転生大賢者の冒険   作:怪盗218

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準備が整ったので、今日は二本立てでお届けします。


146話 竜の親子

 

 

日の落ちたサババの港町。町の端々では焚き火が炊かれ、各国の戦士団がいくつかのグループに分かれ、それぞれ夕食を取っていた。昼間の親衛騎団の襲撃で怪我を負った人達の大半は治療を終えて、その輪の中に加わっている。ロモスから届けられていた貴重な魔力回復薬などはほとんど消失していたが、不幸中の幸いな事に、昼間の襲撃によって死者や再起不能の怪我を負った者はいなかった。

 

これは、奴らが情けをかけたというよりは、奴らと釣り合うレベルの戦士がおらず軽くあしらわれたためなのではないだろうか。逆に言えば、命を奪う価値があると奴らが考える程度の戦士がいなくて良かったとも言える。

 

そして夕刻には新たに到着した戦士団もいて、更に今日の未明にはロモスから後続の船団も到着予定と聞いている。フォブスターに聞いた話では、どうやらでろりん達もこの連合軍に名乗りを挙げていて、主役は後から来るんだ、とばかりに未明に到着する後続船でやって来るとの事だった。

 

……それは別に良いが、まぞっほとは出来るだけ顔を会わせたくないな。あいつ、俺の顏を見るたびに「ベルトの外し方を教えろ」って煩いんだよな。最初にそういうベルトだって言っていただろうに。……ん? 言っていなかったかな? ちょっと記憶があやふやだな。

 

まあいいや。姫さんによると、今サババにいる戦士達とこれから到着予定の戦士達を合わせると総勢200人近い数になるとの事だ。改修中だったベンガーナの大型船がどうにか無事だったので、明日は皆がその船に乗って『死の大地』に向かう事になっている。

 

その指揮を執るのが、元リンガイア王国で智将と唄われたバウスン将軍だ。彼は海軍上がりで操船もお手の物らしいから、その辺の判断は任せておいて良いだろう。

 

そんな大小併せて20以上はありそうなグループが町の中央付近で野営をする中、俺達カチコミ組は喧噪から離れた、海にほど近い港区で野営をしていた。昼間、親衛騎団と戦った辺りだな。

 

 

「ポップさん、お食事の用意ができましたけれど、ダイさんとバラン様の分はどうしましょうか?」

 

メルルが、焚き火にくべた大鍋の中身をお玉でかき混ぜながら俺に問いかけた。

 

「ああ、俺が持って行ってくるよ。ラーハルトもいるから3、4人分を適当によそってくれないか?」

 

俺の言葉に、メルルが「分かりました」と頷き、小さめのお鍋に湯気が立った鍋の中身を移してくれる。鍋には数種類の野菜や鶏肉、それにお米が入っていて前世でいうところの雑炊のような物が出来上がっている。

 

この食事はパプニカとベンガーナから届けられた糧食の中から配給されたものだから、今はどこのグループも同じような食事を取っている事だろう。ただ、今メルルがよそってくれている鍋の味付けだけは少し俺が手を加えていて、ちょっと他とは違う味付けになっているはずだった。

 

3人分の食事を受け取った俺は、焚き火を囲んで車座になっていた輪から立ち上がる。

 

「ごめんね、ポップ君。ちょっと彼、特殊な立場だからあまり人目に触れさせられないのよ」

 

立ち上がった俺に、俺達の車座に加わっていた姫さんが詫びるような視線を俺に向けて言った。

 

「いや、それは俺も十分理解しているつもりだし、仕方ないよ」

 

姫さんの言う彼とは、バランの事を指している。そう、今この地にはバウスン将軍を筆頭にリンガイアから脱出した戦士団も集まってきている。超竜軍団を率いてリンガイアを滅ぼしたバランの顔を戦場で見た人間がいないとも限らない。

 

