『さあ、お集まりの皆さん! 本日の決勝トーナメント出場者を改めて紹介しましょう!』
その解説者のよく通る言葉に、闘技場を取り囲む満員の観客席から大歓声が巻き起こる。
『1人目は、パワーに加えてレスリングテクニックにも長けた
そんな風に紹介される度に、闘技場の舞台に立つ選手が手を上げて周囲の観客に答えている。
『6人目は、皆様ご存じ、2度に渡りロモスを救ってくれた勇者ダイ! 予選からただ一人、剣士でありながら模擬戦用の木刀で挑む余裕の戦いを展開しており、今大会文句なしの優勝候補筆頭です!』
俺の隣でダイが恥ずかしそうに頭に手をやって、大歓声に答えている。子供の声援が多いように感じるのは、ダイがまだ小さいからなのだろうか。
『さあ、まだまだ優勝候補が続きます! 続いて7人目は、同じく勇者
やはり俺の隣にいたマァムが頬をひくつかせながら、一歩前に出て声援に応える。紅一点という事もあってか、ダイを上回るかのような声援がマァムに飛んだ。にこやかに笑っているように見えて、その実頬がピクピクとひくついているのは、やはりその呼称に不満があるからなのだろう。
ここで笑っては再びマァムの鉄拳が飛んでくるから、俺は必死で表情を取り繕っていた。……ていうか、さすがに今の俺は笑う気分にはなれなかった。
だってさあ……。
『そして最後に8人目! 先のロモスを守る戦いで無念にも負傷した勇者でろりん選手に変わって出場していただくのは、今や『氷の賢者』の異名で知られる大賢者、ポップゥ――! 果たして、彼はロモスの空に再び雪を降らせるのかぁ!? 『勇者
その紹介に、ダイ達と同様の声援が飛んだ。前方でひときわ黄色い声援をあげてくれているのは、どうやら『クラブ バニー』のバニー嬢達のようだ。クラリスはいない……か。引越しの準備で忙しいのだろう。しかし、皆、夜勤明けだろうに元気な事だ。
「ポップくん、頑張ってー! 優勝したら危ない水着を着てあげるわよ~!」
(ほら、早く前に出なさいよ!)
俺に対して投げキッスを放ちながらそんな声援を送ってくるバニー嬢の一角を冷たい目で見つめたマァムが、俺を突き飛ばすように前方に押し出す。たたらを踏むように列から飛び出た俺は、観客席に向かって軽く手を振った。
いや、もうほんと勘弁してほしいんだけど……。どうしてこうなった? 周囲の視線が集まる緊張にうち震えながら、俺は一人自問していた。
そう、こうなった理由。それは、2時間ほど前に遡る……。
~~~~2時間前~~~~
「皆、再びロモスに訪れた危機を防いでくれた事、心から感謝する」
そう言ってシナナ王が、いつもの温和な笑みを浮かべて俺達に感謝の言葉を述べる。
俺がノヴァに肩を貸して闘技場に戻ってきた時、既にここでの戦いは終わっていて、後始末に移っていた。
ダイ達と軽く状況を確認していた俺達は、その場でシナナ王のねぎらいの言葉を受けていた。
ただ、俺は正直そんな事より、既に本物の『覇者の剣』がザムザによって手の届かない所に送られていたという話の方がショックだった。
「せっかくメルルが占ってくれたのに、また振り出しに戻っちゃったね……」
