転生大賢者の冒険   作:怪盗218

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150話 大魔王との遭遇

~~~~大魔宮(バーンパレス) 玉座の間~~~~

 

 

ズズズーーーン……。

 

突き上げるような振動が伝わってくるのと同時に、玉座の間の天井よりパラパラと細かな部材が剥がれ、玉座の主が手に持っていたグラスの中に落ちた。その様子にじっと目を落としていたバーンはグラスを無造作に放り投げ、忌々しげに口を開く。

 

「どこをやられた……?」

 

その問いにミストバーンが僅かに沈考した後、答えを返す。

 

「ドラムーンから報告がありました。どうやら魔力炉の一部が消失したとの事です……」

 

「ワオッ。ついていないね。狙いなんてつけようも無かっただろうに、大魔宮(バーンパレス)の心臓部である魔力炉に直撃させるとは。稼働前では魔力吸収も出来なかったと見える」

 

「……浮上は可能か?」

 

「ハッ、それは問題ないとの事です。ただ、移動は直ぐには」

 

ミストバーンの報告に、「そうか……」と返事を返したバーンは、次いでキルバーンに視線を投げかけた。

 

「バランが火竜変化呪文(ドラゴラム)によってドラゴンに変化し、その背に勇者一行(パーティー)を乗せ死の大地に突入。そして、高高度から死の大地の地中深くに眠るこの大魔宮(バーンパレス)を狙い撃つ。これはバランの立てた戦略かな?」

 

その問いに、キルバーンは口に手を当てて「ウフフフ」と、実に面白そうに笑った。

 

「違うでしょう。バラン君なら、魔宮の門を破壊し、堂々と大魔宮(バーンパレス)に侵入してきたはずです。こんな奇想天外な突入方法を考える者なんて、あの男以外にいませんよ」

 

その言葉に、バーンは玉座に深く背を預けて、嘆息と共に言葉を発した。

 

「氷の賢者……か。アバンの愛弟子め。なかなかどうして、やってくれるではないか」

 

その短い言葉に、たかが人間に対して過分と思える程の感嘆の成分が含まれている事に気づいた2人が僅かに目を細めた。そんな2人を気にする素振りも見せず、玉座の主が言葉を続ける。

 

「さて、それではこちらも歓待の準備をせねばならぬな。望まぬ場所から訪問した客であろうと、客は客だ。せいぜい手厚く迎えてやるとしよう」

 

そして彼はおもむろに玉座から立ち上がり、ミストバーン、キルバーンを従えて歩き出す。

 

途中、ミストバーンからの「マキシマムは、先の攻撃により身体の半分が消失したようで、直ぐには動けないとの事です」という報告を聞き流しながら、彼らは玉座の間を後にした。

 

 

 

 

 

極大消滅呪文(メドローア)によってくりぬかれた空洞は、かつてアバン先生と共に歩いた『魔獣の咆哮』の断面と酷似していた。死の大地には硬岩が多く含まれていたようで、黒色化している壁面中に白い雲母のような鉱物が斜めに幾層も走っていた。

 

翼を器用に折りたたんで空洞内を奥へ奥へと疾走するバランの背で俺が周囲の壁面に視線を投げかけていると、不意にダイが俺を振り返った。

 

「ポップ、どうしてゴメちゃんの指示で極大消滅呪文(メドローア)を撃つ事にしたの?」

 

