「マ、マァム、メルル……。よ、よくここが分かったね……?」
俺は冷や汗をだらだらとかきながら背後を振り返り、俺の予想の通りだった2人に対して引きつった笑みを浮かべた。
「そうね。あなたの行きつけのお店の名前は、この間テランであなたの口から聞かされていたから、見つけるのは簡単だったわよ。……あなたの詰めの甘い偽装工作も含めてね」
そう言って、既に何人か手にかけていると言われても全く驚かない鬼気迫る顔を、俺に向けるマァム。
「ち、ちなみに、どうやって見抜いたか聞いても……?」
そうなのだ。俺は、部屋を抜け出す際自分のベッドの中に詰め物を置いてシーツを被せ、あたかもそこに人が眠っているように見せかけていた。もちろんそれだけではなく、その上、隣のベッドでシーツを蹴飛ばし腹を出して寝ていたダイに
マァム達は、俺の姿がベッドの上にあればそれ以上調べまいと踏んだ俺の完璧な偽装工作だったはずなのに、何故……?
「簡単よ。ポップ、あなた
――!? しまった! そうだ、確かにバラン戦ではそこまで考慮に入れて
「さあ、帰るわよ、ポップ。今度という今度は、絶対に許さないわよ」
「帰ったら朝までお説教ですよ、ポップさん……!」
俺は彼女達に両腕を取られ、哀れドナドナの如く連行されようとしていた。ああ、どうして俺はマァム特効の
しかし……。絶望の表情で連行されつつあった俺に、突如救いの神が手を差しのばしてくれた。
「ちょっと待ちなさい、あなた達。いきなり店に来るなり、それはないんじゃないかしら。いくら彼のお知り合いでも、ちょっと強引すぎるわ。彼が一体何をしたって言うのかしら?」
そう言って俺に助け船を出したのは、クラリスだった。問いかけられると思っていなかった2人は、びっくりした様子で口を開いた。
「な、何をしたもなにも、私達に隠れてこんな女性の露出の多い店に来て、夜遊びするなんて……」
「……そうです。それに、こんな誘惑の多い場所で、何かポップさんが間違いを起こしてはいけませんから」
「あら、2人とも彼の事を全く理解していないようね。そんな上っ面でしか彼の事を見ていなくて、彼の恋人を気取るのはどうなのかしら?」
「ちょっ、いきなり何を言っているんですか、クラリスさん!?」
2人に対するずいぶんな言葉に焦った俺は、クラリスの口を慌てて止めようとした。しかしクラリスはそんな俺の制止の手をするりと躱して、逆にカウンター越しに身を乗り出し俺の耳に口元を寄せて囁いた。
「……
次の瞬間、俺は甘美な夢に囚われ知らず意識を手放していた。
「え!? ちょ、ポップ! だ、大丈夫!?」
「ポップさん!? 急にどうしたんですか!?」
突然カウンターに突っ伏すように倒れたポップを心配して、マァムとメルルがその肩を叩く。
「ふふ。大丈夫よ、ポップ君は私の
慌てる2人に、落ち着いたそぶりのクラリスがいたずらっぽく微笑む。
「……あ、あなた、誰なんですか? どうしてこんな事を……」
「ポップさんのお知り合い……ですか? 先ほども何やら親密な様子に見えましたが……」
訝しげに伺う2人に対し、クラリスはポップの左右の椅子を指し示した。
「少しあなた達と話がしたかっただけよ。彼のためにもね。さあ、せっかく酒場に来たんだから、1杯くらい飲んでいったらどう? 2人とも、もう成人しているんでしょう? 最初の1杯は私が奢ってあげるわ。あ、私の名前はクラリスよ。よろしくね」
マァムとメルルは互いに顔を見合わせ、どちらともなく席に着いた。
クラリスは慣れた手つきで銀色のシェイカーを何度か振った後、彼女達の前に置かれたグラスにその中身を順に注いでいった。
このような場に来るのが初めてだったマァムとメルルは、その流れるような無駄の無いクラリスの手つきを食い入るように見つめている。
「はい、マァムさんと言ったわね。あなたには炭酸強めの果実酒を。メルルさんは、ロウの実のすりおろしが入った果実酒をどうぞ。どちらもアルコールは低めにしてあるから、飲みやすいと思うわよ」
マァムのグラスに注がれた果実酒は、微細な気泡がシュワシュワと下から浮かぶ様子が涼しげな薄い青色をしたカクテルだった。そしてメルルの前には、グラスの縁にロウの実が一切れ刺さったトロピカルな雰囲気の薄いピンク色のカクテルがあった。
「ど、どうも……」
「ありがとうございます……」
カウンターに突っ伏して眠っているポップを挟んで左右の椅子に座ったマァムとメルルが、戸惑いつつも好奇心を隠せない様子で、果実酒の入ったグラスを手に取る。