そのダイの言葉に、俺も「うーん……」と唸ることしかできなかった。メルルも申し訳なさそうに肩を落としているが、もちろんこれはメルルのせいでも何でもない。ザムザに一手後れを取ってしまった……、それに尽きるのだろう。
「すまぬのー。あの剣は、前にダイに与えた『覇者の冠』と同じオリハルコンでできておる。代わりの物となると、なかなか……」
そうだよな。神の鉱物と言われるオリハルコンで出来た剣なんてそうそうあるわけが……。
……? ん!? 今、シナナ王は何と言った!? 俺と同様の事に気が付いたのか、ダイも顔を輝かせて俺を見た。そして重なる叫び声。
「「覇者の冠があるじゃないか!!」」
なんてこった。もっと早く気づけよ、っていう話だ。そうと決まれば、話は早い。俺達はすぐにダイの故郷デルムリン島に
「のう、ダイ、マァム。闘技場はこんな有様じゃが、既に民は午後からの大会を楽しみにしておる。優勝賞品は無くなってしもうたが、ロモスの民を元気づけるためと思うて、大会に参加してくれんだろうか?」
その言葉に、ダイとマァムは顔を見合わせる。そうだよな、今から頑張って闘技場の瓦礫を片付けたら午後からの決勝トーナメントには間に合うかもしれない。ていうか、今も兵隊さん達が総出で瓦礫の片づけをしているし、優勝賞品はもう無いのかもしれないが、チャリティーイベントと考えれば、楽しみにしていたロモスの人々のために予定通り参加してあげた方が良いのかもしれない。そう考えた俺は、どうしようかと悩んでいる2人に声をかけた。
「いいんじゃないか、ダイ、マァム。別にデルムリン島にある『覇者の冠』が逃げるわけじゃないし、決勝トーナメントに出場してから行くようにしたらどうだ?」
その言葉にダイとマァムも頷きを返したので、シナナ王も含めて皆が良かった良かったと言っていた時、それまで元気だったでろりんが急に肩を押さえて悶え始めた。
「いや、王様、すまねえ……! 実は俺、さっきの戦いで怪我をしたみたいで、決勝トーナメントに出るのは辞退させてくれないだろうか?」
「おお、それはいかん、でろりん。それなら無理は言えん。ゆっくり静養してくれい。しかし、そうなると誰か代わりの者に出てもらいたいのじゃが……」
そう言ってシナナ王がキョロキョロし始めたのを見て、いつの間にか俺の側に来ていたでろりんが、突然俺の手を取って口を開いた。
「王様! 俺の代わりに出場するのに、うってつけの奴がいるぜ! ほら、ご高名な『氷の賢者』ポップだ! どうだい?」
「な、何言っているんですか、でろりんさん! 俺は駄目でしょうが!」
突然の事に俺が右往左往していると、シナナ王がポンと手を叩いて、でろりんの言葉に賛同した。
「おお! 確かに、ポップがいたのう! ポップ、すまんが、でろりんの代わりに大会に出てはくれんか?」
「え、ポップが出るの? やったー!」
「まあ、ポップだけ観客席で高みの見物をしているのもどうかと思うし、あなたも出てみたらいいんじゃない?」
シナナ王の言葉で、ダイとマァムも俺に大会に出る事を望む発言をし始めた。
マジかよ……。まさか俺にお鉢が回ってくるとは思わなかった。だいたい、でろりんの怪我って絶対に嘘だろう! 現金なこいつの事だから、優勝賞品が無くなったと知った途端にこの大会に興味を無くしたに決まっている。ちくしょう、そうは問屋が卸さないからな!