俺達が他の戦士団から離れて、港区の隅の方で野営しているのはそんな理由もあった。そして、そんな俺達からもバランは距離を取っていて、今あいつはダイと一緒に港の岸壁にいるはずだった。

 

俺の言葉を物憂げな表情で聞きながら、メルルからよそってもらったお椀に口を付ける姫さん。すると、お椀の中身をこくりと一口飲み込んだ姫さんが少しだけ目を見開いて、メルルに視線を投げかける。

 

「ねえメルル、このお鍋とても美味しいけれど、初めていただく味付けね。これは、テランの郷土料理の味付けかしら?」

 

「いいえ、違いますレオナ姫。この味付けは、ポップさんが担当されたんですよ。何でも、アバン様が昔ポップさんに教えてくれたらしくて、今はもう存在しない国の伝統料理の味付けらしいです」

 

そんな2人の会話を小耳に挟みながら、湯気の出ている小さな鍋を手に持った俺は、皆の輪から離れてダイ達のいる方に向かった。

 

 

 

「待って、ポップ。私も一緒に行くわ」

 

歩き出してすぐにマァムが追いかけてきたので、俺達は2人並んで歩く。

 

港から海に突き出した格好の細長い突堤の上を歩いていくと、途中でまるで門番のように立っているラーハルトに出くわした。

 

「ラーハルト、これあなたの分よ。昼間から何も食べていないでしょう? 明日の戦いに備えて、あなたもちゃんと休んでね」

 

そのラーハルトに、マァムは俺が手に持っていた鍋から一人分をお碗に移して、差し出す。ラーハルトは俺とは禄に言葉を交わそうとしないのに、マァムの言葉は割と素直に聞き入れる。今も、無愛想な顔をしているものの、マァムから渡されたお碗に黙って手を伸ばす。

 

そして、それを受け取りながら俺をギロッと睨みつける。だから何で、そんな俺に対して敵対的なんだよ。

 

「……ポップ、だったな。俺は、貴様を戦士とは認めていない。あの時に味わった屈辱、俺は忘れていないからな」

 

ああ、なるほど。こいつ、前に俺がこいつを騙して他者転移呪文(バシルーラ)で飛ばした事を根に持っているのか。だけど、それなら俺にだって言いたい事はあるんだけどな。俺は心持ちマァムの後ろに半歩隠れながら、ラーハルトに応える。

 

「そんなのお互い様じゃないか。俺だって、お前に短剣をぶっさされた左腕の傷が今でも時々うずくんだぜ?」

 

俺の言葉をラーハルトは鼻で笑う。

 

「フッ。それがどうした。なんなら次は、俺の槍をお前の心臓に突き刺してやっても良いのだぞ?」

 

「へー、そんじゃあ俺は、次はお前を魔界まで吹っ飛ばしてやるよ。また走って戻ってくるかい?」

 

「面白い……。やれるものならやってみるが良い……!」

 

そう言って、ガシャンと重たそうな槍の柄を地面に突き刺すラーハルト。そんなやりとりをしていると、突然俺の右耳を激痛が走った。

 

「い、痛たたたた……。は、離してくれよ、マァム。耳がちぎれるってば」

 

「もう、ポップったら。ラーハルトはもう敵じゃないんだから、そんな態度を取らないの。ラーハルトも、思うところは分からないでもないけれど、今はそんな事を言っている場合じゃないでしょう。お互いに協力し合わないと……」

 

俺が「分かった、分かった」と言うのと、ラーハルトが苦い顔をしてそっぽを向くのはほとんど同時だった。

 

「さ、こんな事をしてたらせっかくのご飯が冷めちゃうわ。ラーハルト、通らせて貰うわね。それと、あなたも温かいうちに食べてね。……どうかした?」

 

右の耳を押さえて何かを振り払うかのように頭を振るラーハルトにマァムが怪訝な表情を浮かべるが、そのラーハルトは「いや、少し耳鳴りがしただけだ。もう問題ない」と俺達に手を振った。

 

耳鳴り……? そう言えば、ラーハルトは『不死鳥のかがり火』が隠されていた民家の前でも、そんな事を言ってなかったか?