恐る恐る口にグラスを運んだメルルが「……わ、飲みやすくて、美味しいです、これ」と思わず感嘆の声を上げると、マァムも「本当……。私のはさっぱりしていて、喉が洗われるみたい。とっても、気持ちが良いわ」と呟いた。
「そう、気に入ってくれたようなら良かったわ。でも、飲みやすくてもお酒はお酒よ。ゆっくり、味わうように飲んで。ポップ君が目を覚ました時に、2人が酔いつぶれていたら私が彼に怒られちゃうわ」
そう言って微笑んだクラリスは、自身のグラスを口元に運び喉を湿らせた。そんな様子を見つめていたメルルが、意を決したように声を上げた。
「あ、あの、クラリスさん!」
「あら、何かしら?」
「さっきの、ポップさんの事を理解していないってどういう意味ですか?」
「あ、それは私も聞きたいわ。私達、これでもポップと旅をしているんだから、彼の事は少なくともあなたより知っているつもりよ」
2人にそう尋ねられたクラリスは、視線を僅かにポップの顔に向け、静かに息を吐いた。
「ふー……。言葉の通りよ。あなた達、彼がただこんな格好の女性とお酒を飲む事だけが目的で、この店に来ているように思っているでしょう?」
「……え、ええ。……違うんですか?」
マァムの視線がクラリスの扇情的なドレスに向かうが、クラリスはその視線をどこ吹く風と受け流す。
「大違いよ。彼、ずっと店でこの町の色んな情報や明日の大会の出場者の情報を得ようと、色々な人に聞き回っていたのよ」
「え……。ど、どうして、ポップさん、そんな事を……」
「さあ? 彼なりに不穏な気配を感じたからじゃないかしら?」
メルルは、そのクラリスの言葉に昼間のポップとのネックレスのやり取りを思い出した。ポップさん、もしかして近くに潜んでいる魔物について調べようとしていたのかな……。
自問しているメルルから視線を離し、クラリスはマァムに顔を向けた。
「あなた、その格好を見るところ、明日の大会の出場者でしょう?」
「え、ええ……。それが何かしら?」
「彼、明日の大会の出場選手の中に怪しい人がいないかどうかを、一番気にかけて調べていたわよ。それって、明日対戦するかもしれないあなたを、心配しての事じゃないのかしら?」
「――!」
マァムは、クラリスのその言葉に二の句が継げなかった。メルルから、危険な魔物が潜んでいる可能性がある事は、夕食時に聞いて知っていた。だけど、ポップのようにどこに潜んでいるかとか、それをどうやって調べようなどとは、考える事すらしなかった。私はどこかでまた、ポップに任せていたら大丈夫と考えていたのだろうか。その甘えが、あれほどの後悔を招いたというのに……。
「彼……、賢者と呼ばれているからには、あなた達勇者
マァムとメルルは、クラリスの言葉をただ黙って聞いていた。
「情報っていう物は、幅広い人脈を武器に入手したり、時には自ら相手の懐に飛び込んで入手するものよ。この店には、2ヶ月前に彼に医療魔法をかけてもらって、彼のためなら何でも協力するとまで言っている娘が大勢いるわ。それは、彼が努力して得た人脈よ。それだけじゃないわ。彼が情報を得るために、敵か味方かも分からない相手に接触して、強いお酒を無理して飲んでいる姿を私は見ていたわ。……どう? これでもあなた達は、私より彼の事を知っていると胸を張れるのかしら?」
そのクラリスの言葉に、マァムとメルルは何も言い返す事が出来ず、下を向いて俯いた。
マァムは、2ヶ月前にポップがこの店で朝帰りした事に激怒しただけだった。彼がここでそんな事をしていたなどとは露程も知らなかった。これでは、クラリスに上っ面しか見ていないと言われても何も言い返す事が出来ない。
メルルも同じだった。危険が迫っている事をポップに伝えるだけで、それ以上の対応はポップに任せただけだった。ポップが言ってくれていたら、と言うのはお門違いだろう。私に十分な力が備わっていれば、自然と相談してくれたはずなのに。私はまだポップさんに守られているだけだ、とメルルは泣きたくなる気持ちだった。
「彼の恋人を気取るつもりなら、彼の表面上の姿だけじゃなくて、その内面まで見てあげて欲しいものね。これじゃあ、彼が可哀想だわ。私なら――」
「……それぐらいにしておいてくれませんか、クラリスさん」
クラリスの言葉を遮るように、むくりと起き上がったポップの言葉が静かに響いた。
「あら、もう起きたの、ポップ君? 思ったより早かったわね。私の
「いえ、そんな事はありませんよ。あんな強烈かつ甘美な
……実際、すごい威力だったよ。こんな美女に耳元で甘い言葉でささやかれる言葉が、
「ふふふ。巷で氷の賢者と噂されている君にそこまで言われちゃうと、自信を持っちゃうわね。でもね、ポップ君。私、この娘達が恋人で本当に君が満足できるのか――」
