偉大なる英雄を支えたい!   作:タク-F

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遊真との初対面で報連相が出来ていると?


英雄の素質

「さて……今川から報告は受けている。君の話が裏取りされていない憶測話であること、君自身が隊務規定違反を犯した事は分けて考えるのでそれぞれ報告を頼む」

 

 本部長の忍田真史の言葉とは裏腹に鋭い視線が修を射抜いた。重い空気であるこの部屋にいるのは忍田・修・彰の3人のみ。

 

「本日僕の通う学校に来た転校生は自身を近界民と称し指輪型のトリガーを所持していました。今川先輩と既存トリガーについての特徴は学びましたので恐らく本部所有トリガーでは無いと推測されます」

 

「特徴は?」

 

「非常に速い動きとバムスターを素手の一撃粉砕する攻撃力を有しています。目立つ武装はシールド機能以外確認できません」

 

「バムスターを素手……恐らくはBORDERではなく近界民の所有トリガーだろう。まずはBORDER隊員では無く近界民である事は確定した。では次の確認をしよう」

 

 彰はこの話の記録を残している。本来は本部長補佐である沢村の役割だが敢えて忍田が彰を指名しこの話合いの場が取り持たれている。故に彰は言葉を挟まず記録作業に徹していた。

 

「では次だ。その近界民の名前とトリガーの使用を含めた目的を把握したい。当然だが虚偽または報告をしない場合は温情は無いと覚悟して答えてくれ」

 

「はい。転校生の名前は【空閑 遊真】で目的はBORDERにいる()()()()()()()……との事です」

 

「空閑……か。そのような隊員は私の知る限りいない…………が、その名字には覚えがある。もし仮説が正しければその父親の知り合いとやらは私を含め一部の人間の可能性が高い。この件はこの場の秘密とし、進捗は些細な事情でも今川へ報告をする事、今川はその情報を包み隠さず提供する事。構わないな?」

 

「はい」

 

「今川了解です」

 

 忍田は仮説の立証と裏取り完了までこの件を秘匿情報とした。ここまでで緊急の報告は終了したが、修にとっては未だ緊張の解けない報告が続く。

 

「ではトリガー無断使用の件を報告してくれ。ここまでの情報から想定出来るパターンもあるが、確認は必要だ」

 

「はい。まず先程の空閑に目を付けた学生が警戒区域に空閑を呼び出しました。危険性から警戒区域から立ち去る事と行動の悪質性を告げたのですが間が悪く近界民……バムスターが出現しました。この時点では空閑のトリガー所持を知らなかった為空閑と気絶した学生を守る為に応戦しました。結果として空閑が近界民と素性を明かしバムスターは空閑の手によって撃破されました。ここから先は今川先輩の報告と重複しますが【門】の影響が落ち着いたのを確認し本部へと出向しました。コレが僕の知る全てです」

 

 修は自身の説明出来る全ての情報を提供した。強いてこの時点で報告漏れがあるとすれば空閑遊真の所有トリガーの性能と本人の実力だが今の修に測れるものでは無いのでは無いので伝わる事は無い。故にその事は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ふむ……その説明だと空閑君は自身の実力故に近界民を恐れ無かった……と言うことか。寧ろこの問題は学生達と君の方だな。まず学生は記憶封印処置を行うだろう。ただし君はこの処置にするのが難しい。その理由だが……三雲君、悪いが君の休憩を兼ねて20分のラウンジへ向かってくれ。その間に今川と確認をさせてくれ」

 

「…………? はい。わかりました」

 

 修は不思議に感じながらもラウンジへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラウンジか……とりあえず飲み物で一服するか?」

 

「うわぁ!」

 

 慌てて駆けてる人物と曲がり角で人とぶつかった。どうやらお互い衝撃から尻もちをついたようだ。服装から修は階級を認識出来なかったが相手は理解したらしい。

 

「イタタ……私の前方不注意でごめんなさい。お怪我はありませんか?」

 

「あぁ……いえ、大丈夫です。僕も避けられずすみません」

 