 

「ラーハルト、何か体に不調があるのならおれにちょっと診せて見ろよ。こう見えても俺は医療魔法を――」

 

俺がそう声を掛けながらラーハルトの身体に触れようとすると、ヒヤッとした物が俺の首に突きつけられた。それは、ラーハルトが手にした槍の穂先だった。

 

「貴様は、二度と、二度と俺の身体に触れるな……!」

 

その強い有無を言わさぬ言葉に、俺は動きを止める。「ラーハルト、ポップはただ……!」と、声を上げるマァムを、俺は手で制す。前回が前回だったからな。俺が身体に触れる事に対して、拒否反応が出ても仕方ないか……。

 

「まあ、別に無理にとは言わないよ。じゃあ、明日はよろしくな」

 

耳鳴り程度なら特にこだわる事でもないか、と判断した俺は、ラーハルトをやり過ごしてマァムと共にダイ達のいる場所へ足を進めた。

 

 

 

「ねえ、俺に母さんの事を教えてくれるんじゃなかったの? 何も言ってくれないなら、俺、向こうでポップ達と一緒にご飯を食べていたいよ」

 

ダイは、突堤の岸壁で海に向かって足をぶらんと投げ出して座っていたが、出会ってから今まで禄に口を開こうとしないバランを振り返り、不満そうに口を開いた。

 

「ポップ……か。お前はずいぶんあの男の事を慕っているのだな」

 

だから、突然バランが口を開いた事に、ダイは驚いて思わず肩越しに背後を振り返った。

 

「そんなの当たり前だよ。ポップは、俺にとって兄貴みたいに思っているし、とても頼りになるんだ。だから俺は、ポップに酷い事をしたあんたを……、許せないんだよ」

 

「……そうか。しかし、私を許す必要は無いし、もはや許されようとも思わん。ただ、ソアラの、お前の母さんの事だけは、お前のためだけでなくソアラのためにも、お前に伝えよう」

 

その言葉に、ダイも身体ごと振り返って、バランに正対する。口ではどのように言っても、やはりダイも自身の母親の事を知りたかったのだ。

 

そしてバランは静かに語った。何も特別な事では無い。3人でテラン王国の奥地で慎ましく暮らしていた頃の思い出。自分が息子を抱き上げては泣かれてしまい、その都度ソアラが目をつり上げて息子を取り上げていた事。息子の着る服を手ずから作るために、慣れない裁縫に取り組んでいた事。息子が高熱を出した時、一晩中駆けずって薬師を探した事。息子が母さんとどうにか聞き取れる言葉を発した時の嬉しそうな表情、そして同時にバランに向けた勝ち誇った表情。

 

それら生活の端々で経験した何でもない日常の母親の姿をバランの口から聞く事で、徐々にダイの脳裏に今は亡き母の姿が構築されていった。それは今まで、ポップやマァムの母の姿を見て想像する事しかできなかった輪郭だけの存在に、中身が伴っていった瞬間だった。

 

もっと聞きたい、もっと、もっと、もっと。気づけば、ダイはバランに次々と新しい話をねだっていた。そしてバランも最初こそたどたどしかったものの、短い時間ながらも3人で過ごした(ドラゴン)の騎士にとって得られるはずもなかった温かで穏やかだった過去の記憶を、徐々に思い出す事となった。

 

 

 

「それで、その時、お母さんは何て言ったの? ――! あっ、ポップ、マァム!」

 

俺達が2人に近づいた時、ダイが身を乗り出すようにバランに話をねだっている所だった。良かった。最悪、無言のままの険悪な雰囲気になっているかもしれないと思っていたから、これは嬉しい誤算だった。

 

「やあ、2人共。親子水入らずの所悪いな。食事ができたから、持ってきたんだよ。さあ、温かいうちに食べてくれ」

 

