高専って名前から5年制だと思ってたんだけどどうなんだろ
→4年制らしいですね
硝子って医師免許持ってるっぽかったけど3年で退学して医学部入ったのかな?
→高専卒業後にズルして2年で取ったらしいですね
先輩達が卒業した。庵先輩は京都に行くらしい。鈴科先輩はそのまま東京所属だが特級故に全国、もしくは海外を飛び回っているので会う機会も殆どなくなった
私と悟は単独で任務をこなすし、硝子はそもそも危険な任務で外に出ることはない
必然的に私たちは一人でいることが増えた
その夏は忙しかった、昨年頻発した災害の影響もあったのだろう、蛆のように呪霊が湧いた
理子ちゃんを犠牲にしようとした盤星教徒のためか
術師の苦悩など知らずのうのうと生きている一般人のためか
ブレるな
全て知った上で人々を救う選択をしてきたはずだ
強者としての責任を…
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「あ‼︎ 夏油さん‼︎ お疲れ様です‼︎」
休憩室にいる夏油に話しかけたのは灰原雄。術師としての在り方に悩んでいた夏油は底抜けに明るい、悪く言えば何も考えていなさそうな後輩に意見を聞こうと思った
「呪術師、やっていけそうか? 辛くないか?」
「そーですね、自分はあまり物事を深く考えない性質なので…でも自分にできることを精一杯頑張るのは気持ちがいいです」
「そうか……そうだな」
灰原が去った後も夏油はしばらく座り込んでいた
お前はまだ等級が低いから、単純で簡単な任務しかやったことがないからそんなことが言えるのだと、そう現実的に反論することはできた
だが今は底抜けに明るい後輩のまっすぐな言葉に心が絆されていくこの感覚をもう少し味わっていたいと思った
しかしそんな時間は長く続かなかった
「君が夏油君? どんな女が
突如現れた高身長で金髪の女がそんな質問を投げ掛けてきたからだ。そんな女に対し夏油はもちろんいい気がしない
「どちら様ですか?」
「特級術師 九十九由基 って言えばわかるかな?」
その名前には夏油も聞き覚えがあるようで
「アナタがあの⁉︎」
「おっ、いいね、どのどの?」
「特級のくせに任務を全く受けず、海外をプラプラしてるろくでなしの…」
「私高専って嫌ーい」
初めてこの女の話を聞いた時、同じく特級術師であるが棘のある態度とは裏腹に人格者である先輩とは大違いだとその存在を疑ったものだ
「冗談、でも高専と方針が合わないのは本当。ここの人たちがやっているのは対症療法。私は原因療法がしたいの」
「原因療法?」
九十九の話によると呪霊とは人間から漏出した呪力が積み重なって形を成したものなので
①全人類から呪力をなくす
②全人類に呪力のコントロールを可能にさせる
このどちらかにより呪霊の発生しない世界をつくることができるということらしい
「①は結構いい線いくと思ったんだ。モデルケースも居たしね」
「モデルケース?」
「禪院甚爾」
九十九は続けて禪院甚爾の特異性を説く。世界でただ一人呪力が完全に0であること。呪力を捨て去ることで五感が強化され、逆に呪いに耐性を得たこと
「正に超人。よく勝てたね」
「戦ってませんけど」
「……あぁ、そうだったね」
この女、今の今まで百合子に星漿体の護衛を投げたことを忘れていたらしい。しかし夏油は甚爾の強さをしっかり認識していた。彼は唯一百合子に傷を負わせた人間である
その後も九十九の話は続いたがある一言が夏油の心を大きく揺さぶった
「全人類が術師になれば呪いは生まれない」
「……じゃあ非術師を皆殺しにすればいいじゃないですか…」
それは日々積もりゆくのストレスの中で不意に口をついた言葉だった。冷静さを欠いていることを自覚していた夏油はすぐにその発言を取り消そうとするが
「夏油君 それは"アリ“だ」
九十九には思いのほか好感触だったようで。動揺する夏油を尻目に話を進めていこうとする
しかし
「"ナシ“だ、アホか」
何者かがそれを遮る
現れたのは百合子。今日はたまたま高専に帰ってきていたようだ。今の話を聞いていた百合子にしてみればソレはあり得ない選択肢らしい
「先輩…」
「鈴科君か、奇遇だね。それでナシと言うのは?」