「すいません、クラリスさん。クラリスさんを嫌いになりたくないのでそれ以上は……」
俺はクラリスの言葉を、右手をクラリスに突き出して遮った後、言葉を続けた。
「満足できるとか、できないとかいう言い方は、俺は好きではありません。……そんなんじゃないんです。俺はこの2人がただ純粋に好きで、そこには、満足しているとかしていないとかは存在しないんです」
「ポップ……」
「ポップさん……」
「だいたい、全部俺がいけないんですよ。不審者の情報収集のために夜の町に繰り出すという事を黙っていた事もいけないし、そして何より俺の普段の所業が悪すぎるのがいけないんです」
そして俺は頭をかきながら、「だからこれは、お返ししますね」と、先ほどクラリスから差し出されたコースターを、裏返す事なくそっとクラリスの方に滑らせた。
クラリスが、コースターに目をやった後、俺の顔をじっと見つめる。そのライトグリーンの瞳にほんの少し哀愁が漂っているように見えるのは、俺の自意識過剰なのだろうか。……恐らくそうだろう。
互いに少しだけ見つめ合った後、クラリスはふっと笑みを浮かべた。
「ふふ。やーね、冗談よ。これは、この店でお客さんとよくやる遊びよ。好きなコースターをめくってもらって、出た金額がその日の料金っていう。……ほらね?」
そう言ってクラリスがカウンター上のコースターをめくると、そこには手書きで1,000Gと書かれていた。――高っ!
「くすくすくす。めくらなくて良かったわね、ポップ君」
そう言ってころころと笑うクラリスに、俺は冷や汗をかきながら「そうですね」と答えた。なんだ、やっぱり冗談だったんじゃないか。もう少しで自意識過剰で大恥掻く所だったぜ。
俺がそんな風に冷や汗を掻いていると、クラリスはマァムに視線を投げかけた。
「ところで、あなたがマァムさんよね? 噂はよく聞いているわ。確か『霊長類最強の女武闘家』だったかしら……?」
……ギクッ! 猛烈に嫌な予感がし始めた俺は、思わず血の気が引いた。そもそもこの件があったから、俺はクラリスとマァムを引き合わせたくなかったんだ。
「あっ、俺、ちょっとトイレに……!」
そう言って俺は即座にその場から逃げ出した。
「そ、そう言われていますけど、このお店にもその名前が広まっているんですか……?」
マァムは、再び聞いたその不愉快極まりない異名にこめかみに青筋を立てながら問いかける。マァムは、テラン国でフォルケン王からその異名がこの町から広まったと聞いてから、密かにこのロモスに来た際にその発信源を調べようと思っていた。
そしてその答えは、いともあっけなく得られる事となった。
「あら、広まるも何も、その名を最初に言い出したのはポップ君のはずよ。私があなたの事を聞いたら、彼が『彼女はいずれ“霊長類最強の女武闘家”になるはずだ!』ってしたり顔で連呼していたわよ」
「へ、へえ……。ポップが……。……ふぅん」
マァムは、背中から静かな怒りのオーラを発し始めた。と言うより、彼女は薄々感づいていたのだ。彼が怪しいと。だいたい、こんな突拍子の無い単語を作り出す人間は、突拍子の無い人間に決まっているのだ。後は証拠を集めるだけという状況で、彼女にとっては幸運な事に、そして彼にとっては不運な事に、思わぬところから情報提供者が現れた。
「……ポップ。何か言い残す事はあるかしら? ――はっ!? いない!?」
マァムが親の仇を見つけたかのような獰猛な顔で背後を振り返ると、既にそこにポップはいなかった。
「……ポップさんなら、さっきおトイレに行かれましたよ。あの……ほどほどにしてあげてくださいね……」
メルルが、ポップを探して周囲に視線を彷徨わせているマァムにそう声をかける。同時に、想い人の命だけは奪われる事がないよう、マァムに控えめに言葉をかけた。
しかしマァムは、そのメルルの言葉を最後まで聞く時間も惜しむかのように、奥にあるトイレの扉に突進する。
「この扉を開けなさい、ポップ! 絶対に許さないわよ!」と、扉を破壊しかねない勢いでガンガンと叩くマァムに、扉の向こうからポップの切羽詰まった声が聞こえてくる。
「れ、霊長類最強の何が駄目なんだよ! 金メダル選手の異名なんだぞ! 喜べよ!」
「何を訳の分からないことを言っているのよ、あなたは! 良いから早く開けないと、扉を壊すわよ!」
店の奥から聞こえてくるそんな2人のやりとりを耳に、メルルはほっと小さく息を吐いた。そして、物憂げな表情でそんなやりとりを見つめていたクラリスに、静かに声をかける。
