ボコボコの未来が見えるが我らのオッサムの戦いをお楽しみください!
「で? やるんでしょ?」
「そうだね。武器1種縛りなら良いんじゃない? 前回と違って好きな武器で他トリガーを使わないなら」
「そっ……じゃあ隣からこの部屋に入れるから」
彰は不敵な笑みを浮かべる香取に伝えると修が拒否する間もなく部屋を出る。
「横暴が過ぎるのでは?」
「目的が違うからね。この裏技が裏技って言う理由は教える意味が無い」
『まだ? 早くして欲しいんだけど?』
「待たせてるね。じゃあ始めて貰おうか」
彰は修の反論に耳を傾けず模擬戦を開始させた。
『【模擬戦】開始!』
「最初に言うけど前回みたいなまぐれは絶対にあり得ない。アンタがどんなにハンデを貰っても………………ね!」
『トリオン供給器官破壊
「え……?」
香取が構えた武器は【スコーピオン】でありその特徴は軽量で小回りが利く事。レイガストを構えた修が視界に入った瞬間反応を許さずトリオン供給器官を破壊する。
「速いね。目どころか反応すらも許さない。殺気も一瞬……容赦も無しだけどどうなるかな?」
『伝達系切断! 三雲ダウン!』
『戦闘体活動限界! 三雲ダウン!』
『トリオン供給器官破損! 三雲ダウン!』
『戦闘体活動限界! 三雲ダウン!』
『トリオン供給器官破損! 三雲ダウン!』
『トリオン漏出過多! 戦闘体活動限界! 三雲ダウン!』
『戦闘体活動限界! 三雲ダウン!』
『三雲ダウン』
『三雲ダウン』
『三雲ダウン』
『三雲ダウン』
『三雲ダウン』
修は一方的に打ちのめされた。反撃どころか反応すらも許されず、初撃を凌ぎ切る事すら許さず躱しきる事さえままならない。被弾を避けきれ無ければトリオン体を欠損し、漏出すればトリオンの少ない修は遠く無い時間で戦闘体を失う。
「メガネさ……あの時の気迫はどうしたの? アレが今でもアタシを苛つかせるの。腑抜けたままなら…………殺す! 」
香取の殺気が高まっていく。しかし僅かながら修も初撃を理解し始める。そこで彰が介入した。
「10分待ってくれないか? 予感が当たればそろそろ面白くなる気がするんだ」
「へぇ……失望させたら?」
「僕の全力で戦ってあげる。それでどうかな?」
「ふ〜ん……じゃあ待ってあげる。アンタの泣きっ面を見るのも悪くないから」
束の間の休憩の為一時戦闘が止まる。彰は疲労困憊の修の元に駆け寄り質問をした。
「さて三雲君……ここまでの戦いで感じた事を素直に語ってくれ」
「その……目で追えないほど速いです。ガードした筈なのにすり抜けられます。反撃の隙すらありません」
「だろうね。でも考え方は合ってるよ? だからアドバイスは2つ。【速度の領域では絶対に勝てない】【どんな武器にも長所と短所は存在する】あとは…………多分蛇足だね」
「その……攻略法とかは!」
「【勝つ】が目的じゃ無いんだよ? 攻略法なんて無謀なものは
「今川先輩!」
彰は修の抗議に耳を傾けず退出した。その結果修の思考にはある種の【怒りと不満】が込み上げていた。
「絶対に……説明させるんだ!」
修の思考は香取の攻略法を摸索していた。結果として瞬殺された戦いを振り返り共通点を思い出す。
「レイガストが重くてあの剣には速度に対応出来ない。目では追えないけど香取先輩の攻撃は確実に急所を狙ってる。山張りで1つの弱点を防ごうとしたら他の弱点を狙われる。剣の形状は自由度が高くて目を離せない…………あ。もしかして…………それなら………………」
修の表情が少し和らぐ。何かを思いついた修の表情に離れて様子を伺っていた香取も笑みを浮かべる。その表情は勝機を捨ててはいなかった。
「何か……変わったじゃん。なんだろう……やってやろうじゃん!」
『戦闘再開!』
再開してすぐ修は後方へと逃げる。
「は? 逃げんのが秘策? つまんないんだけど!」
「ぐっ…………もう少し……もう少し!」
直撃を避けながら修は隅を背にしてレイガストを構えた。既に片足を失いトリオンを相当消費している。結果として自らが攻める事を困難としていた。
「なんか……ムカつく。ムカつく! 」
圧倒的に有利な筈の香取は言いようの無い不安を感じていた。修の眼に勝利の予感を感じた為だ。
「壁が邪魔。既にトリオン大分流れてるけどムカつくから……殺す!」
香取の斬撃は壁を背に籠城した修のレイガストに阻まれる。速度では勝るも壁という地形とレイガストの強度により数発を阻まれ、修はレイガスト越しに割れるまでの数発の動きを観察する。
「割れろ……割れろぉ!」
3度の斬撃を防ぐも4度目に罅が走り5度目にレイガストは割られ、6度目にはレイガストが砕かれトリオン供給器官を貫かれる。
