ミラクルが誠司のチームに加入してから1週間が経った。ボクは今カフェテリアで友人達とお昼を取っている。
さて、残り1人となったチームメンバーだが……。
「最後の1人、中々見つからへんなぁ……」
後1人が中々見つからないでいる。ボクの言葉に友人達が反応した。
「そうなのか?でもこの短期間で2人集まっただけでも上々だと思うぜオレは」
茶髪のショートヘアにボーイッシュな雰囲気を漂わせるウマ娘、トウショウボーイと。
「後1ってなると途端に見つからなくなるよね~。なんなんだろうねあれ~」
黒色の長い髪を後ろでひとつ結びにしたウマ娘、グリーングラス。
「やはり心理的なものじゃないでしょうか?後数人と後1人では心理的にかかる負担は違いますし」
黒色の髪をボブカットにしたウマ娘、クライムカイザー。ボクの同期で、普段からも仲が良い気の置けない友人達だ。
ボクはボーイ達とチームのことについて話している。
「シービーにミラクルと、立て続けに加入したからなぁ。そん調子でいけると思うたけど、そうは問屋が卸さへんみたいやわ」
ボクの言葉に、ボーイが驚いたように机を叩きながら反応した。どうしたのだろうか?
「マ、マジかよ!?テンさんのチームに加入したのかよシービーのヤツ!?」
「せやで。元から狙っとったみたいやけど」
「へ~。だからおきのんの勧誘も断ったんだね~」
「ハダルもですね。まぁリギルも断ってたので大体察しはついてましたけど」
ボクの言葉にグラスとカイザーが納得したように頷いている。ただ、ボーイだけは違ったみたいでかなり落ち込んでいた。
「ちくしょー!一緒のチームで頑張りたかったのにー!なんでだよシービー!」
「諦めぇ。そもそもシービーの性格上リギルの育成方針とは合わんやろ」
「そうだね~。どの道ボーイちゃんのリギルには加入しないだろうね~」
「そうですよ。とっとと諦めてください。見苦しいですよ」
「カイザーだけ酷くねぇか!?」
ボーイがそう主張するが、カイザーはどこ吹く風だ。ボーイの言葉を無視してカイザーがボクに質問してくる。
「ところで、ミラクルさんってどんな人でしょうか?私は会ったことがないですけど」
「ミラクルはそうやなぁ……ボーイとは違った感じの、ボーイッシュな子やな。ちょい儚げな感じがする子や」
「そうなんだ~。今度紹介して~。どんな子か気になるからさ~」
「ええで。今度会うた時にでも紹介したるわ」
そんな話をしていると、ボーイがボクに尋ねてきた。
「でもさ、テンさんのネームバリューがあればチームに入ってくれる子って結構いるんじゃねぇの?テンさん滅茶苦茶人気じゃん」
「そうだね~。テンちゃんの人気を考えると入部希望の子ってすごく多そうだよね~」
「そういう子っていないんですか?」
「あ~……まぁ、確かにそういう子はおったけど……」
一応、誠司がチームを持つってなった時からそういう子がいないこともなかった。というよりも、かなり多かった。ボク目当ての入部希望者が。何なら列を形成するぐらいにはいた。
「やけど、そういう子は誠司が事前に弾いとるんよ。ボク目当てで入部するんやったらお断りやって。やから今は全然やで」
「理由はまぁ、想像つきますけどなんでですか?」
カイザーの疑問にボクは答える。
「単純にそういう子を面倒見る余裕はないからやな。ボク目当てで、なおかつ明確な目的があるんやったら入部を許可するってボクの口から言うたで」
「ま~そうだね~。テンちゃん目当てで入部しても~後が続かなかったらその子のためにならないもんね~」
「納得の理由だな」
でも慕われて悪い気はしない。
次いで、今度はボーイがボクに尋ねてきた。
「じゃあさ、シービーはなんで誠司さんのチームに加入したんだよ?マジで気になるんだけど」
「う~ん……。なんか、誠司なら自分らしく走らせてくれる思うてたからとか言うとったで」
「スピカでも走らせてくれると思いますけどね。ハダルでも多分そうですけど」
「まあ~シービーちゃんって自分の考えで動いてるから~他にも考えがあるんだろうね~」
それは確かにある。シービー自身、とある目的があると言っていた。その目的は、見当もつかないが。後は、これはボーイの手前凄く言いにくいことなのだが……。
「後……これ、すんごい言いにくいんやけど……」
「なんだよテンさん。オレの方を見て?なんかあったのか?」
「ちょっと気になるね~。何々~?」
ボクは、意を決して伝えることにした。シービーがこの前言ってたことを。
「リギルだけは絶対にゴメンやって……」
そう言った瞬間、ボク達の間に静寂が訪れた。長いようで短い沈黙の時間。それを破ったのは、ボーイの悲痛な叫びだった。
「なんでだよォォォォォ!?なんでリギルそんなに嫌なんだよ!オレなんもしてないじゃん!?」
「落ち着いてくださいボーイさん。熱心に勧誘しすぎたんじゃないですか?」
カイザーが落ち着かせるようにそう言うが、ボーイは止まらなかった。
「別に無理な勧誘なんかしてねぇって!ち、ちょっと熱が入り過ぎたこともあったけど……ッ。さすがに変なことはしてねぇぞ!?」
