転生大賢者の冒険   作:怪盗218

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11話 原作開始 9年前 side ライナー②

side ライナー 

 

「よう、思ったより元気そうじゃないか」

 

「なんだ、ストーン。仮病か?」

 

「ずいぶん痩せやがって。俺への当てつけか、おい?」

 

俺は自警団の仲間であり、かつては同じ冒険者仲間であったスティーブとジョンと一緒にストーンを見舞いに来ていた。階下にはストーンの奥さんと息子のルッツがいる。その方が、俺たちがゆっくり話せるだろうと気を利かせてくれたようだ。

 

「……はは、何言ってんだよ。これでも昨日まで痛みでひーひー言ってたんだぜ。それと、ジョン、お前のその突き出た腹は単純に食い意地が張りすぎてるせいだよ、全く」

 

ストーンは弱弱しい笑みでそう返してきた。俺たちのパーティーで最も身軽で、軽快な動きを身上としていたこいつが今やこんなにやせ細ってしまっている。俺はこの世の不条理を内心嘆いた。

 

「……早く戻ってきてくれよ。お前が戻ってこないと書類仕事がたまるいっぽうだぜ。お前だって、戻ってきてそうそう書類の山に埋もれたくはないだろう?」

俺は精一杯、心のうちを悟らせないよう、話しかけた。

 

「……ああ、そうだな。お前たちに任せておくと、団員の食う飯まで満足に用意できなくなりそうだ」

 

そうだよ、お前は俺たち全員の財布を握っていたんだ。頼むよ、本当に。何とか戻ってきてくれよ。

 

「なあ、ストーン。お前昨日まで痛みがあったみたいなことを言ってたけど、今は大丈夫なのか?」

スティーブがストーンにそう問いかけた。

 

「ん?ああ、今も痛みはあるが、昨日まで程じゃあない。……昨日な、息子の友人のポップ君が見舞いに来てくれてな。これくらいしかできませんけどって言って、回復呪文(ホイミ)をかけてくれたんだよ。それが妙によく効いてな……。本当に痛みがすーって引いていったんだ」

ほう、ポップ……。そういえば、ストーンの息子のルッツ君とポップ君は同い年で、よく一緒に遊んでいたな。

 

「ポップっていやー、教会に時々手伝いに来ているあのポップか? なんか最近ネズミの大軍を始末したとかで、小さな賢者とか呼ばれてるんじゃなかったっけ?」

 

「ああ、聞いたことあるぜ。2週間くらい前だろ。確かハイネのところのネズミを一網打尽にしたっていう……」

 

「違うぞ、ジョン。一網打尽にしたのは村中のネズミだ。あの量のネズミをすべてハイネのところのだなんていうと、ハイネに心外だ! と喚かれるぞ」

俺は糧食屋の親父の名誉のために、ジョンの勘違いを訂正してやった。俺は実際にあの時現場にいたからな。よく覚えているさ。

 

「しかし、おかしいな。回復呪文(ホイミ)では病気は治らないって聞いているが……?」

スティーブがそう疑問を投げかける。確かにそうだ。回復呪文(ホイミ)は回復魔法だが、回復魔法では病気は治らない。それは子供でも知っている常識だ。

 

「ああ、治ったわけじゃあないさ……。ただ、痛みが引いていったんだ。本当だぜ?」

そうか、治ったわけじゃあないのか。そりゃあそうだよな。回復魔法で病気を治療するなんて聞いたことがないからな。でもこいつから痛みを取り除けただけでも、大したもんだよ、ポップ君……。ありがとうな。

 

「……あの子は良いな。自警団に入ってくれると、きっと戦力になってくれる。……ライナー、勧誘してみたらどうだ?」

 

「確かにな。だが、あいつはまだ6歳だぞ。いくらなんでも早すぎるぜ」

 

