「谷と山しかねえのかよ。平野は?」
そう思って今に至ります。
霧の湖
「誰?」
「君、家がないのかい?」
「目の前に見えてるでしょ。後俺言っておくけど道教だからな。神道カチコミ上等?だからな!」
「誰から聞いたんだそれ…」
「確か…」
「村紗」
「それ」
それは誰だと聞かれて、正直に命蓮寺の連中と答える。はて何を納得したのか、頭を少し悩ませる素振りをした変な耳の奴は…おい、俺また取り憑かれてんのかよ。クソが。そろそろ極楽浄土行きじゃ済まねえし済ませねえぞ。
「実は部下がほぼ毎日焼きに行っていて」
「影狼さん、思ったより蛮族だったわ。殺されるんじゃないのこれ」
「貫太君。君が言えたことじゃないよ」
「あっそ。どうでも良いけど変な耳の人」
「太子と呼んでくれ」
「…太子さん。二歩前に出てみて」
「何故?」
「とりあえず」
「…っ!?」ズボッ
「ほれ」
「えぇ…?」
「な、なんだこれ!?」
「今朝俺が落ちかけた場所」
「そんな欲は聞こえてなかったぞ!?」
「ほれ見たことか。欲だとか言って人間の考えてる事の大体を分かるタイプだ」
「なっ!?」
「なんで分かったの?」
「…いや、巫女さんから」
「第三者を通じてのお話なのね」
チラッと太子を見ると、少し怒ったような顔でいる。当然だ。服が濡れるだけならまだ許そうが、泥水だからな。なんか飛んで出て来たが、こっちを睨みつけている。何故だ!?と言うつもりはないので俺はもう二歩前に出る。ちなみに俺だけで結構限界だった地面が抜けるのはあいつが重いからであって
「うおっ」
「また!?」ズボッ
「…」
「君、自分ごととは恐れ入る」
「自分ごととは言い難い」
「?」
「んぷぅ」
「え!?」
「まーだ神霊がいやがった。」
「な、なんで取り憑かれて平気なんだい!?」
「フライパンバケツ」バシャッ
「わっ」
「ではさよなら」ガシッ
「神霊を浮力代わりに使うのはどうかと思うが!?」
「じゃねー」
「この!」
「お前それパンツ脱げないの?」
「!?」
「泥と水とで結構重くなってるからきついと思うんだが」
「そう言うことを欲もなしに言うのは褒めてあげるよ」
「…じゃ、命蓮寺行くか」
「ま、待て!あっ確かに少し落ちる!…そこの妖怪達!」
「な、何!?」
「…替えの下着とかは…」
「ないわよ。妖怪なんだから」
「私人魚だし」
「…」
命蓮寺
「でーん」
「でーん!!!」
うるさい。今日は村紗に文句言いに来たぞ。神道って奴が来たら言うべき言葉言っても相手消えなかったことをよ。あれ、村紗どこ?村紗さーん?あ、こう言う時に声がでかい門番の子を使えば良いのか。名前なんて言うんだろ…音響?
「村紗〜?」
「村紗〜〜!?!?!?!?」
「な、なになになに!?」
「神道カチコミ上等って神道の奴に言っても意味なかったぞ」
「あ、あー…」
「こんにちは」スッ
「うおっ」
「よくもやってくれたね」
「な、何したんだ…?」
「私のパンツを重くして、それを利用した足止めなんてね…!」
「は?」
「精進が足らんね」
「この!!」
「何をしてらっしゃるので?」ガシッ
「え?」
「聖さん」
「これはこれは…最近こちらに越した豊郷耳さんじゃないですか」
「あ、ああ。こちらの男に下着を脱がされかけて…ね」
「本当ですか?」
「泥水に浸かって水に浸かって…踏んだり蹴ったりってのはそのことですね。俺も濡れましたし」
「…」
「あ、いや、いやぁ?確かに歩いたらズボッと行ったのは認めるが…」
「直接的な関係はありませんよね?」
「い、いや!歩けと言ったのはあっちで」
「おかしいですねぇ。教えを説く人物が他人の指示に従うのですか?」
「ぁ」
「さて。詳しくお話でも」
そう言って2人は寺の中へと行った。俺の手元にある神霊を残して。ちょっと計算外だなーって思いながら帰ろうとした時、星さんから呼び止められる。一体何があったか。いや、あるまい。無視して歩こうとして村紗さんに肩を掴まれた。いたい。
「なんでしょ」
「聖のことなんですけど」
「おん」
「聖に弟がいたんです」
「弟が。」
「はい。まあ、死んでしまったのですが。」
「うん」
「その弟は人間でして」
「うん」
「聖はどうも、自分の弟と貴方を重ねているようで。」
「だから?」
「…今後異変に頭を突っ込まないでくださいね。今回のこと聞いた聖が私も行くと言って聞かなかったんですから。私もまたあれを止めに行けと言われるのは嫌ですし」
「突っ込まされたんだけどね、今回のは」
「とにかく。命を大事にしてくださいね。貴方が死ねば、私たちが総出で仇を取ることになりますから」
「嫌なの?」
「いえ、敵討ち自体はいいのです。ですが、それで頭をいっぱいにしてしまう聖が見たくないのですよ」
「なんと不自由な」
「とにかく命ですよ。わかりましたね?」
「わかりました」
「異変にはくれぐれも頭を突っ込まないよう」
「はいはい」
「いっそのこと、命蓮寺に3人共々来ますか?」
「いやぁ、良いかな」
そう言って霧の湖に帰る。何がしたいのかわからなかった一日ではあるが、そんなものだろう。宗教なんて俺には似合わないと言うこともわかったことだ。それならもうふんわりと仏教でいいだろう。後他人のアドバイスはあんまり聞くな。変になるってこともわかったし。
霧の湖
「ってことがあった」
「貫太君」
「何?」
「命蓮寺で暮らしなさい。私がたまに会いに行ってあげるから」
「え、なんで?」
「貫太君の栄養面を考えて、ね。だって本当に細いんだもの」
「…そんなに?」
貫太君の身長が160だとしよう。体重は30kg程度。
この意味がわかるね?つまりそう言うことだ。