俺が二人の間に湯気の立つお鍋を置くと同時に、マァムが2人にそれぞれ空のお茶碗とお箸を渡す。それを、ダイは分かるが、バランまで自然に受け取った。ダイとソアラさんと3人で過ごしていた時の事を語る事で、修羅の道を歩んでいたバランも、今だけかもしれないがその目に穏やかな光が宿っている気がするな。

 

「邪魔はしないから、寝る時はこのままここで寝ると良いよ」

 

俺の言葉にダイが「ここで?」とキョトンとした顔をする。ここは突堤の先端だから風が強い。今も時折マァムの髪をなびかせるほどの風が吹いているから、寝るには不向きな場所だ。

 

「そう、ここでさ。まあ、見てなよ」

 

俺は指をパチンと鳴らした後、まるで新装開店のお店をお披露目するように身体を反らして背後を指し示した。

 

そこには、一瞬にして氷で作られたかまくらが鎮座していた。半球状のドーム型で、出入り口は細長く上方は緩やかな曲線を描いている。もうこれぞTHE.かまくらって形状だな。ふふふ。風を遮れてなおかつ、8の月の蒸し暑い夜対策にもなるから、一石二鳥だ。しっかり魔力を込めているから、すぐに溶けると言う事も無い。

 

「すごい! これポップが作ったの?」

 

「え!? ちょっといつの間に作ったの、ポップ?」

 

「これは、かまくらか? マルノーラ大陸では見た事があるが……。氷結魔法をこのような使い方をするとは……」

 

「ああ、バランは知っていたか。そうだよ、かまくらだよ。前にオーザム国に立ち寄った時に見た事があってね。後で誰かに寝袋も持ってきてもらうから、今日は親子水入らずでここで寝ると良いよ」

 

バランが、「いや、私は……」と断ろうとする素振りをとるから、俺は指を立ててチッチッチと左右に振った。

 

「十数年ぶりの親子の団欒なんだ。少しくらいこんな時間があっても、バチなんか当たるもんか。ダイにも、お前にも……な」

 

ダイとマァムは初めて見るかまくらに興味しんしんらしく、もう2人してかまくらの中に入り、内部を興味深そうに見つめている。

 

「ポップ! 壁も床も全部氷でできているから涼しくて、すごく気持ちがいいね!」

 

「ねえ、ポップ。この壁についている窓みたいなのって、ガラスで出来ているの?」

 

「それは、極薄の氷だからあんまり突っつくと割れるよ。ああ、ダイ。寝袋も無しで寝そべったら、さすがに体が冷えるぞ。横になるのは、寝袋が届くまで待てよ」

 

興味深そうに、氷で作った窓ガラスをツンツンとつつくマァムと、冷たいのが気に入ったのか既に横になってはしゃいでいるダイに、俺は注意する。

 

俺はかまくらにはしゃぐ2人のそんな様子をひとしきり見つめた後、マァムに声をかけた。

 

「さあ、もう良いだろうマァム。俺達はそろそろ帰ろう」

 

「えっ、あ、そ、そうね。2人のお邪魔しちゃ悪いものね。じゃあ、ダイ。また明日ね。お休みなさい」

 

マァムも初めて見るかまくらにはしゃいでしまったのが恥ずかしいのか、わずかに顔を赤らめてかまくらの中から出てきた。

 

「うん、マァムもポップもお休み! 皆にもよろしくね」

 

「ああ、また明日な、ダイ。お休み――「待て……」」

 

かまくらから首だけを出してそう言うダイに俺もお休みの言葉をかけて帰ろうとした時、バランに呼び止められたので、俺は立ち止まって後ろを振り返った。

 

しかしバランは俺を見つめたまま何も言わない。俺が僅かに首を傾けると、ようやくバランは重い口を開いた。

 

「……ありがとう、ポップ」

 

