修の見せた可能性……それは相手が彼女でなければ気付く人間も多かっただろう。しかし無情にも【香取葉子】という気分の幅により実力の変動する天才が対峙した為に修の評価が上がることはなかった。そう
「ムカつく……あんな雑魚に……焦らされるなんて……」
香取との対戦の後日修は彰に相談をしていた。
「その……彰さん……先日の模擬戦で気になる事がありまして……」
「武装の変更や基本訓練メニューを変えるつもりはないよ? 今の基礎すら出来てない状態で君に身に付く技術なんて無いし、あってもハリボテの無意味なモノだよ?」
「…………いえ……その……」
歯切れの悪い修の返事に彰は眉をひそめた。しかし次の言葉が彰に意表を突いた。
「あの日の模擬戦で香取……さん……の動きがなんとなくわかった気がしたんです……自分の何処を狙って来る……殺気? ……みたいなものなんですが……」
「殺気の感知? う〜ん……そんな事を言われて………………いや、いたな。ちょうどいい……」
彰はそう呟くと電話を始めた。
「あ〜〜俺だ。この間の提案を受けるわ。対価はちょっと連れて行きたい奴がいるからその日の報告を兼ねて2人分の飯奢ってくれたらそれで良いわ…………おぅ了解! それじゃあゾエ君とユズル君とヒカリちゃんにはそっちから伝えとけよカゲ…………っと。悪いな三雲君。明後日防衛任務のヘルプに入ることにしたが、三雲君の話に関係しそうな面子を揃える。だから1週間だけ準備期間をくれ。話を通しておくから。あと当日はこの店に来てね。時間は追々伝えるから」
「あの……えぇっと……」
「細かい話も含めてその日まで我慢だよ。少なくとも今の君は基礎を固めることが最重要なんだから……」
修の反論を制して彰は会話を切り上げた。
●2日後影浦隊防衛任務にて
「ということでカゲのヘルプに入る事になった。みんなよろしく頼むよ? それと今日のトリガー構成を共有しとくから頼むよヒカリちゃん?」
『はいはいわかってますよ〜』
彰は任務開始前に影浦隊の隊室にて事前打ち合わせを行っていた。
「基本フォーメーションは僕が前衛でゾエ君が後衛、ユズル君がスポットを押さえて狙撃支援だね。トリオン兵の沸き位置によってはゾエ君はユズル君と合流して欲しい。どう思う?」
「俺は構わない。ゾエさんは?」
「ゾエさんも特に。というか彰君の負担大きくない? カゲだからできる事もあるのに無理させる訳には……」
「指摘の通り僕のスコーピオンの腕だとカゲ程の速度では狩れないね。だからこそゾエ君とペアなんだよ? 具体的なイメージを言うとユズル君が牽制・僕が斬り込み・ゾエ君が掃討だね。今回はゾエ君を軸に行きたいと思ってる。そしてゾエ君の苦手を僕とユズル君で支援する。いつもと違うけどそれができるメンバーだと考えるけどどう思う?」
「ふむふむ……ゾエさん責任重大だったり?」
『たりめーだ! カゲがいないならゾエが気張らなくてどーすんだ!』
「とほほ……ヒカリちゃんが手厳しい……」
打ち合わせにて各自の立ち回りを確認し影浦隊との防衛任務が始まった。
「ヒカリちゃん! 索敵にかかった反応と数お願い!」
『バムスター6・モールモッド2・バンダー3だな。既にユズルがバンダーとの撃ち合いを始めた』
「了解。ゾエ君! ポイントまでグラスホッパーで移動するからしっかり踏んでね!」
「了解!」
彰は両トリガーでグラスホッパーを展開し進行地へと急ぐ。北添も難なく追従してトリオン兵と対面するのに大した時間はかからなかった。
「バンダーが面倒か……予定変更して先に仕留めよう。まずは通常弾でモールモッドへ牽制お願い!」
「了解!」
「ユズル君! バンダーは旋空で仕留めるからゾエ君の援護を!」