俺はストーンにそう返答しながらも、実力だけなら今すぐにでも自警団でやっていけるだろうなと思っていた。いや、おそらくやっていけるなんてレベルじゃないはずだ。体力的な課題はあるだろうが、あいつにはあの圧倒的ともいえる魔法力がある。

 

「そうそう、それに親父のジャンクが何ていうか。下手にジャンクを怒らせてみろよ。俺たち自警団の武器の調達に支障が出るぜ。ライナーのロングソードはジャンク特製のやつだろう?」

 

そうだ、俺の鋼のロングソードはジャンクが打った品だ。あいつの腕は確かだ。長い冒険者生活時代でもこれほど良質の武器にはなかなか出会えなかった。

 

「ふふ。確かにジャンクは手ごわいな……。なら、もう少し大きくなってからでもいい。……あの子は、自警団の大きな戦力にきっとなってくれるはずだ。……ライナー、覚えておいてくれ」

 

「ああ、分かったよ。あの子の実力は俺もよく知っている。きっと自警団に誘ってみるさ。心配するな。それより、お前は早く体を治せよ」

ポップ君のことは俺にも考えがある。だが、それよりもまずはストーンだ。俺はまだストーンが復帰することを心の底から願っているんだ。

 

それからは、ストーンの体調を考慮して、2言、3言言葉を交わした後、俺たちは部屋を辞去することにした。

 

「……なあ、ライナー。ケネディを鍛えるといい。あいつはそっちの方の筋が良い……」

 

「……分かった」

 

帰り際にストーンが俺に声をかけてきた。何の筋が良いか、など聞く必要もなかった。俺はストーンの本心を悟り、思わず顔が歪んでしまった。だから俺は、やつに顔を向けずにただ一言だけで答え、部屋を出た。スティーブとジョンは振り返って俺の顔を見ようとはしなかった。相変わらずこいつらは優しいな。

 

俺にその知らせが来たのは、それから2週間ほど過ぎたある日の夕刻だった。団の詰所でケネディを相手に帳簿の書き方を指導していたところだった。

 

「団長! ストーンさんが!」

 

団の若手が詰所に駆け込んできた。俺は覚悟していた時が来たのを悟った。

あいにくとスティーブとジョンは村の西部の方まで巡回に行っている。俺は2人を待つ暇はないと判断し、外套を手に、ストーンの家にかけ出した。

 

ストーンの家は妙に静かだった。扉は空いていたので中をのぞくと、2階に人の気配がする。ストーンの病室だ。俺はゆっくりと階段を上がった。

 

途中まで階段を上がったところで、やつの部屋の前で、壁に背を当ててうつむき加減でいるポップ君に気が付いた。その表情を見て、俺は理解した。もうその時が来たんだ。今、ストーンは家族水入らずの時間を過ごしているんだなと思った。

 

邪魔をしてはいけない。もう俺はストーンと十分話をしている。俺が実家を出てから20年近く、ほとんどの時間をやつと過ごしてきた。もう今更、話し足りないなんてことはないさ……。

 

俺はゆっくりと階段をおり、ストーンの家を出た。そして、やつの病室のあたりを見上げ、俺はつぶやいた。

 

「ストーン、先に行って待っていろ。俺はお前の家族やポップ君がこれから成し遂げることを見届けてから、お前のところに行ってやる。土産話を楽しみにしているんだな」

 

遠くからスティーブとジョンが駆けてきている姿が、かすんだ目からわずかに見えた。

 

 

「ガァオー!!!」

 

異形の魔物、ライオンヘッドが雄たけびを上げる。

 

その声に驚いたのか、一斉に周辺の木々から鳥が羽ばたき飛び立っていく。俺は今回の森林内での巡回の失敗を悟っていた。

 

今回は初手から大きく失敗していた。

 

斥候役を任せていた団員の力不足もあっただろうが、一番の失敗は、俺が敵戦力の想定を甘く見積もったままに森に立ち入る判断をしたことだった。ストーンが死んでから約2週間、俺はどこか任務に対して上の空で、それが今になって、つけという形で降りかかってきている。