「ちょ、でろりんさん! その怪我をしたという肩を見せてくださいよ! 本当に怪我をしているんなら、俺が
「いやー、さっきの化け物に回復呪文じゃあ治らない攻撃を受けたから、
そういけしゃあしゃあと言うだけ言ったでろりんが、さっさとこの場から逃げるように飛びだしていった。くっそー、逃げやがった! 駄目だ、このままじゃあ、本当に俺まで大会に出場させられる。
「で、ですがシナナ王。私は予選に参加していませんから、もし参加していたら決勝トーナメントに勝ち進んでいたかどうかも分かりません。予選で敗れた人から不満が出るかもしれませんし、でろりんさんの代わりは予選最終戦で彼に負けたラーバという方に打診してはどうでしょうか?」
「うーむ、しかし予選敗退したラーバが今どこにいるかも分からんし、そもそもポップが出場していたら自分が勝っていたと考える選手なぞ、どこを探してもおらんと思うぞ」
そのシナナ王の言葉に、王ばかりか護衛の兵士の方々も一様に頷く。しまった、こんな時ばかりは『氷の賢者』という肩書きが恨めしく思える。
「ポップ、諦めなさいよ。どう考えてもポップ以外に適任者はいないわよ」
「そうだよ。それに俺もポップと本気で戦ってみたいよ。あー、でも残念だな。覇者の剣さえあったら、
「……」
……俺は、何かダイに恨まれるような事をしたのだろうか。何故かダイは、俺を殺す気満々のようだ。ていうか、どうもこいつは、俺を過大評価しすぎている傾向がある。つい先日も、竜魔人バランに対して俺が本気を出していたらワンパンで勝てたよね、なんて意味の分からない事をのたまっていた。どこかでこいつの俺に対する認識を下方修正しておかないと、冗談抜きで俺はいつかダイに殺されそうな気がする……。
そんな事を考えていたら、いつの間にか俺の決勝トーナメントへの出場は決定していた。はあ……、ダイと当たったらどうにか死なないように立ち回ろうっと。いくらオリハルコンの剣がなくても、
『さあ、8名の勇士が優勝を目指して戦います。午前中に発生したトラブルで、残念ながら優勝賞品は無くなってしまいましたが、ここに集った皆さんはただ純粋に己の誇りを賭けて戦ってくれます。熱い戦いを期待いたしましょう!』
その声に、観客席のボルテージが最高潮に上がった。
『それでは、対戦相手を決めたいと思います。選手の皆さんはそれぞれ舞台の縁に置いてあります小さな球をご自由に手に取ってください』
諦めた俺は軽く息を吐きながら、舞台の縁に移動する。途中、『クラブ バニー』の女性達の側で酒を飲みながら暢気に笑っているでろりんを見かけて(もちろん怪我をしている様子はかけらも見受けられない)、俺は思わずでろりんに殺意が沸いた。
……これかな? 俺は舞台の石畳の上に転がっていたビー玉サイズの玉を手に取り見つめた。G……? いや、違うな、Gって書いていたのを削ったようで、その上からAと新しく書き込まれている。何かで使っていたやつを再利用したのかな?
「A……で良いんだよな?」
俺の呟きを拾ったのだろう。少し離れた場所で俺と同じように玉を手に取って見つめていた『ゴーストくん』が、俺を振り返った。そして俺に見えるようにその手に持った玉を突き出した。その玉には、はっきりとAと書かれていた。
やれやれ、俺の初戦の相手はよりによってあいつか。俺はそっと息を吐いた。
結局、決勝トーナメントの組み合わせは
第1試合 俺 VS ゴーストくん
第2試合 マァム VS ヒルト
第3試合 ダイ VS バロリア
第4試合 フォブスター VS ゴメス
という結果となった。何はともあれ、第1試合でいきなりダイかマァムと当たらなくて良かったな。
~~~~第1試合~~~~
『さあ、それでは早速第1試合と参りましょう。氷の賢者ことポップ選手と、ゴーストくん正体改めチウ選手の登場です。――どうぞ!』
その呼びかけで、俺とチウは並んで舞台に続く石畳の上を歩いていく。
「ふっふっふ。老師のおかげで思いのほか早くお前を打ち負かす機会がやってきたな。お前をこてんぱんにして、マァムさんの目を覚まさせてやるからな! 僕を予選の時の僕とは思わない事だ!」
