キングスが障害レースの未勝利戦を勝ってから年が明けた。キングスが次に挑むのは障害レースの条件戦。このレースではキングスは3番人気に支持された。障害レースのメイクデビューの時と変わらずだ。
まぁ先の一戦はまぐれだと思われてるのと、不安視されるような飛越を見せたのが原因だろう。もっとも、人気なんて飾りみたいなものだ。大して気にする必要もない。
そんなキングスだが……絶好調だった。
《最後の障害を……飛びました!キングスポイントが飛越します!ちょっと着地にもたついたか?他のウマ娘も最後の障害を続々と飛んでいく!後はもう走り抜けるだけだ!》
「「頑張れー!キングスせんぱーい!」」
オフトラ達が懸命に応援している。そんな声に応えるように……キングスは他のウマ娘との差をグングン広げていった。
《最後の直線に入ってキングスポイントが後続を突き放す!これは速い最早独走状態!キングスポイントが後続との差をグングンつけていく!》
その勢いのままキングスは1着でゴール。2着に約2秒差をつける大差勝ちだ。会場からはまばらながらも歓声が湧き上がる。
「やったやった!キングス先輩勝ちましたよ!」
「うん!やったね!」
「凄い勝ちっぷりだね~。これは本格的に才能が開花したんじゃない?」
「まだ条件戦だから気は抜けねぇけどな。オープン戦、重賞まで一気に駆け上がるつもりだ」
月末に障害レースのオープンレースを走って、3月の阪神スプリングジャンプ*1を目標に設定してある。そこでキングスの真価が発揮されるだろう。
キングスは客席に向かって手を振っている。俺達に気づいて……あ、そっぽ向いた。微妙に顔が赤くなっているのが確認できるから恥ずかしいんだろう。
「もしかして、キングスポイントの才能が開花したのか?」
「こっちが適正だったのかな?」
「いや、まだちょっと怪しいだろ。飛越下手だし」
「でもちょっと注目しといた方が良いんじゃない?なんてったってテンポイントの妹だよ?」
観客の反応は……ちょっとずつ良い反応が増えてきたか?ぐらいだ。まだまだこれからだろう。
「というわけで、次は月末のオープン戦だ!ここも勝って、連勝で重賞を勝つぞキングス!」
「分かってるし!あたしをバカにしてたファンと記者共を見返してやるし!」
キングスは今日も練習に励んでいる。……まぁ、たまに障害をまともに飛ばなかったりして練習しない時があるが。もういつものことなので慣れた。
そして迎えた障害のオープンレース。
《京都障害レースオープン戦もいよいよ終盤!最後の障害を……飛びました!先頭はタカチホガミネ!他のウマ娘も続々と飛越します!本レース1番人気キングスポイントは現在3番手!ここから捲って期待に応えたいところ!》
キングスは1番人気でレースを迎えた。現在3番手。先頭との差は……2バ身に収まってる!
「いっけー!キングスー!」
「勝てよー!」
「頑張れー!」
キングスは必死に走る。そして残り200を切ったところで……先頭に追い付いた!
《逃げるタカチホガミネ!追うキングスポイントとイセタイヨウ!3人が並びました!他のウマ娘達を置き去りにして3人が熾烈な先頭争いを繰り広げている!そして残り200m!ここで抜け出すのは3人の内どのウマ娘か!?……キングスポイント!キングスポイントだ!ここでキングスポイントが抜け出した!しかし他の2人も負けていない!必死に食い下がる!残り100m!》
「「「頑張れぇぇぇぇぇ!」」」
そしてキングスは抜け出す。他の2人も必死に食い下がるが……キングスが粘り勝った!