北添は通常弾にてモールモッドに牽制と脚の欠損を図る。彰はその間にバンダーへと視線を向けグラスホッパーで跳躍した。
『わかった』
ユズルはターゲットの変更と北添の援護の為に標的を変更した。幸いバンダーは彰をターゲットにした事で3体全てを旋空の射程に収めた。
「旋空弧月!」
既にユズルからダメージを受けていたバンダーは旋空の一撃に沈んだ。しかし着地の瞬間をモールモッドが迫った。
「やっぱ数が多いか!? シールド……間に合うか!?」
冷や汗をかく彰に振り下ろされた刃はシールドに阻まれた。しかし展開したのは北添だった。
「撃ち漏らしてゴメン! 間に合って良かった!」
彰を守る為に無防備になった北添だったが背後のバムスターは一撃にて粉砕された。ユズルがアイビスで仕留めた為だった。
『ゾエさん! 後ろ!』
「ありがとうユズル!」
上空に撃ち上げた炸裂弾が周囲のトリオン兵に降り注ぐ。事前のフォーメーションとは異なるがそれを難なくこなすのがこの部隊だった。
「ゴメン2人共! 打ち合わせと違う動きになったのは謝罪するよ!」
「バンダーの砲撃を防ぐ為でしょ? 流石にゾエさん怒れないよぉ〜」
『こっちも牽制が甘かったかも……ゴメンゾエさん』
『ゲェ!? 700メートル先に出現反応!? バムスターだけど3体追加!?』
「なら急がないと……背中は2人に任せるよ!」
「『了解!』」
新たな出現反応により僅かに動揺が走るも即座に立て直してこの日の防衛任務は終了した。
「それじゃあ回収班の手配お願いします。場所は…………」
「ふぃ〜……今日は追加出現多く無かった?」
『数は多く無かったけど後出しで振り回すような動きには見えたかも……』
「……なるほど。じゃあユズル君とヒカリちゃんの考察と報告を重視しないと。ゾエ君時間は?」
「別に構わないけど?」
「了解。戻り次第隊室で考察・報告を行おう」
彰達は回収班の到着後帰還した。
※同日の修 C級ブースにて
「やあぁ!」
レイガストを構えプログラムバムスターに一撃を加える。バムスターの傷口からトリオンが漏れる。しかし傷口そのものは浅く大したダメージを与える事は出来なかった。
「浅い……このままだと……ぐあっ……」
撃破の為に追撃を焦り踏み込んだ修は巨体を回転させたバムスターに吹き飛ばされた。レイガストで直撃を避けたものの修にとっては小さくないダメージを受けた。
「トリオンが……保たない……」
焦りから冷静さを少しずつ欠いた修はトリオンが枯渇し戦闘続行不可能となった。
「これで……15回……ダメージを与える事は出来るのに……どうして僕はトリオン兵を倒せないんだ……? 攻撃は当たる。傷もつけられる……どうしてなんだ?」
修はこの15回の戦いで初撃及び距離を再度詰めた時の一撃は当てられるようになった。しかしトリオン兵のコア部分に一撃を加えられず接近の際のカウンターに吹き飛ばされてジリ貧に陥り敗北を繰り返していた。
「あのメガネ……トリオン兵にボコボコにされてんじゃん…………………………………………はぁ。なんで? どうしてアタシをビビらせた奴がボコボコにされてるのにアタシはむしゃくしゃしてんの……?」
香取葉子は戦闘中の修の映像を偶然目にして苛立ちを隠せなかった。その感情の正体には本人の自覚も……そして周囲からの指摘も今はまだ未来の話。
結果として修の芽生えかけていた自信は砕けかけていたが、彰がこの出来事を知る時に修は1つ成長をする事をまだ誰も知らない。
※今回進行してきた近界民はアフトクラトル系列の属国で戦略を立てることに長けてはいるも武力の低い弱小(オリ)国家です。(名前は決めてません)
次回は凹まされた修君に彰があの人達を引き合わせます!
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