「……クラリスさん、でしたよね。……あんな騒動になっているんですが、わざとマァムさんに伝えましたね?」
「くすっ、何の事かしら? 私にはさっぱり分からないわ」
メルルの問いかけを煙に巻く様に、クラリスはいたずらっぽい笑みを浮かべる。しかし、メルルには彼女の気持ちが分かっていた。恐らくマァムも分かっているだろう。分かっていないのは、ポップだけだ。
その事について、同じ女性としてメルルはこれ以上口にしようとはしなかった。だからメルルが言ったのは、別の事だった。
「クラリスさん。私達に、貴重なご助言をいただきありがとうございました。私も、マァムさんもまだまだポップさんの事を理解できていませんでした。気づかせてくれて、ありがとうございます」
そう言って頭を下げるメルルを見つめたクラリスは、軽く手を振る。
「別に助言をしたつもりはないわよ。でも、私の言葉が何かの役に立ったのなら、代わりに何か占ってくれない? その格好から察するところ、あなた占い師でしょう? 私、もうすぐこの町を出て地元の町に帰るのよ。私の新しい旅立ちに、何かあなたから言葉をいただきたいわ」
メルルは、そのクラリスの言葉にこくりと頷く。
「分かりました。今は水晶球を持っていないので、タロットで占わせていただきますね」
そう言ってメルルはカウンターの上に慣れた手つきでタロットカードを並べて、1枚1枚めくっていく。何度か複雑な手順でそれを繰り返し最後のカードを捲った時、メルルの手が止まった。
「どうかした? もう結果は出たのかしら?」
不思議そうに問いかけるクラリスに、メルルは「いえ……」と言葉を濁す。
「すいません、もう一度最初からやらせてください。久しぶりのタロット占いで失敗しちゃったみたいです」
そう恥ずかしげにクラリスに言葉を返し、メルルは再び同じ手順でカードを捲っていく。
「……。見た所2回とも同じカードの配列になったみたいだけど、どういう意味か教えてくれない?」
そのクラリスの問いに、メルルはすぐには返答できなかった。そう、クラリスの言うとおり2回とも、同じカードが最終的に残った。このカードの配列が指す意味は……。
「クラリスさん。占いの結果は……」
それ以上言葉を発せずに下を向いたメルルに、クラリスは優しく声をかけた。
「ねえ、メルルさんだったわよね。占いっていうのは、絶対に変えられない未来を指すのかしら? 私は、努力次第では変えられるものだと思っているけど、違うのかしら?」
「い、いえ……。クラリスさんのおっしゃられるとおりです。占いの結果が全てではありません。人は時にその結果に抗い、未来を変える事ができます」
それはメルルの祖母であるナバラが、口を酸っぱくして何度もメルルに言っていた事だった。
「だったら教えてくれない? 私、どんな占いが出たとしても、自分が望まない未来だったら最後まで抗ってみせるわ。ねえ、私に抗うための助言を頂戴な」
クラリスはそのライトグリーンの瞳に、運命に抗おうとせん強い意思の力を宿らせ、メルルを正面から見据える。その瞳を見つめたメルルの脳裏に、テランの地下牢で祖母からかけられた言葉が思い起こされた。
『……思わず目を背けたくなるようなお告げを受けた時は、まずは相手を信じる事じゃ。皆が皆、そのお告げに目を背けたり、絶望したりする者ばかりではない。お主なら……、お主の言葉なら、きっと儂より多くの者の心にその言葉を届かせる事ができるじゃろう』
それを思い出したメルルは、意を決したかのように口を開いた。目の前の女性が運命に抗うために、できる限りの指針を与えなければ……と、決意して。
「分かりました。……伝えます。“天を覆わんばかりの……大きな鳥を……頭上に頂く時……逃れられない…………死が訪れる” ……以上です。すいません、クラリスさんの門出を祝う占いがこんな結果になって……」
「ぷっ。何を言っているのよ、あなたは占いをしただけじゃない。 別にあなたが私に死を与えるわけじゃないでしょう? だったら、これは助言よ。勇者
その言葉にメルルは救われた気がした。これまでも不吉な占いの結果が出た事はあった。しかしその度に、それを信じられない人はメルルに罵声を浴びせかける。
『不吉な!』、『何の恨みがあって!』、『お前が何かするんじゃないのか!』などの声を浴びるたび、占い師という自分に意味を見いだせなくなる。
だからクラリスの言葉は、その時メルルの心を打った。
「ほら、きりきり歩きなさい。今何時だと思っているのよ。さっさと帰るわよ」
「……へーい」
頭に大きなたんこぶを作ったポップの首根っこを、マァムが引っ掴んで戻ってきた。
メルルはその様子を見て、クラリスに声をかけた。
