ウマ娘~プロキオンの軌跡~   作:カニ漁船

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チームのメンバーが揃うよ着々と


新しいメンバー

「というわけで……新しくウチに入ることになったケイエスミラクルだ」

 

 

「よろしくお願いします。先輩方」

 

 

「よろしくね~ミラクル」

 

 

「「……」」

 

 

 練習場での出会いから次の日。俺とミラクルは手続きを済ませて正式に契約することになった。昨日でシービーが、今日でミラクルが入部したので後は1人だけだ。理事長から言われた時にはどうしようかと思っていたが、案外メンバー集めは順調である。喜ばしいことだ。

 ……だが、テンポイント達の視線が痛い。キングスは多分ミラクルを警戒しているだけだろうが、なぜテンポイントは俺をジト目で睨みつけているのだろうか?何かしたのだろうか?

 

 

「な、なぁテンポイント。どうかしたのか?俺を睨んでるようだけど」

 

 

 テンポイントは、不貞腐れたように答える。

 

 

「べっつにー。あんだけ心配しとった割には、昨日と今日とで女を引っかけとるんやな」

 

 

「人聞きの悪いこと言わないでくれます!?」

 

 

 俺が最低の屑野郎みたいな発言をかましてきた。女を引っかけるも何も、ただスカウトしただけなんだが。誰かに止めてほしいが、シービーは面白がって笑うだけである。

 ミラクルは緊張しているのか、困惑しているのか分からないが無言だ。曖昧な笑みを浮かべている。

 

 

「あ、あの。おれ、なんかやってしまったんでしょうか?テンポイント先輩とキングスポイント先輩からあんまり歓迎されていない気が……」

 

 

「だ、大丈夫だ。テンポイントも多分冗談で言ってるだろうし、キングスは人見知りが激しいんだ。気にしなくていい」

 

 

「そ、そうですか」

 

 

 ここらで親睦会と行きたいところだが……俺は時計を確認する。もうすぐで会議が始まるからここにいる場合じゃない。

 

 

「すまないが、俺はこれから用事があるんだ。後は4人で話しといてくれ。練習は休みだからそのまま帰ってくれても構わないし、その辺は自由だ」

 

 

「分かったわ。頑張ってくるんやで誠司」

 

 

「あぁ。じゃあな」

 

 

 俺はトレーナー室を後にする。あぁは言ったものの、仲良くなってくれると嬉しいのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誠司がトレーナー室を去った後、部屋の中に静寂が訪れる。ただ、ボクには聞きたいことがあるから早速聞くことにした。対象は勿論、ケイエスミラクルというウマ娘である。ただその前に自己紹介をしよう。そう考えたボクはケイエスミラクルに向き直って自己紹介をした。

 

 

「さて……ケイエスミラクル、やったっけ?ボクはテンポイントや。よろしゅうな」

 

 

「あ、は、はい。よろしくお願いしますテンポイント先輩。後、おれのことは気軽にミラクル、って呼んでください」

 

 

「そか。やったらよろしゅうなミラクル」

 

 

「はい」

 

 

 こちらに丁寧にお辞儀をしてきた。ボクもお辞儀をする。礼儀正しい子だ。

 

 

「ほら、キングス。キングスもしっかりと挨拶しとき?」

 

 

「……キングスポイント。よろしく」

 

 

 仏頂面だが、まぁ良いだろう。苦笑いしそうになるが元々人見知りする子だし気にしない。ミラクルも僕の時と同じように自己紹介をした。

 それに倣うようにシービーとも自己紹介を交わした。自己紹介が終わったということで、ボクは本題を切り出すことにした。

 

 

「それで……。ミラクル。1つ聞いてもええか?」

 

 

「あ、はい。おれに答えられることだったら、なんでも」

 

 

 僕は気になっていたことを尋ねる。

 

 

「なんでこのチームに入ろうと思うたんや?誠司のスカウトか?」

 

 

「あ、それはアタシも気になるね。なんで?」

 

 

 シービーも気になるのか同調するように尋ねた。ボク達の言葉に対してミラクルは毅然とした態度で答える。

 

 

「元から、神藤トレーナーに見てもらいたいと思って。おれから声をかけたんです。スカウトしてくれませんか?って」

 

 

「へぇ……」

 

 

「お、アタシと一緒だ。仲間仲間」

 

 

 ボクは目を細めるが、シービーは楽しそうにそう言うだけだ。

 

 

「おれのトレーナーになってもらうなら、この人がいい。ぜひこの人に受け持ってもらいたい。そう思って、昨日の夜練習場で会った時に声をかけたんです。スカウトしてくれませんか?って」

 

 

「なんでや?別に、他んトレーナーでもええんちゃうか?なんで誠司に拘るんや?」

 

 

 ボクがそう尋ねると、ミラクルは訳を話し始めた。

 

 

「あの人が、奇跡を起こしたトレーナーだからです」

 

 

「奇跡?それって……」

 

 

 心当たりは1つしかない。誠司で、奇跡といえばボクが関わっているのだから当然だ。勿論、あれの事だろう。

 

 

「はい。年末に起こった奇跡の復活劇。その立役者でもある神藤トレーナーなら、おれのやりたいこと、叶えてくれると思ったんです」

 