 

きっかけは、森の入口で血だらけになって死んでいる鹿を発見したところからだった。牙の大きさなどから、この森の奥地に生息しているごうけつぐまと判断した俺は、こいつを森の奥地に退却もしくは討伐するつもりで森に入った。

 

しかし、実際は、ごうけつぐまではなく、より脅威度の高いライオンヘッドだったというわけだ……。

 

ああ、魔物の生態に精通していたストーンがいてくれたら、こんな間違いなど起きなかっただろうに……。

 

6本足のライオンヘッドを、4本足のごうけつぐまと間違えるなんて。俺も焼きが回ったな。

 

ライオンヘッドによる奇襲を俺たちは防げなかった。

 

いきなり右手の藪から飛び出してきたやつは、まず前衛の右側面を務めていたロックの右わき腹を鋭い爪でえぐり、なぎ倒した。

 

ロックは鎖帷子を着込んでいたんだが、やつの爪には何の役にも立たなかった。鉄をまるでバターを切るように切り裂いた。そのまま倒れたロックの首をかみ切ろうと飛び掛かってきた所を、俺は剣を横からやつの鼻面に突き出し、すんでのところでやつを後退させた。

 

その隙に俺は、すぐさま撤退しつつ戦う撤退戦の指示をハンドサインで団員に示した。後退したライオンヘッドは今すぐにでもとびかかってくる体勢をとっていたが、スティーブの弓がやつの足元に速射で2本、3本と突き刺さる。悔しげにさらに後退するライオンヘッドだったが、なんと奴はそのまま右方向に一度大きくジャンプをしたかと思うと、木を足場にして一瞬で俺たちとの距離を詰め飛び掛かってきた。

 

狙いはスティーブか! 

 

スティーブはとっさに手に持っていた弓で防御態勢を取ったが、そんなものではやつの攻撃を防げるはずがない。

 

「避けろ!」といった俺の声はむなしく響き、スティーブの弓は一瞬で引きちぎられ、首を爪でさっと撫でられたかと思うと、スティーブの首から鮮血が飛び出した。

 

「――このやろう!!」

俺は、崩れ落ちるスティーブと入れ替わりになるようにやつの前に飛び出した。

 

やつは次の目標を俺に見定めたのか、その大口をあけて俺に飛び掛かってきた。俺はやつに馬乗りにされ地面に倒れこんだが、やつはそのまま俺の首をかみ切ろうと大口を開けて顔に迫ってきた。

 

俺はとっさにやつと俺の顔の間に、ロングソードをねじ込ませた。

 

すると、やつはそのロングソードを自慢の牙で砕き割ることにしたらしい。やつはそのまま剣をかみ砕こうとその鋭い牙で噛みついてきたが、どうにか俺のロングソードの強度がやつの牙のそれを上回ったようだ。

 

「――はっ。さすがだよ、ジャンク!」

 

やつは、自慢の牙で剣を砕けなかったことに怒りを感じたらしく、いらだたしげに同じ行為を繰り返す。

 

俺はその剣を打った武器屋のジャンクに感謝し、その隙に俺はとっさに地面に転がっていたスティーブの矢を拾い、やつの目をめがけて矢を突き入れた。

 

「これでも、喰らえ!!」

 

その効果は劇的だった。

 

「ギャアォー!!」

悲鳴を上げて俺から離れるライオンヘッド。すぐに俺は仲間に指示し、遠距離攻撃手段のあるメンバーがやつめがけて攻撃を放った。

 

同時に、ロックとスティーブを体格のいい隊員に担がせ、一足先にこの場の撤退を指示した。やつの体からはいくらか刃物が付きだしており、そこから出血を始めている。

 

俺はやつがこれで撤退してくれないかと期待したが、次の瞬間その期待は裏切られた。なんとやつは怪我を負っていない方の目で、俺たちの方を憎々しげに睨みつけ、呟いた。

 