「そりゃあ、大魔宮(バーンパレス)極大消滅呪文(メドローア)が命中するかどうかは運任せみたいな所もあったからさ。だから、少しでもその運を上げようと思って、俺達のパーティーで一番LUKが高そうなゴメに協力を求めたのさ」

 

俺はそう言って、腰のベルトに吊している鞄に目をやった。ゴメは今頃、その鞄の中で眠り草に囲まれて眠っているはずだった。

 

この大穴が大魔宮(バーンパレス)に通じているであろう事は、爆発音がした事に加えて、ドラゴンと化した事で鼻が利くようになったのか、大穴に飛び込んだバランが保証してくれた。どうやらゴメは俺の期待に応えて、極大消滅呪文(メドローア)大魔宮(バーンパレス)の何処かに掠らせてくれたらしい。最悪大魔宮(バーンパレス)極大消滅呪文(メドローア)が命中せず、ただ『死の大地』に穴を穿つだけに終わる可能性もあったのだから、やはりこれはゴメの大手柄と言っていいだろう。しかしラーハルトは、運任せの要素のあった作戦を立案した俺に厳しい目を向けてくる。

 

「……貴様、そんなあやふやな作戦にバラン様を巻き込んだのか?」

 

「いや、まあ不確かな作戦だったってのは認めるけど、上手く大魔宮(バーンパレス)に命中したみたいだから、結果オーライじゃないか。あまりカリカリするなよ、ラーハルト」

 

「貴様っ!」と更に俺に詰め寄ろうとするラーハルトを、マァムが「まあまあ」と取り成す。そして、マァムが俺に若干、いや、かなり呆れたような表情を向けた。

 

「それにしても、ドラゴンに乗って大魔宮(バーンパレス)を強襲しようだなんて、よくこんな奇想天外な作戦を思いつくわね、あなた。もう、呆れを飛び越して尊敬するわ」

 

「……何が? ドラゴンの背に乗って敵の本拠地に乗り込むって言うのは、昔から使い古された定番中の定番じゃないか」

 

「そんな定番、聞いたこと無いわよ!」

 

マァムが顔を真っ赤にして俺に食って掛かる。えー、でもドラクエでもテイルズでも大抵そんなシーンがあったはずだけどな。ドラクエ6の冒頭も正にこんな感じだったしな……、と考えた俺は、不意に嫌な予感が頭をよぎり思わず頭を振った。そして、気持ちを切り替えようと別の事を脳裏に思い浮かべる。

 

「でも、これってやっぱり便利だな。この戦いが終わって皆でピクニックにでも行く時に、ベルみたいなのをチリン、チリンって振ったら、この姿のバランが現れて連れて行ってくれたりしないかな? あっ、バランの背中に敷いた絨毯の上でメルルお手製の弁当を食べたりするのもよさそう」

 

「死にたいのか、貴様!!」

 

さすがに失礼が過ぎるとマァムも思ったのか、俺の発言に目を剥いて激高したラーハルトをもう止めようとはしなかった。そんなラーハルトを無視して「天空のベルって名前をつけて……」と俺が更なる妄想を膨らませていた時、一人後方を警戒していたヒュンケルが叫んだ。

 

「――ポップ、来たぞ! 親衛騎団だ!」

 

その声に皆が背後を振り返る。本当だ。地底に向かって斜めに貫かれた大穴の中を疾駆する俺達の背後を、飛翔呪文(トベルーラ)を使って親衛騎団が追いすがって来た。

 

やれやれ、ようやく()()()()()()。アルビナスめ、焦りが過ぎて視野狭窄になっていると見える。……落とし穴の上に金貨を置く話、忘れたようだな。この場合の金貨は俺達。落とし穴は……言わずもがなだぜ?