『戦闘体活動限界! 三雲ダウン!』
「ふ〜ん……粘ったじゃん。でもそれじゃあ勝てないけど?」
香取の表情は呆れ・怒り・失望・焦り・不満が蓄積していた。そして修は
「何を……企んでるの?」
「ん? 流れが変わったね。いや…………今までの立ち回りが…………まさか? 俺の予測が正しいなら次の1本は荒れるだろうな」
観戦してる彰は対面している香取とは対称的に悟った。そしてその差は【次】に見えたイメージへと繋がる。
『悪いね2人共。次で最後にしよう。予測が正しければ三雲君の集中力がそろそろ切れるから』
彰の介入で次の1本が最後となる。そしてそれが両者の意識を大きく分けた。
『戦闘開始』
電子音と同時に修は香取へと距離を詰めレイガストを振り降ろした。当然だが直線的な動きは少ないステップで逸らされスコーピオンで供給器官を貫かれて終わる
「狙いは……ココですね! させません!」
しかし香取の回避の動きを少しだけ模倣し
「なっ……ヤバッ!」
予想外に強引な切り返しに香取は驚きスコーピオンが割られる。耐久性の低いスコーピオンでは安易な受け太刀が出来ない。故に再生成の為に距離を取るしか無かった。そして間違いなく
「ここが……勝負所!」
だが強引に腕を振り抜いた為に修の体勢は大きく崩れている。仮にレイガストの重みを活かしてバランスを取り直せても取られた距離は詰められない。故に修は……
「ハァ!? レイガストを投げたぁ!?」
再度突撃を試みた香取は再び驚くも届かないレイガストを回避し足で押さえた。しかし視界から外れた事で修から横から体当たりをしてきた為にさらにバランスを崩した…………だが
『トリオン供給器官破損……三雲ダウン!』
香取の膝から出たスコーピオンが無情にも修の身体を貫いた。
「アタシが……危なかった? ダメージは……受けて無いけど刃折られて……斬られかけた。寧ろスコーピオンじゃ無かったら負けてた……?」
香取の感じた動揺の正体は【気迫】であり、嘗て手傷を負わされた理由もまた修の気迫に油断の隙を突かれた為だった。
『2人共お疲れ様。三雲君は先に休んでて。俺は香取ちゃんに話があるから』
彰は修を仮眠ベッドへと誘導し呼び止めた香取へと向かい合う。
「どうだった? …………いや、流石に楽勝だったよね。つまらない模擬戦をさせて申し訳ない」
「………………………………何が? つまらない建前なんか要らない」
「そっか。じゃあ端的に……ありがとう。今回の1番大きな目的は悪い言い方をすれば三雲君の経験値稼ぎで、まず強い相手にボコボコにされてどういう事が起こったのかを知って欲しくて……ね。でもお互いに得るモノがあったみたいだね。香取ちゃんが何を得たのかは聞かないけど、それが何らかの糧になる事を願っておくね」
「聞かないんだ?」
「香取ちゃんに理屈で長々と解説するよりもバトルの中で知っていくタイプじゃないの?」
「本当にそう思ってんの?」
ジト目の香取に半笑いで彰は返す。
「じゃあ彼……三雲君の事をどう思う? 伸び代とか才能とか……」
「雑魚。だけど咄嗟の頭は回るんじゃない? 前も今回も最後の勢い
「本人には伝えてくれる?」
「ヤダ」
「だよね」
しばし沈黙が流れた。
「このあとランク戦やる?」
「やらない。帰る」
香取は立ち去る直前で足を止めて振り返る。
「あのメガネに伝えなよ。
「人の選択肢を奪うのは好かないけどアドバイスは伝えるよ。香取ちゃんは素直になれば良いのに。そのキッツイ物言いが和らげば好いてくれる人ぐらいいると思うんだけどね?」
「フン!」
不機嫌そうに香取は部屋を後にした。
「さぁ三雲君……ボコボコにされた事はどうでも良いけど、対スコーピオンの戦闘レポートを書いて欲しい。君のスコーピオンに対する認識を理解する事で今後のメニューの方向性が決まる。ちなみにBORDERの武器トリガーは刃トリガー3種・弾丸トリガー各4種2タイプで合わせると後10回はトリガーを変えるつもりだから覚悟してくれたまえ♪」
「あの……もしかしてそれでスタートラインとか言いませんよね?」
修は彰の立てた計画に動揺していた。恐る恐る問いかけるが返ってきたサインで滝のような汗を流す。ここから地獄の訓練が始まる事を修はまだ知らない
次回投稿分より章振り分けを行います。この話を最後に原作前で消化したいエピソードは消化したので、次回より原作入りし、原作前特訓回は需要があれば原作前章を設け投稿します。
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