「……閃熱呪文(ベギラマ)……」

 

その言葉がやつの口から紡ぎだされるやいなや、やつの口から、閃熱呪文の中級にあたる閃熱呪文(ベギラマ)の高熱が発射される。閃熱呪文(ベギラマ)は人間でもなかなか習得できる者が少ない、高威力の呪文だ。これを喰らってはいけない。

 

「伏せろー!!」

 

俺はとっさに叫びながら、その閃熱呪文(ベギラマ)の射線上にいた仲間を突き飛ばした。かろうじて閃熱呪文(ベギラマ)は俺の右腕をかすめ、さらに後方に過ぎ去っていく。

 

森が一瞬閃熱呪文(ベギラマ)の高熱によって赤く照らされ、その直後、閃熱呪文(ベギラマ)の射線上にあった木々から炎が立ち始めた。俺も多少のダメージを負ったが、今はそれを気にしている場合じゃない。辺りからは炎が立ち上がり、煙が充満し始めている。

 

やつは炎をバックに俺たちを見下ろすように、その6本の足で地面に立っていた。

 

そして、片目をらんらんと光らせながら俺たちを睨みつけている。

 

いかん、こいつはまずい……。何があっても俺たちを殺しつくすまでは気が済まんと、その目が語っていた。やつは不意に前傾姿勢になり、一瞬の後、俺たちの方に向かって突進をした。

 

声を上げる暇もないまま、一番近くにいたリオがやつに突き飛ばされ、背後の木に激突した。

「……ガハッ!」

血を吐きながらそのまま崩れ落ちるリオ。

 

俺はその様子を横目に見ながら、直ぐに立ち上がり、やつと俺との間に煙が挟まれる位置にすばやく移動した。

 

そして、やつの注意が一瞬俺からそれたその瞬間に、やつの鼻先に迷い草を放った。

 

うまくいった、どうにか煙を煙幕代わりにして、やつに迷い草を直撃させることに俺は成功した。これで時間を稼げるはずだ。

 

俺の迷い草は市販されているものとは違い、俺の長年の冒険者生活で身に付けた技能で作成した特別製だ。これが命中するといかに強力な魔物とはいえ、最低1分はまっすぐに立てなくなるはずだ。

 

俺は、この機を逃しては全滅すると判断し、大声で「今すぐ撤退だ!!」と叫んだ。

 

倒れているリオは比較的怪我の軽い隊員に背負わせ、俺は最後尾、しんがりを務めた。効果があるか分からないが、俺は必死でやつの足止めをするための罠をいたるところに設置しながら駆けた。仕掛けるための罠は十分用意していた。

 

……良かった、最近腑抜けていたとは言っても、長年しみついた冒険者時代の準備周到さは自然と身体に刻み込まれていたようだ。

 

どれほどの時間を駆けていただろう。荒い息を吐きながらみなよく走っている。少しずつ明るさが増してきたようだ。森の出口に近づいたんだろう。先頭を走っていた団員が、「抜けました!」と声を上げる。

 

俺達は森の出口に置いていた荷馬車にどうにかたどり着くことができ、特に重傷を負っている3人を荷台に横たわらせ、全力でランカークス村を目指して荷馬車を出発させた。

 

ランカークス村の教会には幸いにもマイル神父とマリーシスターがいてくれた。

 

だけど、まだ足りない。

 

俺は怪我を負っていない隊員をジャンクの店に走らせた。

 

もちろん目的は、ポップ君にも協力を依頼するためだ。彼ならきっと団員を救うために来てくれるはずだ。首を切り裂かれたスティーブが最も重傷のように見える。

 

頑張れ、スティーブ。まだストーンのところに行くには早すぎるだろう! 俺は必死で団員の無事を願っていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

今日は手紙送りの日だ。

 