 

「しかしまぁ、奇跡なぁ……」

 

 

「照れ臭いの?テンポイントさん」

 

 

「別にそんなことはないんやけど……」

 

 

 あれは誠司とボクが一生懸命頑張った結果だ。まぁ奇跡には違いないが。とにかくもう少し深く尋ねてみよう。そう思ったボクは質問を続ける。

 

 

「ミラクルのやりたいことってなんや?」

 

 

 ミラクルは伏し目がちに答える。

 

 

「おれ、小さい頃から身体が弱くて。2度も生死の境をさまよったことがあるらしいんです。でも、周りの人の助けもあって奇跡的に一命をとりとめたおれは、トレセン学園に入学することができました」

 

 

「それは……随分壮絶な生い立ちやな……」

 

 

 2度も生死の境をさまようような目に遭うなんてまずないだろう。ボクはそう言うしかなかった。ミラクルは苦笑いを浮かべているが。

 ミラクルは続ける。

 

 

「だからおれ、助けてくれたみんなに恩返しがしたくて。そのためにトレセン学園に入学したんです」

 

 

「立派だねぇ」

 

 

 シービーの言葉にミラクルは照れ臭そうに頬を掻いている。だが、次の瞬間には表情を引き締めていた。

 

 

「でも、そううまくはいきませんでした。おれ、身体が弱いから、そんなに強い負荷がかけられなくて……」

 

 

「まぁ、なんとなく分かるし。見た目からして」

 

 

「キングス~?そういうんは思うてても言わんほうがええで?」

 

 

 ボクの言葉にキングスは素直に謝る。

 

 

「ウッ。ごめんなさい……」

 

 

「い、良いんですよ。気にしてませんから。それに身体が弱いのは事実ですし」

 

 

 一つ咳払いをしてミラクルは話を戻した。

 

 

「それで、焦燥を抱き続ける毎日を過ごしていました。みんなに恩返しをしたい。そのためにはレースで勝ちたい。強くなるために練習しなきゃいけない。だけど強い負荷はかけられない……。けど、それでも。奇跡を起こして、みんなに恩返しをしたい。そんな気持ちばかりが募っていきました。そんな時です」

 

 

 ミラクルは、憧れているような目で僕を見てきた。

 

 

「テンポイントさんの、あの奇跡の復活劇を見たんです」

 

 

「あれね。確かに凄かったね~あれは」

 

 

「フフン!そうだし!お姉は凄いんだし!」

 

 

「なんでキングスが偉そうなんや」

 

 

 まぁ悪い気はしない。キングスの頭を撫でておく。

 

 

「そのレースを見て、テンポイントさんのインタビューを見て。おれ思ったんです。この人のトレーナーなら、神藤トレーナーならおれのやりたいこと叶えてくれるんじゃないかって。奇跡、起こしてくれるんじゃないかって」

 

 

「そういうことかいな」

 

 

「はい。だから、神藤トレーナーが日本に戻ってきて、チームを作るって話を聞いた時本当に嬉しかったんです。もしかしたら、おれもあの人の下で走れるんじゃないかって。だから……」

 

 

「自分から売り込んだ、っちゅうわけか」

 

 

 ミラクルは頷いた。成程、そういう経緯か……。

 

 

「おれは、お世話になった人達に恩返しがしたい。そのためなら、全力で取り組む覚悟です。みなさんの迷惑はかけません!だから、おれをチームに入れてくれませんか!?」

 

 

 考え込んでいると、急にミラクルが勢いよく頭を下げ始めた!?ボクは慌ててミラクルの言葉に答える。

 

 

「ちょちょちょ!?別にそんな勢いよく頭を下げんでも!ボク等がチーム入りを認めてへんみたいやないか!」

 

 

「でもテンポイントさん睨んでなかった?」

 

 

「お前は黙っときシービー!あれは昨日の今日で誠司が別ん女引っかけとったからや!誠司を睨んでただけでミラクルを睨んどったわけやない!」

 

 

「ミスターが最低の屑野郎みたいな発言するねテンポイントさん。現実はウマ娘をスカウトしただけなのに」

 

 

「じゃかあしい!」

 

 

 ボク達がそうやり取りしていると、突然ミラクルは吹き出した。

 

 

「……ぷっ!フフッ。す、すいません。なんだかおかしくって」

 

 

「か、堪忍な?見苦しいとこ見せてもうて」

 

 

「い、いえ。でも、おれはこのチームにいていいんですか?」

 

 

 ミラクルの言葉に、ボクは答える。

 

 

「当たり前やろ?これからよろしゅうなミラクル!一緒に頑張ろうや!」

 

 

 ボクに続くように、キングス達も口々に歓迎の言葉を述べた。

 

 

「……お姉が言うなら、よろしくしてやるし」

 

 

「よろしくね~ミラクル。聞きたいことがあったら答えるよ。多分」

 

 

「そこは確信持って言えや」

 

 

「……はい。よろしくお願いします!おれ、頑張りますから!頑張って、このチームで奇跡を起こしてみせます!」

 

 

 こうして、ボク達のチームに新しいメンバーが入ることになった。残り1人。もしかしたら、すぐに見つかるかもしれない。そう期待を抱きながらボク達は親睦を深めることにした。




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