鈴科先輩の話 作:写像
『わんこ系後輩五条悟』
と言う概念
「どこまで続くのよ、この廊下」
「15kmくらい移動したかな」
古い洋館で任務に当たっていた冥冥1級術師と庵歌姫準1級術師はかれこれ30分ほど館内を彷徨っていた
「途中付けた印も見当たりませんね。百合子がいてくれれば一瞬だったのに…」
「それを言ってしまえば終いだよ。彼がいればそもそも私達はいらない」
「それもそうですね……では二手に別れましょう」
庵術師は二人が別々に不規則な動きを繰り返すことで呪霊の結界を抜け出し、外から叩く方針を提案した
「試してみよう」
という冥冥術師の言葉が最後まで放たれることはなかった。何故かというと
「助けに来たよ〜 歌姫、泣いてる?」
「泣いてねぇよ‼︎ あと敬語‼︎」
五条家の至宝、五条悟が建物ごと結界を破壊したからである。歌姫は五条に助けられたことが気に食わないらしく文句を言おうとしたが
「五条‼︎ 私はね、助けてなんて…」
「飲み込むなよ、後で取り込む。悟、弱い者イジメは良くないよ」
使役する呪霊に指示を出し、歌姫の背後に迫った洋館の呪霊を捕獲した呪霊操術使い、夏油傑に中断させられる。弱い者扱いされ更に機嫌を悪くする歌姫の表情は
「歌姫センパ〜イ。無事ですか〜?」
希少な反転術式の使い手であり、さしす組唯一の癒し、家入硝子の一言で綻ぶ。そんな賑やかなやり取りをする後輩らは、冥冥の冷静な一言で凍りつく
「君達、帳は?」
「「「あっ」」」
「降ろしてある」
「百合子!」
だが彼女の心配は杞憂に終わったようだ。現在最強の呪術師である鈴科百合子が後輩たちの暴走を予期し降ろした帳は呪術師として高い能力を持つ彼らをして、注意しなければ認識できないほど自然なものだった
「やっぱり百合子が来る必要なんかなかったって」
「今帳降ろし忘れてたヤツのセリフじゃねェな」
どうやら本来二人の救出を任せられたのは百合子だけであり、後輩たちはただの付き添いであったらしい。それでコレほど大暴れされた百合子はたまったものではないだろう。
自由が服を着て歩いているような五条という男は本来弟気質で、呪術師としての実力も自身より突出している百合子のことを最初の模擬戦以降兄のように慕っている様子だった。いつの間にか名前呼びになっているのがなつき具合を表している
「歌姫、ケガしてねェか?」
そんな最強術師様が真っ先に確認したのは歌姫の状態だった
「えぇ、無傷よ」
「そォか」
「鈴科君、私の心配はしてくれないのかな?」
冗談混じりに問いかけた冥冥の言葉に対する百合子の返答がその場の全員-本人以外-を驚愕させる
「歌姫の無事さえ分かりャあ、それでいいだろ」
「「「「え?」」」」
「ゆ、百合子? それって私さえ無事なら他はどうでもいいって……」
頬を赤らめ、指をモジモジさせながら百合子の顔を見上げる歌姫の表情は緩みきっていた。完全に乙女のカオだった
「オマエが無事なら他の奴らがケガしてるハズがねェ。むしろその程度の呪霊にやられンなら呪術師は向いてねェだろ」
集合のうち最低値がボーダーを上回れば全ての要素がボーダーを上回っていることになる。だから真っ先に歌姫の状況を確認したと
つまりこの男はそう言いたかったのだ
「ギャハハハハハ‼︎」
「フ、フハハハハ‼︎」
五条は大爆笑。夏油は一瞬でも堪えようとしただけまだマシか
「「「……」」」
女性陣の視線は冷たい
「あーそう言う感じなんだね、鈴科君は」
百合子との関わりが少なかった冥冥は泣く子も黙る最強術師様の意外すぎる一面に呆然とし
「センパイ… それはないでしょ…」
歌姫から話は聞いていたが実際に百合子の唐変木さを初めて目の当たりにした硝子はドン引きし
「……」
歌姫は想い人の眼前であることなど忘れスペキャ顔を晒していた
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「百合子、何であんな薄い帳降ろしたの?」
「確かに、どーせ
「あ? 対人で重宝すンだよ?」
「つまり、君と戦う呪詛師達は仲間が一人ずつ消える恐怖を味わうことになる訳か」
「そして連れ去られた先で先輩とタイマンさせられると… 私も練習しようかな」
増援が期待できないままで百合子と戦うという状況に一同が身震いする中硝子はある事に気づいた、いや気づいてしまった
「でもセンパイなら何人いても一撃なんだし意味なくないですか?」
「まァそォなンだが、クソつまンねェ仕事やらされンだから……」
そう言い残し百合子は歩き去っていった
「彼は加虐趣味があるようだね」
「庵先輩、苦労しますね」
「歌姫ガンバ〜」
「えーっと… ごめんなさい」
「いいわよ、遅かれ早かれ分かって… ってアンタ達! どう言う意味よ!」
短くてごめんね