 

「よしっ、おっさん、ヒュンケル! やってくれ!」

 

俺の言葉に、おっさんとヒュンケルが動き出す。初手はおっさんだった。おっさんの両腕の筋肉が、血管が浮き出る程盛り上がっている。

 

「――獣王激烈掌!!」

 

左右で回転の異なる闘気流が、後方に向かって放たれた。周囲を分厚い岩盤に囲まれた空洞内では、そのおっさんの放った闘気流から親衛騎団に逃れる術は無い。5体の親衛騎団全員が、バダック邸での洗濯仕事に着想を得たおっさんの新必殺技に捕らわれる。

 

「お、おおっ!?/しまった!」と奴らが声を上げるが、まだまだ俺はこんなもので済ますつもりは無かった。

 

「ヒュンケル!」

 

「――ブラッディ―スクライド!!」

 

俺の合図でヒュンケルが必殺剣ブラッディ―スクライドを放つ。その撃ちこんだ先は、奴らの頭上の岩盤だった。途端に凄まじい量の岩塊が雪崩を打ったかのように奴らの頭上から落ちて、奴らはその岩塊の下敷きになって消えて行った。

 

「よしっ! これで面倒な奴らの排除も出来た。後は、大魔王の所に乗り込むだけだ!」

 

後顧の憂いを無くした俺達は、前方に意識を集中した。気持ち、周囲の岩盤の色が変色してきた気がする。もしかすると、死の大地の地中深くに眠る大魔宮(バーンパレス)が近いのかもしれない。

 

皆も俺と同じ事を考えているのか、一様に緊張の面持ちを深めていた。

 

 

 

 

 

「どこだろうな、ここは?」

 

俺は周囲をキョロキョロと見渡した。あの後極大消滅呪文(メドローア)によって生じた穴を奥へ奥へと進んだ俺達は、途中で明らかに人工の構造物と言える空洞が側面に見えたため、そこへ足を踏み入れていた。

 

ここが大魔宮(バーンパレス)なのは、間違いないだろう。地中に、東京ドームにも匹敵しそうな程の大きさの空間が出来ている事ももちろんだが、意匠が施された白亜の内壁は明らかに人工の構造物だった。

 

ドーム状になっているとんでもなく高い天井からは、照明の魔道具が所狭しと埋め込まれているのか、まるで燦々とした陽射しが降り注いでいるかのように錯覚してしまいそうな程、明々とこの空間を照らしている。

 

「私も、大魔宮(バーンパレス)に足を踏み入れるのは初めてゆえ、ここが何処かまでは分からぬ。だが、油断をするな。大魔王は近くにいるぞ」

 

俺の渡した虎の子の『エルフの飲み薬』(昨日の襲撃でかろうじて被害を免れていた貴重な最後の1本だ)を飲み干しながら放ったバランの言葉に、皆が周囲を伺うように戦闘態勢を取った。そして、そのバランの言葉が正しかった事は直ぐに証明された。

 

最初に現れたのは、ミストバーンとキルバーンの2人だった。どこから現れたのか、まるで最初からそこにいたかのように彼らは悠然と俺達の前方に佇んでいた。

 

ハドラーがいない……? 死の大地の地表にもいなかったようだが、もしかするとあいつは魔宮の門付近にいたのだろうか?

 

「ウッフフフ。なんだ、もうドラゴンの格好はやめたのかい、バラン君。実によく似合っていたのに」

 

「……」

 

「キルバーン! それに、ミストバーン!」と、ヒュンケル。

 

「まさかあのような非常識な手段で、この大魔宮(バーンパレス)の玉座の間の真下に当たる、天魔の塔に乗り込んでくるとはね。一応聞いておくけど、あれは誰の発案かな?」

 

そのキルバーンの問いかけに、皆の視線が無言で俺に向かう。いやいや、皆も同意した時点で共犯だからな。そんな、『こいつを俺と一緒にしてくれるな』、って言いたげな視線を向けるのはどうかと思うよ!

 

「クックック。やっぱり君か。そうだと思っていたよ」

 

そしてキルバーンは最初からそんな所だと思っていた、と俺に視線を向けて嘲笑する。そのキルバーンの背後にはいつもの如く使い魔のピロロが「とんでもない奴だなー」と楽しげに笑っている。

 

キルバーンの反応を見ると、どうやらこの突入方法は思惑通り魔王軍の意表を突けていたようだ。よしっ、まずは上出来だな。

 

そんなやり取りをしていると、ミストバーンが俺達を睥睨しながら口を開く。

 

「……一同、控えよ!! 大魔王バーン様がお見えになる!!」

 

「「「「――!!」」」」

 

とうとう、来るか……! 大魔王バーン!

