ウマ娘~プロキオンの軌跡~   作:カニ漁船

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仲間が着々と増えるよ


練習場の出会い

「というわけで、ウチのチームに新しく入ることになったミスターシービーだ」

 

 

「よろしくね。テンポイントさん、キングス」

 

 

「お~。やっぱ入るんやな。よろしゅうなシービー」

 

 

「……」

 

 

 選抜レースが終わった次の日。トレーナー室で俺は早速テンポイント達にシービーのことを紹介している。テンポイントは気さくに、キングスは警戒心を露にしながらシービーを見ている。そういえば、普段から顔見知りとしか会ってないから忘れていたがキングスは元々人見知りするタイプだった。そんなことを思い出す。

 ただ、それよりも気になることがある。俺はテンポイントに尋ねた。

 

 

「やっぱり、ってどういうことだテンポイント?シービーが入ること分かってたのか?」

 

 

「分かっとったっちゅうか……まぁ、雰囲気的に入るんやないかなって思うてたし」

 

 

「あはは。やっぱり分かってた?」

 

 

「まぁリギルやハダルの勧誘を蹴っとったんはともかく、スピカの勧誘も蹴るぐらいやからな。それに誠司からシービーの話を聞かされた時に、そうなんやないかなって」

 

 

 テンポイントはそう言った。

 シービーも入ったということで、残りのメンバーは後2人だ。結局選抜レースでは良い子が見つからなかったし、また地道に探していくしかないだろう。

 一応、テンポイント達にも当てがないか聞いてみることにした。

 

 

「テンポイント、フリーの子とか知ってたりしないか?この3人に気が合いそうなやつとか」

 

 

「う~ん……さすがに知らんなぁ。ボクの知っとる子達はみんなトレーナーがついとるし」

 

 

「キングスは……すまん、なんでもない」

 

 

「なんでアタシから一瞬で目をそらしたし」

 

 

 人見知りする上に交友関係に乏しいから、なんて口が裂けても言えない。後、キングスの友人達はみんなトレーナー持ちだというのは把握済みだからだ。

 

 

「シービーは知ってるか?フリーの子」

 

 

 シービーは考え込むそぶりを見せた後、答える。

 

 

「流石にいないかな~?ゴメンね?」

 

 

「いや。かまわない。ということは……地道に探すしかないってことだな」

 

 

 結局はその案に落ち着いた。一応名簿にも目を通してみて、気になった子に声をかけてみることにしよう。早速仕事に取り掛かることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 仕事に取り掛かることにした……のだが。

 

 

「お腹空いたし。早くなんか作れし」

 

 

「……今仕事で忙しいんだけど」

 

 

「知らないし。そんなことよりアタシのお腹を満たすことの方が先決だし」

 

 

 キングスからお腹が空いたから何か作れと要求され……。

 

 

「へぇ。ここがミスターのトレーナー室か~」

 

 

「あまりその辺のものに触るなよ?壊しでもしたら……」

 

 

「あ、ミスター。これは……あれ?外れちゃった」

 

 

「何してんだお前!?」

 

 

「あ、壊れたとかじゃないんだ。じゃあいいや。とりあえず戻して……っと。あ!これ昔のレース映像だね。見てもいいかな?まぁ勝手に見るんだけど」

 

 

「おい!?」

 

 

 トレーナー室の中を勝手に散策するシービーに翻弄されたりしたせいで、一向に仕事が進まなかった。そして、俺は気づいた。

 

 

(テンポイントって、めちゃくちゃ良い子だったんだなぁ……)

 

 

 元から優等生気質であることは知っていたが、こんなことで再認識するとは思わなかった。とにかく2人はテンポイントと違って我が強すぎる。なんというか、自由すぎるのだ。

 

 

「ちなみにカップ麺とかだったら蹴っ飛ばすし。ちゃんとしたものを用意しろし」

 

 

「へ~。これがショウさんのレースか~。うんうん、良いね。あ、こっちはカイザーさんの日本ダービーか。後で見よっと。でもどこに置こうかな?……まぁその辺に置いとけばいいか」

 

 

 そんな2人の様子を見ていると、テンポイントが心配そうな声で俺に話しかけてきた。

 

 

「だ、大丈夫か誠司?あれやったらご飯はボクの方で作るけど」

 

 

「……いや、大丈夫だテンポイント。それよりも」

 

 

「それよりも?」

 

 

「お前って、本当に良い子だったんだなぁ……」

 

 

「こんなことで再認識されてもあんまり嬉しゅうないで……」

 

 

 お互いに肩を落とす。嫌という時はちゃんと嫌と主張するが、基本的に自分の我を押し通そうとしなかったテンポイントがいかに良い子であったかを改めて思った。

 結局キングスのご飯はテンポイントに作ってもらうこととなり、シービーについてはレースの映像に夢中になっていることから実害はないと判断し、無視することにした。俺はトレーナーとしての仕事に取り掛かる。