隣を歩くチウが、鼻息荒くそう俺に指を突きつけながら気炎を上げた。
「ああ、そういえば確かにザムザとの戦いでは見違えるような戦いぶりだったな。予選からああいう戦い方ができていれば、老師の代わりじゃなくて実力で勝ち上がれたかもしれないのに」
そう、チウは『ゴーストくん』ことブロキーナ老師の突然の持病の発生で急遽代役に決まっていた。老師の病気は極めて真偽が怪しい所ではあるが、今となっては老師ではなくチウが相手となった事に、俺は密かにほっとしていた。
いや、だってもし『ゴーストくん』の中身が老師だったら、もう俺は天下一武道会における神様と戦ったヤムチャの役回り決定だったからね。さすがにメルルの見ている前であんな無様な真似はさらしたくないから、それだけは助かったと俺は密かに胸をなでおろしていた。
「そうやって、余裕の表情をしていられるのも今だけだからな! 覚えていろよ、二股男!」
「二股言うな!」
そして俺達は互いに舌戦を交わしながら、舞台の上に上がる。舞台からは、シナナ王が確保してくれたのか中央最前列で、膝の上にパンとゴメを乗せたメルルが座っている様子が見えた。周囲の歓声にかき消されて聞こえないが、その口の動きから「頑張ってください」と声援を送ってくれている事が分かった。うん、不本意な出場となってしまったが、メルルの応援を貰える事だけが救いだな。俺もメルルに、任せて、という意味を込めて手を上げた。
『さあ、それでは第1試合 ポップ選手VSチウ選手の試合を開始します。――始め!!』
開始の合図と同時にチウは俺に向かって駆けてきた。それに対して俺は距離をとるため即座に
俺は20m四方の舞台からはみ出さないよう気を配りながら逃げ回りつつ、執拗に追いすがってくるチウに対して両手を突き出す。
「――
正直、俺の手持ちの魔法は殺傷能力が高すぎて、こんな大会では相手に対して使いにくい。敵なら容赦する必要もないんだが、もう仲間枠として考えているチウに流血を強いるような魔法は使いたくない。だから俺は、外傷を与える事なく敵を制圧できるこの魔法をチウに唱えた。
しかし、俺のその考えは甘かったようだ。
チウは、自身に向かってくる複数の水球を視認すると、身体全体をビビビッと震わせたかと思うと、突然体毛を尖らせその水球に向けて撃ち出した。
途端に、パパパンッと次々に割れるラリホー成分入りの水球。
『おっと、チウ選手、ポップ選手の放った水球を、堅くとがらせた自身の体毛で全て迎撃しました! これは素晴らしい判断ですね!』
どうだ、とばかりに胸を張るチウ。うーん、確かにやられた。これは下手に水球にしたのがいけなかったな。多少確実性に劣っても、気体の状態で放つべきだった。
という事で、じゃあ、とばかりに矢継ぎ早に
そして、「次はこちらから攻めてやる!」、とそのまま回転しながら俺に向かって突っ込んで来た。
――ちっ! やるじゃないかよ!
この攻撃は、ノヴァの治療を施している最中に高台から見ていた。ザムザの腹に一発入れただけで、あのザムザが苦悶の表情を顔に浮かべていた。つまり、魔法使いの非力な防御力では絶対に受けてはいけない攻撃という事だ。
俺は咄嗟にその攻撃を
『チウ選手、執拗にポップ選手を追いかけます。これに対してポップ選手は攻めあぐねている様子だ! さあ、チウ選手。ポップ選手を相手に番狂わせを演じる事ができるでしょうか!?』
「どうした、ポップー! 逃げ回っているだけじゃあ、面白くねえぞー!」
「そうじゃ、そうじゃ! それとポップ! このベルトの外し方を教えんか!」
「ポップ……つまらない」
俺の耳が、観客席でビールを片手に観戦しているでろりん達の声を捉えた。あいつら……。でろりんが辞退したせいで俺がこんな目に遭っているというのに、あいつらはその俺を酒の肴にして楽しんでいやがる。
ちなみに、今彼らの側に美人の女僧侶ずるぼんはいない。彼女は実は、宿屋に放り込んだノヴァの面倒を買って出てくれていて、今頃宿屋でノヴァの看病をしてくれているはずだ。ちなみに俺から頼んだわけじゃない。ザムザとの戦いの場に、俺が肩を貸したノヴァを連れて戻ると、彼女の方から看病を買って出てくれたんだ。まあ、あいつ黙っていたらイケメンだしな。ずるぼんの目がハートマークになっていたよ。