 

前方に佇むキルバーンとミストバーンの間の空間に、突然大気を吸い込むかのような黒い瘴気が発生した。皆がそれを注視していると、その瘴気の奥にゆらっと人の形をした影が生まれた。そして次の瞬間、それまで吸収していた大気を今度は一気に吐き出すかのように、黒い瘴気から突風が周囲に吹き荒れた。

 

思わず吹き飛ばされそうになるほどのその突風をやり過ごすと、先ほど一瞬目にした黒い影が実態を持ってそこに出現していた。

 

 

……そう、これが大魔王バーンとの遭遇だった。

 

 

 

「おっ……! お前が大魔王バーン……!?」

 

ダイの言葉に、男が返事を返す。

 

「……いかにも……。余が大魔王バーンだ……」

 

 

 

ごくっ。誰かがつばを飲み込む音が聞こえた。いや、それは俺の発した音だったのかもしれない。

 

初めて目にした大魔王バーンは、全身を覆う純白のローブ、そして肩口には黒を基調に金色の文様のあしらわれた防具を纏った高齢の男だった。長い顎鬚、胸まで伸びた長いもみあげと言い、見た目はドラクエと対を成す国民的ゲームで雷をバシバシと放つ爺さんに似ていると言えば似ている。

 

かつて魔王であったハドラーとは全くタイプが違うな。決して筋肉質に見えない体躯から、どう見ても腕力で勝負するタイプでなく、魔法力で勝負するタイプの男に見える。

 

だが、同じ魔法力で勝負するタイプの俺だからと言う訳じゃないが、そのこちらを見下ろす憎らしい程の立ち姿から、隠しきれない圧倒的な魔力を感じる。

 

ぐっ、気圧される。まるで目に見えない重りを、ドンッと身体に押し付けられたかのようだ。息苦しい。思わず膝を屈しそうになるほどのプレッシャーにどうにか耐えつつ周囲に視線を走らせると、皆も同じような状態で苦悶の表情を浮かべていた。

 

闘う前からこの重圧とは……。魔界の神とはこれほどだったか。

 

だが、皆が泰然と佇む大魔王の圧に屈しそうになっている中、1人その重圧をはねのけ自然体で大魔王に相対する男がいた。

 

「……大魔王バーン。天幕越しでなく、こうして直接相見えるのは初めてだな」

 

そう、バランだ。バーンのこちらを睥睨する目を真っ向から受け止め、逆に威圧を放つ(ドラゴン)の騎士。

 

 

「……バランか。初めて直接に顔を会わしたというのに、互いに異なる陣営に属しているのは、残念な事だな」

 

そして大魔王バーンは、バランから視線を外し、俺達全員に視線を投げかけた。

 

「ようこそ、アバンの使徒達よ。……よくぞここまで来た。大魔宮(バーンパレス)の主として、そなた達を歓迎しよう」

 

一人一人に視線を投げかけていたバーンの視線が、俺と交錯した瞬間固定される。そのままバーンは、ニヤッと笑みを浮かべた。

 

「そなたが氷の賢者だな……? 名は……そう、ポップと言ったか」

 

ぐっ、バーンと目を合わせた瞬間、瞳を通じて俺の臓腑まで見透かされたように感じた。……魔力量の桁が違う。それも桁一つどころじゃない。桁二つ以上は違う。分かっていたはずなのに、俺は絶望的な気分に陥る。

 

……駄目だ、どれほど魔法技術を上げても、この絶対的な魔力量の差は覆せない。俺が絶望的な力の差に唇を噛んでいると、バーンが静かに言葉を続けた。

 

「この大魔宮(バーンパレス)への侵入、見事であった。まさかあのような方法で来るとは、さすがの余も想像だにしていなかったわ」

 

そのバーンの俺を持ち上げる言葉に、ピロロなどが「まぐれだよ、まぐれ! 調子に乗るなよ!」と揶揄する。

 

「……そいつは、どうも。正門に鍵がかかっていたから、悪いとは思いつつ裏口から入らせてもらったよ」

 

かろうじて、俺はそう軽口を返す。俺のその返しにフフッと笑みを浮かべたバーンは、再びバランに視線を戻す。

 

「さて、バランよ。余は、そなたともう一度こうして顔を会わす事になるとは思わなかった」

 

「……それは、そこの死神が私を消せると考えていたからか? だとすれば、耄碌したなバーン。暗殺者如きに私の命が狩れるはずがないだろう」

 

