少し広い駐車場の前に建物が佇んでいる。外壁は緑色の濃淡が印象的で、建物に出入りする人々はカジュアルな雰囲気だ。璃素と真塔もその建物に入った。
自動ドアが開くと、受付のカウンターが見える。
「どのようなご用件でしょうか?」
受付嬢が気前よく尋ねた。二人は警察手帳を見せ、真塔は受付嬢の問いに応えるように僅かに微笑んで要件を話す。
「超人監視課の者です。犬丸氏に要件がありまして…」
「分かりました。しばらくお待ちを…」
カウンターの受付嬢は電話をすると、数十秒で電話を切って再び二人に話しかける。
「準備が出来ました。このカードを持って、二階にある310号室に向かって下さい。」
受付嬢からカードを受け取ると、真塔は礼を言う。それに追随して璃素も頭を下げた。
薄暗い灰色の部屋を、微かに天井の照明が照らす。照明の下には、璃素と科学者である
「どんな件で僕を疑ってるんですか?」
「度重なるミュータントの失踪について、調べているます。超人監視課では、この失踪を人為的な現象だと考えているんですよ。そこで少し貴方に訊きたい事がありまして…」
犬丸博士は、微かに暗い表情を見せる。
違う部屋にいる真塔は、点字を指で
犬丸博士が表情を変えると、彼は作業中だった指を止める。彼は壁で見えないはずの取り調べ室の方へ僅かに首を傾け、机の上にある珈琲を飲んだ。
その動きはまるで、何かを感じ取ったかのように見える。
犬丸博士と璃素の二人は、取り調べ室で暫くやりとりを続けた。
「そうですか。それはどんな?」
「情報源を明かすことは出来ませんが、貴方は『ミュータントを毛嫌いしてる』との噂があります。なので疑ってるわけではないのですが、一応尋いておこうと思いまして…」
「あぁ、それならガゼだよ。」
「多くの人がミュータントの話をすると、貴方はあまりいい反応をしないと…」
璃素の問いに対し、人が変わったように犬丸博士は喋り出した。
「あぁ、それね。昔から僕には少しお喋りな部分があって、それを危惧しているワケです。"喋り過ぎちゃうんじゃないか"ってね。まさに今携わっている研究は、ミュータントに纏わるモノだし。」
璃素は怪訝そうに犬丸博士へ質問をする。
「少しくらい話しても大丈夫だと思いますけど…?」
「ミュータントに関する話題が、"絶対厳禁"ってワケじゃない。ただ、仮に油断して何かを喋ったとしましょう。その場合、数珠繋ぎのように少しずつ関連性を辿ることでどうなると思います?」
「情報のリークですか?」
犬丸博士は流れるような語り口で、璃素の問いに応える。
「その通り。少しずつだけど、色んなことがバレちゃうワケですよ。リークが連続して発生すると、研究のピースが集まっちゃう。」
そこから暫く二人のやりとりが続く。
「
「えぇ、そうです。研究内容が途中でバレてしまったら、せっかくのサプライズも興醒めじゃないですか。とにかく、僕がミュータントを嫌っているワケではないんですよぉ。」
「そうですか…」
犬丸博士の事情聴取が終わり、璃素は取り調べ室を出て自分のデスクへと向かった。
璃素が再び喋り出そうとすると、真塔は自身の口の前に立てた人差し指を持ってきた。
合図を理解した璃素が即座に黙ると、真塔は彼女の左脚の前ポケットに指を指す。
璃素のポケットから出てきたのは、盗聴器だった。