先に名前を見つけた様であり、私が自分の名を見つけるより先に声を上げた。

 

「あっ! 私と江間君、同じDクラスだって!」

 

「そうか、これからよろしくな。」

 

「うんっ!」

 

 全く、縁と言うのも皮肉なものだ。前世とは言え元妻であるかもしれない人物を同じ教室に入れるとは。だがあくまで彼女はのえと雰囲気が似ているだけであって、もしかしたら彼女は誰の生まれ変わりでもないのかも知れない。それはそれで新しい縁が出来た事になるし、喜ばしい事だが、万に一つの事も考えてしまう。

 

「じゃあ教室に行こっか、江間君。」

 

 新しい未知との出会いに私は不安を抱えつつ、櫛田に続く形で校内へと入り、自分が今生の知識を学ぶ事になるだろう1-Dの教室へと向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

 




一応所属クラスを一番進めやすいDクラスで書いて行こうと思います。落とされた明確な理由は考えているのであしからず。

また櫛田=のえ疑惑ですが、割とどうするか苦戦中であるために明確に書かない事にしました。

一応主人公以外にも生まれ変わっている者は考えているのですが、それもまた難産になりそうです。

ご感想お待ちしています。

第二回『懐かしき面影』

この中で一番有りな展開は?

  • アサシン善児再び
  • 茶柱先生辞職√
  • Ⅾクラスのオーベルシュタイン爆誕
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