「それじゃあ、私達これで帰りますね。今日はお話ができてよかったです」
「こちらこそよ。最後にあなた達に会えて良かったわ」
ポップは去り際に「魔王軍との戦いが終わったら、クラリスさんの町に遊びに行きますよ。美味しいパンをいただきに」と声をかけながら、いつの間に手に持っていたのか、1枚のコースターを彼女の前に滑らせる。
「あら、何かしら?」と首を傾げるクラリスに、ポップは含み笑いを返す。
「ふふふ。後で読んで見て下さい。俺からのプレゼントですよ。それじゃあ、お元気で!」
不思議そうにそのコースターを手に取るクラリス。
「ちょっとポップ! あなた、クラリスさんに何を渡したのよ!? だいたい、何を私達の前でクラリスさんを誘っているのよ! 1人でなんて絶対行かせないわよ!」
「そうですよ! 駄目ですよ、ポップさん! その時は私達も一緒です!」
クラリスは、賑やかに口論しながら店を出る3人を、カウンターの中から穏やかな表情で見つめていた。
「えっ!? 『ゴーストくん』って、ブロキーナ老師なの!?」
「そうなのよ。ごめんね、ポップ。ポップが出場選手を調べているんだったら、先に言っておくべきだったわね。老師から、誰にも言わないよう止められていたから……」
店を出て宿に戻っている最中に、明日の決勝トーナメントで最も怪しい人物を『ゴーストくん』と睨んでいるってマァムに言った途端、それはブロキーナ老師だと俺はマァムに告げられてしまっていた。なんて事だ。俺が危険人物の筆頭と考えていた奴がブロキーナ老師だったとは……。
「くすくすくす。どうやら私達は、お互いに話し合いが足りていなかったみたいですね」
メルルに笑われた俺とマァムは、お互いに目を合わせて肩をすくめた。そうだな、俺はいつもの如く独断専行が過ぎたし、マァムは情報共有が不足していた。まあ、傷が大きくならないうちに気がついて良かったと思うべきだろう。これからは気をつけよう。
俺がそんな反省をしていると、マァムとメルルが互いに顔を近づけて小声でこそこそと会話を始める。
(それはそれとして、危なかったわね、メルル)
(ええ、そうですね、マァムさん。もう少しで……)
……何が危なかったんだ? ああ、あれか。疎外感を感じた俺は、二人の会話に混ぜてもらおうと、うんうん、と頷き同意の言葉を発した。
「確かに危なかった。もう少しで飲み代1,000Gを請求されて、財布の中身がすっからかんになる所だったよ。ある意味、迎えに来てくれて助かったよ」
「「……」」
俺のその言葉に、マァムとメルルは互いに無言で見つめ合った後、「「はー……」」と、海より深い溜息を同時につく。え、今の会話のどこに溜息をつかれる要素があったの……?
俺がそんな事を考えていると、不意に俺はローブの裾をくいくいと引っ張られる感覚に気がついた。
「ん? あれ、……パン? お前、今まで一体何していたんだよ。心配したんだぞ?」
俺が足下をのぞき込むと、昼に別れてから一度も俺達の前に姿を現さなかったパンがいた。
「まあ、パンちゃん、どこにいたんですか? 心配したんですよ?」
「そうよ、パンちゃん。あ、お腹空いたんでしょ? 宿に戻ったら、ちゃんとあなたの分を取り分けているわよ」
メルルとマァムもしゃがみ込んで、パンの身体を撫でる。
しかしパンはそれには構わず、俺のローブの裾を咥えて引っ張り続ける。
「……もしかしてパン、俺達に来てもらいたい所があるのか?」
俺がそう声をかけると、我が意を得たりとばかりにパンがぶんぶんと頷き、路地裏に駆けて行く。普段通りの気まぐれな態度の中に、ほんの少しの焦りの感情をパンの中に見いだした俺は、マァムとメルルを振り返った。
「……2人とも、こんな時間だけど妙に気になる。パンについて行ってみよう」
俺の言葉にマァムとメルルは頷きを返してくれた。
「ここか、パン?」
パンに先導されてやって来たところは、ロモスの町の外れにある1件の家の前だった。
「こんな所に、何があるんでしょうか?」
「只の民家じゃなさそうよ。何かのお店じゃないかしら?」
マァムが、ディスプレイ用の鏡が壁に埋め込まれている家の様子を見て、そんな風に評した。
俺は民家の屋根を見上げた。よく見慣れた特徴的な煙突が、屋根から1本突き出していた。
「この店は、武器屋だと思うよ。父さんの工房の煙突と同じ形をしている」
うん、おそらくここは武器屋だ。今は営業時間外だからだろうか、看板は出ていないけれど、俺が武器屋を間違うはずがない。そう考えていると、その武器屋の裏から1匹の子猫が現れ、そのままパンと「ニャー、ニャー」と会話を始める。
