「あと一曲ずつ歌ったら出よっかー」
以前のミーティングから一週間が経ち、私と
今日は結束バンドのアーティスト写真を撮るべく集まったのですが、それが終わるとすぐに離脱したリョウをきっかけに解散という運びに。書店に寄ってから帰宅しようとした私に、時間が空いたからと
ちなみに喜多さんは同級生と予定があるらしく来られず。後藤さんとリョウはお二人でカフェに行っているそう。
「へへっ、最近この曲ハマってるんだー♪」
「空にある何かを 見つめてたら
それは星だって君が おしえてくれた
まるでそれは僕らみたいに 寄り添ってる
それを泣いたり笑ったり 繋いでいく──」
今まではテンションが高めというか、場を盛り上げるような選曲が多かったのですが。
そんなことを考えつつ
「僕ら肩並べ 手取り合って進んでく
辛い時だって 泣かないって 誓っただろう
遥か遠く終わらない ベテルギウス
君にも見えるだろう 祈りが──」
「記憶を辿るたび 蘇るよ
君がいつだってそこに 居てくれること
まるでそれは星の光と 同じように
今日に泣いたり笑ったり繋いでいく──」
聞いていて、ふと脳裏に浮かんだのは店長の名前でした。
「何十回何百回 ぶつかりあって
何十年何百年 昔の光が
僕自身も忘れたころに
僕らを照らしてる──」
「どこまでいつまで 生きられるか
君が不安になるたびに 強がるんだ
大丈夫僕が 横にいるよ
見えない線を繋ごう──」
────。
そこで思考が、止まります。歌いながら。一瞬声を震わせて。たしかに
「僕ら肩並べ 手取り合って進んでく
辛い時だって 二人だって誓っただろう
遥か遠く終わらない ベテルギウス
君にも見えるだろう 祈りが──」
どんな想いからくるのか。私には分かりませんでしたし、そもそも考えませんでした。けれど、この曲が。
「空にある何かを 見つめてたら
それは星だって君が おしえてくれた……」
微笑みながら、
私はその時になって初めて、自分が左手で。胸元を強く握りしめていることに気が付きました。
「ふぅーっ。歌った歌ったー! それじゃあ
「えっ、あっ。はい、えぇと……」
……私はアニメが好きなので、今日も歌う曲は大半がアニメの主題歌でした。その中でも良く知られていると思われるものを選んでいました。
ついさっきまではその延長で、無難に有名な曲を入れようかと思ったのですが……
だから、私もそんな曲を。自分が心を込めて歌えるような曲を選ぶのが良いのかなと、なんとなしに考えたのです。
そして私は──小さな頃から好きな。あるアニメの主題歌を歌うことにしました。
「
「急に泣き出した空に
声を上げ はしゃぐ無垢な子供達
慌てふためく大人を
よそに遠い瞳で 虹の橋描いてる──」
大好きだったアニメ、大好きだった曲。この歌を知った当時から何度も歌って、ピアノで弾けるようになった時は踊りだすほど嬉しかったことを覚えています。
「押し迫る
僕達はゆく 力強く旗を掲げながら
遥かなる
英雄みたいに誇り高く
信じること誰かに伝えたい この唄に乗せて」
小さな頃は難しい漢字が多いなと感じて。その読み方や意味を調べて。世紀末や歴史と書いて"とき"と読むなんておかしい、習ってないと──何の非もない父に文句を言った覚えがあります。
「やがては君も知るだろう
人生は映画みたいに甘くはない
厳しいものと覚悟して腹括って──」
仲の良い同級生が
「信頼寄せられる友ならば
生涯に一人、二人出会えりゃ幸せ
この地球上の何処かで
君を必要とする者が待ってる──」
でもだからこそ、やっぱりこの歌に救われてきたのでした。
──友達。孤独だった私にとって特別な称号。長い人生でたった一人でも見つけられたなら、それで幸せなんだと。必死に、急いで作る必要はないのだと、この歌が慰めてくれたから。私は折れずに学校に通い続けられたのだと、そう思い返すのです。
「闇を超えて僕達はゆく
力強く旗を掲げながら
今、来たる
英雄みたいに誇り高く
信じること誰かに伝えたい この唄に乗せて──」
そして今、新しくこの曲に。歌にのせられる想いがあります。
結束バンドと言う旗を掲げ、その下に集った一人として。いずれメジャーバンドとして名を馳せられればと。
それ以上に、仲間たちと。生涯にまたとない友達となれますようにと、そんな願いを込めるのです。
──亡き父が教えてくれた、この唄に。
「……ふぅ。では出ましょうか、
気持ちよく歌い終えて、マイクを置きつつ
「ごっ、ゴメンゴメン! すごく良い曲だったから聞き入っちゃって! ね、ねっ。これもアニメの曲なの?」
「えっ、は。はい。結構昔なんですけど──」
もしかしたら、私が
結束バンドのみんなと……あなたと。これからの人生で数えられるほどの友だちになりたいです──なんて。そんな恥ずかしいこと、面と向かって言えるわけありませんから。
「楽しかったぁーっ。また行こうね、
「──はい、是非」
なので、その次を約束するくらいが関の山でした。見つけ出し、足を踏み入れたばかりの虹の橋。その向こう側へ渡り切るまでに、私と彼女の間に確かな結びつきを見つけられたなら。
またいつか、この曲を聞いて欲しい。どうせなら結束バンドの皆さんと。演奏できる日がくればいいなと、そう期待するのでした。
「ところで
「えー? そりゃー音痴ではないと思うけど、でもバンドのボーカルはちょっと無理かなー」
そんな他愛もない会話を重ねて。いつの日か、と。