《しかしキングス!キングスポイントだ!キングスポイントがゴールイン!2着に1と1/2バ身差をつけてキングスポイントが障害レースのオープン戦を制しました!2着はイセタイヨウ!3着はタカチホガミネ!これでキングスポイントは障害レース3連勝!》
《キングスポイントは障害レースを走るようになってから絶好調ですね。次はいよいよ重賞阪神スプリングジャンプ。ここも勝てば……彼女の実力は本物でしょう!》
キングスはファンの声援に応えるように手を振る。最低限の対応しかしていないが……まぁいいだろう。これからだ。
「次はいよいよ重賞だ!今まで以上に気合入れてけキングス!」
「分かってるし!今から記者共が手のひらクルクルするのが目に浮かぶし!」
「あまり調子に乗りすぎるなよー!」
キングスを万全な状態で送り込めるように調整しながら練習を続ける。飛越に関しても着実に上手くなっていってる。これならば……問題ないだろう。
迎えた初の重賞……阪神スプリングジャンプ。キングスは2番人気に支持された。
「つ、ついにキングス先輩も初の重賞ですね……!」
「うん。そうだねトラップ。頑張れ、キングス先輩……!」
「ミスター。キングスは勝てそう?」
シービーは答えなんて分かり切ってるだろうにそんな質問を投げてきた。俺は自信たっぷりに答える。
「勝てるさ。調整も上手く行ったし、問題はない」
「当たり前やろシービー。キングスやぞ?ボクの妹やぞ?勝てるに決まっとるやろ」
「姉バカだねぇテンポイントさん」
「当たり前や。妹のことが嫌いな姉なんかおらん!」
テンポイントは胸を張って答える。シービー達は微笑ましいものを見る目でテンポイントを見ていた。そうこうしているうちにもレースが始まる。キングスは……いつものように中団を走っていた。
レースは淀みなく進む。キングスはまだ中団。もうすぐ最後の障害を飛越しようかというところだ。
《各ウマ娘が最後の障害を……飛びました!これで最後の障害を飛越しました!後はゴールするその時までただ走るだけ!現在先頭を走るのは1番ロックペドロス!先頭を走るのは1番人気ロックペドロスです!キングスポイントはまだ中団!ここから一気に捲って上がってくるか!?》
最後の障害を飛越して……キングスポイントは進出を開始した。
「頑張れー!キングスー!」
キングスは裂帛の気合いとともに走る。最後の直線に入る頃には先頭に追い付いていた!
「負けるかぁぁぁぁぁ!バカにしてたヤツら全員見返してやるしぃぃぃぃぃぃ!」
《中団から凄い勢いでキングスポイントが上がってきました!6番のキングスポイントが先頭に追い付いた!そしてそのまま……キングスポイントが躱した!残り200を切ってキングスポイントが先頭!後続を離しにかかる!しかし食い下がる!同じく中団から上がってきたタマモビートがキングスポイントを追い上げる!1番人気ロックペドロスは力尽きたかズルズルと後退している!残り100を切りました!キングスポイントと2番手タマモビートの差は6バ身!その差は徐々に縮まっているが……!》
残り100mで6バ身の差を覆すことはできず。その勢いのままキングスポイントは阪神スプリングジャンプを制した。
《キングスポイント!キングスポイントだ!中団から見事な末脚で突き抜けたキングスポイント!阪神スプリングジャンプを制したのはキングスポイントです!2着は3バ身差タマモビート!3着はダイタクマイティ!1番人気ロックペドロスは終盤力尽きたか6着に沈みました!そしてなんとレコード決着!初の重賞をレコード勝利で飾りましたキングスポイント!》
《それにしても……障害レースに転向してからのキングスポイントの活躍は目覚ましいですね!これで重賞含めて4連勝です!》
《流星の貴公子の妹、キングスポイントの才能は障害レースで花開く!もう賢姉愚妹とは言わせない!キングスポイント見事な勝利でした!》
会場からは拍手が湧き上がっている。キングスポイントに惜しみない賞賛が送られていた。
「すげぇぞキングスポイントー!」
「さすがはテンポイント様の妹ー!」
「よくやったぞー!キングスポイントー!」
……とは言っても、
「ま、着実にファンは増えてきている。それだけでも収穫だな」
「お疲れ様ー!キングスせんぱーい!」
「カッコよかったですよー!」
ミラクルとオフトラもキングスに声援を飛ばしている。キングスもそれに気づいて……あ、そっぽ向いた。やはり恥ずかしいのだろう。もっとも……
「よくやったでー!キングスー!こんまま連勝街道まっしぐらやー!」
キングスの応援団扇*2を両手に持って、誰よりもはしゃいでいる姉の姿に恥ずかしさを感じているのかもしれないが。
「テンポイントさん、もうちょっと自重したら?周りの人達すっごい見てるよ?」
「おい?あれってテンポイントだよな?」
「本当だ!テンポイント様だ!」
「テンポイント様ー!サインくださーい!」
「やっべぇ……!ずらかるぞお前ら!」
シービー達に逃げるよう促す。テンポイントに手を引かれるまま俺達は会場を後にする。
「……何やってるし」
後ろからは、呆れたようなキングスの声が聞こえた気がした。
連勝街道を進むキングス。そして誰よりもはしゃぐ姉。