「パン、お前もしかして昼間から町の猫に声をかけて、お前なりに情報収集していたのか?」
俺のその言葉を理解したのか、「どうだ、凄いか」とばかりに得意げに胸を張るパン。そんなパンの頭を、俺は「凄い、凄い」と撫でてやった。
「でもポップ。こんな時間だから当然店は開いていないわよ? どうやって中に入ったら―― ――!? 鍵が開いているわよ、ポップ!」
「……本当ですね。不用心じゃないでしょうか?」
メルルが僅かに開いた武器屋の扉を見てそう呟いた。
「確かに不用心だけど、何か異常事態が起きている証かもしれない。何はともかく、入ってみようよ」
そう言って俺達は、開いた扉から中にそっと身体を滑り込ませた。
「……真っ暗ですね」
そのメルルの言葉に、俺は
「ポップ! こっちを見て!」
マァムの鋭い声に俺は振り返る。マァムは工房内の床の一点を見つめていた。そこには、量は多くないものの、出血の跡が残っていた。その血はかなり前のものなのか既に乾燥している。そしてそのまま側の壁を見ると、その壁は黒く焼けただれていた。
「火の扱いを失敗したのかしら?」
「いや……、こんな場所に火が燃え移るとは考えにくい。それにこの煤には……魔法の残滓が感じられる。多分これは魔法的な、そう火炎呪文とかをかけられた跡だと思うよ」
剣を打つためにはもちろん炎は扱うが、その炎に火炎呪文を使うというのは聞いた事がない。
一体、この武器屋に何が……と考えた時、ふと思い出した事があって俺は懐から手帳を取り出した。
確かあったはずだ。ああ、あった、これだ。
・武器屋の親父が、足繁く通っていた酒場に1週間近く現れない。つけが貯まって逃げたのかもしれないと噂されている。
ロモスの町に武器屋がいくつあるのかは知らない。これほどの大きな町なのだから、ここしか無いという事はないだろう。だから、この噂の武器屋がここだという確証はない。だけど、床に落ちた血の跡、壁に残された火炎呪文の跡から、何かが起こったと考えるのが妥当ではないだろうか。
ふとパンを見ると、パンは部屋の一角で、この家で飼われていたのかもしれない子猫の顔を、まるで慰めるかのように舌で舐めていた。
俺が、壁に掛けられていた手ぬぐいを手に取ってパンを呼ぶと、すぐにパンは俺の元に来た。
足下で俺を見上げるパンに、手ぬぐいを見せて問いかけてみる。
「パン。この手ぬぐいの持ち主がどこに行ったか分かるか? ……案内できるか?」
俺のその問いに、パンは手ぬぐいをスンスンと嗅いだ後、こっちに来いといわんばかりに尻尾を振りながら戸口に向かった。
その様子を見た俺達は、互いに頷きあいその後を追った。
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side クラリス
「あー、疲れたー。私、2部はもう無理――」
「今日もあのおじさん、2階から覗いていたわよ。もう最悪……!」
私の耳に、ダンスの終わったばかりの娘達の愚痴が聞こえてくる。その声を聞きながら私は鏡の前に座り、汗によって崩れた化粧や髪を手早く整えていく。
ここは、『クラブ バニー』に所属するダンサーのためのバックヤードだった。簡易な浴槽とシャワーも併設されていて、汗を流す事もできる。私もいつもはダンスの後はシャワーを浴びて汗を流すんだけど、今日は早く接客に出たい理由があったため、タオルで体を拭く程度に留めていた。もちろん、汗臭さを隠すための香水は念入りに吹きかけておくが。
「珍しいじゃない、クラリスがダンスを終えてシャワーを浴びないなんて。誰か意中のお客さんが来ているのかしら?」
私の隣で同じように化粧を整えている仲間のダンサーが、私をからかうように声をかけた。私はそれには返答せずただそっと微笑みを返したが、私の周りにいた若い娘達が賑やかな声をあげた。
「あっ、皆、ポップ君がいたわよ! 1ヶ月、ううん、2か月ぶりかしら? いつロモスに戻ってきたのかな?」
「そんなの皆知っているわよ。私はもうダンスの前に、ポップ君とお話ししたわよ。でも今日のポップ君、いろいろ調べているみたいだったから、あんまり私の事を見てくれなかったんだー」
「それはミーナが貧乳だからでしょ! ポップ君はお胸の大きな娘が好きだから、私が行ったら視線は釘付けよ~」
「酷い! ポップ君は貧乳でも差別しないもん! この間は、私に優しーく医療魔法をかけてくれたんだから! 『痛いの痛いの、飛んでけー』ってしてくれたんだよ!」
「ぷっ。それってミーナがただ子供扱いされただけじゃない。それにポップ君は、皆に平等に優しーく医療魔法をかけてくれたの。ねー、皆?」