「テメェら何食って生きてンだよ。術師に農家が務まンのか?」
いつしか自身が口にした言葉だと夏油は思った。術師以外を全て排除すれば社会活動が立ち行かなくなる。当たり前のことだ、そもそも術師だけで社会が回るほどの数がいれば呪術界は人手不足になどなっていない
「別に今すぐ皆殺しにしようって訳じゃない。非術師を間引き続け生存戦略として適応してもらおうって話だよ。」
対して九十九の主張は段階的に殺せば社会が成り立たなくなる程人口が減ることはないと言うもの
「どォやって殺すンだよ。それで呪霊が大量発生するンじゃ意味ねェだろ」
非術師だけを狙い大量殺戮をするならば方法は呪殺以外ない。しかし非術師からしてみれば、突発的に発生する科学的に説明のつかない現象により、無差別に何万人もの人間が死に続けることになる。その恐怖は計り知れない
結局呪霊とは人間の負の感情から発生するものなので、そんな方法をとれば呪霊の質と量が異次元に増加し、数の少ない術師が先に全滅する結果に終わると言うのが百合子の主張
夏油は無意識に放った一言でここまで大きくなった議論についていけない様子だった
そもそも特級術師の基準は『単独で国家転覆ができるか否か』。自分達がその気になれば国を揺るがし得る存在だと言う意識が足りなかったのだ
「夏油、テメェが言い出したンだろ?どうしてェンだよ」
「私は……」
呪術は非術師を守るためにあると考えていた。でも最近私の中で非術師の価値が揺らいでいる
『弱者生存が本当にオマエの意思ならな』
「っ…‼︎」
見透かされていた。先輩には私がこの事で苦悩する未来が見えていた…いや、もしかしたら経験があるのかもしれない
そう、目の前で交通事故を見た時、私が走れば間に合ったハズだとお門違いな罪悪感に苛まれるような
3年前は、入学直後には弱者生存など考えていなかった
しかしできることが増える度、できるハズだったことの存在を意識せずにはいられなくなったということか
だからこそ『自分の意思で決める』というのは『何に関わるか』ではなく『何に関わらないか』を考える作業だと言える
これは手を伸ばせば届いてしまう私たちが自身の精神の安寧を保つために必要なこと
「先輩は非術師についてどう思いますか?」
「つーかテメェこそ何が気に入らねェンだよ」
「だって‼︎ 術師は日々命をかけて戦っているのに…」
「じゃあトラックドライバーも入れてやれよ。アイツら結構死ンでンぜ?」
先輩は業種や命の危険度による区別は適切ではないと語る。実際命をかけて戦っている術師より、まず呪霊に殺されることはない私たちの方が多くの任務をこなしている
現場での判断など実力のない者には命の危険が付きまとうと言うのは警察や消防も同じだと
「まァどォでもいいが自分の意思で決められンのは強ェうちだけだぞ」
これは警告だ。九十九さんの力がどれ程なのかは分からないが経験値と言う面から見れば私はこの中で最弱
非術師や他の術師に対してどのようなスタンスを取ってもいいが、あまり馬鹿なことをするようなら…
違うな、気に入らない行動を取るなら叩き潰すと言う意思表示だ
私は何も言うことが出来なかった
「じゃあね。これからは特級同士4人仲良くしよう」
「二度と来ンな」
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「ねぇ、七海」
「なんでしょう」
「俺って強いよね?」
唐突にそう問いかけてきたのは五条先輩。唯我独尊を地で行くこの人にしては珍しい質問
「認めたくはありませんが」
本当に認めたくない。自分勝手な人間性と手を付けられない力の取り合わせは最悪だ。だからこそ自信が無さげな様子が気になる
「そうだよね」
「何かありましたか?」
「何があったっつう訳じゃねぇんだけど…」
そこから先輩が話したことは簡単に纏めるとこうだ
夏油先輩は着実に力を蓄えているだろうにも関わらず、最近自分が成長していない。このままではいつまでたっても鈴科先輩には追いつけない
確かに夏油先輩の術式は呪霊を取り込むごとに自由に使える呪力が増えることを意味している。彼は地道にでも成長し続けるだろう
だが私が気になったのはそこではない。鈴科先輩についてだ