 まずは、キングスについてだろう。キングスは身体が出来上がってきているし、そう遠くないうちにデビュー戦を組んでもいいかもしれない。ただ、ここで気になるのは……。

 

 

(マスコミの反応なんだよなぁ……。まだデビューもしてねぇってのに、取材の依頼が来るぐらいだし)

 

 

 キングスはテンポイントの妹だ。日本どころか世界中を湧かせた大スターであるテンポイントの妹。かかる期待も大きいのは納得できる。さすがにデビューもしてないのに大々的に取り上げるのはどうかと思うが。

 ただ、この数日間キングスの練習を見ているのだが良くも悪くも平凡なのだ。キングスは、特に秀でた武器というものがない。さらに言うなら、ズブい。反応が遅い。

 ……まぁ、まだ練習して日が浅いだけかもしれない。長い目で見ていけば、きっとキングスの才能が開花する時が来るだろう。その時をひたすら待てばいい。メイクデビューに関しても追々考えていけばいいだろう。

 次にシービー。こちらはまだ選抜レースで見ただけだが、かなりの才能を秘めているのが素人目に見ても分かる。瞬発力、戦術眼、どれをとっても優れており、あの一レースだけでリギルが欲しがる理由がすぐに分かった。

 テンポイントからも聞いた話だが、トウショウボーイが特に気をかけているという話もある。それだけ期待されているのかもしれない。ミスターシービーという逸材は。その逸材を俺の手で枯らしてしまったら……また、非難の的だろう。

 

 

「責任重大だな……」

 

 

 だが、俺は俺のやれることを一生懸命やるだけだ。それは変わらない。テンポイント達の練習メニューを考えながらその日一日は終わった。

 

 

「お姉のご飯マジ美味いし!ありがとうだし!」

 

 

「はいはい。あんま誠司に迷惑かけたらアカンで?キングス」

 

 

「はーい!」

 

 

「あ、テンポイントさんアタシの分もよろしく~」

 

 

「お前もかい!」

 

 

「だってお腹空いちゃった」

 

 

「~~ッ!……ハァ、分かった分かった。作ったる」

 

 

「……テンポイント、俺が作るからお前もゆっくりしとけ」

 

 

 ……前途多難な気しかしないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間が経ってテンポイント達が寮へと帰った後。俺は気分転換をと思い散歩をしていた。すでに日も落ちている。仕事はほとんど片付いたし、後は明日やっても問題ないものばかりだ。気が楽な状態で散歩をしている……と行きたいところだが、頭を悩ませている問題があるからこそ、あまり気は休まらない。

 残り2人。シービーをスカウトできたものの、チーム結成のためには後2人必要なのだ。そして、そのあてはない。

 

 

「一体どうしたものかねぇ」

 

 

 そう呟きながら俺は歩いている。

 ふと、練習場の方へと目を向けると明かりが点いていた。まぁまだ時間的に余裕はあるし問題はない。ただ、あの日のことを思い出して笑みが零れた。

 

 

「そういや、テンポイントと会ったのも練習場だったな」

 

 

 当時のことを思い出しながら俺は練習場へと足を踏み入れた。

 練習場では、まだ多くのウマ娘が練習をしていた。あわよくばスカウトできたりしないだろうか?そんな気持ちを抱きながらも俺は練習している姿に目を向ける。

 ただ、少し集中して見すぎたのか彼女達がこちらに気づいた。

 

 

「あ!神藤さんだ!こんばんわー!」

 

 

「「「こんばんわー!」」」

 

 

「あぁこんばんわ。頑張ってるな」

 

 

「はい!もっともっと強くならないといけないので!」

 

 

「だが、程々にしとけよ?怪我でもしたら目も当てられねぇからな」

 

 

「「「はーい!」」」

 

 

 俺の言葉に彼女達は元気よくそう答える。

 

 

「……神藤、トレーナー?」

 

 

 その時、少し離れた位置で練習をしていたうちの子の1人が俺の名前を呼びながらこっちへと近づいてきた。俺もその子の姿を見る。

 薄い水色の髪をショートカットにしたウマ娘だ。トウショウボーイのようにボーイッシュさを感じさせる見た目。ただ、あちらが快活な印象を抱かせるのに対してこちらは儚げな印象を抱かせる。

 彼女は俺をじっと見据えている。何かあったのだろうか?ひとまず尋ねてみることにした。

 

 

「え~っと……。俺に何か用かな?」

 

 

 いつもなら敬語を使うのだが、周りに気さくな感じで対応してしまったので敬語に戻しづらかった。なのでできる限り柔らかい言葉で対応する。

 だが彼女は俺を無言のまま見つめているだけだ。本当に何があったのだろうか?もしかして、知らず知らずのうちに彼女に対して何かやってしまったのだろうか?