その声に、皆が「そうよ、そうよ」と口々に声を上げる。
その声に私も皆と同様にクスクスと笑みを浮かべた。ポップ君は、1ヶ月程前にこの店に常連のでろりんさん達に連れられて初めてこの店にやってきた。
最初はでろりんさんやまぞっほさん、へろへろさんに次々に注がれるお酒に困惑していたみたいだけど、誰かが最近ちょっと体調が悪いと言った言葉を耳にした途端、急に真剣な表情になって「詳しく話を聞かせてほしい」と言いだした。
聞けばポップ君は、病気に効果のある医療魔法を開発しているみたいで、「良かったら魔法をかけますよ」と、言ってくれた。
その娘は、そんな魔法をかけられても払えるお金が無いから、と最初は固持していたけれど、ポップ君はそんなの関係無いとばかりに、その娘の手を取って医療魔法をその娘にかけた。
その魔法の効果はすさまじく、直後に自分の体を確認したその娘は、感激して倒れんばかりにポップ君にお礼を言っていた。
それからは、その噂を聞いた女の子のほとんどがポップ君に診察をしてもらうための列に並んだ。店のオーナーもずいぶんと感謝して、その日のポップ君達の飲食代はただにすると言い出したから、気がついたら朝方までの大宴会になっていた。
それもあって、この店の娘達は皆がポップ君に好意的だった。
そんな事を思い返していると、何人かの娘が「駄目だった」と悔しがりながら戻ってきた。
「ポップ君、ずっと難しい顔して手帳を睨んでいるんだよ。私がポップ君の頭を胸に抱きしめた時はちょっとだけ反応があったんだけど、すぐに元に戻るんだもん。つまんなーい」
「私は、最近お城の周りに怪しい人がいないかとか、おかしな事が町で起きていないか、とか聞かれるだけだったな。彼氏はいるのか、とか、好きなタイプは、とか言って口説いて欲しかったな……」
なるほど……、どうやら彼は、何かを調べるために来店したみたいね。それなら確かに酒場はうってつけね。この町で最も多くの情報が集まる場所、それがここ『クラブ バニー』と言っても過言じゃ無いから。
私は、バニーからドレスへと衣装替えした後、鏡で身だしなみの最終チェックをする。鏡を見て少し首を傾げた私は、胸の締め付けを僅かに緩める。うん、完璧。そうして、私はバックヤードを意気揚々と後にした。もちろん行き先は決まっている。そう、彼の所だ。
あの娘達の言っている事は本当だったわね。私がカウンター越しに彼の前に立っても、彼は私に気づきもせずに手元に開いている手帳に目を落として、じっと考え事をしていた。通常、お客さんは私が席に着いたら、私の興味を引こうと我先にと自分の事をアピールし始める。それがこんな塩対応を取られるなんて、初めての経験ね。これが屈辱というものなのかしら。くすっ、あの娘達もこんな気持ちだったのね。
私は彼にすぐに声をかける事をせずに、カクテルを作りながら彼の様子を横目で見つめていた。
……『氷の賢者』ポップ。初夏のロモスの空に雪を降らし、町全体を覆うほどの破邪呪文で魔物の大群を退却させた勇者
でも私は違う。とてもではないが、私は彼が15歳だとは思えない。この店で成人してから働き出してもう5年が経つけれど、その間色々な男性を私は見てきた。私に思慕の念を抱く男性、愛人にと申し込む男性、目を合わせただけで真っ赤になるウブな男性。
彼はその5年間に出会ったどの男性とも違った。彼の精神の
慈愛、郷愁、楽観、悲嘆、希望、後悔、勇気、焦燥、憧憬等と言った様々な種類の酒精を注いで構築したと思われるそのカクテルは、時に私以上に歳を重ねているのではと思える程の醸成感を醸し出している。それは、絶対に15歳の身空では醸成できないものだ。
やっぱり良いわね、この子は。多くの男性を見てきたからこそ分かる。過ごした時間は関係ない。もとより、この仕事は一期一会の出会いの繰り返しだ。2度目があっただけ僥倖と言える。この子となら、私は素の自分を曝け出せそうな気がするわ。
私は、シェイカーによってよく冷えたカクテルをグラスに注ぎ、彼の前に滑らせた。作ったカクテルは、ウォッカと柑橘果汁を組み合わせた『スクリュードライバー』。私がお客さんからの注文を受けずにこのカクテルを提供するのは、今日が初めて。何故なら、このカクテルの酒言葉は『あなたに心を奪われた』だから。
それは、私の本気を示したカクテルだった。
彼が私の置いたコースターにそっと手を伸ばす。しかし、その手がコースターに触れる前に、彼の知り合いと思わしき2人の女性が、怒りを隠しもせずに彼の背後に現れた。