ランカークス村だけではなく、近隣の村からも多くの人が村の隣を流れている川、セーヌ川のほとりに集まっている。

 

この規模の祭りは、イベントの少ないこの村にとっては年に1度と言うところだ。ライオンヘッドによる襲撃から1週間ほどが経った。

 

俺達自警団はあの襲撃事件の3日後には、この祭りのために王都からやってくる楽団の警護に出発し、無事昨日村にたどり着いたところだった。

 

妻のスーザンは、あんなことがあったばかりだったから、俺に村の外に出て行かれることに不安なようだったが、これは任務だからな。

 

仕方がないさ。

 

村長からも随分と心配されたな。まあ、帰りは別の町の自警団が来ることになっているから、今日が終わればしばらく宿泊を伴う遠征はない。ゆっくり過ごさせてもらうさ。

 

それに、この楽団、名前は『アルルカン楽団』というんだが、亡くなったストーンがファンで、この楽団の護衛任務に着ける日をやつが楽しみにしていたんだ。

 

だから、俺はやつの代わりという思いでこの楽団の護衛任務は行いたかったんだ。スティーブとジョンも同じ思いだったようだ。スティーブなんか、命の危険があったほどの大けがを負ったんだから、今回はやめておけと言ったのに、護衛任務に就くと言って聞かなかった。

 

全く困ったものだ。

 

 

 

今日は俺は非番だ。自警団のメンバーの半数は祭り会場周辺の治安維持を行っているが、日頃働きすぎるきらいがある俺を気遣ってか、団員が今日ぐらいは休むように言ってきた。

 

だから、俺は今スーザンと一緒に祭り見物をしている。

 

「さっきのアルルカン楽団の演奏、凄くよかったわね。私、リュートの音色が忘れられないわ」

 

「そうだな。俺もそう思うよ」

 

「くすくす……。よく言うわよ。後半なんて、あなたグーグー寝ていたじゃないの」

 

「そうか? 気のせいだろう? 俺はちゃんと聞いていたぞ」

 

「まあ、そういう事にしておいてあげるわ」

 

確かに後半の記憶は無かったが、どうにか許されたらしい。スーザンは俺の腕に自分の腕をからませながら楽しそうに周りを見渡しながら歩いている。あまり外ではべたべたするなと言っているんだが、一向に改善する気が無いらしい。困った奴だ。

 

俺達は時折気になる出店を覗きながら、会場内をねり歩き、祭りを楽しんでいた。

 

しばらくそうして過ごし、そろそろ暗くなろうかという頃だった。

 

「そろそろ帰りましょうか。ふふ、こんなにゆっくりあなたと過ごせたのは久しぶりね」

 

「ああ、そうだな。また来よう……、ん? 何だ?」

 

今日の警護に当たっていた自警団の一人、ルークが慌てた様子で走ってきた。

 

「お休みのところ、すいません、ライナー団長!」

 

「構わない。どうした、何か事件か?」

 

「はい、隣村の人間から聞いたのですが、糧食屋のランツのところの息子が一人で森に入って行ってしまったそうなんです。それで、その後を追って、ストーンさんの息子さん達が3人ほど続いて森に入って行ったと。おそらくランツのところの息子を連れ戻しに行ったんだと思うんですが、今、森は……」

 

「ああ、今の森は普通じゃない。いつやつが現れても、おかしくない状態だ」

 

俺は、ルークの危惧をすぐに察した。そう、今の森は、何やらおかしな気配がしている。当然ライオンヘッドの事も最大限警戒すべきだが、それだけではない、何かを感じる。

 

「すぐに俺も行く。その後から入った子供の中には、ポップ君もいるな?」

 

「はい、いるそうです。」

良かった。彼がいるのなら、うまくすると最悪の事態は免れるかもしれない。

 

「スーザン、すまないが俺はここで……」

 

「ええ、分かったわ。でも、……くれぐれも気をつけてね」

 

