転生大賢者の冒険   作:怪盗218

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閑話的な話です。


21話 原作開始 4年前 合成魔法の開発

メルルがランカークス村を旅立って、約半年が過ぎた。

 

俺は昨日11歳の誕生日を迎えた。そういえば、メルルの誕生日はいつなんだろう? 祝ってあげたいから、今度会えたら聞いてみたいな。

 

メルルと別れた日、俺はランカークス村の皆から冷やかされた。「この年でネックレスを贈るなんて100年早い!」、「まだ10歳なのに、こんなにおませさんなんて、ポップ君の将来がお姉さん心配だわ」とか散々だった。

 

それに、あの後しばらくして村に戻ってきた隊商の団長さんが、あのトヘロスの機能の付いた魔道具を是非自分にも売ってくれって押しかけてきて、断るのが大変だった。別に作れないことも無いけれど、あれはおれとメルルの思い出の品なんで、複製しようとは思えなかったんだよな。

 

メルルがランカークス村を離れてから、俺は修行に明け暮れた。

 

あのライオンヘッド、いや、違った。そうそう、あの日俺が倒した魔物、ライオンヘッドではなくて、バクーモスと言う名のライオンヘッドの進化種だったらしい。

 

俺がライオンヘッドと戦った場所をライナー隊長に伝えておいたら、翌日には様子を見に行ったらしい。そしたら、「あれはライオンヘッドなんかじゃ無く、バクーモスだったぞ!」と俺に息を切らして文句を言ってきた。

 

バクーモスの死体を発見した隊員の何人かは腰を抜かして動けなくなったそうだ。俺に文句を言われても困るよな。バクーモスなんて知らないし。まあ、確かにライオンヘッドにしては黒っぽい外見だなと思ったけどさ。ただ、左目の上にライナー隊長が付けたと思われる古傷があったらしいから、間違いなく以前自警団を襲ったライオンヘッドと同一個体だろうと言っていた。

 

団長は故郷で一度、国の剣士長が討伐して荷馬車に乗せて運ばれるバクーモスを見たことがあったらしくて、知っていたそうだ。その時は村が2つバクーモスによって滅ぼされ、国の剣士が何人も犠牲になるほどの大激戦だったらしい。

 

どうりで、ただのライオンヘッドにしては強すぎると思った。あのクラスがどこにでもいるレベルだったら、俺この世界で生きていく自信をなくしてたよ。まあでも、魔王軍の軍団長クラスがあれより強いのは変わらないから、俺のやることは変わらないんだけどね。

 

そうそう、あの戦いでようやく習得できた二重魔法詠唱の技能で俺の戦術の幅はとても広がった。

 

以前から試してみたかった合成魔法にも挑戦が出来る様になって、この半年で色々新しい魔法を開発した。例えば、火炎竜巻メラゾロスと氷刃嵐舞マヒアロスだ。メラ系とヒャド系を、バギ系と組み合わせることで、炎の竜巻と氷の竜巻を生み出す、広域殲滅魔法だ。敵味方の区別が出来ないから、味方の存在しないフィールドでしか使えないけど、広範囲に展開した敵を倒すのに適した魔法だ。

 

他にも催眠呪文(ラリホー)水流呪文(ウォーター)を組み合わせた、催眠水球呪文(ラリホーボール)という、眠気をしみこませた水球を作り出す魔法も開発した。通常の催眠呪文(ラリホー)が嗅覚と聴覚に訴えかけて効果を出すのに対して、こいつは直接相手にぶつけることで眠気が水を通じて肌から浸透する、催眠呪文(ラリホー)催眠呪文(ラリホーマ)より強力な睡眠呪文だ。

 

後は生活魔法として、火炎呪文(メラ)水流呪文(ウォーター)を組み合わせた温水呪文(メラータ)という魔法も開発した。これは熱湯を発生させる魔法だ。熱湯の温度は自在に調節可能なので、敵にぶつけて火傷させることも出来るし、適度な温度に調節してお風呂のお湯にすることも出来る。我が家では目下、この利用ばかりしていて、ほぼ毎日家族のために魔法を発動している。まあ喜んでくれているから良いんだけどね。

 

それで、俺は今村の外の街道から少し外れた山の麓に一人修行に来ていた。理由は、今日新しい合成魔法を開発しようと思っているからさ。新しい合成魔法を開発する時は、何が起こるか予測がつかないから、いつも念のため人気の無いところで行っている。

 

今日合成する魔法は、火炎呪文(メラ)氷系呪文(ヒャド)だ。この2つの魔法は炎熱系と氷結系と違いはあるものの、実際は物質の温度を上げるか下げるかだけの違いで、本質は同じだ。

 

だから、2つの魔法を合成しても意味は無いような気がするから、今まで試してこなかった。ただまあ、一応この組み合わせも試してみようかなと言う軽い気持ちでやってみようと思っている。

 

俺の予想では、炎熱のプラスと氷結のマイナスなので、差し引き0ということで、無害な空気のような魔法が発生するのでは無いかな。

 

まあ、何にしてもやってみないと分からないしな。レッツ・トライだ! 早速やってみるとしよう! そして、俺は右手に氷系呪文(ヒャド)を、左手に火炎呪文(メラ)を発動した。

 

 

……3時間後、俺は、軽い気持ちでこの合成魔法に臨んだ数時間前の自分を殴りつけてやりたいほど後悔することになった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

side ライナー隊長

 