「でも~じゃあなんでシービーちゃんがボーイちゃんを嫌ってるのかって話になるよね~」
グラスの言葉に、ボクは反応する。
「あ、グラス。別にシービーはボーイんこと嫌っとるとかではないで。むしろ、割とボーイのことは話しとるよ」
ボクの言葉に、ボーイは一瞬嬉しそうな表情を浮かべるがすぐに疑問に満ちた表情に変わる。
「そうなのか!?え、じゃあなんで一緒のチーム嫌なんだよ!」
「それは分からへんけど……。でも、嫌われとるとかではないからそこは安心してもええで」
「え~?じゃあ~リギルが嫌な理由なんて~束縛されるからぐらいしか思いつかないんだけど~」
「それが大半の理由なんじゃないですか?さすがにこればっかりはシービーさん本人に聞かないと分からないことですけど」
カイザーの言うことももっともだ。こればっかりはシービー本人に聞かないと分からないことである。
「ま、分かんねぇこと考えても仕方ねぇか……。でも、残念だな~。シービーと一緒のチームで走りたかったなぁ……」
「えらいシービーを気にかけとるやん。なんでや?」
ボクの疑問に、ボーイは即座に答える。
「なんかさ~こう、なんていうのかな?……とにかく一緒に走ってみてぇんだ!なんとなく!」
「なにそれ~?」
「まぁいいんじゃないでしょうか。それに、何となく他人のような気がしない。そんなところじゃないですか?ボーイさん」
「そうそうカイザー!まさにそれ!」
「そういうもんか」
まぁボーイはシービーを特に気にかけているのは、クインと一緒のようなものだろう。クインもシービーを気にかけているし、シービーもクインには懐いている。よく一緒にいるのを見かけるし。
そろそろ話題も尽きそうな頃。唐突にカイザーが話を切り出してきた。
「そう言えばテンポイントさん。1つよろしいでしょうか?」
「どしたんカイザー。なんかあったんか?」
カイザーは少し言いにくそうにした後、ボクに尋ねてきた。
「いえ、神藤さんのことを下の名前で呼んでいたので。前はトレーナーとか君とか言ってましたよね?」
「あぁ。そうやな」
カイザーの疑問にボクは答える。
「別に深い理由なんかないで。誠司は誠司やしな」
「本当に~?なんかあったんじゃねぇのテンさん?」
凄いニヤついた表情でボーイが尋ねてくる。シンプルにイラっと来た。
「なんやその顔。シバくぞ」
「いやいや。だってさぁ、今までトレーナーって呼んでたのに名前呼び……。これはなんかあったにちがいねぇ!さぁキリキリ吐けテンさん!」
「面白がっとるとこ悪いけどなんもないで」
「本当に~?」
グラスも悪ノリしてきた。本当に何なんだろうか。
「あんなぁ。そもそもボクと誠司の付き合いも長いんやで?今まで名前呼びしてへんかったのがおかしいだけやろ」
ボクの言葉にボーイ達は納得したらしい。というか、最初から揶揄う目的で聞くつもりだったのかあっさりと引き下がった。
「ま、確かにそうだよな。悪いなテンさん」
「そうだね~。2人とも仲いいもんね~」
「確かにそうですね。テンポイントさんと神藤さん普段から仲良いですし」
そう言われて悪い気はしない。内心喜ぶ。
「じゃあさ。今度からはチームになるわけじゃん?誠司さんがテンさんを見る時間は減ると思うけど、その辺テンさんはどう思ってんの?やっぱ寂しかったりすんの?」
「う~ん……」
ボーイの質問にボクは考え込む。まぁ確かにそうなのだが、あまり心配していないというのが現状だ。というのも。
「誠司の一番ってボクやからなぁ。確かに寂しゅう思うけどそれが変わることは絶対ないし、あんまり気にしてへんで」
ボクの言葉に、ボーイ達は呆れたような視線を向ける。なんかおかしなこと言っただろうか?
「どっから湧いてくるんだよその自信」
「凄い自信だね~」
「あながち間違ってませんけどね。神藤さんってテンポイントさん大好きですし」
「「それは言えてる」」
カイザーの言葉にボーイとグラスは声を揃えた。声にこそ出さなかったが、ボクもそう思っている。
時計を確認すると、もう少しで午後の授業が始まる時間だった。ボク達は急いでカフェテリアから撤収する準備を始める。
「もうこんな時間か。テンさんの海外遠征の話とかもっと聞きたかったんだけどなぁ」
「それは後でもええやろ。時間はたっぷりあるわけやしな」
「そうだね~。久しぶりに今度の休日みんなで遊ぼうよ~。クインちゃんとかも誘ってさ~」
「良いですね!じゃあ私が気になってる映画があるんですけど……」
「ゴメン、カイザー。さすがに見る映画はみんなで選ばせてくれ。頼むから」
ボーイの切実な言葉に、カイザーは渋々ながら了承する。
この日常もかなり久しぶりだ。ボクは海外遠征に行っていたので余計にそう感じる。レースのヒリ着くような空気もいいが、こういった他愛もない日常も悪くない。
チーム結成に必要な残りのメンバーは1人。誰が加入するのだろうか?少し楽しみである。
アニメブルーロックの新OPすこです。