私は鈴科先輩と関わることは殆どなかった。あの五条先輩と夏油先輩が大人しく従う様子から悪の親玉みたいなものを想像していたことは否めない。とどのつまり藪蛇になることを恐れたのだ
しかし話してみれば粗野な態度とは裏腹にとても理知的な人だった印象がある。逆に言えばそれくらいしか知らないが
「そんなに強いのですか? あの人は」
一般の出でありながら最強として名高い鈴科先輩。炎や電撃などさまざまな術式のカラクリは度々話題に上がるが、強さのイメージとしては二人と同等程度だろうと思っていた
「亜音速移動がデフォ、でもカウンター狙いでつっ立ってると息できなくなるし、しかもとにかく硬い」
聞いたことがある内容とは全く違う。炎や電撃はあくまでも外向きの能力であると
「彼の術式は何なんですか?」
「分かんねぇ」
「は? 五条先輩には六眼が…」
「理屈は分かんねぇんだけど見えねぇんだよ」
術式の看破は五条家の六眼の主たる能力であるはず。実際私もこの人が居てくれたおかげで自身の術式に対する理解がしやすくなった
つまり鈴科百合子と言う男は、右も左も分からない呪術界に入ってすぐ誰にも頼ることなく自身の術式を掌握し、更に数年で六眼を欺く方法を確立させ、恐らく彼を利用しようとしたであろう上層部の策謀を全て退け呪術界の頂点に君臨していると…
本当に人間だろうか
そして本気でその領域に手を伸ばす五条先輩も、やはり私とは住む世界が違うのだと改めて実感する
「私これから任務なので」
「いってらー」
「五条先輩は、強いと思います」
「……そっか、あんがと」
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「ありがとうございました」
鈴科センパイが帰ってきた時は勉強を見てもらっている。仕事で解剖などをすることがあるので医大に行こうと思ったからだ
この人に出来ないことはないのだろうか。歌姫センパイと電話をすると必ずと言っていいほどこの人の話が出て来る。色々なエピソードを楽しそうに語るのだ
正直羨ましい。イケメンだし、金持ってるし、なんでも出来るし、面倒そうにしながらもなんだかんだお願い聞いてくれるし。優良物件どころの話ではない
呪術師やりながら色恋にうつつを抜かしている余裕はない。と言いたいところだが、教師になるらしい歌姫センパイと任務での怪我や死亡のリスクがない鈴科センパイにはその余裕がある
それに比べて私の同期は…まぁ術師は学生でも死亡リスクがあることを考えれば、いつのまにか同期が死んでるなんてことが起こらないだけ私は幸運なんだろう
歌姫センパイのことは好きだ。かわいいし、一般人に近い感性を持っているのもポイントが高い。だが普通に生きてるだけで鈴科センパイみたいな人とイイ感じになれるなんて、と妬ましく思ってしまう自分がいる
結婚とかするのだろうか。どちらにしろ二人はずっと仲がいいままだろう
私はどうだろうか。そう言えば最近アイツらと話していない。二人で話しているところを見かけることもない。別にアイツらと疎遠になったとして特に思うところはないだろうと思っていたが、センパイたちの様子を見ていると、せっかく出会ったのだからなんて考えてしまう
「センパイたちって仲良いですよね」
「なンだ、いきなり」
「羨ましいなぁって」
私は素直に打ち明けた。最近同期との関係が希薄になっていること。それを嫌だと思う自分がいること
「それをオレに言ってどォすンだよ」
「それは…その…」
確かにこんなことを言われてもしょうがないだろう。しかしこの人ならどうにかしてくれるのではないかと期待してしまうのも事実
「18歳児のお守りしろってかァ? 面倒くせェな」
センパイには何もメリットがない。何か私に提示できるものはないだろうか
「じゃ、じゃあ私の……!」
「期待はすンじゃねェぞ」
「……え?」
そう言い残してセンパイは去って行った。今のは善処します的な意味だろうか。余計なことを口走る前に了承してくれて助かった
ほら、なんだかんだお願い聞いてくれる。そうゆーのズルいと思います
あと1,2話で一旦終わらせようと思います
実は私
呪術廻戦…アニメ、8,9巻
とある…アニメ
の知識しかなくて
いつか呪術廻戦を読んでから出直そうと思ってます