 どうやら修がぶつかったのは女子隊員は急いでいたらしい。しかし修は大きな動揺をする事なく対応を始めた。女子隊員は立ち上がり頭を下げた。

 

「優しい人なんですね。でも貴方が謝らないでください……っとすみません。急いでいるので失礼します。あぁでもお名前とポジションを聞いても?」

 

「三雲 修 攻撃手で訓練生。そちらは?」

 

「宮川 早苗 攻撃手で訓練生。同じポジションなら訓練で縁があるかもね」

 

 彼女……早苗はもう1度頭を下げた。

 

「失礼するね。良い縁がある事を願うね」

 

 休憩を言い渡された修は対戦ブースを通り過ぎた後のラウンジで時間を潰そうとしたが廊下で出会い頭の衝突をしてしまった事で程よく時間が経過したため飲み物を買って戻ろうと決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて今川……お前は空閑君の所持トリガーをどう判断する?」

 

 修を一時退室させた後忍田と彰は重い空気で話を詰めていた。

 

「バムスターを一撃で撃破するならば少なく見積もって高品質のトリガーかと。報告からは恐らく三雲君が与えたダメージが無駄と思える一撃と想定されるため玉狛の改造トリガー相当〜対トリオン兵殲滅トリガーか本人の技量と想定するのが自然と思われますが……いえ、そうあって欲しくないですね」

 

「その間の取り方……()()()()()()()()()()()か?」

 

「恐らくは。ただもしこの仮説が当たろうものなら……」

 

「城戸司令は必ず動くだろう。それこそ相手の素性を考慮する事なくトリガーの強奪すら躊躇わない可能性は高い。さて……穏当に解決しなければ今BORDERが抱える問題の解決も急がねばならんというのに……」

 

緊急門(イレギュラーゲート)ですね。でもこの事態を迅さんが読み逃しているとは思えません。城戸派と実質対立派閥の玉狛支部でも同じ意見の筈です」

 

 2人は遊真のトリガーが特別なワンオフあるいは本人の技量、最悪の事態として黒トリガー所有者と認識した。そして最悪の仮説通りならば司令派閥と空閑の争いを避けられ無い事も予見した。

 

「すみません戻りました。少々早かったでしょうか?」

 

「いや、問題はない。それでは再開するか」

 

 そしてこの可能性を詰め終わる頃修は戻って来た。忍田が結論を伝える為に空気が変わる。

 

「現状BORDERは非公開の事情によりトラブルが同時多発している。したがって人員・人材に余裕が無い。その為()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事。この問題解決を目安に君の功罪を審議する。つまるところ処分の先延ばしだが理解して貰う」

 

(多分1番残酷な通達だな。ある種の飼い殺しと言えるかもしれないがラッド(アフトクラトルの索敵トリオン兵)処理を考慮するなら正解なんだが)

 

 彰はこの様子を客観的に見て残酷と評価した。故に意見を出す事とした。

 

「本部長に質問です」

 

「どうした今川?」

 

「今回の功罪ですが上層部が納得すればお咎め無しの上で相応の対応という可能性はある……と認識してもよろしいですか?」

 

「そう告げたつもりだ。質問は以上か?」

 

「ありがとうございます。だそうだ三雲君……異論は無いな?」

 

「ッ…………はい!」

 

 修は忍田の温情と冷静な宣告を受け入れた。

 

「それでは解散とする。それぞれの役割は任せたぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて三雲君。あの場でクビが宣告された要因は幾つかあるが、本部長が語らなかった話の中で今回の話に関連するモノが1つある」

 

「関連……ですか?」

 

イレギュラーゲート【(緊急門)】……本来誘導装置が機能する筈のエリアを外れた地点で【門】が発生する事象で、影浦の店で話していた時の騒動を覚えているかな?」

 

「あの【サカナ】と交戦した日でしたっけ?」

 

 修が思い出したのは二宮隊と数人で対応したイルガーの市街地出現騒動だった。そしてその時の話が引き合いに出される意味を理解した。

 

「まさかあんな事が起こってるんですか?」

 