1人は推測できる。彼が以前来店した際に語っていた特徴と一致する。恐らく彼とパーティーを組んでいるマァムという名の女性だろう。活発そうなはきはきとした女性だ。そしてもう1人も初めて見る女性だ。こちらはマァムという女性とはまたタイプが違うように見えるが、おっとりしている中に揺るぎない信念を感じられる目をしている。
その2人がポップ君を詰問し、有無を言わせず連れ帰ろうとしている。私はその様子を見て、自分でも何故か分からないほどの不快感に囚われた。だから私は、まずポップ君を
この呪文は、随分前に店に来た高齢の魔法使いが支払いのお金が足りなかった際、その代わりに呪文の契約を行う事で補わせた呪文だった。確か名前は、マ……、だめ、やっぱり思い出せないわ。直ぐに胸やお尻に手を伸ばすとてもHな魔法使いだったけど、どこか憎めないチャーミングなお爺さんでもあった。
でも、この呪文は本当によく効くので、彼女達に言ったように酔っ払いを相手にする時にとても役に立った。ただ、私にこの呪文を唱えて貰うためだけに、就寝前にわざわざこの店まで来るお客さんが少なからずいるのには困っている。
ポップ君は今カウンターに突っ伏して眠っている。彼は誰にでも優しいから、こういう時はいない方がありがたい。そうして彼を排除した私は、彼女達にポップ君の表面しかみておらず、その内面を見ていないと指摘した。
彼女達は私の言葉をただ神妙に聞いている。だけど私は分かっていた。これはただの嫉妬、ううん、八つ当たりだと。彼女達とポップ君のやりとりを見て、私はすぐに彼らの関係性に気づいていたのだから。
だから私は、目を覚ました後の彼の言葉に打ちひしがれた。
「満足できるとか、できないとかいう言い方は、俺は好きではありません。……そんなんじゃないんです。俺はこの2人がただ純粋に好きで、そこには、満足しているとかしていないとかは存在しないんです」
悔しい……。どうして、私もこの2人の中に含めてくれないんだろう。私と、私の前にいる2人の女性との間には、1mにも満たないカウンターの距離しか存在していない。でも、今その距離はとてつもなく遠い。
前回彼が来店した際に求婚していれば、また違った未来があったのだろうか。……馬鹿ね、私らしくも無い。過ぎ去った過去を悔いても始まらないのに。
私は自分の気持ちに踏ん切りをつけて、彼に嘘をついた。すると、彼は拍子抜けするくらいすんなりとその嘘に騙された。その様子を見ていると余計に彼に対して苛立ちが募った私は、彼にちょっとした仕返しをする事にした。
私の思惑通り、青い顔をしてこの場から逃げていった彼を見て、私はほんの少しだけ溜飲を下げた。そして私は、実家の場所を書いたコースターを誰にも見られないようそっと手の中で握りつぶした。
メルルという名の娘が、私の未来を占ってくれた。彼女には悪いけれど、旅立ちを控えた私に当たり障りの無い言葉をいただける程度だろうと、私は漠然と思っていた。だけど、その意に反して、占いの結果は忘れようにも忘れられない不吉なものだった。
でも、私はこれも一つの啓示だと捉えた。占いの結果が全てでは無い。この娘は真摯に私に占いの結果を伝えてくれた。占いというものは、伝える側にも勇気がいるものだろうという事を、私は知っている。それが不吉な占いなら特に……。伝えてくれたと言う事は、私を信じてくれたという事だ。
だったら、彼女の信頼を裏切るわけにはいかない。この占いの結果をどう活かすかは、私の問題だ。生きるんだ。生きてさえいれば、また明るい未来が開けるかもしれない。その時には、機会があったらもう一度この娘に占ってもらおう。
私は切実にそう思った。
賑やかに去って行く彼らを見送った後、私は去り際に彼から渡されたコースターに視線をやった。そのコースターの裏には、『かれーパン』なる揚げパンのレシピが書かれていた。そう言えば、以前彼がでろりんさん達とこの店に来た際に、将来立ち上げるパン屋の目玉となるパンに悩んでいると、彼に言った気がする。
私自身忘れていたその話を、彼は律儀に覚えていてくれていたのだ。くすっ。私はコースターに目を落としたまま含み笑いをした。
彼は、この戦いが終わったらポルトスの町に遊びに来ると言っていた。その時には、この『かれーパン』という名前のパンを店の名物にして、弟と一緒に彼、いや、彼と彼女達を迎えてやろう。
さあ、この店での仕事もあと少し。私を目当てに来てくれるお客さんのためにも、最後まで気を抜かずに頑張ろう!
一つの失恋が何よ! 下を向いていたら、空にかかる虹を見つける事は出来ないわ。上を向いて、次の虹を見つけなさい、クラリス。
私は頬を一度両手で強く叩き、店の奥へと戻っていった。