「そらそら、逃げてばかりじゃご大層なそのローブが泣いてるぞー、ポップ! 何だったら、それもまぞっほに譲ったらどうだー! ぎゃははは」
でろりんが、欠場の原因と主張していた右肩を高く突き上げて、俺にヤジを飛ばす。俺は再びでろりんに対する怒りがふつふつと沸いたが、次の瞬間俺の脳裏にピコーンと電球が閃いた。
見てろよ、あいつら……。
一計を案じた俺は、高速回転して向かってくるチウとの間に、
しかしチウは、そんな物とばかりに、より勢いを増してその氷の壁に突っ込んできて、一撃で壁を粉砕した。
砕かれた氷の壁の欠片を体に浴びながら、間近に迫ったチウの攻撃をかろうじて躱す俺。
よし、仕込みはこれで十分だろう。俺は背後の観客席にいるでろりん達との位置を調整しながら、再びチウとの距離を取った。
そして再びチウが突っ込んでくる。先の氷の壁を粉砕した事に気をよくしたチウは、先ほどより更にその回転数を上げている。
俺は再びチウとの間に氷の壁を作り出す。その数、3枚。
案の定チウは、その氷の壁を先ほどと同様物ともせずに砕いて接近してくる。1枚目の壁が砕かれる。直ぐに2枚目の壁も砕かれた。
残るは3枚目だけだ。最後に残る透明な壁の向こう側に、舞台の端に追い込まれた俺の姿が見えたんだろう。チウが「これで僕の勝ちだー!」と大声を上げながら迫ってくる。
『あーっと、ポップ選手後がありません。チウ選手、3枚目の壁も砕いて、ポップ選手にその攻撃を届かせるのかー!? ――こ、これは!? あ、危なーい!! 逃げ――』
次の瞬間、解説者の解説が追いつかないほどの勢いで、俺の間近に迫ったチウが俺の背後にある観客席に突っ込んでいった。グシャッと、熟れたトマトが潰れたかのような音が闘技場内に響く。
気が付いたら、俺だけではなく観客も含めた皆が、固唾を飲んでその音が発生した観客席の一角に視線を投げていた。
その音の発生源では、白目を向いたでろりん達が、チウと観客席の間で押しつぶされピクピクと痙攣していた。その周囲には、彼らが飲み食いしていたビールや食べ物が散乱している。チウも高速回転と突然の衝撃が祟ったのか、口から泡を吐きながら気絶していた。
その様子を舞台の上から眺め、ようやく溜飲が下がった気分で見つめる俺。俺の側には、先ほど創成した3枚目の氷の壁が悠然と立っていた。実はこの3枚目の氷の壁だけはこれまでの壁と違い、地面に垂直に屹立させるのではなく、地面から一定の角度をつけて、つまり地面に対して斜めに創成していた。当然、その角度と方向は、俺がでろりん達に命中するように入念に計算してだ。
これまでの氷の壁と同様に打ち砕くつもりで突進したチウは突然発射台のように構えられた氷の壁にその勢いのまま突っ込み、そのまま観客席のでろりん達目がけて射出された格好だった。
『な、なんと、なんとチウ選手、場外負けです! ポップ選手、さすがは“勇者
観客席から割れんばかりの歓声が上がる。俺がメルルやバニー嬢達に手を振り返していると、救護班に担架に乗せられて、医務室に運ばれようとしているでろりん達の姿が視界に入った。
ふふふ。でろりん、仮病が本当の怪我になって良かったじゃないか。
さて、俺の相手は次の2回戦の勝者という事になるが、どう考えても相手はマァムになるだろうな。
舞台から降りて石畳を戻る最中に、そのマァムと対戦相手のヒルトがこちらに向かって歩いてきたので、すれ違いざまマァムと「ポップ、あれ、わざとでしょう?」、「何のことやら……?」などと言葉を交わしつつ、ハイタッチをした。
さて、次はチウとはレベルが違うからな。殺傷能力の高すぎる魔法を封印するのは当然として、何の呪文ならマァムの意表を突けるだろうか。
……! ああ、そうだ。あれなら今からでも簡単に作成できて、マァムに対しても効果的に効くかもしれない。そんな事を考えながら、俺は選手控え室に戻っていった。
実は、エキシビションマッチが鬼とか岩とか城を差し置いて、7章で一番書きたかったエピソードだったりします。明日も投稿予定です。次回は、『大賢者 VS 霊長類最強』。