「サカナみたいな大物は出てないけど戦闘用トリオン兵……バムスター以上の性能の奴も出てる報告が届いてる。今の三雲君が対峙すればまず勝てない。少なくとも捕獲用のバムスターに安定して勝ち越せない人間は相手にもならないと覚えて欲しい。身の丈にあった戦いをしなければ人は簡単に死ぬ。それはわかるだろう?」

 

「…………はい」

 

「恐らく2度目には温情の余地すら無い。早まった行動は……本当にしないでくれ……」

 

 彰は修の肩を強く握り睨む。修もその迫力に気圧されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっオサム。昨日ぶりだな」

 

「空閑……お前に話がある。お前の所持トリガー(ソレ)の事、トリオン兵を知っていること、お前が強い事、そして何より……お前が探している人の事を」

 

 修は遊真に昨日生じた疑問と忍田からの任務の為に問いただす事にした。

 

「ふ〜ん……ウソはついて無いんだな。まぁ全部語る理由は無いから当然と言えば当然だけど」

 

 遊真の言葉に修は動揺した。そしてその言葉回しから1つ仮説を立てた。

 

「空閑は……心が読めるのか?」

 

「いや? そこまで便利じゃないよ? ただオレはウソを見抜けるそれだけさ」

 

「ウソが……見抜ける? それはどうい『【門】発生! 【門】発生! 付近の皆様は直ちに避難をお願いします。繰り返します……』嘘だろ!? どうしてここに【門】が!? ここは市街地だぞ!?」

 

 空閑との対峙の中修は【門】発生の警報を認知した。同時に彰の言葉が脳裏をよぎる。

 

「…………空閑は皆と避難してくれ」

 

「どこに行くんだオサム? 避難ならお前もするべきだろ? 弱いし」

 

 遊真の問いかけは本来ならば修の足を止めるには充分な理由になり得る。しかし修は理屈と行動が一致しない人間だった。

 

「放送を聞く限り南校舎の生徒は避難が遅れてる。正隊員がこの場に駆けつけるまでここで待つ訳にはいかない。いざとなれば……」

 

「オサム……悪いことは言わない。死ぬぞ? 現れたトリオン兵が見えた。あれはモールモッド……戦闘用トリオン兵だ。捕獲用のバムスターよりも数段強い。オサムじゃあ相手にもならない。戦えば死ぬ。数字に出すならオサム15人で決死の袋叩きまでやって何とか倒せる。しかもその内の12人は死ぬ。もう1度言う。死ぬぞ?」

 

 遊真の言葉に2人の雰囲気は凍りつく。しかし修は背を向けた

 

「行くさ。たとえ僕が死ぬと知っていても止まれない。行動するべき時に何かを勘定に入れて行動しなかったら僕は後悔する。1度でもそうなれば()()()()()()()()()()()()()()。だから止めないでくれ」

 

 修はそれだけ告げて生徒の避難が行え無かった南校舎に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(トリガーさえ……弧月さえ抜ければ凌げるかもしれないのに! こんなところで死ぬ訳にはいかないのに!)

 

 南校舎にて一般生徒共々モールモッドの襲撃から避難しそこねた訓練生【宮川 早苗】は自分の行動と運命を呪った。現れたモールモッドは2体。校舎の入口から1体、グラウンドから校舎の壁を破壊して侵入して来たのが1体であり、逃げ遅れた生徒達は現在地から逃げるのが精一杯だった。

 

「…………に……ない。死にたく……ない。こんなところで死にたくなんか……無いのにぃ……」

 

 怒り・悔しさ・無力感・恐怖が早苗を支配していた。しかし逃げるしか無い現状と確実に追い詰められていく実感が次第に強くなる。そんな時だった。

 

「逃げろお前達! 屋上だ! 屋上への道はまだ残ってる! BORDERからの救援が来るまで屋上で耐えるんだ!」

 

 三雲修が隊務規定違反を承知で訓練用トリガーを起動しトリオン体へと換装、レイガストを装備し校舎3階のモールモッドをグランドへ突き落とした。

 

「やってやる…………やってやるんだ!」

 

 勝機の見えない戦いが始まろうとしていた。

 




新章から登場した早苗は修に救われました。これはもしかして……?

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