俺は気がついた。こいつに初めて「ありがとう」と言われた事に。ていうか、こいつ人にその言葉を使ったのって、もう何十年も無かったんじゃないのか。そう考えたら、俺は無性にうれしくなって思わず頬が緩んだ。

 

「……どういたしまして。お休み、バラン。いい夜を」

 

 

 

マァムと2人、元来た道を並んで戻っていく。

 

「戻ったら、チウにでも寝袋を持って行ってもらうように頼もうか。あ、ご飯残っているかな。俺、まだ自分が食べてないのを忘れてたよ」

 

突然空腹が襲ってきてお腹に手を当ててつぶやく俺を、マァムがクスクスと笑う。

 

「ふふふ。私も忘れていたわ。でも、きっとメルルが残してくれているわよ」

 

そう言って、マァムは立ち止まって後ろを振り返る。俺もそのマァムの視線を追いかけると、もうバランもかまくらに入っているのか、半球状のかまくら以外は目に映らなかった。

 

かまくらからは、バランが照明呪文(レミーラ)の魔法を唱えたのか、暖かな光が外に漏れていた。ふふ。今頃2人して一つのお鍋をつついているのかな。ソアラさんなら、アルキード王国の伝統料理をバランに振る舞った事もあるだろうし、あれで話が弾むと良いが……。

 

……良かったな、ダイ。十数年分を取り戻すくらい、父親に甘えると良いよ。

 

俺がそんな事を考えていると、どういう訳か少し誇らしげな顔をしたマァムがいつの間にか俺を見つめていた。

 

「……ねえ、ポップ。あなた、自分の一番の魅力が何か自覚してる?」

 

「一番の魅力? そりゃあ、この見る者を振り向かせる甘い顔立ち(マスク)とか……は、無いよね。うんうん、分かっているさ」

 

甘い顔立ち(マスク)と言った途端、俺を見つめるマァムがひどく呆れた顔をした。うん、分かっているよ。言ってみただけだって。でも、俺もちょっとは傷つくんだよ。

 

「あー、つい最近マトリフ師匠ともそんな会話をしたなあ。真面目な話、俺の一番の長所は求心力だって言っていたけど、どうなのかな。……正直、自分ではよく分からんよ」

 

「くすくすくす。さすがマトリフおじさんね。ポップの事をよく分かっているわ。でも求心力のある人って、言い換えると……よね」

 

「え、何、ごめん。よく聞こえなかった。言い換えると何だって?」

 

マァムの声が、一瞬強くなった浜風で聞き取れなかった。何か『たらし』って言われたのかな?

 

「良いのよ、聞こえなかったら、それはそれで。でもポップ。その求心力は男性にだけ発揮してよね。女性は駄目よ?」

 

「……意味が分からない。どういう事?」

 

俺の言葉にマァムは無言のまま一歩を踏み出し、俺との間合いをするりと詰めてきた。

 

「……こういう事よ」

 

そしてマァムは、一瞬硬直した俺の頬に唇を近づけキスをした。ピクンと痙攣するように肩を震わした俺から、すぐに距離を取るマァム。一瞬マァムの顔が真っ赤になっている気がしたが、すぐに俺に背中を向けたから気のせいだったのかもしれない。

 

「あの二人を見ていたら、私、あなたをす……好きになって良かったって心から思えるの。……いつまでも、そういうあなたでいてね。あっ、後、これ、メルルには内緒よ」

 

それだけを明後日の方向に向かって独り言のように呟いたマァムは、「お腹空いちゃったから、先に帰るわね」と走って行った。

 

俺は、キスをされた頬に手を当ててしばし呆然としていたが、直ぐに我に返った。

 

……ったく、不意打ち過ぎるだろう。こんな所でまで、切り込み隊長の突進力を披露しなくても良いだろうに。抱きしめる隙さえ与えてくれないんだもんな。苦笑しながら、俺はもうずいぶんと小さくなったマァムの背中を、名残惜しい気持ちで見つめていた。

 

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