そう言いながらスーザンは俺に顔を寄せ、軽く口付けをしてきた。おいおい、ルークが真っ赤になっているじゃないか。そういう事は家の中でしろよ、全く。

 

俺は詰所に立ち寄って、身支度を整えた後、森に向かった。森の入口付近にはすでに自警団のメンバーが集まっていた。

 

「隊長、お休みのところすいません。ストーンさんの所のルッツも関係しているってことだったので、隊長の耳に入れておいた方がいいだろうと思いまして」

 

「ああ、構わないさ。村の子供は、皆ランカークス村の宝だ。何としても助け出さないとな」

 

「はい。子供たちが侵入した地点はここだと思います。ケネディが草の乱れを発見しました」

 

「そうか、分かった」

 

俺は、指し示された地点に顔を近づけた。確かに最近踏み荒らされた跡があるな。しかも子供の足の大きさだ。確かに、ここから入っていったと考えて間違いないだろう。

 

「この場所から入ったのなら、ランツの息子、確かジーンだったか? 今の季節から考えるとクコの実を取りにいった可能性が高いな」

 

「そうだと思うぜ。ストーンが前に、子供たちを引き連れてクコの実を採りに行った時の事を話していたからな。あれは確かこの辺りから侵入したはずだ」

 

ジョンが俺の考えに賛同する。よし、そうだとすると……。

 

「よし、目的地が分かっているのなら大勢で向かうのは逆に危険だ。4人ほど選抜して速攻で調べてこよう。ジョン、ケネディ、ルーク、一緒に来てくれ。他のものはここでそのまま待機。後詰に備えていてくれ」

 

「分かった(分かりました)」

 

それぞれが返事を返してくれる。さあ、早くやつらを回収して、それから説教だ!覚悟していろよ、お前ら。

 

「隊長! 森から何か来ます!」

 

俺達がさあ、これから侵入しようとしていた時だった。森の方を警戒していた団員が声を張り上げた。

 

「全員、警戒態勢! 盾持ちは前へ!」

 

「はい!」

 

ちぃっ、これからっていう時に! だが、まずは接近する何かに対応せねばならない。俺達は緊張しながら、その何かが森から出てくるのを、息をひそめながら待っていた。

 

すでに辺りは薄暗い。夜目が聞く魔物だと苦戦が予想されるな。俺がそんなことを考えていると、「あれ、おっちゃん達、どうしてここに?」と素っ頓狂な声を上げて1人の子供が現れた。この体型は見覚えがある。

 

この子が最初に問題を起こしたジーンだな。

 

そして、直ぐに2人目、3人目(3人目はルッツだ。)と子供が続き、最後にポップ君が現れた。ああ、こいつはしんがりを務めていたんだな。

 

皆、俺達を見て目を丸くしていた。ポップは(悪いが、もう君に君付けはしないぞ)、いたずらが見つかった子供のように、ばつの悪い顔をしていた。

 

お前の考えていることは分かるぞ。どうにか俺達にばれずに事を収めようとしていたんだろう。だが、そうは問屋がおろさんからな!

 

やはりというかなんというかこいつら(特にポップ)は、俺達の説教を最小限の被害で切り抜けようとしていたから、その頭を、わし掴みにしてやった。

 

だいたい、俺は本来なら今日は非番だったんだからな。スーザンとしっぽりと久しぶりの休日を過ごすつもりだったんだ。

 

それをこいつは……! 俺は半ば八つ当たりのような怒りで、こいつの頭を全力で締め上げてやった。どうだ、思い知ったか!

 

しかしまあ、こいつのおかげでジーンやそのほかの子たちも無事に戻って来れたんだろうなということは何となく分かる。よくやったよ、小さな賢者君。

 

だからと言って、俺のスーザンとの楽しい休日をつぶした恨みは忘れてやらんがな!

 




初めての戦闘シーンの描写がポップではないという。良いのかな、これ・・・・・・。
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