バランは、バーンの威圧に呑まれるでもなく淡々と返事を返す。その様子に俺達は徐々に平常心を取り戻していく。そうだ、戦う前から呑まれていてどうする。勝負は下駄を履くまで分からないんだ。

 

「フ、フフフ……。それは失礼した。それよりバランよ。今からでも遅くは無い。もう一度余の手を取らぬか?」

 

――! 俺達の間に緊張が走る。だが、バランの答えはバーンの求めていた物では無かった。

 

「……断る。貴様の狙いは先日そこな死神から聞いた。地上を消し去り、人も魔物も竜も全て魔界へ突き落す。そして力の強い者、破壊や殺戮を喜びとする者のみが生き残れる世界を目指すらしいな。そのような世界を理想郷とあがめる貴様の手を、もう一度取るつもりは断じてない!!」

 

……地上を消し去り、全ての者を魔界に突き落とすだと? どういう事だ? 何かの比喩なのか、それは? それとも……。

 

バランの返答を半ば予期していたのだろう。バーンは特に落胆した様子を見せる事も無かった。

 

「やれやれ。キルバーン……。少々おしゃべりが過ぎるな」

 

ジロッと視線をキルバーンに向けるバーン。俺ならそれだけで失神しそうな威圧を受けても、キルバーンとその使い魔は涼しい顔を崩さない。

 

「ほら言ったじゃないか……。しゃべりすぎだって。怒られちゃったよ……」

 

「ウフフフ。すみません、バーン様。つい興が乗ってしまいまして。しかしバーン様。どうやらこれで交渉決裂のようですね」

 

そうだ、交渉決裂だ。この後はやり合うだけだ。バランのおかげで、バーンの圧倒的威圧に呑まれかけていた俺も、どうにか落ち着く事ができた。そっとダイやマァムの様子を伺うが、ダイ達も既に自分を取り戻している様子だった。

 

俺は、隣に立つバランに小声で話しかける。

 

(……バラン、バーンと1対1でやりあったとして分はあるか?)

 

(……1対1なら、分は私にあるだろう)

 

マジか。あの力の底が全く伺えないバーンと1対1で相対してなお分があるとか、頼もしすぎるぜ、バラン。本当にこいつがこっちの陣営についてくれて良かった。マジ感謝だ。

 

(そうか、分かった。じゃあ、ミストバーンとキルバーンは俺達で相手をするから、お前にはバーンを任せていいか?)

 

(良いだろう……。ラーハルトはお前に預ける)

 

バランが一瞬視線をラーハルトに向けた。それだけでラーハルトはバランの意図を察したんだろう。こくっと頷く。

 

(助かる。援護は必要か?)

 

(いらぬ。……ディーノを頼む、ポップ)

 

(分かった。(ドラゴン)の騎士に俺などがかける言葉じゃないだろうが、……死ぬなよ、バラン。ダイにはまだまだ父親が必要だ)

 

俺の言葉に、僅かにバランの口角が上がるが、それは一瞬だった。

 

 

「よしっ! ミストバーンには、ダイとヒュンケル! キルバーンには、ラーハルトとおっさん、マァムで当たってくれ! 奴らとバーンを分断するんだ!」

 

俺が、皆に補助魔法をかけ終わると同時に皆が飛び出す。俺は戦場全体を視界に収めながら、適時後方支援するつもりだった。

 

さあ、こっからが正念場だ。バランがこちらの最大戦力なんだ。奴を最大限に生かす戦いができさえすれば、こちらの勝利だ。俺は、バーンと睨み合ったまま動かないバランに一度だけ視線を投げた後、仲間達の元へ向かった。

 

 

 

 

 

(よろしいのですか、バーン様?)

 

ミストバーンからの念話による問いかけに、バーンは顎を一撫でした後、キルバーンに一瞬視線を投げかけた。

 

(あやつに何やら考えがあるようだ。まずは様子見といこう)

 

(……はっ)

 

 

 

キルバーンは、ニヤニヤとした愉悦の笑みを崩さないまま、バーンと対峙しているバランにただ静かに視線を向けていた。

 

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