「どう思う、ライナー? この間までこんな大穴無かったはずなんだ。それが今日、近くを通ったときに妙に違和感があって覗いてみたら、こんなことになっていて……」

 

ジョンが、山のど真ん中に空いた直径10mもの大穴をのぞき込みながら、俺に話しかけている。

 

ここは、ランカークス村と隣の町の間にそびえ立つ山の麓、街道から少しそれた所にある人気の無い広場だ。

 

「そうだな、確かにこんなものは無かったはずだ。いったいこの穴はどこまで続いているんだ?暗くて先が見えないが……」

 

「ああ、今スティーブとケネディが中を確認に行っている。もうじき戻るだろう」

 

「な!? お前、危ないだろう! 中に何かが潜んでいたらどうする!」

 

「ちょっと様子を見に行っただけだよ。何かを感じたら直ぐに戻ってくることになっている」

 

「それはそうだろうが……」

 

「おっ、そら、ちょうどスティーブ達が戻ってきたようだぞ」

 

俺達がそんな会話を大穴の周りでしていると、大穴の奥からたいまつを持ったスティーブとケネディが戻ってきた。

 

「スティーブ、ケネディ、ご苦労だったな」

 

「やあ、ライナー。ちょっとこの穴に潜ってみたが、こいつは人が直接掘った穴ではなさそうだぞ。ほら、ちょっと見てくれ」

 

そういって、スティーブが俺を穴の中に手招きし、内壁を指し示す。ふむ、直接掘った穴では無いとはどういう意味だ? 疑問に思いながらスティーブが指し示した所まで移動し、その内壁をじっくり見て驚いた。

 

「……こいつは驚いた。いったいどうやればこんな事になるんだ?」

 

「お前もそう思うだろう? こいつはこの山を掘ったというより、なんていうかな、消滅させたっていう感じに見えないか?」

 

「……ああ、そうだな。確かに掘ったと言うよりは消し飛ばしたって感じだ。というより、掘ったのではこんな綺麗な断面には絶対にならんだろう。これは人の力では無いな。何か、とてつもない強力な魔物が、やったんじゃ無いのか?」

 

そう、この大穴の内壁は綺麗すぎるのだ。普通、人力で掘るとその断面はバラバラになってしまうが、この内壁は均一でまったく凹凸が無い。こんなことは人の力では不可能だ。あり得るとすれば、何か自分達には想像も出来ない攻撃手段を持った強力な魔物がやったとしか思えない。

 

「ああ、それしか考えられないだろうな。しかし、一体どんな魔物がこれを……」

 

「恐ろしいな、これほどのことをやった魔物がこの辺りにいると言うことだろう? しばらくこの付近は封鎖した方が良くないか?」

スティーブとジョンが、この内壁の有様を見て、そう提案した。確かにその通りだが……。

 

「ああ、確かにそうすべきだろうが、まずはこの大穴がどこまで続いているか確かめた方が良くないか? もし奥にこれをやった魔物がいたら、すぐに村の皆に警告する必要がある」

 

「それもそうだな。さっき俺とケネディが立ち入ったのは、ほんの入り口と言ったところだったからな。きちんと調査をした方が良いかもしれん」

 

「よし、それなら6名を選抜し、穴の中を調査しよう。残りの団員はここで待機し、万が一に備えてくれ」

俺は、皆にそう指示し、穴の中に入る準備を始めた。

 

そうして、大穴に入った調査メンバーはその2時間後、何の魔物に会うことも無く反対側の穴の出口にたどり着いた。なんとそこは、この山の反対側の斜面であった。

 

「おい、あそこに見えるのは、ルミナの町じゃないか? すげえな、いつもこの山を越えるのに2日はかかっていたのに、こんな短時間で着いちまったぞ。」

 

「……確かにな。この大穴、もしかして新しい街道として使えるんじゃないのか?」

ジョンとスティーブがそう言っている。俺も確かにそうかもしれないと考えながら、誰がやったのかも分からないこの大穴を使って、果たして大丈夫なのかと心配もしていた。

 

しかし、俺の心配をよそに、この後大穴はランカークス村とルミナの町を繋ぐ主要街道として使用されることになった。まあ、これまで行き来するのに山の峠越えもあって3日程度かかっていたのが、平坦な道を歩いて1日足らずで通過できるようになったんだ。利便性を考えても商人や冒険者がこちらを使用し出すのは当然だろう。穴の内部には、知らぬ間にたいまつが等間隔に並べられ、通行人が引きを切らず通過している。

 

半年も経つ頃には、この大穴は、「魔獣の咆吼(ほうこう)」と呼ばれ、多くの人々に利用され、親しまれることになった。穴の両方の出口には、魔獣とやらを模した石像が入った小さな祠がいつの間にか設置されており、この穴を通る際にその祠にお祈りしていくのが、通行人の風習となった。

 

ちなみに、俺達がこの大穴を発見した翌日、ポップに偶然会った際にこの穴の話をしたら、腹でも下したのか、突然真っ青になって走っていきやがった。……大丈夫か、あいつ?

 




明日より仕事が始まるので、以後の更新スピードは遅くなりそうです。
もうすぐランカークス村での日々も終わりです。まずはそこまで書くことを目標にしています。よろしければお付き合いください。
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