 

 

(けど、こんな子に会ったらまず忘れないと思うんだけどな……)

 

 

 そう考えていると、彼女が口を開いた。

 

 

「……あなたが、あのテンポイント先輩のトレーナー、神藤さんですか?」

 

 

「あの、が何を指しているのかは分からないけど……テンポイントのトレーナーだって言うんなら俺のことだね」

 

 

「あなたが……」

 

 

 彼女は俺を尊敬するような、そんな感じで見てきた。本当にどうしたのだろうか?

 

 

「あの、お願いがあります」

 

 

「な、なんだい?俺の叶えられる範囲なら構わないよ」

 

 

「おれの走り、見てくれませんか?」

 

 

 彼女は、頭を下げてそう言ってきた。俺は慌てて彼女の言葉に答える。

 

 

「い、いや!そんな頭を下げなくても!?それぐらいだったら全然見るよ!どんな走りをするのか気になるし!」

 

 

「そう、ですか?では、お願いします。今走ってきますので」

 

 

 そう言って彼女はターフへと駆けていった。なんというか。

 

 

(不思議な子だな)

 

 

 名前も分からないが、とりあえず彼女の走りに集中しよう。すでに他のウマ娘とともに位置についている。彼女は、どんな走りをするのだろうか?

 

 

「……ッ!フッ!」

 

 

 模擬レースの形式で一斉にスタートした。その中で勢いよく飛び出したのは、先程の走りを見てくれといったあの子だ。……成程。

 

 

「凄いな……あの子」

 

 

 走りを見てくれ、というだけあって確かに凄い。勢いよく飛び出したかと思えばそのまま後続を突き放していってる。スピードが飛びぬけている証拠だ。そして、瞬発力ならシービーにも匹敵……いや、それ以上なんじゃないか?と思わせてくれるほどだ。彼女はスプリンターなのだろうか?

 模擬レースといってもそこまで長い距離を走るわけじゃない。800mもないぐらいの距離を走り終わって、全員が一斉にこちらへと向かってきた。もちろん、あの子も一緒に。

 彼女はいの一番に俺に聞いてきた。

 

 

「あ、あの。どう、でしたか?おれの走り」

 

 

 彼女の言葉に俺は感想を伝える。

 

 

「凄いな。走りを見てくれ、っていうだけあって圧巻の走りだった。瞬発力ならトップクラスなんじゃないか?」

 

 

「あ、ありがとうございます。でも、まだまだです。もっともっと頑張らないと」

 

 

 彼女は照れ臭そうに笑った。ひとまず、俺は彼女に尋ねてみることにした。

 

 

「それで……なんで走りを見てくれ、なんて頼んできたんだ?いやまぁ、トレーナーである俺に良いところを見せたいって気持ちはあるんだろうけど……。君なら昨日の選抜レースでもいい結果を残したんじゃないか?」

 

 

 それぐらいの実力はある。断言してもいい。昨日の選抜レースには出走していなかったのだろうか?そう考えていると彼女は苦笑い気味に答えた。

 

 

「おれ、昨日は体調を崩してて……。選抜レース、出れなかったんです」

 

 

「そういうことか。それなら、悪かった。気を悪くさせてしまったな」

 

 

「い、いえ!良いんです!それに、おれは目的の人に走りを見てもらえて十分ですから!」

 

 

「目的の人?」

 

 

 先ほどから疑問だらけだ。彼女は俺をもう一度まっすぐ見据えていた。

 

 

「あの、単刀直入にお聞きします。神藤トレーナー」

 

 

「お、おう」

 

 

 彼女は一つ深呼吸をした後、告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願いがあります。おれを、あなたのチームに入れてくれませんか?」

 

 

「……へ?」

 

 

 唐突なそのお願いに、思わず間抜けな声が漏れてしまった。俺の反応に彼女は残念そうな表情を浮かべる。

 

 

「やっぱり、ダメですか?おれなんかじゃ」

 

 

「い、いや!そういうわけじゃない!チームに入ってくれるなら大歓迎だ!けど……」

 

 

 先ほどから尋ねようと思っていたことを彼女に聞く。

 

 

「ひとまず君の名前を聞いてもいいかな?名前も知らないし、俺」

 

 

「……あ」

 

 

「……もしかして、忘れてた?」

 

 

「……す、すいません。憧れのトレーナーさんに会えたって気持ちが先走りすぎて、失念してました」

 

 

 彼女は恥ずかしそうに頬を掻く。しかし憧れのトレーナーとはどういう意味かと思ったが、追々聞いていけばいいだろう。

 改まって、彼女は自己紹介をしてきた。こちらに、手を差し出しながら。

 

 

「おれ、ケイエスミラクルって言います。おれを、あなたのチームに入れてくれませんか?」

 

 

「ケイエスミラクル……。あぁ、まだ設立すらできてないチームでよければ、歓迎するよ」

 

 

「構いません。おれ、頑張りますから」

 

 

 俺は彼女と握手を交わす。昨日と今日で、2人のウマ娘をスカウトできた。最初は心配だったが、意外と順調である。




早くブルーロックを……!本誌ブルーロックを見せてくれ!(合併号なので明日はない)
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