鈴科先輩の話   作:ヌンチャクッパス

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百合子は投薬実験も受けてないし、日常的に能力を使って自重を軽減したりもしてないので身体は小さくありません

185㎝くらいはあります(ななみんくらい)

性格もそこまで破滅的ではありません
外見や異常な頭脳のせいで小中学校の時はハブられたりすることもありましたが、裏では女子に人気だったりそこまで孤独ではなかったようです

まぁ絶対能力者進化計画がなければああはならなかったよね



二話

 

 

数日後、白髪赤眼の少年、鈴科百合子は人形と戯れていた。そう、様々な動物の見た目をした人形たちは明らかに殺意を持って少年に襲い掛かり、少年は気怠そうにしながらも容赦無く人形を叩き潰していたがこれは誰が何と言おうと戯れ……のはず

 

 

「で? 夜蛾っつったか? なンで推薦で来たオレがわざわざお人形遊びなンかしなきャいけねェンですかァ?」

 

「推薦入試というヤツだな」

 

「上手いこと言ったつもりか? クソが」

 

『呪術師に悔いのない死などない』

 

「あァ?」

 

「その上で、君は何故呪術師を目指す?」

 

「知らねェなァ」

 

「……君に呪術師の才能はない。悪いことは言わない、引き返すなら今だ」

 

 

夜蛾の言うことは正しい。呪術師としては死への覚悟や、力を自分の為に使うようなある種の自分勝手な部分が無ければやっていけないだろう。しかし今回は相手が悪かった

 

 

「まさか意思だか覚悟なンか確かめるつもりだったンかァ?」

 

「……」

 

 

その瞬間夜蛾に言いようもない圧力が襲いかかる。呪力…では無い、覇気とでも言おうか、全てが自身の思い通りになる事を疑っていない様な傲慢な、頂点に立つ者の気迫

 

 

「そォゆゥのは雑魚共の戯言なンだよ テメェはコンビニ行くのにも覚悟が必要なンですかァ?」

 

「……」

 

 

夜蛾は悩んでいた。普通なら新しい力を手に入れたガキの妄言だと斬り捨てるだろう。しかし、一級術師を含む10人のチームを壊滅させる力を持つ特級呪霊を、呪力を自覚したばかりの少年が祓ったということから考えられる可能性は二つ。言葉とは裏腹にこの少年が初めて触れる術式を把握し使いこなす冷静さと頭脳を持つか、何も考えずに力を振るうだけで特級呪霊を祓うほどの埒外の力を保持しているか。実際は両方であるのだが

 

 

「つまり君は…絶対に死なないから何も問題はないと…そう言いたいわけか?」

 

「他にどォ聞こえたんだよ」

 

「…分かった 鈴科、呪術高専へようこそ、歓迎しよう」

 

 

 

ー一ー一ーーーー一ー一ー一ー一ー一

 

 

 

私が呪術高専に入学して一年が経ったある日、教室に新しい机が増えていた。高専での初めての同級生に心が躍った。少し遅れて教室に入ってきたアイツは細身の長身に白い髪と赤い瞳、儚げな(後にひっくり返る評価)イケメンだった。そりゃ内心大興奮よ、ここは普通の学校では無いけどこれから二人での学校生活が始まるって考えたら色々期待しちゃうのは仕方ないでしょ?ニヤけそうになる顔を必死で抑え、平静を装いつつ笑顔で自己紹介をする。まぁアイツの性格を知った今の私に言わせれば、無駄な努力を…と言う言葉しか出てこないが

 

 

「私、庵歌姫! 三級、貴方は?」

 

 

いつもは先生との訓練で私は常に学ぶ側だから、彼には呪術師の先輩としていろんな事を教えてあげたい、そしてあわよくば距離を縮めたい…なんて、そんな妄想を膨らませる私に次の一言は衝撃的すぎた

 

 

「鈴科百合子 特級」

 

「へ?」

 

 

いや、マジで、うん…… 先輩ヅラする前に知れてよかった。ここはポジティブに考えよう。相手の方が実力があるなら逆に教えて貰う立場から距離を縮められれば…って、入って来たばかりの同級生に教えを乞うのは抵抗がないわけではないが

 

そんな私の諸々の目論みは一月経つ頃には完全に潰えていた

 

 

 

 

〜体術〜

 

 

「きゃっ」

 

「オマエはなンかこう…… 無駄が多いンだよ」

 

 

これは体術の訓練中、片手で私を投げ飛ばしたアイツが放ったセリフである。本人も別に私を貶すつもりはないのだろうが、かける言葉が見つからないのだろう。気を遣われているのが丸わかりだ。実力差が同級生として教え合う領域を超えていた

 

でもアイツが先生や先輩と組み手をするのを見るのは結構好きだ。身体能力や呪力強化でゴリ押すのでもなく、だからと言って何か型があるようにも見えない。

 

型にハマらず常に最適な行動を取るアイツの動きは、単純でありながら自然の摂理を映し出す数式のように美しかった

 

 

 

 

〜一般教養〜

 

 

私はかなり真面目な人間だと思う。呪術関連だけではなく一般教養も真面目にこなして来た。まぁ高専と言う特殊な環境では遊ぶ友達も居ないし他にやる事が無かっただけとも言えるが……とにかくコレならアイツに教えられることもあるだろう。

 

やはりそんなに甘くはなかった。むしろ体術はアイツが何をしているのか理解できるだけ希望があったのだ。

 

 

高専では一般教養は補助監督さんや窓の人達が教えてくれることが多いが彼らにも自分の仕事があるので基本自習をすることになる。私は自分の数学のプリントを急いで終わらせてアイツの方を見る。

 

アイツは何らかの資料を読んでいるようだった。プリントに手をつけている様子は……無い!ほらやっぱり!アイツの見た目は、特に目つきは明らかに不良のそれで一般教養は苦手だと思っていたのだ。ゲームをしていないだけマシか、読んでるのは次の任務の書類だろうか、と考えながら手元を覗き込む

 

 

「英語? いや、違うわね」

 

「ドイツ語だ」

 

 

アイツが読んでいるのは海外の論文らしかった。何の冗談かと思った。呪術師の最高位である特級術師でありながら頭脳面も学生の域を超えているときたわけで、このチート生物がっ!とちょっとイラッときてしまったがプリントをちゃんとやっていないことには変わりない。ここは私がビシッと言ってやるのだ

 

 

「ちょっと 出された課題は終わ「そこ」…え?」

 

「間違ってンぞ」

 

「ど、どこよ?」

 

「底が1未満のときは大小が逆になるって教わらなかったンですかァ?」

 

「あっ」

 

 

単純なミスだった。いつもならする筈のない…そう、急いでさえいなければ、なんて自分のミスでもアイツのせいにしなければやってられなかった。結局数学以外もわからないところは全て聞いてしまった。座学は体術とは違い純粋な理論だからかアイツの説明はとても分かりやすかった。

 

思い描いていた形とはかけ離れているが、こう言うのも青春っぽくて良いなと、アイツの横顔を見ながら思った

 

 

 


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